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兵庫医科大学|研究シーズ集

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(1)

2 0 1 6 年度

平成29年1月

研究シーズ集

学校法人

兵庫医科大学

(2)

 兵庫医科大学及び兵庫医療大学はそれぞれ開学45年目、10年目に入り、教育・

研究・診療の各分野において 調に発展し、高い評価を受けるようになってまいり

ました。建学の精神の中に「人間への幅の広い科学的理解」があることで判ります

ように、両大学は長年にわたり医学研究における多くの分野で特徴ある成果を多

数あげております。これらの医学研究の成果はたとえ基礎研究であっても、最 的

にはすべて人の健 康や疾 病病態 解明を目指しています。ただ、大学における医学

研究が次のステップに進むためには、言い換えればこれらの成果が最 的に社会

に 元され医学・医療の進歩につながるためには、薬剤や治療方法の開発、改良さ

らに医療機器の開発などに進展する必要があります。そのためにはいわゆる産学

連携活動を活発に行う必要があり、共同研究・共同開発を積極的に推進しなけれ

ばなりません。

 本シーズ集は両大学の研究成果の中で特に知的財産があるなど、独自性が高く

可能性のある研究成果が収 されております。産業界をはじめ社会の 様に広く

ご理解いただき両大学との共同研究・産学連携が進むために、本シーズ集が活用

されれば誠に幸いです。

学校法人兵庫医科大学 研究推進概絹本部長 (兵庫医科大学長)

(3)

 本法人では、兵庫医科大学及び兵庫医療大学の開学以来、医学・医療の領域を中心に基礎分野から臨床・応用部

門に至るまで、幅広く研究が行われています。

 本シーズ集の発行にあたり、本法人におけるこれまでの医学・科学研究の歴史を代表する実績の一端を、年代別

にご紹介します。

(凡例:年代 「研究成果」

【研究代表者】)

1970年代

 ・精子不動化抗体を発見【礒島晋三】

精子不動化抗体の発見(不妊の病理学的解析)

 子どもに恵まれないカップルの中には、女性パートナーの血中に精子に反応

する抗体が検出される場合がある。このような原因による不妊は「抗精子抗体

による免疫性不妊」と呼ばれる。この不妊の機序は、精子が女性生殖器官を通

過する際に、そこに分泌される抗体が精子の運動を障害することにある。抗精

子抗体は健康な女性に検出されることから、この抗体自体には、不妊以外の重

篤な副反応はないものと考えられる。

1980年代

 ・ヘリコバクターピロリ菌の分離培養法の発見【下山 孝】

ヘリコバクターピロリの分離培養法(日本版)の発見

 本邦で最初に

Campylobacter pyroli(当時の名称;現ヘリコバクターピロ

リ)を胃粘膜から分離培養に成功した。

(下山孝教授の指導の下、当時第四内

科教室の井上宏之と大阪環境科学・衛生保険研究所の石井営一博士)

研究 ストリア

(4)

1990年代

 ・インターロイキン18(IL-18)の発見【岡村春樹】

 ・ 遺伝子改変に基づく生体防御システム(TLRシグナル伝達におけるMyD88機能

等の解明)

【審良静男】

 ・ IL-18の生体防御における役割と疾病への関与の解明(自然型アトピー症等の

治療)

【中西憲司】

インターロイキン18(IL-18)の発見

 IL-18は1995年 に 本 学 の 岡 村 春 樹 教 授らに

よってインターフェロンγ(IFN-γ)誘導因子として

発見され、その後自然免疫の賦活をはじめ、基本的

な生命機能の維持に極めて重要な生体内物質とし

ての意義を明らかにしてきた。現在、世界中の研究

者が様々な分野でIL-18に注目した研究を行ってい

る。岡村教授が主宰する腫瘍免疫研究室ではがん

の免疫療法として有効であることを見出し、その成

果の実用化が急がれる。

IL-18の生体防御における役割と疾病への関与の解明(自然型アトピー症等の治療)

 IL-18やIL-12など、免疫炎症関

連サイトカインシグナルが、アレル

ギー疾患や感染症などの疾患に密

接に関わることを明らかにした。

Inflammasome-IL-18 System

Pro‐IL‐18

(5)

2000年代

 ・アスベスト関連疾患(悪性胸膜中皮腫)への総括的取り組み研究班【中野孝司】

 ・生体肝移植・肝臓切除シミュレーター開発【岡本英三・藤元治朗】

 ・侵害受容システムにけるシグナル伝達と疼痛関連分子の制御機構の解明【野口光一】

 ・脳由来虚血誘導性多能性幹細胞の発見と脳神経再生療法の開発【松山知弘】

生体肝移植・肝臓切除シミュレーター開発

 藤元教授らのグループが開発した血流動態に基づいた肝切除シミュレーション法は、系統的治癒切除術式の検討

に有用性が高く、実臨床での活用が現実のものとなった。胆道悪性腫瘍などで活用することで、肝切除術の一層の

安全性向上に資するものと思われる。

 ・子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)兵庫ユニットセンター

  【島 正之】

 ・胃がんリンパ節郭清術(D2術)の有効性証明【笹子三津留】

 ・アレルギー疾患と免疫難病の発症機序の解明と治療技術の開発【善本知広】

 ・ 進化生物学研究:祖先的脊椎動物の脳の複雑な領域化を裏付ける円口類からの証拠

【菅原文昭】

2010年

(6)

C o n t e n t s

No. 部   門 研 究・技 術 概 要 代 表 者 実 施 者

1 解剖学 細胞生物部門 腎機能を支配する自律神経系の作用機序の解明と神経を介した新たな腎疾患治療法の開発 八木 秀司 前田 誠司

2 免疫学 新規生体内Th2細胞の誘導法の確立、ならびに好塩基球あるいはアレルゲン/IgE複合体を標的とした新規アレルギー治療

法の確立 中西 憲司 善本 知広

3 免疫学 自然発症型アトピー性皮膚炎モデルの開発と当該モデル動物の個体レベル並びに細胞レベルでの評価系の構築と、その活用

による治療薬探索研究 中西 憲司 筒井 ひろ子

4 免疫学 トカイン・ケモカイン産生制御による気道過敏症や気管支喘息自然型気管支喘息の発症メカニズム解析に基づく炎症性サイ

の発症機転の解明、あるいは新規薬物治療法の開発 中西 憲司 善本 知広

5 免疫学/先端医学研究所アレルギー疾患研究部門 アレルギー性鼻炎モデル動物の作製方法ならびにその利用 善本 知広 善本 知広

6 免疫学/先端医学研究所アレルギー疾患研究部門 微粒子状物質によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤 善本 知広 善本 知広

7 免疫学/先端医学研究所アレルギー疾患研究部門 術後腸管癒着抑制剤の探索 善本 知広 善本 知広

8 環境予防医学 飲酒に伴う高血圧発症の予測用ペプチドおよびそれを用いた飲酒に伴う高血圧発症の予測方法 若林 一郎 若林 一郎

9 皮膚科学 インターロイキン33遺伝子導入アトピー性皮膚炎モデル動物 山西 清文 山西 清文、今井 康友

10 外科学 肝・胆・膵外科 肝細胞増殖因子(HGF)を軸とした肝臓線維化治療法開発 藤元 治朗 藤元 治朗

11 外科学 肝・胆・膵外科 外科手術後癒着制御分子機構の解析と治療法の開発 藤元 治朗 藤元 治朗

12 外科学 肝・胆・膵外科 外科手術後癒着形成の非侵襲的診断技術の開発 藤元 治朗 藤元 治朗

13 産科婦人科学 抗腫瘍薬剤としてのイトラコナゾールの新規作用機序の解明 柴原 浩章 鍔本 浩志

14 救急・災害医学 携帯式瞳孔径及び対光反射精密測定器による労働環境ストレス評価に関する研究 中尾 博之 中尾 博之

15 病理学 病理診断部門 リボソーム蛋白質発現変異マウスに見られる、性別に依存し老化により自然発症する肝細胞癌と全身性エリテマトーデス症候

群の病態メカニズムの解明と該疾患分子標的治療法の開発 廣田 誠一 西浦 弘志

16 腫瘍免疫制御学 IL-18による免疫制御に根差した免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果増大とその機序に関する研究 岡村 春樹 岡村 春樹

