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(1)

2017 マクロ経済学I

7 国民経済計算

一国の物質的な豊かさを測る上で最も基本となる指標である、国民所得について勉強する。

7.1 国民所得

GDP 一定期間(通常1年間または3ヶ月間)にその国の 国内において生み出された付加価値 の合計をGDP(国内総生産、Gross Domestic Product の略)という。ここで付加価値とは

(サービスを含む)財の生産によって新たに生み出された(市場)価値のことである。通常、あ る国の経済成長率とはGDPの成長率を指す。

例題 7.1 ある国には、小麦を生産する農家、小麦を加工して小麦粉を生産する製粉会社、小麦 粉を加工してパンを生産する製パン業者のみが存在しているものとする。又、この国は外国と の経済的な交流は全くないとする。2010年の小麦の価格が1トン当たり1万円、小麦粉の価格 が1トン当たり6万円、パンの価格が1トン当たり60万円であり、各生産者の生産量、中間投 入が表7.1のように与えられているとする。このとき2010年のこの国のGDPを求めよ。

生産主体 産出量 中間投入 農家 100トン なし 製粉業者 30トン 小麦90トン 製パン業者 9トン 小麦粉 27トン

7.1: 2010年のある国の産出量、中間投入

測らないもの 家庭内生産(家事、育児)、中古品(取引手数料を除く)、金融資産、Black market(三野マクロp20

測るもの 持ち家の帰属家賃、農家の自家消費、政府活動(三野マクロp19

GDI 新たに生産された付加価値(すなわちGDP)から固定資本減耗を除いた残りは、それ を生み出すのに貢献した主体に分配される。分配された付加価値と固定資本減耗の合計をGDI

(国内総所得、Gross Domestic Income の略)という。これはGDPを所得として分配面から捉 えた見方である。

GDE 国内の支出合計に純輸出を加えたものをGDE(国内総支出、Gross Domestic Expendi- ture の略)という。

GDE =民間消費支出+民間投資支出+政府支出+純輸出

(2)

ここで

民間投資支出=民間住宅投資+民間企業設備投資+民間在庫投資 政府支出=政府消費支出+公的投資

純輸出=輸出− 輸入 GDEGDPを支出面から捉えたものである。

在庫投資 生産された財のうち売れ残った部分は、企業自身が買い取ったと考え在庫投資と呼 ぶ。(次期まで売れずに廃棄された場合、資本減耗として計算される。)

財市場の均衡条件 次の式は、両辺とも、国内の消費と投資のうち、国内で生産される分を表 している。

GDP − 輸出 = 民間消費支出 + 民間投資支出 + 政府支出 − 輸入 この式を変形すると、

GDP = GDE を得る。この式、つまり

GDP =民間消費支出+民間投資支出+政府支出+輸出− 輸入 (7.1) は恒等式であり、どんな国、経済でも成り立つ。この式の左辺は(1国経済全体での)財の生 産つまり供給を表しており、右辺は(1国全体での)支出つまり需要を表している。

3

この意味 でこの式は、財市場の均衡条件とも言われる。(特定の財市場の均衡条件に均衡価格をかけて足 しあわせたものと解釈できる。ただし、売れ残りが在庫投資として処理されている。)

7.1 ある農家がある年に500万円分の米を生産した。このうち、100万円分の米は自分 たちで食べ、残り400万円分の米は市場で売った。またこの農家が600万円支出したとする。

一国の借金 (7.1)を変形すると以下の式が得られる。

(民間消費支出+民間投資支出+政府支出) − GDP = − 純輸出

この式は、海外からの借り入れが貿易赤字(経常収支赤字)に等しいことを示している。しばし ば国債は日本の借金と考えられ、家計や企業の赤字に例えられるがそれは正しくない。国債 は日本政府の借金である。

三面等価の法則

GDP = GDE = GDI

3

投資財は、資本市場ではなく生産物市場で取引される。

(3)

2017 マクロ経済学I

GNP (GNI) 一定期間にその国の 国民(居住者)によって生み出された 付加価値の合計を GNP(国民総生産、Gross National Productの略)という。GDPGNPには次のような関係 がある。(三野マクロp18

