• 検索結果がありません。

寝装用織物の快適性評価技術に関する研究 あいち産業科学技術総合センター|研究成果|研究報告書

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "寝装用織物の快適性評価技術に関する研究 あいち産業科学技術総合センター|研究成果|研究報告書"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1三河繊維技術センター 製品開発室

研 究 論 文

寝 装 用 織 物 の 快 適 性 評 価 技 術 に 関 す る 研 究

池 上 大 輔

*1

、 平 石 直 子

*1

Study on

Evaluation Technology

for Comfort

of Fabric for Nightclothes

Daisuke IKEGAMI

*1

and Naoko HIRAISHI

*1

Mikawa Textile Research Center* 1

綿 織 物 、 キ ュ プ ラ 織 物 を 作 製 、 収 集 し て 、 こ れ ら の 表 面 特 性(摩 擦 係 数 、 表 面 粗 さ)、 及 び 接 触 冷 温 感 の 物 性 評 価 試 験 を 実 施 し た 。 ま た 、 織 物 の 手 触 り と 寝 心 地 に 関 す る 官 能 評 価 試 験 、 及 び 脳 波 測 定 を 実 施 し て 、 相 関 性 に つ い て 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 脳 波 と SD 法 に よ る 寝 心 地 評 価 と の 間 に 相 関 性 が 認 め ら れ た 。 ま た 、 脳 波 と 摩 擦 係 数 と の 間 に も 相 関 性 が 見 ら れ た 。 脳 波 が 寝 装 用 織 物 の 快 適 性 評 価 の 新 た な 指 標 と な る こ と が 示 唆 さ れ た 。

1 .はじ めに

愛 知 県 三 河 地 域 は 綿 織 物 の 産 地 で あ り 、 寝 装 用 織 物 の 企 画 ・ 製 造 ・ 販 売 を 行 う 企 業 が 多 く 立 地 し て い る 。 し か し 最 近 で は 海 外 か ら の 安 価 な 製 品 の 流 入 が あ り 、 特 に 織 物 業 界 は 危 機 的 状 況 に 陥 っ て い る 。 こ の よ う な 中 で 、 綿 ス フ 織 物 業 界 に お い て は 、 差 別 化 を 図 る た め の 新 製 品 開 発 が 求 め ら れ て い る

1) 。

地 元 企 業 の 製 品 開 発 の 一 助 と し て 、 我 々 は 寝 装 用 織 物 に 求 め ら れ る 「 快 適 性 」 を 備 え た 夏 用 寝 装 織 物 の 開 発 を 行 っ て き た 。 繊 維 製 品 の 快 適 性 は 、 素 材 、 構 成 に よ っ て 決 ま る 温 冷 感 、 風 合 い 、 透 湿 、 通 気 等 の 物 性 値 だ け で は な く 、 人 間 が 使 用 し て 評 価 す る 官 能 評 価 (手 触 り 、 寝 心 地)と 関 連 が 深 い と 考 え ら れ る 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 意 識 調 査 、 物 性 評 価 、 及 び 官 能 評 価 を 解 析 し 、 相 互 の 関 連 性 な ど を 評 価 し た 。

2 .実験 方法

2.1 ア ン ケ ー ト に よ る 意 識 調 査

消 費 者 の 寝 装 用 織 物 の 購 入 時 に 対 す る 意 識 調 査 を 実 施 し た 。 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。

① 調 査 期 間 平 成28年9月 か ら11月 ま で

② 調 査 方 法 留 置 調 査 及 び 集 合 調 査 に よ る ア ン ケ ー ト 選 択 式

③ 回 答 人 数 128名

2.2 寝 装 用 織 物 の 作 製 及 び 収 集

綿 糸 及 び キ ュ プ ラ 糸 を 用 い て 、 織 物 規 格 (密 度 、 組 織)を 検 討 し て 、 試 織 し た 。 ま た 、 地 元 企 業 で 作 製 し た 生 地 及 び 注 目 さ れ て い る サ ン プ ル を 収 集 し て 試 料 と し た (表 1、図 1)。

表 1 作 製 、 収 集 し た 織 物 サ ン プ ル

No 素 材 番 手

密 度 (本/inch)

