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9
Sept ember
2014
N0.190
定価500円
この経営者に注目!
﹁ 香 り ﹂ と ﹁ 緑 ﹂ を 組 っ た 人 生
株式会
弼
ジョン 大瀧章雅企 業 は 理 念 の 下 に 統 率 さ れ る
﹁学び﹂と﹁模索﹂の28年
株式会社アルケ通信社 成田晴信氏
若 い 社 員 砦 任 を 持 た せ 、 工 学 と
石山ネジ株式会社 石山朗氏
の 管 理 を 徹 底
擁立電磁雷撃∵
中小企業の明日に向けて、経営の本質に迫るヒューマンドキュメント
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誌 ピ 長 た た て の 山 繭
撮影:寺尾公郊
8
﹃ ア ジ ト ﹄ 完 成 す !
と
めの新工場、
′ ●
その高度な技術と高い信頼性で日本屈指の真空容器製造メーカーに登
り詰めた秋山鉄工株式会社。﹃なり﹄
こそ決して大きくないが、その高邁
な経営理念や高い実績で県下はもと
より、日本中から注目されている。
そしてその注目は、経営者たる秋
山周三氏に集まる。ユニークな経営
手法やその人柄が、多くの人を惹き
付けるからだ。
人は秋山社長を﹃変人﹄ と呼ぶ。
だが、そこには侮蔑的なニュアンス
はまったく含まれない。あるのは人
と違った奇想天外な発想や、思いも
寄らない行動力に対する尊敬の念と
言っていいだろう。 ホームページでご覧になれます︶ で
紹介済みなのでここでは割愛する
が、会社のホームページ上にある動
画などもぜひご覧いただきたい。そ
れが秋山鉄工のすべてではないにせ
よ、注目される理由の一端が垣間見
えるだろう。
前置きが長くなってしまったが、
今回は秋山鉄工の新工場、﹃日本国末
端技術研究所﹄のこけら落としに図々
しくもお邪魔した。
それはなぜか。
一民間人である秋山社長が人材教
育のために私財を投じ、本来は国や
地方自治体などの行政が造らなけれ
ばならない子供たちのための﹃塾﹄
を工場内に併設したからだ。
の面目躍如!
これを
地域ゐ子供たち
会社の未来のた
ここに堂々晃成
秋山鉄工株式会社/社長秋山周三氏
煩わしさもある。年に何回かは他の
利用者と重なって借りられないとい
うこともある。そうなれば別の会場
を都合しなければならない。子供た
ちほぞの活動時間内のことだが、指
導員などは準備や片付け、打ち合わ
せや検討の時間や場所の必要もある。
だから、自分たちが気兼ねなく自由
に使える場所はないかなとなりまし
た。つぶれたコンビニなんかの空き店
舗に声をかけてみだりもしましたが、
これが一丁前に使用料をふっかけて
くる︵笑い︶。それでここを作ったの
です﹂
口で言うのは容易いが、この子供
たちの ﹃アジト﹄ を本当に作ってし い。だから、声高に叫んだところで、
彼らは簡単にこっちを向いてくれな
い。できない。彼らをあてにしても
物事は進まないのです。だからこそ
自分たちでやるしかない。我々はボー
トレースのボートみたいなもので、安
定性には欠けるが、何かあればすぐ
舵が切れますから︵笑い︶﹂
こう事も無げにおっしゃるが、そ
れが凡人にはできないんですよ、秋
山社長!