GN P = GDP +国外からの要素所得の受け取り− 国外への要素所得の支払い

ここで要素所得とは生産要素である労働や資本に対する報酬(賃金や利払い)である。 NDP(国内純生産、Net Domestic Product N DP = GDP − 固定資本減耗

可処分所得(DI) 所得のうち民間部門が消費や投資、貯蓄のために使うことのできる部分。 可処分所得= N DP − 税金 +政府から民間への補助金

フローとストックの概念 期間を明示する必要がある変数をフロー(変数)という。所得、消 費、投資などこれまで出てきた変数は全てフロー(変数)である。これに対し、期間を示す必要 はないが時点を明示する必要がある変数をストック(変数)という。資本ストック、貨幣発行残 高、人口など。

7.2 名目と実質

経済力の大きさや豊かさを保有している貨幣の量で測っても意味がない。例えば、あるとき ある人の給料が2倍になったとする。このときその人は2倍豊かになったといえるだろうか。 もし世の中の全ての財の価格も2倍になっていたとしたら、その人の豊かさは以前と変わらな いであろう。豊かさは、消費できる財やサービスの大きさで測られなければならない。このた め、GDPは物価の変動を考慮に入れて測られるのが普通である。

その期間における市場価格を用いて付加価値を評価するやり方で、ある期間のGDPを計算 したものを名目GDPという。これに対し、基準となる時期を定め、その時期からの物価変動 を考慮に入れて付加価値を計算したものを実質GDPという。特に、基準となる時期の市場価 格を用いて付加価値を計算したものを固定基準方式の実質GDPという。上の例では、ある人 の所得は名目的には2倍になったが、実質的には以前と変わらないといえる。

例題 7.2 例題7.1と同じ国において2009年の小麦の価格が1トン当たり8000円、小麦粉の価 格が1トン当たり7万円、パンの価格が1トン当たり50万円であり、各生産者の生産量、中間 投入が表7.2のように与えられているとする。このときこの国2009年から2010年にかけての 名目と(2009年を基準とする固定基準方式の)実質の経済成長率を求めよ。

(4)

生産主体 産出量 中間投入 農家 100トン なし 製粉業者 30トン 小麦 90トン 製パン業者 10トン 小麦粉27トン

7.2: 2009年のある国の産出量、中間投入 GDPデフレータ

GDPデフレータ = 名目GDP 実質GDP

× 100

これ以降本講義及で「国民所得」あるいは単に「所得」と言った場合、特に断りがない限り 実質GDPを指す。

7.3 日本の GDP

7.3は近年の日本のGDPとその内訳。ただし、実質GDPは連鎖方式

4

と呼ばれる方法で 計算されている。

暦年 名目GDP 名目成長率 実質GDP 実質成長率 2011 491,409 2.2% 491,456 -0.1% 2012 494,957 -1.8% 498,803 1.5% 2013 503,176 0.7% 508,781 2.0% 2014 513,698 1.7% 510,489 0.3% 2015 530,545 3.3% 516,714 1.2% (単位:10億円)

7.3: 日本のGDP

42004年から日本の実質GDP(2000年を基準年とする)連鎖方式により測定されている。

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2017 マクロ経済学I

項目 2008 2009 2010 民間消費支出 58.3% 60.1% 59.2% 民間投資支出 18.7% 14.9% 15.1% 住宅投資 3.3% 2.8% 2.6% 企業設備投資 14.9% 13.2% 12.8% 在庫品増加 0.5% -1.1% -0.3% 政府支出 22.9% 24.6% 24.4%

政府消費支出 18.6% 19.9% 19.8% 公的投資 4.3% 4.7% 4.6% 純輸出 0.2% 0.4% 1.2%

輸出 17.7% 12.7% 15.2% 輸入 −17.5% −12.3% −14%

7.4: 名目GDE構成比

7.4 国民所得を見る上での諸注意

GDPは国民の物質的豊かさを測る指標の一つに過ぎず、それが表現する内容には限界があ ることを知る必要がある。

一国の経済規模

豊かさの指標 一国の物質的な豊かさは、本来、その国民が消費できる商品や利用できるサー ビスの量や質で測られるべきである。しかしこれらを逐一列挙していくことは現実には困難で あるし、出来たとしてもその「列挙」が、どれくらいの豊かさを示しているのか分かりにくい。 そこで「一定期間に国民が消費出来るであろう財(つまり生産した財の付加価値)の実質的な 市場価格」によって一国の豊かさを示すことが考えられる。これが国民所得つまり実質GDPで ある。例えば、2010年のある国の一人当たり実質GDP400万円、2011年は500万円であっ たとする。2011年には、2010年に消費していた財全種類につき25%多く利用できる、と考えら れ2010年に比べ25%ほど豊かになったと言える。(あるいは2010年には、2011年に消費した 財全種類につき20%少なくしか利用できず、2011年より20%ほど貧しかった。)