17 先端医学研究所細胞・遺伝子治療部門 ドラッグ・リポジショニングによる革新的膀胱癌新規治療法の開発 後藤 章暢 後藤 章暢、長屋 寿雄

18 先端医学研究所神経再生研究部門 新規脳内在性多能性幹細胞による脳梗塞の再生療法 松山 知弘、中込 隆之 松山 知弘、中込 隆之

19 薬剤部 HIV感染症患者におけるシスタチンC測定についての検討 木村  健 日笠 真一

(7)

1

関連疾患・

研究領域

高血圧、慢性腎障害、腎線維化、腎炎

所属部署名

(医科あるいは医療) 解剖学 細胞生物部門

検索キーワード

自律神経、慢性腎障害、交感神経、腎神経、 腎機能障害

研究代表者名

八木 秀司 (研究内容照会先)

研究実施者

前田 誠司

研究概要

体液浸透圧や血圧を調節する腎臓の機能は、ホルモンによる体液性調節の他に、自律神経系による調節系がある。腎機能を支え る自律神経は主に交感神経であり、動脈収縮や傍糸球体装置でのホルモン分泌を行う。一方で、腎虚血や心停止後の再灌流によ り腎組織が傷害されると、交感神経の機能亢進が起こり、尿細管のアポトーシスや組織線維化が進行するなどの傷害が増悪し、 高血圧や腎機能低下などのさらなる症状悪化につながる。腎神経を切断することで、一時的にこれらの悪循環を改善することが できることが知られているが、腎神経叢での交感神経と感覚神経の分別は困難であり、感覚神経も同時に切除することによる副 作用も懸念されている。本研究はこうした腎臓を支配する交感神経の活動をコントロールするために、腎交感神経の神経節を特 定し、腎臓傷害にともなう交感神経の活動変移をモニタリングする方法の開発を目指す。現在はラットを用い、腎支配交感神経 の神経節への遺伝子導入法の確立に加え、腎神経を温存した独自の腎虚血/再灌流モデルを作成し、腎臓傷害にともなう交感神 経活動の詳細を検討している。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

独自のモデル動物を用いて、腎臓傷害における交感神経系の寄与を評価する方法を開発している。このモデル動物を用い、将来 的にヒトの疾患における交感神経系の寄与を明らかにし、治療法の開発を目指す。

主公表論文

(これまでの研究実績)

前田, 他, 自律神経, 51: 163-167,2014.

Maeda S, et al. J Vet Med Sci 76:763-765,2014.

Jun JG and Maeda S, et al. J Vet Med Sci 76:1493-500,2014. 前田, 他, 兵医大医会誌, 37: 79-88,2012.

Maeda S, et al. Life Sci 89:408-414,2011.

研究成果の活用・実用化

(提案)

腎臓病の初期には自覚症状が少なく治療開始が遅れることが多い。また、病気が進行してからでは治療が困難である。腎臓にお ける初期障害の増悪因子である交感神経活動亢進を抑制することは、腎機能障害の軽減・緩和につながる。この交感神経の活動 性を制御する方法を開発するため、腎臓傷害のモデル動物の開発、及びモデル動物を用いた交感神経系の活動性の評価法の開 発、及び、その評価法を用いた交感神経系の抑制手法の開発を行う。現在は、モデル動物の開発を行っている。

(8)

2

関連疾患・

研究領域

アレルギー性疾患(アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性腸炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、花粉症)

所属部署名

(医科あるいは医療) 兵庫医科大学

検索キーワード

アレルギー、Th2細胞、サイトカイン、好塩基球

研究代表者名

(客員教授・前学長)中西 憲司 (研究内容照会先)

研究実施者

善本 知広

研究概要

好塩基球はアレルゲン/IgE複合体で刺激されると、Th2サイトカインと化学伝達物質を産生する。その結果、アレルギー性炎 症が誘導される。また、アレルゲン/IgE複合体で刺激された好塩基球はFcεR1を介して効率よアレルゲンを細胞内に取り込 み、小ペプチドに分解した後、MHCクラスIIに結合した形で細胞上に提示する。従って、アレルゲン/IgE複合体刺激を受けた好 塩基球はIL-4を産生し、CD80/86分子を発現し、さらにアレルゲン由来小ペプチドを発現する。即ち、好塩基球は抗原提示細 胞として選択的にTh2細胞の分化誘導が出来る(例:OVA/抗OVA-IgE ⇒ OVA特異的Th2細胞誘導)。この方法は内在性好 塩基球が存在する場合に限り、アレルゲン/IgE複合体を投与することで、任意のアレルゲンに特異的なTh2細胞を誘導する普 遍的な方法である。以上の知見は、好塩基球あるいはアレルゲン/IgE複合体を標的とした治療法の確立の重要性を示唆する ものである。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

アレルギー発症とその病態形成についてTh2細胞の病理的意義に焦点を当てた詳細なメカニズム解析から、好塩基球による 抗原取り込みを起点としたナイーブT細胞(CD4+)のTh2細胞への分化誘導と、それに係るパスウェイ(好塩基球、アレルゲン/

IgE複合体)のブロックが重要であることを初めて明らかにした。

主公表論文

(これまでの研究実績)

Yoshimoto T. et. al. Basophils contribute to Th2-IgE responses in vivo via IL-4 production and presentation of peptide-MHC class II complexes to CD4+ T cells.Yoshimoto et. al. Nature Immunology, vol 10, No.7, 2009.

知財情報

特許第5626990号

研究成果の活用・実用化

(提案)

この方法は内在性の好塩基球が存在する場合に限り、アレルゲン/IgE複合体を投与することで、任意のアレルゲンに対する特異 的Th2細胞をアジュバントの使用無しに誘導できる方法を提供する。また、好塩基球あるいはアレルゲン/IgE複合体を標的とし た治療法の確立に有効なシステムを提供する。

新規生体内Th2細胞の誘導法の確立、ならびに

好塩基球あるいはアレルゲン/IgE複合体を

標的とした新規アレルギー治療法の確立

(9)

3

関連疾患・

研究領域

アレルギー性疾患(アトピー性皮膚炎)

所属部署名

(医科あるいは医療) 兵庫医科大学

検索キーワード

アレルギー、サイトカイン、IgE、アトピー

研究代表者名

(客員教授・前学長)中西 憲司 (研究内容照会先)

研究実施者

(名誉教授)筒井 ひろ子

研究概要

IL-1とIL-18はそ の 前 駆 体がcaspase-1によって限 定 分 解されて活 性 型と なって分泌される。私達は皮膚ケラチノサイト特異的にcaspase-1を過剰発現 するトランスジェニックマウス(KCASP1Tg)を作製した。本Tgは構成的にIL-1 とIL-18を産生し、クリーンな状態(SPF)で飼育しているにも関わらず、全Tgが 生後2ヶ月頃からアトピー性皮膚炎(AD)を発症した。この病態はstat6遺伝子 を欠損させてIgE産生を無くしても改善しなかった。IL-1遺伝子を欠損させると ADの発症が遅延する。一方、IL-18遺伝子を欠損させると、ADの病態は消失し た。すなわち、IL-18はアレルゲンやIgEの介在無しに皮膚肥満細胞を直接刺激 してADを発症させることが明らかになった。以上、Th2細胞やIgE産生なしに惹