〇〇
〇
〇
〇
まう人はまずいない。これこ
社長の面目躍如である。
﹁人は私のことを大層におっ
ますが、私からすると、まず
の身近な部分でできることをや
いるにすぎないのです。
が天下国家を論じたところで、
秋山社長は言う。
﹁私が支援している﹃鶴岡少年少
女発明クラブ﹄ は、これまでも少な
からず行政の助けを受けてきました。
鶴岡中央公民館の工作実習室を無
償でお借りしていますし、事務局も
教育委員会の中に設置していただき
面倒を見てもらっているのです。し かし、施設を使う側の立場で言えば、
公共施設ですから必要な工具類など
を置きっぱなしにはできない。複数
回にまたがる作業でも1回1回片付
けて持ち帰らないといけないわけで
す。指導員にしてみても、年間24回
の開催日が決まっているのに、その都
度使用申請を出さなければならない 何かが変わるわけでもない。
だからこそ、自分ができるこ
とをまずやろうと。今回の施
ことだと皆さんお考えになるで 設だって、本来は行政のやる
しょう。しかし、
ろうとしても、彼らはいわば 行政が何かや
ンカー級の大型船舶みたいなも
なので、簡単に方向転換がで
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す べ て は 子 供 た ち と
こ の 国 の 未 来 の た め に
﹃箱﹄はできた。そうなると次は﹃中
身﹄ のことである。
﹁子供たちには立派な社会人になっ
て欲しいと願っています。立派な社
会人の定義は人それぞれいろいろあ
るでしょうが、だからこそ優先順位
をつけて絞り込んでいかなければな
りません。私はそれを4つに絞ってい
ます。﹃挨拶・返事・掃除・感謝﹄ の
4つです。子供のうちにこれをしっか
り身に付けておけば、まず心配はい
りません。今の知識だけの学校教育
じゃダメなんですよ。小さいうちか
ら自らものを考え、手を動かす。そ
ういう下地を作ってやらないと。こ
こはそのための場所ですから﹂
秋山社長の経営方針でもある﹃人
間性の向上﹄。それこそ子供のうちか
ら徹底的に鍛えておけば、どこに出
しても恥ずかしくない立派な社会の
一員が出来上がっていく。
一方その活動は何も児童だけを対
象としない。地元の大学生にも、厳
しくも温かい日が注がれている。
﹁地元の人材育成ということで、東
北公益文科大学にもコミットしてい
ます。﹃社長インターンシップ﹄とい
う形で協力しているのです﹂、
学生が地元企業のトップに密着し、
“ −“−− 高士、∴
∴ 「;
壷
葺き常 襲 亮董 ○ ○ ′
今年11月に開催される「第5回全国少年少女チャレンジ創造コン テスト」(テーマ:からくりパフォーマンスカー)の全国大会に向けて 奮闘する子供たち。小さい頃から自分で考え、手を動かすことで立
派な社会人になるための下地がつくられていく。
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経営トップの考えを学ぶことによっ
て社会人力を磨く﹃社長インターン
シップ﹄。もちろん企業側にもメリッ
トはある。学生に対する企業イメー
ジの向上や、優秀な学生との接点な
どだ。
﹁我が社を、私を知りたいなら住み
込みで来てもらわないと難しい。就
業時間だけが経営者の仕事じゃない
からです。朝起きてから夜寝るまで、
経営者は常に経営者たるべきなんで
すよ。こういう条件ですから、来る
としても男しか来ないだろうと思っ
ていたら、3年連続女性が来ていま
す。今時っほいですね﹂
会社経営の他にも多方面の活躍を
見せる秋山社長。そんな超大ぶりを
間近に見られる学生は、その儀倍に
感謝しなければバチが当たると言う
ものだ。
そ し て 本 業 で は 、
百 年 企 業 を 見 据 え て ⋮ ⋮
社会貢献はもちろん立派なことだ
が、秋山社長の経営者としての本質
はそれ以上に素晴らしい。
まず目を惹くのは独特のユーモア
だろう。例えば、秋山鉄工日本国工
場︵このネーミングもすごいが︶ に
掲げられている﹃日本国入国管理事
務所﹄ の看板などは好例だ。そのセ
ンスが遺憾なく発揮されているのか
新工場のネーミング、﹃日本国末端技
術研究所﹄である。
﹁実は鶴岡には有名な﹃慶應義塾大
学先端生命科学研究所﹄というのか
ありまして。近所に﹃先端研﹄があ
るなら﹃末端研﹄があっても面白い
じゃないか。それが命名のきっかけで
す。同一地域に先端と末端があるん だから、地元のメディアくらいは取
材に来てもいいと思うんですけどね
︵笑い︶。一応﹃研究所﹄と称していま
すが、いささかおこがましいと思って
います。我々の技術は既存のものば
かり。だが、その組み合わせから﹃先
端﹄ の技術は生まれてくる。最先端
などと言っても、それは在来の技術
の積み重ねがあって初めて成立する
ものなんですよね﹂
顧客からも業界関係者からも一目
置かれる技術力の源泉は、その既存