無駄な支出 投資支出や政府支出を大きくすることによってGDPを大きくできるかもしれな い。もしそうだとしても、無駄な投資や政府支出をいくら大きくしても国は豊かにはならない。

家事労働 家事労働は明らかに国民の物質的豊かさを向上させるのに、国民所得に計上され ない。

・女性の貢献を過小評価。

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項目 2008 2009 2010

産業 88% 87.6% 87.9%

農林水産業 1.1% 1.2% 1.2%

鉱業 0.1% 0.1% 0.1%

製造業 19.7% 17.7% 19.4%

建設業 5.6% 5.7% 5.5%

電気・ガス・水道業 1.9% 2.4% 2.3% 卸売・小売業 14% 13.6% 13.4%

金融・保険業 5% 5% 4.9%

不動産業 11.2% 12.1% 11.8%

運輸業 5.1% 4.9% 4.9%

情報通信業 5.4% 5.6% 5.4% サービス業 18.9% 19.4% 19.1% 政府サービス生産者 9.2% 9.6% 9.2% 対家計民間非営利サービス生産者 2% 2.1% 2.1% 輸入品に課される税・関税 1.2% 0.9% 1%

(控除)総資本形成に係る消費税 0.7% 0.5% 0.5%

7.5: 名目GDPの内訳

196070年代以降の経済成長を過大評価。(労働市場への女性の参入→財・サービスの生 産量アップ&保育サービスが算入&家事労働時間の減少は算入されない。)

長期の時系列比較 長期のGDPの時系列比較については単純な比較が妥当ではない。例えば、 ある国の1900年の一人当たり実質GDP4万円であったとする。この場合、2010年は1900 年に比べて100倍豊かになったと言えるだろうか。つまり、1900年には、2010年に消費した財 全てを1/100しか利用できなかった、といえるだろうか。

例題 7.3 1900年には、2010年に消費した財全てを1/100しか利用できなかった、といえるか どうか答えよ。またその理由を述べよ。

2010年は1900年より物質的には豊かであるということに多くの人が異論を持たないかもしれ ない。しかし単純にGDPを比較して、100倍豊かになったと言うようなことは言えない。

短期の経済成長 基準年の取り方に依存して経済成長率は変わる。1990年から1997年の平均 経済成長率は1.83%1992年から1999年の平均経済成長率は1.06%。(図7.1

(7)

2017 マクロ経済学I

項目 2008 2009 2010

固定資本減耗 21.9% 22.9% 22.5% 生産・輸入品に課される税−補助金 7.5% 7.1% 7.6% 営業余剰・混合所得 19.1% 18% 19.1% 雇用者報酬 51.5% 52% 50.8% 農林水産業 0.4% 0.4% 0.4%

鉱業 0% 0% 0%

製造業 10.8% 10.1% 10.1%

建設業 4.6% 4.5% 4.2%

電気・ガス・水道業 0.7% 0.7% 0.7% 卸売・小売業 7.8% 7.5% 7.5% 金融・保険業 2.2% 2.4% 2.4%

不動産業 0.7% 0.8% 0.8%

運輸業 3.3% 3.4% 3.4%

情報通信業 1.6% 1.7% 1.7% サービス業 11.4% 12.1% 11.5% 政府サービス生産者 6.3% 6.5% 6.2% 対家計民間非営利サービス生産者 1.7% 1.8% 1.8%

7.6: 名目GDIの内訳

450,000 470,000 490,000 510,000 530,000 550,000

1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 Year

実質GDP(十億円)

7.1: 実質GDP(7年基準)の推移

(8)