起される自然型ADモデルとして確立した。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

ADの発症・進展に関する今回の基礎知見の集積は、同症におけるIgEに依存しない活性化経路の制御に関連した治療手段の探 索やその評価に資するものであり、あらたな治療法への足掛かりを提供するもので、これらの情報活用により見出される有効物 質はIgE依存経路のシグナル制御が有効でない症例治療への適応が期待される。

主公表論文

(これまでの研究実績)

Konishi H et.al., Il-18 contributes to the spontaneous development of atopic dermatitis-like inflammatory kin lesion independently of IgE/stat6 under specific pathogen-free conditions. Proc Natl Acad Sci U S A. vol 99, No.17, 2002, Yoshimoto T. et.al., IL-18 induction of IgE: dependence on CD4+ T cells, IL-4 and STAT6. Nature Immunology vol 1, No.2, 2000. Tsutsui H. et al., Induction of allergic inflammation by interleukin-18 in experimental animal models. Immunol. Rev. vol 202, 2002

知財情報

特開2004-41123

研究成果の活用・実用化

(提案)

アトピー性皮膚炎やアレルギー性喘息

外来性カスパーゼ1遺伝子の皮膚特異的過剰発現型DNAのトランスジェニックマウス(KCASP1Tg)が、様々な病原微生物排 除下でも、全てに生後8週頃にADを発症するモデルとして成立し、各種治療法及び薬剤の開発研究に利用できる。

自然発症型アトピー性皮膚炎モデルの開発と当該モデル動物の

個体レベル並びに細胞レベルでの評価系の構築と、その活用に

よる治療薬探索研究

KIL-18Tg:

(10)

4

関連疾患・

研究領域

喘息(気管支喘息)、上気道過敏症

所属部署名

(医科あるいは医療) 兵庫医科大学

検索キーワード

気管支喘息、気道過敏症、自然型アレルギー性 炎症、Th2サイトカイン、ILC2

研究代表者名

(客員教授・前学長)中西 憲司 (研究内容照会先)

研究実施者

善本 知広

研究概要

IL-18はIL-12の共存下でT細胞を刺激してIFNγ産生を誘導する。ところが、IL-2の共存下でT細胞を刺激してIL-4とIL-13の 産生を誘導する。また、IL-3の存在下で肥満細胞と好塩基球を刺激してIL-4とIL-13の産生を誘導する。経鼻的にIL-18あるい はIL-33を投与すると、IL-18はNKT細胞を刺激して、またIL-33はグループII型自然リンパ球(ILC2)を刺激して、これらの細 胞からIL-13を誘導して気管支喘息を誘導する。特に、IL-33は獲得免疫系を欠如するRag2Koマウスでも気管支喘息を誘導 出来る。これらの気管支喘息誘導法は、抗原を用いずに誘導出来ること、また、IL-13の産生細胞が同定されていることから、気 道過敏症や気管支喘息の発症機転の解明、あるいは新規薬物治療法の開発に貢献すると考える。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

気管支喘息など、喘息の発症メカニズムに関して、IL-18とIL-33が、前者はNKT細胞から、後者がILC2からIL-13の産生を誘 導する抗原不在、IgE不在の自然型喘息の誘導という新たな病態モデルを確立して当該疾患治療薬の発見に繋がる方策をはじ めて提示した。

主公表論文

(これまでの研究実績)

Ishikawa Y. et al. Contribution of IL-18-induced innate T cell activation to airway inflammation with mucus hypersecretion and airway hyperresponsiveness. International Immunol., 2006 18:847-855, Kondo Y. et al. Administration of IL-33 induces airway hyperresponsiveness and goblet cell hyperplasia in the lungs in the absence of adaptive immune system. International Immunol., 2008, 20:791-800

知財情報

特許第4485216号

研究成果の活用・実用化

(提案)

先進諸国では年々減少傾向にあるものの、日本では有病者数の割にはなお高頻度に見られる喘息死は、本邦の現行医療課題の ひとつであり、罹患者の重篤化を阻止する手段の発見が、課題解決に不可欠である。本研究成果は、これに応える新たな薬物治 療法の開発に繋がる実用的価値を有するものとしてその応用が期待される。

自然型気管支喘息の発症メカニズム解析に基づく炎症性サイト

カイン・ケモカイン産生制御による気道過敏症や気管支喘息の

発症機転の解明、あるいは新規薬物治療法の開発

Rag2ko

PBS IL-33

(11)

5

関連疾患・

研究領域

アレルギー性鼻炎、花粉症

所属部署名

(医科あるいは医療) 免疫学、先端医学研究所 アレルギー疾患研究部門

検索キーワード

アレルギー性鼻炎、花粉症、IL-33

研究代表者名

善本 知広 (研究内容照会先)

研究実施者

善本 知広

研究概要

アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis :以下AR)患者数は、先進国を中心に増加の一 途にあり、世界中で推定6億人を超えます。本邦では、国民の40%がARに罹患して います。しかし、AR発症機序は未だ不明な点が多く根本的な治療法は確立していませ ん。その最大の理由の1つとして、ヒトの症状と病態をよく反映したARモデルマウス が確立されていないことがあげられます。私たちは、正常BALB/cマウスをブタクサ 花粉(欧米における花粉症の原因アレルゲンの約50%を占めます)と水酸化アルミニ ウムで免疫した後ブタクサ花粉を点鼻すると、1)点鼻後10分間(即時相)の頻回なく しゃみ回数の増加(約80回)、2)点鼻後24時間後(遅発相)の鼻粘膜の組織学的所見 (多数の好酸球/好塩基球浸潤、鼻粘膜の多列上皮化、杯細胞の過形成)、3)ブタク サ花粉特異的血清IgEの上昇を伴った、ヒトのAR症状をミミックしたARモデルマウス を樹立しました。本モデルマウスを用いた解析から、AR発症には、1)花粉刺激によっ て鼻粘膜上皮細胞から産生されるIL-33と、2)鼻粘膜に集積する好塩基球が必須の 因子であることが、それぞれを欠損したマウスを用いた解析で明らかになりました。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

1) 従来からのARモデルマウスは、卵白アルブミンを免疫したマウスに卵白アルブミンを点鼻する方法が用いられてきました。 しかし、この方法ではAR症状は軽微であり、卵白アルブミンによるARはヒトには存在しない。一方、私たちが樹立したARモ デルマウスは花粉アレルゲン特異的で、ヒトのAR症状に極めて酷似した病態を示します。

2) 本ARモデルマウスでは、組織染色によって測定した鼻粘膜に浸潤・集積する好酸球数と、フローサイトメトリーによって解析 したマウス頸部リンパ節細胞中の好酸球数が相関します。組織染色には熟練の技術が必要です。一方、フローサイトメトリー による好酸球(Siglec-F+CCR3細胞)の解析によって、極めて容易にARの遅発相所見(鼻粘膜への好酸球浸潤)を検討す

ることができます。

主公表論文

(これまでの研究実績)

A critical role of IL-33 in experimental allergic rhinitis. J. Allergy Clin. Immunol. 130:184-94, 2012. Yoko Haenuki.

