2009年度
ミクロ経済学 宿題 5( 解答 ) †
問題1 (a)
6つ存在します。
(b)
σi ∈ {S, C}で第i∈ {1, 2, · · · , 6}期にとられる戦略を表わすことにする。また1と2の戦略の組をあわせ て((σ1, σ3, σ5), (σ2, σ4, σ6))のように表記する。第6期をみると2にとってSが最適、それをふまえて第5期 をみると1にとってSが最適、、というステップで確認していくとサブゲーム完全均衡は((S, S, S), (S, S, S)) とわかる。
(c)
まず、第2期以降までゲームが実際に続くケースはナッシュ均衡にはならないことを確認する。もしそのよ うな状況を考えると、どこかのi∈ {2, · · · , 6}についてσi = Sかつσ1= · · · = σi−1= Cとなっているはず である。しかし第i− 1期に意思決定する人はσi−1= Sとすることで利得を1改善できるので、これはナッ シュ均衡ではない。よって、均衡にはσ1= Sが必要である。
次に、σ2= Sであることを確認する。なぜなら、もしσ2= Cであれば、1はσ1= Sよりもσ1= Cを選 択することが必ず望ましくなる。しかし、これは前段落の主張と矛盾してしまう。
上 の 二 つ が 満 た さ れ て い れ ば 、得 ら れ る 利 得 の 組 み 合 わ せ は(1, 0)と な る 。ナ ッ シ ュ 均 衡 の 集 合 は そ の 二 つ を 満 た す す べ て{((S, σ3, σ5), (S, σ4, σ6))|σi ∈ {S, C}, i ∈ {3, 4, 5, 6}}で あ る 。な ぜ な ら 、ほ か の i∈ {3, 4, 5, 6}に関してσiはS, C どちらであっても、彼らの得る利得は(1, 0)から変わらないので、どの選 択でも最適となっている。
問題2 (a)
x <1の場合はbの最適反応は受諾、x= 1の場合ではbの最適反応は受諾もしくは拒否である。bが受諾
するということを前提に、一番高いxを提示することがaにとって最適である。彼らの戦略の組を(xの提示 額,提示額に対してどうするか)といった具合に書くと、サブゲーム完全均衡は(1,必ず受諾)となる。
(b)
bが分割を提示するサブゲームに着目する。これは(a)で考えたゲームとプレイヤーが入れ替わった以外 は 同 じ 構 造 を し て い る 。よ っ て 、こ の サ ブ ゲ ー ム で 提 示 さ れ る 分 割 は(0, 1)、つ ま りy = 0で あ る 。そ の と き 、得 ら れ る 利 得 の 組 み 合 わ せ は(0, δ)と な る 。こ の 事 実 を 前 提 に し て 、分 割(x, 1 − x)に 対 す るbの 最 適 反 応 を 考 え る 。そ れ は1 − x < δの 場 合 に 拒 否 、1 − x = δの 場 合 に 受 諾 ま た は 拒 否 、1 − x > δの
†質問や間違いがありましたら、micro09komaba(at)gmail.com までご連絡ください。
場合には受諾となる。この事実を前提にして、aにとって最適なxを考える。それは、bが受諾するという 条 件 下 で 一 番 高 いx= 1 − δを 選 択 す る こ と で あ る 。な ぜ な らbが 拒 否 し て し ま う よ う な 提 示 で あ れ ば 次 の サ ブ ゲ ー ム の 結 果 よ りaの 利 得 は0と な っ て し ま う 。彼 ら の 戦 略 の 組 を ((xの 提 示 額,提 示 額yに 対 し てどうするか),(提示額xに対してどうするか,yの提示額))といった具合に書くと、サブゲーム完全均衡は ((1 − δ,必ず受諾), (1 − x ≥ δなら受諾、そうでなければ拒否,0))となる。
問題3
提示された賃金(w1, w2)をみて労働者が応募する段階のサブゲームは以下のような利得行列で表わされる。
i\j 1 2
1 12w1,12w1 w1, w2
2 w2, w1 12w2,12w2
i, jが企業1に応募する確率をそれぞれpi, pjと書き、w1, w2の大小関係に関して場合分けして考える。 case(i): w1= w2= 0の場合、労働者にとってどれも無差別であり、すべての(pi, pj)の組み合わせがサブ ゲームにおいて均衡となっている。