組 織

た て よ こ

1 キ ュ プ ラ 30/2 60 60 変 化 綾

2 綿 40/1 120 120 平 二 重

3 綿 - - - -

4 綿 30/2 60 60 千 鳥 格 子

2.3 寝 装 用 織 物 の 物 性 評 価 試 験

自 動 化 表 面 試 験 機 (KES FB4)を 用 い て 、 表 面 特 性 の パ ラ メ ー タ で あ る 摩 擦 係 数 (MIU)と 表 面 粗 さ の 平 均 偏 差 (SMD)を 測 定 し た 。 ま た 、 精 密 迅 速 熱 物 性 測 定 装 置 (KES FB7)を 用 い て 、 接 触 冷 感 (Qmax)及 び 保 温 率 を 測 定 し た 。

No.1 No.2

No.3 No.4

図 1 作 製 、 収 集 し た サ ン プ ル の 外 観

(2)

2.4 寝 装 用 織 物 の 官 能 評 価 試 験

各 生 地 の 手 触 り 及 び 実 際 の 寝 心 地 の 官 能 評 価 試 験 を 実 施 し た 。 手 触 り 及 び 寝 心 地 の 官 能 評 価 は SD法 に よ る10項 目 に つ い て5段 階 評 価 で 実 施 し た

2 ) 。 ま た 、 寝 心 地 の 試 験 と し て 、(株)脳 力 開 発 研 究 所 製 ア ル フ ァ テ ッ ク 4S を 使 用 し て表 2の 条 件 で 脳 波 を 測 定 し た 。

表 2 脳 波 測 定 条 件 条 件

布 団

敷 布 団 、 掛 け 布 団 と も に ポ リ エ ス テ ル 製

温 湿 度 20℃ 、65%RH 試 験 時 間 10分

測 定 脳 波 の 種 類

ミ ッ ド ア ル フ ァ(Mα)波

3 .実験 結果及 び考察

3.1 ア ン ケ ー ト に よ る 意 識 調 査

3.1.1 睡 眠 に 関 す る 調 査

睡 眠 に 対 す る 満 足 度 、 改 善 に 向 け た 取 組 状 況 に つ い て 意 識 調 査 を 実 施 し た 。 睡 眠 に つ い て の 満 足 度 を 調 査 し た と こ ろ 、 約 58%が 満 足 、 や や 満 足 し て い る と 回 答 し 、 約42%が や や 不 満 、 不 満 と い う 結 果 と な っ た (図 2)。

次 に 睡 眠 改 善 の た め に 取 り 組 ん で い る こ と に つ い て 調 査 し た と こ ろ 、 睡 眠 時 間 が 約 50%、 特 に な い が 約 16%、 寝 具 選 び が 約 11%の 順 番 と な っ た (図 3)。 こ の こ と か ら 、 睡 眠 改 善 に 向 け て の 寝 具 選 び に 対 す る 位 置 付 け が 低 い こ と が 分 か っ た 。 寝 具 を 開 発 し て 消 費 者 に 上 手 に PR す る こ と に よ り 、 消 費 者 の 寝 具 に 対 す る 意 識 が 向 上 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

3.1.2 寝 具 及 び 寝 装 用 製 品 の 使 用 状 況 に 関 す る 調 査

寝 具 の 使 用 状 況 に 関 す る 意 識 調 査 を 実 施 し た (図 4)。 そ の 結 果 、 約 65%が ベ ッ ド を 、 約 26%が 布 団 を 使 用 し て い る と 回 答 し た 。 ま た 、 約 8%が ベ ッ ド と 布 団 の 両 方 を 使 用 し て い る と 回 答 し た 。 低 反 発 性 な ど の 機 能 性 を 高 め た ベ ッ ド が 開 発 さ れ て お り 、 ベ ッ ド の 使 用 状 況 が 高 く な っ て い る と 考 え ら れ る 。 次 に 、 寝 装 用 製 品 の 使 用 状 況 に つ い て 調 査 を 実 施 し た (図 5)。 シ ー ツ を 使 用 し て い る が 約 40%、 敷 パ ッ ド を 利 用 し て い る が 約 30%、 両 方 使 用 し て い る が 約 28%と い う 結 果 に な っ た 。 こ の 結 果 か ら 、 シ ー ツ 、 敷 パ ッ ド と も に 需 要 が あ る こ と が 確 認 で き た 。

3.1.3 寝 具 購 入 時 に 関 す る 調 査

寝 具 を 購 入 す る 時 に 重 視 し て い る 項 目 に つ い て 調 査 を 実 施 し た (図 6)。 手 触 り 、 素 材 、 デ ザ イ ン 、 色 彩 の 順 番 と な っ た 。 消 費 者 が 寝 具 を 購 入 す る 傾 向 と し て は 、 手 で 触 っ た 感 覚 を 最 も 重 視 し て 、 素 材 や デ ザ イ ン を 見 て 4%