知財情報

発明の名称:アレルギー性鼻炎治療剤のスクリーニング方法およびその利用. 出願番号:特願2011-211159、特開2013-70653

特許番号:5800263号(登録日:2015年9月4日)

研究成果の活用・実用化

(提案)

1) 本ARモデルマウスは臨床的、病理学的にヒトのARに非常に酷似した病態を示し、且つ簡便に作製、解析可能であることか ら、以下の用途に活用できます。

  ① アレルギー性鼻炎治療剤のスクリーニング

  ② アレルギー性鼻炎治療剤(新規開発または既存の薬剤)の効果判定

  ③ アレルギー性鼻炎発症機序(IL-33および好塩基球等)を標的とした新規治療・予防薬の開発

2) 本ARモデルマウスを用いた鼻上皮細胞からのIL-33産生機序とこれを制御する調節分子の解明は、IL-33を標的とした新 規アレルギー治療薬の開発につながます。

関連情報提供 URL

http://www.hyo-med.ac.jp/department/immn/index.html

(12)

6

関連疾患・

研究領域

アレルギー性鼻炎、花粉症、大気汚染、薬剤探索研究

所属部署名

(医科あるいは医療) 免疫学、先端医学研究所 アレルギー疾患研究部門

検索キーワード

アレルギー性鼻炎、花粉症、PM2.5

研究代表者名

善本 知広 (研究内容照会先)

研究実施者

善本 知広

研究概要

近年、従来からのアレルゲンに加え、大気汚染の原因物質とされている浮遊粒子状物質で、直径が2.5μm以下の微粒子状物 質(Particulate Matter, PM; PM2.5)のアレルギー性鼻炎への影響が社会的に問題視されています。この環境微粒因子 は、工場での燃焼による煤塵などからなりますが、ディーゼル排気微粒子(ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる微粒子)が PM2.5の大部分を占めます。本邦では中国大陸から高濃度のPM2.5が飛来した時期と春のスギ花粉飛散時期が一致し、以 前に比較してアレルギー性鼻炎患者数は急激に増加し、症状の悪化を訴える患者が増加しました。さらに、国内の自動車からの ディーゼル排気微粒子が原因で、今日も喘息やアレルギー性鼻炎患者はその

症状の悪化に悩 まされています。しかし、ディーゼル排気微粒子(PM2.5)の アレルギー性鼻炎を悪化させるメカニズムは不明であり、それに対する治療・ 予防方法は全く確立されていません。この様な背景から、ディーゼル排気微粒 子(PM2.5)によるアレルギー性鼻炎増悪メカニズムを明らかにし、その影響 の評価法と治療・予防薬のスクリーニング法を開発することが急がれます。 私 たちはヒトアレルギー性鼻炎の病態に類似した花粉特異的アレルギー性鼻炎 モデルマウス(特許番号:5800263号,登録日:2015年9月4日)を用いて、 ディーゼル排気微粒子が鼻粘膜上皮細胞のバリア機能(タイトジャンクション: 隣り合う上皮細胞を強く結合する膜蛋白質)を破壊することでアレルギー性鼻 炎を悪化させることを明らかにしました。さらに、それを予防する薬剤と薬剤の スクリーニング法を開発しました。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

1) ディーゼル排気微粒子による鼻粘膜上皮細胞のバリア機能の破壊によって花粉アレルゲンの上皮細胞への透過性が亢進す る結果、それ単独ではくしゃみ症状を発症しない少量の花粉でも鼻炎症状を重症化させる可能性があることが明らかになり ました。

2) ディーゼル排気微粒子に含まれる炭化水素成分、有機物質や硫化塩などによる酸化ストレスによって鼻粘膜上皮細胞のタイ トジャンクションは破壊され、抗酸化剤N-アセチルシステインはその作用を完全に予防できることを明らかにしました。 3) 本アレルギー性鼻炎モデルマウス(in vivo)または、上皮細胞株(in vitro)を用いることでディーゼル排気微粒子に対する

鼻粘膜上皮タイトジャンクションの破壊を指標として、これを抑制する治療・予防薬のスクリーニング法を確立しました。

主公表論文

(これまでの研究実績)

1) Diesel exhaust particles exacerbate allergic rhinitis in mice by disrupting the nasal epithelial barrier. Clin. Exp. Allergy. 46(1):142-52, 2016. Ayumi Fukuoka.

2) A critical role of IL-33 in experimental allergic rhinitis. J. Allergy Clin. Immunol. 130:184-94, 2012. Yoko Haenuki.

知財情報

発明の名称:微粒子状物質によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤. 出願番号:特願2015-026712

研究成果の活用・実用化

(提案)

① アレルギー性鼻炎モデルマウスを用いて、PM2.5によるアレルギー性鼻炎顕性化を抑制する予防薬の探索が可能となる。 ② PM2.5によるヒト鼻粘膜上皮細胞株(RPMI2650)のtight junction破壊を指標として、これを抑制する予防薬の探索が

可能となる。

関連情報提供 URL

http://www.hyo-med.ac.jp/department/immn/index.html

(13)

7

関連疾患・

研究領域

外科手術、腹腔内癒着、薬剤探索研究

所属部署名

(医科あるいは医療) 免疫学、先端医学研究所 アレルギー疾患研究部門

検索キーワード

術後腸管癒着、モデルマウス、HGF

研究代表者名

善本 知広 (研究内容照会先)

研究実施者

善本 知広

研究概要

現在の高度な医療技術を駆使しても、消化器外科手術の実に60%以上に術後腸管癒着が発生し、腸管-腸管、腸管-腹膜などの 癒着形成は再手術を困難にするばかりではなく、腸閉塞、腹痛、不妊症などの合併症を高頻度に惹き起こし、臨床的に問題となっ ています。しかし、術後腸管癒着に対する予防法、予防薬は未だ確立されていません。私たちは、手術類似侵襲としてマウスの5 mm腹部切開創より、実際に人の手術に使用するバイポーラ電気メスを用

いて盲腸の腸管膜反対側を1秒間焼灼し、閉腹することで、1週間後に強度 の腸管癒着を形成するマウスモデルを確立し、その発症機序を解析しまし た。その結果、手術侵襲による軸索反射を介して腸管に誘導された神経ペ プチドの1つタヒキニンが、同じく手術侵襲によって腸管に集積したNKT 細胞を刺激して術後3時間をピークにIFN-γ産生を誘導し、このNKT細胞 由来IFN-γが凝固系を促進する(plasminogen activator inhibitor 1: PAI-1)の発現を増強し、逆に線溶系を促進するプラスミノーゲン活性化 因子(tissue plasminogen activator: tPA)を抑制する結果、癒着形 成を促進することを明らかにしました。更に私たちは、抗IFN-γ抗体あるい は肝細胞増殖因子(HGF)蛋白を術前1日前又は術直後に1回皮下投与す ると、PAI-1の誘導を抑制し術後腸管癒着の発症を完全に予防できること を発見しました。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

1) 術後腸管癒着の発症機序(物理的刺激−神経軸索反射−神経ペプチド−NKT細胞−IFN-γ−PAI-1−フィブリン沈着−癒着 形成)が明らかになりました。

2) バイポーラ電気メスにて盲腸の腸管膜反対側を1秒間焼灼するという、極めて簡易で且つ安定(電圧と時間を設定)な方法 で確実な腸管癒着モデル動物を作製できます。

3) マウスに限らず大型動物(ラット、ミニブタ)にも癒着を誘導できます。

4) 術後腸管癒着の発症機序は、肝臓部分切除術など様々な腹腔内手術に普遍的に適応することが明らかになっています。

主公表論文

(これまでの研究実績)

1) Interferon-γ is a therapeutic target molecule for prevention of postoperative adhesion formation. Nat. Med. 14:437-41, 2008. Kosaka H, Yoshimoto Tomohiro, Yoshimoto Takayuki, Fujimoto J, and Nakanishi K. 2) Interferon γ and plasminogen activator inhibitor 1 regulate adhesion formation after partial hepatectomy.

