-第6回 企業行動の理論つづき- 菅 史彦
内閣府 経済社会総合研究所
復習:競争市場の理論
ある財の価格と数量が市場においてどのように決定されるのかを 考えるために、1つの財の市場を考える。
消費者・生産者は価格受容者(プライステイカー) 右下がりの市場需要曲線
右上がりの市場供給曲線
需要曲線と供給曲線の交点(=均衡)で価格と生産・消費量 が決まる。
さらに余剰分析などを通じて、政策が与える影響を分析すること ができる。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:生産者の理論
競争市場のモデルでは、供給曲線も所与として扱われていた。
→財の価格や賃金が与えられた時、どのようにして生産量を 決定するのかという問題は捨象されていた。
制度・政策をデザインすることを考えると、制約条件のもと での生産者の意思決定の問題をモデルに組み込む必要がある。 与えられた価格のもとで、利潤を最大化するために、企業が 生産への投入物と生産量を決定するプロセスをモデル化する。 まずは生産要素が一財のケースで考え、二財のケースに拡張 する。
復習:生産関数
生産関数f(.) は、資源(L)の投入と生産物yの産出の関係を表す。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:利潤最大化
生産者の問題は、以下のように定式化される: maxL
≡pf(L) −wL
限界生産性が逓減してゆくのであれば、最適解L∗が存在し、 pf′(L∗) = w
が成立する。
これは、もう一人雇うことによって得られる追加的な収入 pf′(L)=限界収入 (Marginal Revenue)が、もう一人雇うこと の追加的なコストw=限界費用 (Marginal Cost)に等しくな るところまでLを増やすということ。
復習:生産関数と費用関数
生産関数から費用関数を導出する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:生産関数と費用関数
生産関数から費用関数を導出する:
復習:生産関数と費用関数
生産関数から費用関数を導出する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:生産関数と費用関数
生産関数から費用関数を導出する:
復習:生産関数と費用関数
生産関数から費用関数を導出する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:生産関数と費用関数
生産関数から費用関数を導出する:
復習:生産関数と費用関数
生産関数から費用関数を導出する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:生産関数と費用関数
生産関数から費用関数を導出する:
復習:平均費用と限界費用
製品一単位あたりの生産コストC(y)/yが平均費用:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:平均費用と限界費用
もう一単位生産するのにかかる追加的なコストC′(y)が限界費用:
復習:平均費用と限界費用
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:平均費用と限界費用
復習:平均費用と限界費用
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:平均費用と限界費用
復習:平均費用と限界費用
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:平均費用と限界費用
復習:供給曲線の導出
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:供給曲線の導出
復習:供給曲線の導出
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:生産要素が2つの生産可能性集合
図で見ると…
出典:神取道宏『ミクロ経済学の力』
復習:等量線の導入
生産可能性集合から等量線を導出する。
出典:神取道宏『ミクロ経済学の力』
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:等量線の形状
等量線は原点に向かって凸になっている場合が多そう。
復習:等費用線
等費用線は直線で描かれる。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:利潤最大化
ある費用水準Cのもとで利潤最大化する:
復習:利潤最大化
ある費用水準Cのもとで利潤最大化する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:費用最小化
あるいは、ある生産量yのもとで費用最小化する:
復習:費用最小化
あるいは、ある生産量yのもとで費用最小化する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
復習:利潤最大化
ある費用水準Cのもとで利潤最大化するにしても、ある生産 量yのもとで費用最小化するにしても、等量線と等費用線が 接するLとK の組み合わせで生産が行われる。
すなわち、生産者が最適化しているならば、 fL
fK = w
r が成立している。
これは
fL w =
fK r
とも書ける。すなわち、労働者に支払われた最後の1円と、 機械に支払われたレンタル料の最後の1円が生み出す生産量 が等しいということ。
復習:利潤最大化の条件が意味するもの
要素価格の比率(w/r)は、限界生産性の比率(fL/fK)に等 しいということ。
資本(機械)がたくさんあって、その割に労働者が少ないよ うな国(先進国)では、fK が小さく、fLは大きくなるので、 w/rは大きくなる。
逆に、人はたくさんいるが、その割に資本(機械)が少ない ような国(途上国)では、fK が大きく、fLは小さくなるので、 w/rは小さくなる。