国家間比較 「A国の国民の方がB国の国民より経済的に豊かである」状況とは「A国国民の 所得でB国国民が消費する財を全て購入でき、さらにおつりがくる」状況である。実際には、 2国の国民の豊かさを比較するのに、為替レートを用いて同じ貨幣単位(例えば米ドル)に変 換された一人当たりGDPを比較する場合が多い。しかし、為替レートは各国通貨の購買力や 物価水準を反映していない場合がある。国家間の豊かさを比較するためにはこれを考慮に入れ て比較する必要がある。

例題 7.4 2002年時点で、平均的な日本人と平均的なカナダ人を比較すると、どちらの方が豊 かであると言えますか。ただし購買力平価は、アメリカにおいて1ドルで購入できる財(の組 合せ)を日本で買うと何円かかるかを表す。

為替レート 一 人 当 りGDP(米 ド ル)

購買力平価 購買力平価による1 人当りGDP(米ドル) 日本 125.4() 31,264 146() 26,853

カナダ 1.57(加ドル) 23,536 1.19(加ドル) 31,051

7.7: 2002年の日本とカナダのGDP

7.5 経済成長の重要性

経済成長とは、通常、国民所得(実質GDP)の成長。

所得が増える=より上質の財・サービスをより多く消費できる。

(物質的により豊かで幸せになること。)

所得と乳児の死 10%の所得低下(上昇)→乳幼児死亡率が6%上昇(低下)

5

1980年代のアフリカの経済成長率が実際より1.5%高かったなら、1990年に死亡した子供の うち50万人の子供が死なずに済んだ計算になる。

7.2 (チリの例) 1985年から2000年にかけて平均約5%の経済成長。

(乳児死亡率)1970年代初頭80/1000人 → 200011/1000

経済成長と貧困 経済成長が早いほど貧困の減少が速い。(表7.8

5Filmer, Deon, and Lant Pritchett. 1997. “Child Mortality and Public Spending on Health: How Much Does Money Matter?” World Bank Policy Research Working Paper No. 1864

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2017 マクロ経済学I

所得変化率 貧困層の増加率 大きなマイナス成長 -9.8% 23.9% 小さなマイナス成長 -1.9% 1.5% 小さなプラス成長 1.6% -0.6% 大きなプラス成長 8.2% -6.1%

(出典)ウィリアム・イースタリー(2003

65の発展途上国、154期(1981年から1999年)のデータ。  貧困とは各期に1ドル以下の所得しかないもの。

7.8: 経済成長と貧困層の変化

幾何級数的増加 ほんの少しの成長率の違いでも、長期になれば大きな差をもたらす。 1900年の日本の一人当たり実質GDP1,135ドル。

2002年では31,292ドル。 この間年平均約3.3%の成長。

これがもし2.2%だったとすると、2002年の一人当たり実質GDP10,447ドルで実際の1/3。 これは、1970年の日本の一人当たりGDPに匹敵。

2002年のメキシコの一人当たりGDPに匹敵(購買力を考慮してある)。

(異時点間での豊かさの比較や、国家間での豊かさの比較は単純ではないが、あえてやって みる。)

1970 2002 カラーテレビ普及率 26.3% 99% 乗用車普及率 22.1% 83.6% エアコン普及率 5.9% 86.2% 乳児死亡率(出産千対) 13.1 3.1∗∗

1997年の値。

∗∗2001年の値。因みに2003年のメキシコの乳児死亡率は23

7.9: 1970年と2002年の比較

(乳児死亡率が13.1であった場合、2002年には12,000人近くの乳児が実際より余計に死亡 していたことになる。)

(長期にわたり1%でも経済成長率を高めることが出来れば、国民が豊かになるのはもちろ ん多くの人命も救われる。)

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経済成長の源泉 人口増加 資本蓄積

技術進歩(資本蓄積と不可分、捉え方が難しい) 教育(人的資本への投資)・人的資本の蓄積 経済政策

金融市場の発展(物的、人的資本への投資をスムーズにする) 国際貿易

宗教と経済成長

6

地獄効果 > 天国効果 >0 >教会効果

6Barro, R.J. and McCleary, R.M. 2003 “Religion and economic growth across countries” American Sociolog- ical Review 68(5), 760-781.

参照

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