Br J Surg. 101:398-407, 2014. Ohashi K, Yoshimoto T, Kosaka H, Hirano T, Iimuro Y, Nakanishi K, Fujimoto J.

知財情報

発明の名称:腸管癒着抑制剤.

出願番号:特願2008-558089、PCT/JP2008/052299、WO2008/099829 特許番号:4673068号(登録日:2014年4月25日)

研究成果の活用・実用化

(提案)

① 術後腸管癒着の発症機序(物理的刺激−神経軸索反射−神経ペプチド−NKT細胞−IFN-γ−PAI-1−フィブリン沈着−癒着形 成)を基盤とした癒着予防薬の探索研究に有用です。

② モデル動物を用いた癒着予防薬の有用性の確認とスクリーニングに有用です。

関連情報提供 URL

(14)

8

関連疾患・

研究領域

予防医学、循環器病学

所属部署名

(医科あるいは医療) 環境予防医学

検索キーワード

アルコール、高血圧、ペプチドーム

研究代表者名

若林 一郎 (研究内容照会先)

研究実施者

若林 一郎

研究概要

研究・技術概要

BLOTCHIP®を用いた新しいペプチドーム解析の結果、飲酒時の血圧低下と有意な関連性を示す3種類のペプチドを検出しま

した。このうち2つのペプチドはm/z 1467とm/z 2662で、構造解析の結果、いずれもフィブリノーゲンα鎖の異なる断片ペ プチドであり、もう一つはm/z 2380で、補体C4aの断片ペプチドであることが明らかになりました。そして、非飲酒時の血中 m/z 2380ペプチドのレベルが高い人ほど、飲酒後急性期の収縮期および拡張期血圧の低下が著しく、血中m/z 2380レベル と飲酒後血圧低下の程度の間に有意な相関を認めました。飲酒による高血圧発症の機序としては、飲酒の急性作用である血圧 低下に対する離断作用としての交感神経系の活性化が指摘されています。すなわち、飲酒時の血圧低下が著しい人ほど、繰り返 しの飲酒習慣に伴う血圧上昇が大きくなります。したがって、血中m/z 2380ペプチド濃度が高い人では、習慣性飲酒に伴う高 血圧のリスクが高くなると予測され、m/z 2380ペプチドは習慣性飲酒に伴う高血圧の有用なリスクマーカーになると考えられ ます。

研究背景・従来技術(解決すべき課題)

習慣性飲酒は高血圧の重要なリスク要因であり、特に欧米人に比べてアルコール感受性が高い日本人では、飲酒が高血圧の原 因として20~50%程度寄与していると報告されています。そこで高血圧の予防には節酒あるいは禁酒が必要です。東洋人で はALDH2などのアルコール分解酵素の遺伝子多型が存在し、飲酒時のアルコール感受性が個人によって大きく異なることが 知られています。しかし、これまでの研究ではアルコール分解酵素の遺伝子多型と飲酒による血圧上昇との間には明らかな関連 性は見られなかったと報告されています。そして、各個人で飲酒に伴う高血圧のリスクを評価する方法は開発されていません。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

血中m/z 2380レベルを測定し、その結果から飲酒に伴う高血圧のリスクを評価することは、飲酒習慣の是正による高血圧の 予防および治療上、有用と考えられます。高血圧は国民病であり、脳卒中や虚血性心疾患などのさまざまな循環器疾患の重要な リスク要因です。そして飲酒はポピュラーな生活習慣であることから、本方法を用いた飲酒に伴う高血圧のリスク評価には、循環 器疾患予防の大きな意義があります。

主公表論文

(これまでの研究実績)

I. Wakabayashi et al., Potential biomarker peptides associated with acute alcohol-induced reduction of blood pressure. PLoS One. 2016;11(1):e0147297.

知財情報

特願2015-133939

研究成果の活用・実用化

(提案)

本発明によれば、飲酒に伴う高血圧リスクを迅速・的確に予測することができる。

そのため本発明に基づき、飲酒量や飲酒回数を制限するなどの飲酒による高血圧に対する予防措置を講じることに貢献すること が期待される。

また本発明の検査方法における本発明の高血圧予測用ペプチドの測定は、それに対する抗体を用いて行うこともできる。かかる 方法は、最適化されたイムノアッセイ系を構築してこれをキット化すれば、上記質量分析装置のような特殊な装置を使用すること なく、高感度かつ高精度に該ペプチドを検出することができる点で、特に有用である。

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9

関連疾患・

研究領域

免疫学・アレルギー学・皮膚科学

所属部署名

(医科あるいは医療) 皮膚科学

検索キーワード

アトピー性皮膚炎、インターロイキン33,2型自然 リンパ球、疾患モデルマウス

研究代表者名

山西 清文 (研究内容照会先)

研究実施者

山西 清文、今井 康友

研究概要

我々は、表皮でIL-33を多く産生する遺伝子組換えマウスを作製し、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis: AD)の症状を再 現することができました。湿疹、かゆみの症状が明確で、ヒトADの特徴である、肥満細胞の活性化、好酸球増加、血中IgEの増加 を生じ、SPF(特定の病原体の無い清浄な飼育環境)で生後6~8週間にADを100%自然発症し持続します。抗ヒスタミン薬の 投与、ステロイド薬外用の効果が容易に観察できました。

研究背景・従来技術(解決すべき課題)

ADは我が国でも人口の10~20%にも達するアレルギー疾患です。ADの皮膚では、アレルギー炎症に関係するタンパクであ るインターロイキン33(IL-33)が増えています。従来の自然発症のADモデルマウスは発症原因が不明でダニの寄生がないと 皮膚炎の症状を発症できません。また、従来の遺伝子改変モデルでは、皮膚炎は生じても必ずしもヒトのADの病態に基づいた モデルではありませんでした。ヒトのADの病態を適切に再現した動物モデルを作製して、その病態解析とこれに連なる治療薬 創製研究に活用することが求められています。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

われわれのADモデルマウスはIL-33を皮膚で多く産生するヒトのADの病態を適切に再現しています。また、特定の物質を外用 して皮膚炎を誘発するモデルと異なり、症状は自然発症しますので、安定した皮膚炎の症状をもとに、ADの治療薬の評価や開発 に役立つと期待されます。

知財情報

特願2013-96637(平25.5.1) 外国出願特許申請中

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10

関連疾患・

研究領域

医学・肝臓学・肝線維化・肝硬変

所属部署名

(医科あるいは医療) 外科学 肝・胆・膵外科

検索キーワード

肝線維化・肝硬変・HGF

研究代表者名

藤元 治朗 (研究内容照会先)

研究実施者

藤元 治朗

研究概要

肝臓の線維化は様々な誘因・疾患より発症し放置すれば肝硬変に進展する重篤な病態である。肝線維化・肝硬変のわが国におけ る最大の問題点であったC型肝炎ウイルスは抗ウイルス薬が開発され、現在では経口薬でほぼ100%近くウイルス除去ができ る時代となった。しかしウイルスは排除されても線維化は遺残することが多く、SVR(sustained virological response:ウ イルス学的著効達成)が得られても線維化は著名には改善せずその後の発がん性持続が問題となっている。C型肝炎以外にも B型肝炎ウイルス・アルコール・非アルコール性脂肪肝炎、など様々な要因で肝線維化は進展する。研究実施者は肝細胞増殖因子 (HGF:hepatocyte growth factor)に着目、動物モデル(ラット肝硬変)においてHGFにより肝硬変が治り、肝硬変が可逆 性病変であることを報告した(論文①)。この報告をうけて、世界中で様々なアプローチで肝線維化改善への動物実験報告がな され、現在に至っている。研究実施者はHGFが骨髄移植に伴う移植片対宿主病(GVHD)における臓器保護作用(論文②)、術 後癒着における線維形成防止作用(論文③)、ビーグル兼を用いた大動物における肝硬変治療(文献④)、を実施してきている。 HGFは正常の20倍以上の高濃度が持続すると発がん性が問題となるが、正常の2~3倍の濃度ではむしろ発がん抑制も報告 されているペプチドである。リコンビナントHGF(以下r-HGF)を低濃度で持続投与することは現実的な方法であると考えられ る。また、現在他の疾患に対して認可されている薬剤でも内因性HGFを誘導する薬剤もあると考えられ、これの探求も現実的な 方策であると考える。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