case(ii): w1>2w2もしくはw1> w2= 0の場合、どちらの労働者も企業1に応募することが支配戦略と なるため、(1, 1)がサブゲームにおける均衡。同様に、w2>2w1もしくはw2> w1= 0の場合には企業2に 応募することが支配戦略となり、(0, 0)となる。
case(iii): 2w2≥ w1≥ 12w2>0の場合、このサブゲームについて均衡が3つ存在することをみる。1純粋戦 略の範囲では(1, 0)と(0, 1)とがある。もうひとつの混合戦略均衡を求める。iがそれぞれ企業1と企業2に 応募することによる期待利得はp21
2w1+ (1 − p2)w1とp2w2+ (1 − p2) 1
2w2である。iが混合戦略をとるとい
うことはこの両者の期待利得が無差別である必要があった。よってp2=2w1−w2
w1+w2。jの意思決定に関しても同 様である。よってp1= p2=2w1−w2
w1+w2 という確率でそれぞれ1に応募する。
次に企業側の意思決定を考える。まず、賃金をyより高く提示することは彼の期待利得がマイナスであるた め、均衡にならないことがわかる。その点に留意して、場合分けを行って彼らの戦略の組(w1, w2)について 考える。
case (i):w1= w2= 0の場合。
• 次のサブゲームで(1, 0)もしくは(0, 1)がとられる場合。
両企業の利得はともにy。ここでどちらかの企業がw′へと賃金引き上げを行うとcase(ii)のサブゲー ムにうつるが、引き上げた企業の利得はy− w′となる。よってそのようなインセンティブはないため、 この(w1, w2)は均衡戦略である。
• 次のサブゲームで(1, 0)や(0, 1)ではない戦略の組になる場合。
このとき、必ずどちらかの企業は労働者を雇用できない可能性があるので、その企業の期待利得は厳密 にyより小さくなっている。その企業はǫ賃金を引き上げることでcase(ii)のサブゲームにうつり、彼 の利得をy− ǫとすることができる。ǫはいくら小さくても良いので、必ず利得の改善ができる。よっ てこの(w1, w2)は均衡戦略とはならない。
1
コーディネーションゲームと呼ばれるゲームのクラスに属していることになる。
case(ii): w1>2w2or w1> w2= 0 or w2>2w1 or w2> w1= 0の場合。
このとき、賃金が低いほうの企業は労働者を雇用できないので期待利得はゼロである。その企業は賃金を十 分引き上げることでcase (iii)のサブゲームへうつることができる。そこではサブゲームで純粋戦略均衡/混合 戦略均衡どちらがとられたとしても、労働者を正の確率で雇用できるので期待利得は正である。よって利得を 改善できるので、この(w1, w2)は均衡戦略とはならない。
case(iii): 2w2≥ w1≥ 12w2>0の場合。上でみたように労働者のサブゲームで均衡は複数あった。よって それぞれについて考える。
• 次のサブゲームで純粋戦略均衡(1, 0)もしくは(0, 1)がとられる場合。
両 企 業 の 利 得 は そ れ ぞ れy− w1,y − w2で あ る 。こ こ で 企 業1が 賃 金 をw′1に 変 更 し た 場 合 に 利 得 を改善できるかどうかインセンティブをチェックする。(企業2についても同様にチェックできる。) w2>0なのでcase(i)にうつることはない。
– case(ii)のサブゲームにうつる場合。
ここでw2 >2w′1 or w2> w1′ = 0となるようにw1′ を設定した時、彼の期待利得はゼロになり下 がってしまう。一方w1′ >2w2 と賃金を引き上げた時、彼の期待利得はy− w′1と下がってしまう。 よって賃金変更のインセンティブはない。
– case(iii)の中での別のサブゲームにうつり、そこで純粋戦略均衡がとられる場合。
彼の期待利得はy− w1′ となる。ここでw′1< w1の場合、利得が改善できるので賃金を変更するイ ンセンティブを持つ。よって、w′1< w1を満たすような(w1′, w2)に続くサブゲームで純粋戦略均 衡がとられているのであれば、この(w1, w2)は均衡戦略にならない。