これは現実に傾向として観察される。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
より一般化したモデル
今まで生産要素は2つまでだったが、生産要素がN個のケー スを考える。
生産の投入も産出も、まとめて生産計画で表す:
✓ 生産計画 ✏
y = (y1,y2, . . . ,yN)
ただし、yk(1 ≤k ≤N)が正なら産出、負なら投入
✒ ✑
生産計画の例
y =(ガソリン, 重油, 原油)とし、
原油 20 リットルからガソリン 10 リットルと重油 5 リットル を生産するとする。
この時、生産計画は
y = (10, 5, −20) と表される。
ちなみに、ガソリン、重油、原油の価格をそれぞれp1、p2、 p3とおくと、利潤は、
π =p1×10+p2×5+p3×(−20) で与えられる。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
最適生産計画
これを一般化すると、生産計画y = (y1, . . . ,yN)′と各財の価 格ベクトルp = (p1, . . . ,pN)′が与えられた時、利潤 π は π =p′yで与えられる。
投入する生産要素が複数あるように、生産される財も複数 あってよい。
生産関数の代わりに、生産可能性集合を考える。生産可能性 集合Yは、企業が実行できる生産計画y全体の集合。 このとき最適生産計画は以下のように表すことができる:
maxy p
′y s.t. y ∈Y
最適生産計画の性質
以上のように定義された最適生産計画の性質を考える。 今までは、
生産可能性集合が凸集合である。
財の量は連続的に変化させることができる。 生産関数は微分できる。
という仮定を置いて分析してきたが、このような仮定を置か なくても言えることを考えてみる。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
参考:凸な生産可能性集合
出典:神取道宏『ミクロ経済学の力』
最適生産計画の性質
2つの価格ベクトルp0、p1(p0 ,p1)を考える。
p0のもとでの最適生産計画をy0、p1のもとでの最適生産計 画をy1とする。
このとき、
p1y1 ≥p1y0 (1) p0y1 ≤p0y0 (2) が成立。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
最適生産計画の性質
(1)式から (2) 式を引くと、
p1y1−p0y1 ≥p1y0−p0y0 (3) (p1−p0)y1 ≥(p1−p0)y0 (4) となる。
右辺を左辺に移項すると、
(p1−p0)(y1−y0) ≥ 0 (5) が得られる。
最適生産計画の性質
(5)式を書き下すと、
(p11−p10)(y11−y10) + · · · + (pN1 −pN0)(yN1−yN0) ≥ 0 となる。
ここで、pi1=p0i fori ,k とし、第k 財のみp1k ,pk0とする。 このとき、以下が成立する:
(pk1−pk0)(yk1−yk0) ≥ 0 (6)
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
最適生産計画の性質
いまpk1>pk0とする。(6) 式が意味するのは、
第k財が生産物(yk > 0)なら、第kの価格が上昇すれば必 ずその財の生産量が増大するということ。
すなわち、供給曲線は必ず右上がりである。
第k財が投入物(yk < 0)なら、第kの価格が上昇すれば必 ずその財の投入量が減少するということ(供給法則)。 すなわち、x軸に生産要素kの需要量、y軸に生産要素kの価 格をとった要素需要曲線は、必ず右下がりであるということ
(要素需要法則)。
供給曲線と要素需要曲線
図で見ると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
独占市場
これまでは、企業が無数に存在し、個々の企業が市場の価格 に直接影響を与えることができない(=プライステイカー) という仮定のもとで分析してきた。
企業が1社しかないケースを考える。
1社しかないので、プライステイカーの仮定は維持できない。 自由に価格を決められるので、企業が生産量yを決めたら、 それを売り切ることができる価格に設定すれば良い。
すなわち、需要曲線が与えられて、企業が生産量yを決めれ ば、価格pは自動的に決まる。
独占的企業
生産者が一人(一社)なら、生産者が生産量を決めれば、需要曲 線から価格が決まる。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
独占的企業
生産者が一人(一社)なら、生産者が生産量を決めれば、需要曲 線から価格が決まる。
独占的企業
生産者が一人(一社)なら、生産者が生産量を決めれば、需要曲 線から価格が決まる。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
独占的企業
生産者が一人(一社)なら、生産者が生産量を決めれば、需要曲 線から価格が決まる。
独占的企業
生産者が一人(一社)なら、生産者が生産量を決めれば、需要曲 線から価格が決まる。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
独占企業の利潤最大化
競争的市場では、利潤最大化条件はpf′(L) =wもしくは p =C′(y)で与えられる。これは限界収入が限界費用に等し い(MR =MC)ことを意味する。
独占企業でも利潤最大化条件MR =MCは成立するが、pは yの関数になっている。
簡単にするため、需要曲線が線形で、p= α − βydで与えられ るとする。
この時、収入は (α − βy)yで与えられる。
なので、限界収入MRは、α − 2βyとなり、MR =MCとなる ようにyが決まる。
独占企業による生産
図で見ると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
独占企業による生産
図で見ると…
独占企業による生産
