合 意 と 同 意
佐 藤 馨 一
(会長・北海道大学大学院工学研究科教授)
倭の国、日本は「和」を最も重要な語句とし、聖徳太子のご誓文 である「和をもって尊としとなす」を精神的なバックボーンとして きました。広辞苑で「和して同ぜず」を引くと、「意見が同じなら 他人と協調するが、おもねて妥協することはしない」とあります。 一般に、この格言は付和雷同(自分に一定の見識がなく、他人の説 に訳もなく賛成すること)を戒めたものとして理解されてきました。 このような解釈に対して、立命館大学名誉教授の白川静先生は
「和」の語源から説き起こし、広辞苑の説明を否定しています。すな わち、「和は禾と口に従い、禾は軍門の象であり、口は
U(
さい:
神への誓詞を納める器、祝禱[ しゅくとう])を示す。和は軍門で盟 誓し、和議を行うこと、すなわち降服の儀礼となる。したがって和平 の意となる」と述べています(字統より)。
「君子は和して同ぜず」とは、「君子はたとえ軍門に下り、降服の 儀礼をとることはあっても、勝者に対して一線を画し、同化はしな
い」が本意となります。アメリカ軍に破れたイラク国民の心情は、まさに「和して同ぜず」であ ろうと思います。
これに対し太平洋戦争に敗れた日本は、アメリカと「和して同じ」ました。「漢字を廃止せよ」 と 迫 っ た ア メ リ カ の 意 向 を 受 け、 日 本 政 府 は 当 用 漢 字( 現 在 の 常 用 漢 字 ) と し て1850字 の み を使用するという漢字制限を断行しました。
漢字の素養を失った現代の人々は、「合意」と「同意」の違いが理解できなくなってしまいました。
「 合 」 は 祝 禱 の 器 に 蓋 を す る こ と で あ り、 約 定 が 成 り、 こ れ を 載 書 と し て 祝 禱 の 器 に 収 め る こ と を 示 し ま す。 こ こ か ら 契 約、 盟 誓 の 成 る こ と を 言 い ま す。 一 方、「 同 」 は 祓 い 清 め る こ と に よ っ て一体になることを言い、その儀礼の参加者が合一することを意味します。
合意とは、反対意見を持つ人がいる場合、十分な話し合いをし、その上で多数決等によって結 論を出す行為です。これに対し同意は、反対意見がある場合に全員一致の結論を得るまで話し合 いをし、行動しません。
平成17年度開催の北海道都市問題会議において、小林好宏先生は都市計画行政におけるパタ ーナリズムについて基調講演をされました。その中で地方自治体の長、いわゆる首長さんの個性、
200 6
北海道都市地域学会
ニュースレター
第1号
TOPICS
★第 44 回研究発表会開催のお知らせ
★会員名簿の取り扱いなどについて
詳細は Information ページで!
自己主張をする重要性を指摘しました。住民との「同意」に捕らわれすぎると、「反対者 が一人でもいる限り、私は橋を造りません」と言った元都知事の過ちを繰り返すことに なります。マスコミはこの言葉に続く、「もし敵が攻めてきたときには川を徒歩で渡るこ とを覚悟の上で」、を割愛して報道してきました。
し か し パ タ ー ナ リ ズ ム が 行 き 過 ぎ る と、 今 日 の 小 泉 首 相 の よ う に な り ま す。 小 泉 首 相 はブッシュ大統領に「同じ」、大量破壊兵器が発見されなかったイラクに自衛隊を派遣し、 科学的プロセスを省略してアメリカ産牛肉の輸入を解禁しました。
「組織の長」の振る舞いは重要であり、しかも難しいものがあります。それを十分理解 し た 上 で、2006~2007年 の 北 海 道 都 市 地 域 学 会 の 会 長 に 指 名 さ れ た こ と を 重 く 受 け止めます。会長職は私にとって極めて名誉なことであり、全力を尽くして学会の発展 のために貢献します。しかし学会運営は「合意」ではなく、「同意」をもって行うことを 約束します。なぜならば、学会は権力機構ではなく、「同学の志」の集まりであるからです。
学会員の皆様のご支援とご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。
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地 域 社 会 の 再 構 築 に 向 け て
― コ ミ ュ ニ テ ィ F M 研 究 の 意 義 ― 北郷 裕美
(札幌学院大学 地域社会マネジメント研究センター)
高 度 経 済 成 長 と い う20世 紀 を 象 徴 す る 枠 組 み の 構 造 的 な 限 界 が 顕 在 化 し た 現 在、 新 し い 社 会 の あ り 方( グ ラ ン ド デ ザ イ ン ) が 問 わ れ て お り、 そ の 鍵 を 握 る 地 域 社 会 の 再 構 築( 再 生 ) は 急 務 と い え る。 そ の た め に、 持 続 的 発 展 が 可 能 な 生 活 圏 と し て 自 立( 自 律 ) し う る 地 域 社 会 シ ス テ ム を い か に 構 築 す る べ き か。 地 域 と 言 う 足 元 を し っ か り と 見 据 え た 理 論 的・ 実 践 的 研 究 が 求 め ら れ て い る。 「 地 域 再 生 」、「 ま ち づ く り 」 と 声 高 に 言 わ れ て い る が、 実 際、 地 域 に は 各 々 有 数 の 資 源 や ソ ー シ ャ ル キ ャ ピ タ ル が 潜 在 的 に 存 在 し、 そ の 資 源 の 再 活 用 な し に 地 域 の 再 生 は あ り 得 な い と 考 え る。 そ の た め に は、 地 域 と し て 自 律 し た 社 会、 文 字 通 り「 地 域 社 会 」 を 創 り 上 げ る こ と が 必 要 と な る。 即 ち「 地 域 」 か ら、 政 治 的・ 経 済 的・ 文 化 的 に「自律」した「地域社会」を、地域住民(生活者)自らが主体となり創り上げること が必要となる。