– case(iii)の中での別のサブゲームにうつり、そこで混合戦略均衡がとられる場合。
このサブゲームで「少なくともどちらかの労働者が応募してくる確率」にy− w′1をかけたものが 彼の期待利得となる。つまり
3w2(y−w1′)(2w1′−w2)
(w1′+w2)2 。よって
3w2(y−w′1)(2w′1−w2)
(w′1+w2)2 > y− w1を満たす
ような(w1′, w2)に続くサブゲームで混合戦略均衡がとられる場合には、利得改善できるのでこの (w1, w2)は均衡戦略にならない。
• 次のサブゲームで混合戦略均衡(
2w1−w2 w1+w2,
2w1−w2
w1+w2 )がとられる場合。
両企業の利得はそれぞれ
3w2(y−w1)(2w1−w2)
(w1+w2)2 ,
3w1(y−w2)(2w2−w1)
(w1+w2)2 である。ここで企業1が賃金をw
′1に
変更した場合に利得を改善できるかどうかインセンティブをチェックする。(企業2についても同様に チェックできる。)
– case(ii)のサブゲームにうつる場合。
ここでw2 >2w1′ or w2 > w′1= 0のように賃金を引き下げた時、彼の期待利得はゼロになり下 がってしまう。一方w′1 >2w2 と賃金を引き上げた時、彼の期待利得はy− w1′ となる。よって y− w1′ > 3w2(y−w(w 1)(2w1−w2)
1+w2)2 を満たすw
′1∈ (2w2, y)が存在する場合、この(w1, w2)は均衡戦略
にならない。
– case(iii)の中での別のサブゲームにうつり、そこで純粋戦略均衡がとられる場合。
彼の期待利得はy− w1′ となる。よってy− w1′ >
3w2(y−w1)(2w1−w2)
(w1+w2)2 を満たすような(w′1, w2)に
続くサブゲームで純粋戦略均衡がとられる場合、利得を改善できるので、この(w1, w2)は均衡戦 略にならない。
– case(iii)の中での別のサブゲームにうつり、そこで混合戦略均衡がとられる場合。
彼の期待利得は
3w2(y−w′1)(2w′1−w2)
(w′1+w2)2 となる。つまり
3w2(y−w1)(2w1−w2) (w1+w2)2 <
3w2(y−w′1)(2w1′−w2) (w′1+w2)2 を満
たすような(w′1, w2)に続くサブゲームで混合戦略均衡がとられる場合、この(w1, w2)は均衡戦略 にならない。
以 上 を 踏 ま え て 、サ ブ ゲ ー ム 完 全 均 衡 の 集 合 を 書 き だ す 。プ レ イ ヤ ー た ち の 戦 略 の 組 み 合 わ せ を (w1, w2, σi, σj) と 書 く 。こ こ で σi, σj は 提 示 さ れ る 賃 金 の 全 て の 組 み 合 わ せ に 対 し て 企 業 1 に 応 募 す る 確 率 を 割 り 当 て る 関 数 で あ る 。2ま ず case(ii)の サ ブ ゲ ー ム で 確 認 し た よ う に 、労 働 者 i の 戦 略 は σi(w1, w2) = 1, if w1 > 2w2 or w1 > w2 = 0 か つσi(w1, w2) = 0, if w2 > 2w1 or w2 > w1 = 0 を 満 た し て い る 必 要 が あ る 。j も 同 様 で あ る 。ま た case (iii) の サ ブ ゲ ー ム で 確 認 し た よ う に 、 (σi(w1, w2), σj(w1, w2)) ∈ {(1, 0), (0, 1), (2ww1−w2
1+w2 ,
2w1−w2
w1+w2)} if 2w2 ≥ w1 ≥ 1
2w2 も 満 た し て い な く てはならない。これらを満たしている(σi, σj)のすべての集合をΣ∗と書いておく。
case (i)のサブゲームに到達する場合における均衡の集合は
{(0, 0, σi, σj) ∈ {0}2× Σ∗|(0, 0, σi(0, 0), σj(0, 0)) = (0, 0, 0, 1)or(0, 0, 1, 0)}
と書ける。
case (iii)のサブゲームに到達する場合を考える。