肝臓線維化に対する薬剤・治療法は現在は確立されていない。重篤な病態、例えば劇症肝炎・末期肝硬変を対象とするよりもより 初期の肝臓線維化を対象とするHGF低用量治療法は新たな考え方であり、現実的である。

主公表論文

(これまでの研究実績)

① Hepatocyte growth factor gene therapy of liver chirrosis in rats. Nat Med 5:226-230, 1999

② Hepatocyte growth factor ameliorates acute graft-versus-host disease and promotes hematopoietic function. J Clin Invest 107:1365-73, 2001

③ Interferon-γis a therapeutic molecule for prevention of postoperative adhesion formation. Nat Med 14:437-441, 2008

④ Treating liver cirrhosis in dogs with hepatocyte growth factor gene therapy via hepatic aartery. J Hep Bil Pancr Surg 16:171-77, 2009

知財情報

発明の名称:腸管癒着抑制剤、特許番号:特許第5530635号、発行日:平成26年6月25日。

研究成果の活用・実用化

(提案)

HGFは遺伝子ではなく、リコンビナントHGF注射が現実的である。高濃度を維持する長期投与は発がん性・腎障害など懸念され るが低用量持続投与は安全であると思われ、かつ対象は重篤な劇症肝炎・末期肝硬変患者ではなく、可逆性の可能性が考慮され る初期~中等度の肝線維化を有する状態である。

関連情報提供 URL

上記論文参照ください。

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関連疾患・

研究領域

医学・外科学・手術後癒着

所属部署名

(医科あるいは医療) 外科学 肝・胆・膵外科

検索キーワード

術後癒着・IFN-g・HGF

研究代表者名

藤元 治朗 (研究内容照会先)

研究実施者

藤元 治朗

研究概要

外科手術は近年、臓器移植・拡大手術から低侵襲手術(鏡視下手術)にいたるまで急速な発展を遂げた。しかし術後癒着障害は取 り残された領域である。研究実施者らはこれまでに(1)腸管癒着動物モデルの樹立と癒着分子機構の解明(論文リスト①・②参 照)、(2)動物肝切除後癒着モデルおよびヒト肝切除術における癒着における分子機構解明(論文リスト③参照),などを発表して きた。概要は、①外科手術により出血、または組織において微細な血栓が生じる。②凝固した血液よりトロンビンを経てフィブリン が形成される。通常はプラスミノーゲン活性因子(tPA)が働きフィブリンは溶解される(凝固線溶系)。③一方で手術侵襲により 組織内の微細な末梢神経が切離され、ニューロペプチドのタキキニンが分泌される。タキキニンはNKT細胞(natural killer T cell)に働き多量のIFN-γが分泌される。④IFN-γは多量のPAI-1(plasminogen activator inhibitor)の分泌を誘導、tPA の活性を阻害、フィブリン溶解が妨げられ線維組織として遺残し癒着原因となる。⑤またさらに、HGF(hepatocyte growth factor)の術前投与によりPAI-1産生は抑制され、癒着は制御される。という内容である。今回の研究テーマは(1)癒着予防法 の開発であり、具体的には臨床応用を考慮し、①HGFの投与量設定と安全性確認、②CD4-T細胞を抑制する薬剤の検証:臨床 ですでに使用されている免疫抑制剤の癒着予防の効果・安全性の検証、③臨床ですでに使用されているトロンビン抑制剤の検 証、などである。またさらに血液凝固線溶系とは異なり、より強固な線維形成過程を検索する。即ち手術局所における繊維芽細胞 の増殖系とそのリガンドの検索であり、現在in vitroの細胞培養系を用いて研究中である。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

① 血液凝固線溶系以外の未解決の術後癒着障害の分子機構解明。

② 臨床応用可能な癒着防止薬剤の同定と検証。現在癒着防止に有用な方法は無く、HGFをはじめいくつかの新規薬剤候補は 新たな治療法となりえる。

主公表論文

(これまでの研究実績)

① Interferon-γis a therapeutic molecule for prevention of postoperative adhesion formation. Nat Med 14:437-441, 2008(Kosaka H, Yoshimoto T, Fujimoto J, Nakanishi K. et al.) 

② Hepatocyte growth factor gene therapy of liver chirrosis in rats. Nat Med 5:226-230, 1999(Ueki T, Kaneda Y, Nakanishi K, Fujimoto J., et al.) 

③ Interferon-γand plasminogen activator inhivitor 1 regulate adhesion formation after partial hepatectomy. Brit J Surg:101:398-407, 2014

知財情報

発明の名称:腸管癒着抑制剤、特許番号:特許第5530635号、発行日:平成26年6月25日。

研究成果の活用・実用化

(提案)

HGFは遺伝子ではなく、リコンビナントHGF注射が現実的である。長期投与は発がん性・腎障害など懸念されるが本投与法は術 前日・術当日を予定しており、安全であると思われる。免疫抑制剤・トロンビン阻害剤は臨床で既に他の用途で使用されており、術 後癒着予防に使用するのは現実的である。

関連情報提供 URL

上記論文参照ください。

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関連疾患・

研究領域

医学・外科学・手術後癒着

所属部署名

(医科あるいは医療) 外科学 肝・胆・膵外科

検索キーワード

術後癒着・腹部造影エコー・造影CT・MRI・PET

研究代表者名

藤元 治朗 (研究内容照会先)

研究実施者

藤元 治朗

研究概要

外科手術は近年、臓器移植・拡大手術から低侵襲手術(鏡視下手術)にいたるまで急速な発展を遂げた。しかし術後癒着障害は取 り残された領域である。研究実施者らはこれまでに(1)腸管癒着動物モデルの樹立と癒着分子機構の解明(論文リスト①・②参 照)、(2)動物肝切除後癒着モデルおよびヒト肝切除術における癒着における分子機構解明(論文リスト③参照)、などを発表して きた。今回の研究テーマは外科手術後癒着形成の非侵襲的診断法の開発あり、具体的には以下の項目である。(1)腹部造影エ コー:本学内科(超音波センター兼任)の飯島尋子教授が開発したMotion Tracking技術(以下MT法)による術後癒着診断。マ ウス腸管癒着モデル。肝切除癒着モデルにて検証すると腹腔内に3点のROI(region of interest)を設定、MT法にて追跡す ると呼吸移動につれコントロール群(癒着無し)では3点が別々の動きを示すが、癒着群では3点が同じ運動を示すことが判明し た。現在この結果を用いて癒着診断ソフト開発中である。(2)造影CT:本学放射線科の廣田省三教授によるデータであるが、開 腹歴有無の症例で50例ずつ検討した結果ではある部位の組織構築に統計的有意差を認めている。現在前向き臨床研究を計画 中である。(3)MRIを用いてシネアンギオ撮影実施、矢状断画像において開腹歴有無により腹壁下組織の運動動態が異なり、現 在前向き臨床試験計画中である。(4)本学放射線科の福島医師によるデータであるが、FDG−PETを用いたマウス腹部外科手 術解析では術後群とコントロール群にFDG集積の差異を認めている。現在核種もFDGとは異なる核種を考慮中である。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

外科手術後の癒着判定の臨床における非侵襲的方法は現在は確立されていない。診断技術が開発されると今後いくつかの新た な癒着防止剤・シートなどの開発が予想されるが、その検証に必須の技術となる。

主公表論文

(これまでの研究実績)

① Interferon-γis a therapeutic molecule for prevention of postoperative adhesion formation. Nat Med 14:437-441, 2008(Kosaka H, Yoshimoto T, Fujimoto J, Nakanishi K. et al.) 