54% 40%

2%

満足 やや満足 やや不満 不満

図 2 睡 眠 に 対 す る 満 足 度

11% 6%

7%

8%

50% 1%

16% 1%

寝具選び 住環境 入浴 運動 睡眠時間 食事 特にない その他

図 3 睡 眠 改 善 の た め に 取 り 組 ん で い る こ と

40%

30% 28%

2%

シーツ 敷パッド 両方 その他

図 5 寝 装 用 製 品 の 使 用 状 況 65% 26%

8% 1%

ベッド 布団 両方 その他

図 4 寝 具 の 使 用 状 況

(3)

購 入 し て い る こ と が 分 か っ た 。 ま た 、 ど の 素 材 が 一 番 好 き か を 調 査 し た と こ ろ 、 綿 が 圧 倒 的 に 多 か っ た (図 7)。 な じ み が あ り 、 柔 ら か さ や 吸 水 性 が 良 い た め で あ る と 考 え ら れ る 。 こ の 結 果 か ら 、 綿 素 材 を 用 い て 手 触 り が 良 い 寝 装 用 製 品 を 開 発 す れ ば 産 地 振 興 に 十 貢 献 で き る こ と が 示 唆 さ れ た 。

3.2 寝 装 用 織 物 の 物 性 評 価 試 験

物 性 評 価 結 果 を 示 す (表 3)。MIUで は 、 あ ま り 差 が 見 ら れ な か っ た が 、SMD は No.2 が 高 い 結 果 と な っ た 。 二 重 織 構 造 の た め 、 表 面 の 凹 凸 が 大 き く な っ た た め と 考 え ら れ る 。 熱 特 性 の パ ラ メ ー タ で あ る Qmax に つ い て は 、 No.1 の 試 料 が 最 も 高 く な っ た 。 こ れ は 素 材 が キ ュ プ ラ で あ る た め と 考 え ら れ る 。 保 温 率 は No.2 が 高 い 結 果 と な っ た 。 二 重 織 構 造 の た め 、 織 物 が 厚 く な っ た た め で あ る と 考 え ら れ る 。

3.3 官 能 評 価 試 験 と 脳 波

3.3.1 SD法 に よ る 官 能 評 価

各 試 料 の 手 触 り 及 び 寝 心 地 の SD法 に よ る 官 能 試 験 を 実 施 し た (図 8 、 図 9)。 や わ ら か さ 、 あ た た か さ 、 軽 さ 、 総 合 評 価 に つ い て は 同 じ 傾 向 が 見 ら れ た 。 し か し 、 な め

ら か さ 、 肌 の な じ み 、 気 持 ち よ さ 、 落 ち 着 き に つ い て は 差 が 見 ら れ た 。 手 触 り に よ る 瞬 間 的 な 評 価 と 一 定 時 間 寝 た 場 合 と で 、 感 覚 的 な 差 が 生 じ た た め と 考 え ら れ る 。 た だ 、 総 合 評 価 に お い て 、 ほ ぼ 同 じ よ う な 傾 向 が 見 ら れ た た め 、 手 触 り を 基 準 と し て 寝 装 用 織 物 の 開 発 す る 優 位 性 は 確 認 す る こ と が で き た 。

0 100 200 300 400 500 600 700

図 7 好 き な 素 材

ポ イ ン ト

0 100 200 300 400 500 600

図 6 寝 具 を 購 入 す る 時 に 重 視 し て い る 項 目

ポ イ ン ト

表 3 物 性 評 価 試 験

No.3は 未 測 定

-2 -1 0 1 2

試料① 試料②

試料③ 試料④

やわらか さ しっとり感

なめらかさ

あたたかさ 軽 さ

ふっくら感 肌 のなじみ

気 持 ち良 い

落 ち着 く

総 合 評 価

図 8 SD法 に よ る 官 能 試 験 結 果 (手 触 り)

図 9 SD法 に よ る 官 能 試 験 結 果 (寝 心 地)

-2 -1 0 1 2

試料① 試料②

試料③ 試料④

やわらか さ しっとり感

なめらかさ あたたかさ

軽 さ

ふっくら感 肌 のなじみ

気 持 ち良 い 落 ち着 く

総 合 評 価

(4)