まず、そのサブゲームにおいて労働者達が純粋戦略均衡をとる場合をみる。(w1, w2, σi, σj)がサブゲーム 完 全 均 衡 に な る に は 、す べ て のw′1 ∈ [1
2w2, w1)に 対 し て(σi(w1′, w2), σj(w′1, w2)) 6∈ {(0, 1), (1, 0)}か つ 、 すべてのw′2 ∈ [1
2w1, w2)に対して(σi(w1, w
′2), σj(w1, w2′)) 6∈ {(0, 1), (1, 0)}が成り立つ必要があった。さ らに
3w2(y−w′1)(2w1′−w2) (w′
1+w2)2 > y− w1
を満たすすべてのw1′ ∈ [1
2w2,2w2]について(σi(w1′, w2), σj(w′1, w2)) 6= (2ww1−w2
1+w2 ,
2w1−w2
w1+w2 )、そ し て
3w1(y−w′2)(2w′2−w1)
(w1+w′2)2 > y − w2 を 満 た す す べ て のw′2 ∈ [1
2w1,2w1] に つ い て
(σi(w1, w′2), σj(w1, w2′)) 6= (2ww1−w2
1+w2 ,
2w1−w2
w1+w2)が成り立つ必要がある。これらを満たす(w1, w2, σi, σj)のす べての集合をΠpと書く。するとサブゲーム完全均衡の集合は
Πp∩ ((0, y]2× Σ∗)
と書ける。
次に、到達するサブゲームにおいて混合戦略均衡となっている場合をみる。(w1, w2, σi, σj)がサブゲーム完 全均衡になるには、
3w2(y−w1)(2w1−w2)
(w1+w2)2 < y− w1′ を満たすw1′ ∈ (2w2, y)や、
3w1(y−w2)(2w2−w1)
(w1+w2)2 < y− w2′
を 満 た すw′2 ∈ (2w1, y) が 存 在 し て は い け な い 。ま た
3w2(y−w1)(2w1−w2)
(w1+w2)2 < y− w′1 を 満 た す す べ て の w′1 ∈ [12w2,2w2]について(σi(w1′, w2), σj(w′1, w2)) 6∈ {(0, 1), (1, 0)}、そして 3w1(y−w(w 2)(2w2−w1)
1+w2)2 < y− w
2′
を 満 た す す べ て の w2′ ∈ [1
2w1,2w1]に つ い て(σi(w1, w2′), σj(w1, w′2)) 6∈ {(0, 1), (1, 0)}が 成 り 立 つ 必 要 が あ る 。さ ら に
3w2(y−w1)(2w1−w2) (w1+w2)2 <
3w2(y−w′1)(2w′1−w2)
(w′1+w2)2 を 満 た す す べ て の w′1 ∈ [1
2w2,2w2] に つ い て
(σi(w′1, w2), σj(w1′, w2)) 6= (2ww1−w2
1+w2,
2w1−w2
w1+w2 )、そして
3w1(y−w2)(2w2−w1)
(w1+w2)2 <
3w1(y−w′2)(2w′2−w1) (w1+w′
2)2
を満たすす べてのw′2 ∈ [1
2w1,2w1]について(σi(w1, w2′), σj(w1, w′2)) 6= (2ww11+w−w22, 2w1−w2
w1+w2 )が成り立つ必要がある。こ れらを満たす(w1, w2, σi, σj)のすべての集合をΠmと書く。するとサブゲーム完全均衡の集合は
Πm∩ ((0, y]2× Σ∗)
と書ける。
2
それぞれ定義域はR+×R+で値域は[0, 1]である。ここでR+は0以上の実数をさすとする。
[comment]
問題3は答えが煩雑になってしまいましたが、このような問題はテストには出ないと思いますので、考え 方の流れだけおおまかに理解していただければ十分です。煩雑さの一つの要因はcase(iii)のサブゲーム(コー ディネーションゲーム)で均衡が複数ある点です。このように均衡が複数あるという(非決定)問題は経済学/ ゲーム理論的に重要なトピックです。例えば解決策としてはコミュニケーションや進化を用いたものがあり、 興味がある方は先生の『慣習と規範の経済学』9章,11章に当たってみてください。また、ここでは求人と応 募の人数比が等しいのですが、混合戦略均衡上では失業が正の確率で起きることになっています。労働経済学 の一部ではこのようなロジックが使われることもあります。