② Hepatocyte growth factor gene therapy of liver chirrosis in rats. Nat Med 5:226-230, 1999(Ueki T, Kaneda Y, Nakanishi K, Fujimoto J., et al.) 

③ Interferon-γand plasminogen activator inhivitor 1 regulate adhesion formation after partial hepatectomy. Brit J Surg:101:398-407, 2014

知財情報

発明の名称:腸管癒着抑制剤、特許番号:特許第5530635号、発行日:平成26年6月25日。

研究成果の活用・実用化

(提案)

上記の造影エコー・造影CT・MRIシネアンギオ・PETはどれも非侵襲的であり、実際に前向き臨床研究を実施、これから4つの方 法のh診断正確性に対する「重み」を解析、多変量解析を行い、「癒着診断判定式」を作成する。

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関連疾患・

研究領域

悪性腫瘍全般

所属部署名

(医科あるいは医療) 産科婦人科学

検索キーワード

抗悪性腫瘍薬剤

研究代表者名

柴原 浩章 (研究内容照会先)

研究実施者

鍔本 浩志

研究概要

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

① 動物実験の結果はヒト生体で再現されない事が多い。研究者は、既にヒト生体を用いた分析を倫理審査承認を受けて実施中 である。

② イトラコナゾールの多癌腫に対する臨床的有益性(生存期間の延長)を論文化している。

主公表論文

(これまでの研究実績)

Inoue K, Tsubamoto H, Expression of Hedgehog Signals and Growth Inhibition by Itraconazole in Endometrial Cancer. Anticancer Res in press.

Tsubamoto H, Impact of Itraconazole after First-line Chemotherapy on the Survival of Patients with Metastatic Biliary Tract Cancer Anticancer Res, Anticancer Res. 35(9):4923-7, 2015

Tsubamoto H, Combination chemotherapy with itraconazole for treating metastatic pancreatic cancer in the second-line or additional setting. Anticancer Res,35:4191-4196, 2015

Tsubamoto H, Impact of Itraconazole on the Survival of Heavily Pre-treated Patients with Triple-Negative Breast Cancer. Anticancer Res, 34:3839-3844, 2014.

Tsubamoto H, Impact of combination chemotherapy with itraconazole on survival of patients with refractory ovarian cancer. Anticancer Res, 34(5): 2481-2488, 2014

Tsubamoto H, Impact of combination chemotherapy with itraconazole on survival for patients with recurrent or persistent ovarian clear cell carcinoma. Anticancer Res, 34(4): 2007-2014, 2014

研究成果の活用・実用化

(提案)

① 抗がん治療薬としてのイトラコナゾールのコンパニオン診断開発 ② 新規抗悪性腫瘍薬の開発

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関連疾患・

研究領域

公衆衛生学

所属部署名

(医科あるいは医療) 救急・災害医学

検索キーワード

労働安全衛生、ストレスチェック、心理的負担

研究代表者名

中尾 博之 (研究内容照会先)

研究実施者

中尾 博之

研究概要

【背景】H27.12に厚生労働省は、労働安全衛生法第66条の改訂によってにてストレスチェック制度を創設し、事業者は労働者 の心理的負荷チェックを義務化した。この制度ではセルフチェックを行うことになっているが、アンケート形式による主観的評価 であるため正確であるとは言い難い。つまり、セルフチェックの結果を都合の良いように変更が可能である。

心的ストレスを客観的に測定する方法は、血液検査、尿検査、唾液、脳波解析、心電図解析、瞳孔径測定などが従来から開発され てきたが、職場で使い勝手の良い方法は見出されていない。従来の瞳孔径測定では大掛かりな機器で高度精密な測定が不可能 であった。容易にチェックできる学術的な裏付けのある客観的な評価方法の確立が求められる。本機器では、携帯式ゴーグル型 の高度精密な測定機器精密測定による瞳孔径の変化を捉えることが可能であり、心的ストレスの評価に深くかかわる自律神経 活動の評価が精密にできる。本研究では、心的ストレス評価方法に関わる因子を確立することにある。

【方法概略】職場における心的ストレスには、精神的疲労、対人関係、情緒的ストレスに分けられる。これは職種によっても負荷の かかり方は異なることが容易に予測される。そこで、いくつかの職種(接客、製造、管理部門、販売、専門技術)で心的ストレス測定 を本機器で行い、厚労省が掲げる主観的ストレス問診との対比を行う。また、その他の従来型方式(血液検査、尿検査、唾液、脳波 解析、心電図解析)でも評価を行い、相関性を評価する。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

古くからフリッカーテストによる眼精疲労評価がなされており、光シグナルによる心理的ストレス評価が重視されてきた。携帯式 ゴーグル型瞳孔反射および径の高度精密な測定機器をすでに開発している。本機器は、職場の労働安全管理において容易に測 定できる。精密な側手が可能となったため、わずかな瞳孔の変化をとられることが可能となり、心的ストレス評価が可能となる。

知財情報

名称:瞳孔径測定支援装置及び瞳孔径測定支援システム 出願番号:特願2012-229195

公開番号:特開2014-079374

研究成果の活用・実用化

(提案)

H27.12に厚生労働省は、労働安全衛生法第66条にてストレスチェック制度を創設し、事業者は労働者の心理的負荷チェックを 義務化した。この制度ではセルフチェックを行うことになっているが、主観的評価であるため正確であるとは言い難い。学術的な 裏付けのある客観的な評価方法の確立が求められる。従来の瞳孔径測定では大掛かりな機器で高度精密な測定が不可能であっ た。本機器では、精密測定による瞳孔径の変化を捉えることによる心的ストレス評価因子を確立することにある。このような精密 な客観的評価ができる機器はなく、今後この領域の市場を切り開くものと確信している。

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関連疾患・

研究領域

癌関連および自己免疫疾患関連(肝細胞癌と全身性エリテマトーデス症候群)

所属部署名

(医科あるいは医療) 病理学 病理診断部門

検索キーワード

老化、自然免疫、獲得免疫、チェックポイント蛋白 質、サイトカイン

研究代表者名

廣田 誠一 (研究内容照会先)