その重要な要件の一つとして、地域社会固有のコミュニケーションを再構築する必要 が あ る と 考 え る。 私 は、 こ の 担 い 手 と し て 昨 今 急 速 に 数 を 増 す「 コ ミ ュ ニ テ ィFM」 に 着 目 し、 そ の 役 割 を 再 定 義 し て み よ う と 考 え 研 究 し て い る 立 場 で あ る。 コ ミ ュ ニ テ ィ FMとは、市町村の一部の地域において、地域に密着した情報を提供することを目的に、 1992年 に 制 度 化 さ れ た 超 短 波 放 送(FM) の こ と で あ る。 開 局 に 際 し て は 総 務 大 臣 の 免許を受けることが必要であり、所謂ミニFM放送とは全く別のものである。一般的な 評価として「地域密着」「住民参加」「防災」型メディアとされる。それは電波的限界性
を 特 徴 と し て い る が、 こ の 事 実 を 積 極 的 に 評 価 す る こ と に よ り、 地 域 社 会 固 有 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル と し て 設 定 す る こ と が で き る。 地 域 社 会 に 根 ざ す 事 を 前 提 に 成 立 す るコミュニティFMは、「地域」から「地域社会」へ転換する役割を担う力を備えている と考えるところから研究はスタートしている。
私 は、 地 域 住 民、 地 域 の 生 活 空 間 を 繋 ぐ こ と で、 初 め て 地 域 社 会 再 構 築 の 道 が 開 け る という視点に立ち、今、コミュニティFMがどのような情報を発信することが可能なのか、 繋 ぐ ツ ー ル と し て は ど の よ う な 役 割 を 担 え る の か、 と い う 課 題 を 明 ら か に す る た め に 調 査を行っている。これは「地域」から「地域社会化」に伴う、「新しい公共性」の調査で も あ る。 こ の こ と は、 電 波 的・ 空 間 的 限 界 性 つ ま り、 あ る 一 定 の 範 囲 内 か ら の 情 報 の 掘 り 起 こ し と、 そ の 範 囲 内 で の 生 活 者 に 対 す る 情 報 発 信 は、 と も に 顔 の 見 え る 関 係 を 前 提 と し て お り、 コ ミ ュ ニ テ ィFM自 ら が 生 活 者 の 視 点 を 持 ち、 地 域 社 会 で の 情 報 の 受・ 発 信 の「 場 」 と し て 存 在 す る 事 を 意 味 す る。 そ の 上 で コ ミ ュ ニ テ ィFMは「 地 域 社 会 」 の 枠内に確固として存在する地域メディアとして位置づけられる。
コ ミ ュ ニ テ ィFMは、 地 域 生 活 者 自 ら が、 制 作 に 参 加 す る こ と は も ち ろ ん の こ と、 パ ー ソ ナ リ テ ィ ー と し て 参 加 す る こ と も あ る。 つ ま り、 身 近 な 生 活 の 情 報 を 生 活 者 自 身 が 発信することにより、「情報のキャッチボール」という要素が強いことが特徴である。こ の こ と は、 一 方 通 行 の 情 報 発 信 で は な く、 同 時 に 受 信 す る と い う 性 格 を 併 せ 持 つ も の で あり、地域社会のコミュニケーションツールとしての役割を担える要素である。同時に、 住 民 参 加 型 を 特 徴 と す る コ ミ ュ ニ テ ィFMは、 生 活 者 の 相 互 関 係 を 再 構 築 す る「 空 間 」 も提供している。
こ の よ う に 私 は、 コ ミ ュ ニ テ ィFMを 地 域 内 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 再 構 築 ツ ー ル と し て 位 置 づ け る 研 究 を 通 し て、 地 域 再 生 の た め の 新 た な 固 有 の マ ネ ジ メ ン ト 論 を 構 築 す る ことを目標に、日々活動している。
FM くしろ(釧路市):市内の華やかな大手商業施設の 2 階のフロアに放送局を構えている。 スタジオから階下の様子も見える
北海道都市地域学会の今年度の事業計画・ホーム ページなどについてお知らせします。
1.第 44 回研究発表会のお知らせ
今年も北海道都市地域学会の研究活動の一環として、第 44 回研究発表会を下記の通り開催いたします。 ぜひご参加くださいますようご案内申し上げます。
・日時:2006 年8月 25 日(金) 14:30 ∼ 17:40 (終了後、18:00 から懇親会が行われます)
・場所:北海道大学言語文化部 105 室
(地下鉄北 18 条駅より徒歩7分。場所は下の地図でご確認ください)
2.会員名簿の取り扱いと会員の紹介について
これまで『北海道都市』の巻末に会員名簿を掲載してまいりましたが、個人情報保護の観点から、 掲載の可否について目下理事会で検討中です。名簿の取り扱いについて成案が得られ次第、皆様に お知らせいたしますので、よろしくご理解のほどお願いいたします。
また、身近に当学会に関心をお持ちの方がおられましたなら、是非ご紹介ください。
3.学会事務局連絡先
〒 062-8520 札幌市豊平区西岡3条7丁目3−1
札幌大学女子短期大学部経営学科小山研究室内 北海道都市地域学会事務局(庶務担当 小山 茂)
TEL 011-852-9342(直通) E-mail:[email protected] URL: http://wwwsoc.nii.ac.jp/haus/index.html
(7月 31 日発行)