の技術にこそある。
地味な基礎的技術の
土台があればこその
﹃先端﹄。﹃末端﹄の上
この看板は、たまたま訪 れた人の「ここは日本 国なのだから、事務所 は入国管理事務所で すね」という一言にヒン トを得て作ったという。
にしか﹃先端﹄はありえないという
ことだ。
﹁多くの同業者が捨てていく在来技
術を、捨てずに辛抱強く残すことこ
そ大きなアドバンテージとなるんで
す。例えば工作機械は、作業者がハ
ンドルを回すことなどによって操作
する﹃汎用工作機械﹄と、コンピュー
タ等による数値制御で自動運転を行
う﹃NC工作機械﹄ に分けることが
できます。今はどこでもほとんどN
C機ばかりだが、技術・技能の根っ
こは汎用機にこそあるのです。です
が、現実問題としては、これにしが
みついていてはおまんまの食い上げに
なってしまう。だからこそ、みんな
NC機を導入するわけです。うちで
は技術の継承のために併用していま
す。もちろん、数としてはNC機が
多いんですが、汎用機も残さないと
いけない。汎用機を自在に扱える技
術を継承しない限り、NC機頼りの
ところに負けてしまう。値段で勝負 するしかないような新興国とやりあ
うためには、技術の幅や奥行きこそ
武器になるのです﹂
秋山鉄工は値段で勝負しない。他
人様がまねできない技術こそ命なの
だ。
そんな秋山鉄工の﹃肝﹄は溶接技
術である。真空容器をひずまないよ
うに溶接するまさに職人芸とも言え
る技術は決して自動制御の機械では
再現できない。また、秋山鉄工は部
材加工も自社で行う。部材を自ら切
断し、加工するという﹃内製﹄ にこ
だわる。それこそが自社技術の発展
継承だと信じているからだ。
だが、これほどの技術力を誇って
いても、そこは人のやること。ミスは
避けて通れない。水際で防げれば傷
も浅くて済むが、致命傷にもなりか
ねない問題が発生することもまれに
はある。
﹁去年の暮れに、とんでもないミス
をやらかして、大けさに言えば会社
● プロフィール
秋山周三氏(あきやま・しゆうそう)
1950年、山形県鶴岡市生まれ。72年、芝 浦工大卒業。都内の工作機械メーカーに入 社。74年、同社を退職し、秋山鉄工に入社。 91年、創業70周年を機に同社3代目社長に 就任。庄内工業技術振興会会長、福祉法人
「造形保育園」理事長、鶴岡中央工業団地 管理組合副理事長。
●秋山鉄工株式会社
〒997−0011
山形県鶏岡市室田1−10−1 TEL O235−22−1850
ht t p://handr ey.c om/aki yamat ekkou/
存亡の危機に底面してしまいまして
ね。上得意様から即時取引停止、損
害賠償請求となっでもおかしくな
かった。暮れということもあって、こ
ちらから出向いて対処するのも難し
く、結局お客様ご自身が対応してく
ださいました。そうなると社長であ
る私が先方にお伺いして、説明やら
お詫びやらをきちんとしなければな
らないのだが、それも暮れの事情で
できなかった。やっと先方を訪ねたの
は1カ月後のことでした。トラブルは
迅速な対応をしないと、感情的にも
もつれてしまう。必然的に事が大き
くなってしまう。実際、出入り禁止
の一歩手前までいったようですが、お
客様にとっては、我が社の技術や製
品がないと、お客様自身のプロダク
ツが成立しないほど、我が社が先方
に食い込んでいたらしくて、とても取
引停止なんかできるものじゃないと。
だからこそ、もっとお互いが頻繁に出
入りして、いろいろ提案をしてくれ
と言われました。まあ、長いお付き
合いの中、我が社を信頼してくださ
るあまり、立会等にも一切いらっしゃ
らなくなっていた。そういう、いわば
馴れ合いみたいな部分で今回のミス
が生まれてしまった。原因を突き詰
めていけば、我が社に問題があったの
は当然ですが、先方の担当者にも責
任をとらなければならない人が大勢
鶴岡に1台しかないという秋山社長の「自家用 車」。環境に配慮した電気自動車に乗ることか らも、秋山社長のお人柄の一端が垣間見える。
出てしまう。我が社がそこで突っ張っ
てしまうとまさに泥沼。そこで私が、
全責任はうちがとりますと頭を下げ
ました。そういう態度を評価してい
ただきまして、この危機は乗り切る
ことができたのだと感じています﹂
だが、秋山社長は転んでもただで
は起きない。今回のミスの原因をキッ
チリ発明して、今後の製品作りの糧
としている。
﹁確かにミスは痛い。だが、このミ
スで学んだことは大きいものでした。
これからの真空容器作りに取り入れ
ていければ、我が社はこの分野での
正真正銘のトップランナーになれる
でしょう﹂
高い技術と人間力。
秋山鉄工を支えるこの柱は、秋山
社長の日の黒いうちは決して揺らぐ
ことはないだろう。
新工場﹃日本国末端技術研究所﹄
から産み出される新技術や、ここで
生き生きと学ぶ子供たちが、会社を、
そして地域をますます活性化するに
違いない。 園