研究実施者

西浦 弘志

研究概要

これまでの知見①;我々は、以下に示すように胸腺の生理的萎縮に伴う獲得免疫機構の老化が癌発症の一要因であることを証 明した。獲得免疫機構: ;骨髄系の抗原提示細胞はリンパ系細胞を定常化/活性化する調節リガンドとしてCD80/86とPD-L1/L2を常時発現。;リンパ系細胞はCD80/86からのシグナルを正と負に伝達する受容体としてCD28とCTLA-4を常 時発現。老化獲得免疫機構:;リンパ系細胞は骨髄系細胞の転写因子を作動しPD-L1/L2のシグナルを負に伝達する受容体 としてPD-1を発現。;癌細胞はPD-1を発現する老化リンパ球を負に制御するPD-L1/L2を発現。;PD-1またはCTLA-4 欠損はマウスに自己免疫疾患の発症を誘導した。これまでの知見②;マクロファージのアポトーシス細胞処理機構の低下が 自己免疫疾患発症の一要因と判明した。老化自然免疫機構:;骨髄系のマクロファージはリンパ系細胞の転写因子を作動し CTLA-4を発現。これまでの知見③;IL-18がNK細胞とTh1細胞の活性化の一要因との以下の証左を得た。Th1型免疫応答 機構:;T、B、NK細胞、マクロファージに作用してIFN-γ産生を誘導。;PD-1への分子標的療法の効果の維持と副作用の軽 減を示唆。(解決すべき技術課題;PD-1への分子標的療法の効果と副作用を実験動物で再現する至適なモデルがないため、 これを考案し作出する必要がある。)新規発見①;マクロファージのRP S19多量体を介したアポトーシス細胞処理機構の低下 が♂マウスに肝細胞癌と♀マウスに全身性エリテマトーデス症候群の発症を誘導した。②;全身臓器に浸潤するリンパ系細胞に PD-1が発現する。③;骨髄系のマクロファージにCTLA-4が発現した。これらの知見を統合、解析し、老化に伴い顕性化する免 疫応答不全の機構の解明とその是正を基軸に、該疾患治療法の発見を目指し研究展開している。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

CTLA-4による老化自然免疫機構とPD-1による老化獲得免疫機構を備えたモデルマウスを用いて、新規の自己膠原病と癌発 生機構を解析し、その治療法を開発する。

主公表論文

(これまでの研究実績)

① Nishiura H., et al. Biochem. Biophys. Rep., 2016, 70-76, DOI: 10.1016/j.bbrep.2016.05.006. ② Nishiura H., et al. Immunobiology, 220, 1085-1092. 2015.

③ Nishiura H., et al. Exp. Mol. Pathol., 97, 241-246. 2014.

知財情報

平成24年7月1日 

国際出願番号:「PCT/JP2011/061057」(承認済) 

発明の名称: 「血球成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法」

研究成果の活用・実用化

(提案)

①;CTLA-4を発現する老化マクロファージの解析。 ②;PD-1への分子標的療法の副作用機構の解析。

③;PD-1への分子標的療法の副作用を軽減するIL-18の機構解析。

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研究概要

1995年に我々は、活性化マクロファージで産生され、T細胞やNK細胞のIFN-γ産生を誘導する因子としてIL-18をクローニン グした。このサイトカインは骨髄系、非骨髄系細胞を問わず、多くの細胞で作られ、免疫調節をはじめ、アレルギー、慢性炎症等に 関わっているが、我々は循環器、神経などにおいても多彩な生理機能を発揮することを観察、報告している。IL-18は多くのサイ トカインと異なり、シグナルペプチドを持たず、がんやウイルス感染、活性酸素などの様々なストレスによって細胞内で形成され るインフラマソームの構成蛋白であるCaspase-1によってIL-18前駆体から活性型IL-18に変換され、細胞の恒常性維持に重 要な役割を持つことが明らかになってきている。我々はこれまでの研究でIL-18がオートファジー、蛋白合成を高め、細胞生存、 増殖を促進することを明らかにした。特に、がんに対してはIL-18がCD8T,γδT, NK細胞などの増殖を高め、免疫チェックポイ ント阻害薬の抗腫瘍効果を高める働きがあることを証明した。一方、がん免疫治療の有害事象である自己免疫疾患様の副作用 発現を軽減することも観察しており、IL-18の役割について精査している。

下に示す2図は、IL-18と免疫チェックポイント阻害薬との併用によるCT-26(大腸がん)移植による致死の抑制と、B-16(悪性黒 色腫)移植による腫瘍形成の抑制効果を示すものである。いずれも免疫チェックポイント阻害薬の効果をIL-18が増大させている。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

本研究成果は、腫瘍免疫によるがん抑制の基盤である免疫チェックポイント阻害薬と、IL-18を併用させることで主薬効の拡大、 延命効果が見込めることを示したものである。その一方で、正常組織に対する保護作用によって、阻害薬による免疫寛容解除が 引き起こす副作用発現のリスクも低減され、実臨床における有効性と安全性の課題を同時に解決できる知見として、実用化が期 待される。

主公表論文

(これまでの研究実績)

Clinical Cancer Research 2016 Jan 11: Augmentation of Immune Checkpoint Cancer Immunotherapy with IL-18. Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2016 Aug 1: Dysfunction of mitochondria and deformed gap junctions in the heart of IL-18-deficient mice.

知財情報

国際特許出願PCT/JP2015/072505

研究成果の活用・実用化

(提案)

既に臨床使用されている免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果(延命効果)における限定的な薬理効果を、IL-18を併用する ことで格段に向上させるとともに、免疫チェックポイント阻害薬がもたらす自己免疫様有害事象発現というディレンマを解消し、 大きな臨床効果が生まれるものと期待される。

関連疾患・

研究領域

がん、感染症、神経変性疾患(AD,PD)など

所属部署名

(医科あるいは医療) 腫瘍免疫制御学

検索キーワード

IL-18、がん免疫療法、インフラマソーム、免疫 チェックポイント阻害薬

研究代表者名

岡村 春樹 (研究内容照会先)

研究実施者

岡村 春樹

(23)

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関連疾患・

研究領域

膀胱癌、創薬研究

所属部署名

(医科あるいは医療) 先端医学研究所 細胞・遺伝子治療部門

検索キーワード

膀胱癌、薬物療法、ドラッグ・リポジショニング

研究代表者名

後藤 章暢 (研究内容照会先)

研究実施者

後藤 章暢、長屋 寿雄

研究概要

本研究では、有効な治療法のない易再発性表在性膀胱癌に対するドラッグ・リポジショニング(DR)の考え方を活用しつつ既存薬 剤を応用、QOLを重視した新規治療法、予防法の開発を目指す。我々は、α1ブロッカー型経口排尿障害治療薬であるナフトピジ ルが膀胱癌に対して抗腫瘍効果を示すことを既に明らかにしている。ナフトピジルは肝臓で代謝され尿中へ排泄されるため、体 内の膀胱癌は血中のナフトピジルだけでなく、尿中の代謝物にも曝露されることとなる。この代謝物にも抗腫瘍効果が認められ た場合、膀胱癌は他臓器癌と比較してより高効率に抗腫瘍効果が発揮されると期待できる。つまり従来の抗癌剤とは異なり、一 つの薬剤で二方向からの抗腫瘍効果が期待でき、相加的、相乗的な効果を示すことが考えられる。複数個の代謝産物をすでに同 定しており、その中でも新規抗癌剤として有力な候補物質もすでに同定している。それらを用いた前臨床試験に向けた基礎的な 研究を現在精力的に行っている。ナフトピジルを使用することによる重篤な副作用も報告されていないため、長期間の単独投与 や他の薬剤との併用が可能となり、DRの概念から、安全性が確立されており短期間で創薬事業へと展開可能な膀胱癌に対する 純国産のQOLを重視した新規治療法になりうると考えられる。

科学的アピールポイント

(独創性・進歩性・新規性等)

本研究の成果は従来の抗癌剤とは異なり、一つの薬剤で二方向からの抗腫瘍効果が期待でき、相加的、相乗的な効果を示すこと が考えられる。また患者のQOLを重視した最短で臨床応用可能な革新的な新規治療法となり、今後の創薬研究の一つの見本と なると考えられる。

知財情報

特許出願済(特願2014−168748)

研究成果の活用・実用化

(提案)

本研究成果について、関心のある企業と創薬事業として連携し、早期に市場に普及させたい。

ドラッグ・リポジショニングによる

参照

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