3.3.2 脳 波 計 測 定

各 種 脳 波 の 種 類 か ら 、 今 回 は リ ラ ッ ク ス し て 理 想 的 な 状 態 時 に 多 く 発 生 す る Mα 波 に 着 目 し て 、Mα と 官 能 評 価 及 び 物 性 評 価 と の 間 の 相 関 解 析 を 実 施 し た (図 1 0、

1 1、1 2、1 3)

3)

。 脳 波 と 手 触 り 、 寝 心 地 は 少 し 相 関 性 が あ り 、 脳 波 と MIU は 相 関 性 が あ る 可 能 性 が 分 か っ た 。 ま た 、 脳 波 と Qmaxは 相 関 性 が 低 い 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 し か し 、 測 定 点 数 が 少 な い こ と か ら 、 今 後 更 な る 検 証 が 必 要 で あ る 。

4 .結び

(1) 寝 装 用 織 物 の 意 識 調 査 を 実 施 し た 。 睡 眠 改 善 の 取 組 や 使 用 状 況 か ら 、 寝 装 用 織 物 を 開 発 す る こ と で 産 地 振 興 に 貢 献 で き る こ と が 示 唆 さ れ た 。

(2) 寝 装 用 織 物 を 作 製 、 収 集 し た 後 、 物 性 評 価 試 験 及 び 官 能 評 価 試 験 を 実 施 し て 相 関 性 を 検 討 し た 。 脳 波 を 測 定 す る こ と に よ り 、 人 が リ ラ ッ ク ス で き て い る か ど う か を 脳 科 学 の 観 点 か ら 検 証 す る 新 た な 評 価 方 法 を 提 案 し た 。 今 後 、 測 定 点 数 を 増 や す な ど し て 、 本 評 価 方 法 の 妥 当 性 を 検 証 す る 必 要 が あ る 。

謝 辞

本 研 究 に あ た り 、 寝 装 用 繊 維 製 品 の 意 識 調 査 並 び に 脳 波 計 測 に 関 す る 技 術 に 関 し て ご 協 力 頂 き ま し た 椙 山 女 学 園 大 学 生 活 環 境 学 部 の 今 井 様 に 厚 く お 礼 申 し 上 げ ま す 。

文 献

1) 平 石 直 子 , 池 上 大 輔 : あ い ち 産 業 科 学 技 術 総 合 セ ン タ ー 研 究 報 告 ,5,156(2016)

2) 西 松 : 最 新 テ キ ス タ イ ル 工 学 Ⅰ ,50(2014), 繊 維 社 3) 脳 力 研 究 開 発 所 ホ ー ム ペ ー ジ

http://www.alphacom.co.jp/

R² = 0.079

0 0.05 0.1 0.15 0.2

0 0.2 0.4 0.6

接 触 冷 感 (

Q

m

a

x

脳 波 (Mα)

図 1 3 脳 波 (Mα ) とQmaxの 相 関 関 係

R² = 0.407

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25

0.00 0.20 0.40 0.60

M

IU

( た て 方 向 )

脳 波 (Mα)

図 1 2 脳 波 (Mα ) とMIUの 相 関 関 係

図 1 1 脳 波 (Mα)と 寝 心 地 の 相 関 関 係

R² = 0.3187

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

0.00 0.20 0.40 0.60

脳 波 (Mα) 寝

心 地 ( 平 均 )

R² = 0.2288

0.0 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5 1.8

0.00 0.20 0.40 0.60

手 触 り ( 平 均 )

脳 波 (Mα)

図 1 0 脳 波 (Mα)と 手 触 り の 相 関 関

参照

関連したドキュメント

金沢大学学際科学実験センター アイソトープ総合研究施設 千葉大学大学院医学研究院

第4 回モニ タリン グ技 術等の 船 舶建造工 程へ の適用 に関す る調査 研究 委員 会開催( レー ザ溶接 技術の 船舶建 造工 程への 適

今回の調査に限って言うと、日本手話、手話言語学基礎・専門、手話言語条例、手話 通訳士 養成プ ログ ラム 、合理 的配慮 とし ての 手話通 訳、こ れら

海洋技術環境学専攻 教 授 委 員 林  昌奎 生産技術研究所 機械・生体系部門 教 授 委 員 歌田 久司 地震研究所 海半球観測研究センター

島根県農業技術センター 技術普及部 農産技術普及グループ 島根県農業技術センター 技術普及部 野菜技術普及グループ 島根県農業技術センター 技術普及部

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

報告は、都内の事業場(病院の場合は病院、自然科学研究所の場合は研究所、血液

無断複製・転載禁止 技術研究組合