図で見ると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
独占企業による生産
図で見ると…
独占企業による生産
図で見ると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
独占企業による生産
図で見ると…
独占企業による生産
さらに余剰分析をすると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
独占企業による生産
さらに余剰分析をすると…
独占企業による生産
さらに余剰分析をすると…
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独占企業による生産
さらに余剰分析をすると…
独占企業による生産
さらに余剰分析をすると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
独占による弊害
競争的な市場よりも供給量は少なく、 消費者が直面する価格は高くなっている。 そのため、
競争的な市場よりも高い価格を払わされている人
競争市場では買えていたのに、独占市場では高くて欲しい物が 買えない人
が存在している。
さらに、死荷重が生じ、経済全体の厚生が損なわれる。 なので、独占は禁止されるべきとされている。
例題1:独占企業による生産
需要曲線がp = 200 − 10yd、供給曲線がp = 50 + 5ysで与えられ ているとする。
市場が競争的な場合、均衡の価格と生産/消費量を求めよ。 競争市場における消費者余剰および生産者余剰を求めよ。 いま、供給者がたった一つの企業であると仮定する。この市 場における均衡の価格と生産/消費量を求めよ。
独占市場における消費者余剰、生産者余剰を求めよ。 死荷重を求めよ。
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原油価格の高騰と価格転嫁
神取道宏『ミクロ経済学の力』より
原油価格が高騰して原材料価格が高騰した時に、
製品(ガソリン)を値上げして負担を消費者に転嫁するのは 大企業か、中小企業か。
一般的なのは、「市場での支配力の強い大企業は価格転嫁でき るが、競争の激しい中小企業はそれができずに困っている」 という考え方。
一方で、「中小企業は余力がないので、価格転嫁せざるを得な いが、大企業はその限りではない」という考え方もある。 どっちが正しいのか?
原油価格の高騰と価格転嫁
MCは一定とする。競争市場(中小企業)の場合:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
原油価格の高騰と価格転嫁
MCは一定とする。競争市場(中小企業)の場合:
原油価格の高騰と価格転嫁
MCは一定とする。独占市場(大企業)の場合:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
原油価格の高騰と価格転嫁
MCは一定とする。独占市場(大企業)の場合:
原油価格の高騰と価格転嫁
独占市場(大企業)のほうが、価格の上昇幅が小さく見える。 このことを線形のケースで確認してみる。
需要曲線をp= α − βydとすると、限界収入曲線は p = α − 2βyd。
供給曲線はp=MCなので、独占市場における生産/消費量 はy = α/2β −MC/2β で与えられる。
これを需要曲線に代入すれば、p = α/2 +MC/2 を得る。 すなわち、独占市場では MC の上昇分の半分しか価格には現 れない。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
自然独占と価格規制
規模が大きいほどコストが逓減する(収穫逓増)ケースだと、 最初にたくさん生産し始めた企業による独占が自然に起こっ てしまう。
例えば固定費用が大きいと、たくさん生産するほどコストが 回収できるので、独占状態になりやすい。
このように、巨大な固定費用のために独占状態になっている 産業を自然独占という。
このようなケースでは、独占は許すが価格規制をする政策が 取られることが多い。その理由を考える。
自然独占と価格規制
固定費用が大きいと、自然独占が生じやすい。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
自然独占と価格規制
固定費用が大きいと、自然独占が生じやすい。
自然独占と価格規制
固定費用が大きいと、自然独占が生じやすい。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
自然独占と価格規制
固定費用が大きいと、自然独占が生じやすい。
自然独占と価格規制
かといって独占を許してしまうと…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
自然独占と価格規制
かといって独占を許してしまうと…
自然独占と価格規制
かといって独占を許してしまうと…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
自然独占と価格規制
かといって独占を許してしまうと…
自然独占と価格規制
かといって独占を許してしまうと…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
自然独占と価格規制
かといって独占を許してしまうと…
自然独占と価格規制
次善の策として、平均費用と需要曲線の交点における価格を上限 として設定する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
自然独占と価格規制
次善の策として、平均費用と需要曲線の交点における価格を上限 として設定する:
自然独占と価格規制
次善の策として、平均費用と需要曲線の交点における価格を上限 として設定する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎
自然独占と価格規制
次善の策として、平均費用と需要曲線の交点における価格を上限 として設定する: