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帝国書院 | 高校の先生のページ 高等学校 世界史のしおり 2005年 10月号

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Academic year: 2018

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− 20 − ある。実証研究に沈潜するだけでは見えにくく、専門 外の者には手に余るこの「中国」概念に鋭く切り込む ことから、本書は巻を開く。岡田氏は、「中国人」を、 がんらい城郭都市に住みその文化を身につけた人をさ す文化上の観念、「中国」を、漢字によるコミュニケ ーションによって支えられる政治的統一体、と刺激的 に定義したうえで、その創始を前221年の秦の始皇帝 による統一において、それ以前を「中国以前の時代」 とし、また1895年の日清戦争における清の敗北以降を、 中国の歴史が外部のできごとや影響によって左右さ れるようになった時代として「中国以後の時代」と呼 ぶ。ここでいう「中国」が、われわれの眼前にある中 国国家や伝統的に交渉・接触してきた中国文化とは異 なる定義が与えられているとはいえ、これだけでも十 分に刺激的である。さらに氏は、その間の2100余年を、 「中国」の観念が適用されうる地域のひろがりと、「中

国人」に含まれる人びとの範囲とを基準として3つの 時期に分け、さらにそれぞれを前後期に分ける整然と した時代区分を提示する。すなわち、秦の最初の統一 から589年の隋による再統一までの約800年を第一期と し、184年の黄巾の乱による後漢の事実上の滅亡を以 て400年ずつの前後期とする。ついで1276年の元によ る南北統一までの約700年を第二期とし、その折り返 しに当たる936年の契丹による燕雲十六州領有で前後 期を分ける。そして1895年までの約600年を第三期と し、1644年の清朝の中国支配開始を以て前後期を区切 るのである。

入れ替わる「中国」、そこから照らしなおす世界史 ま ず誰しもその斬新な時代区分に目を奪われるであろう。 そこに一貫している論理は、ことばとヒト、とまとめ ることができる。「ことば」とは、文字と言語への着

目である。すなわち中国語を、漢字を用いた通信・記 録のための文語コミュニケーション体系と、その下で の多様な言語の集合体、と喝破し、さらに音韻の面か ら、人工言語としての中国語の内実の変化を指摘する。 またヒトとは、「中国人」とされた人びとの内実とそ の人口の増減である。氏によれば中国史の第一期の始 まりは、始皇帝によって文字すなわち文語によるコミ ュニケーション体系が統一・公開されたことを画期と しており、以後第一・二期は、秦漢時代の中国人の事 実上の絶滅と、鮮卑はじめとした北族による新しい中 国人の形成、第二・三期は、契丹・女真・モンゴルそ して満洲という、より新しい北族が第一∼二期の北族 に取って代わる時代、とするのである。その過程は、「中 国」の中身が次々と入れ替わり、北方のアルタイ系諸 族がことばの面でもヒトの面でも「中国」の中身を満 たしていく過程として描き出される。一方、これらの 内容が氏独特の歯切れよい文章と大胆なまでの術語の 言い換えによって畳み掛けるように展開され、おおむ ね高校世界史レベルの語彙で理解できることも特長で ある。それゆえに本書が、氏のもう1冊の通史的概説 『世界史の誕生』(ちくま文庫)とともに、ひろく参照 されることを望むものである。ひるがえって、論の骨 子はすでに20年以上前に提示されているが、概説とい うこともあり、少なくとも学界では正当な評価を受け ているとは言いがたいと思われる。たしかに史料的根 拠や論証は、おそらく、なかば意図的に省略されてい るが、さまざまな専門の研究者は、それぞれおのが分 野において氏の投げたボールを受け止めるべきではな かろうか。

(駒澤大学文学部講師 杉山清彦)  この表題を見て本書を手に取る人は、おそらく三国志や中華思想 といった、われわれ日本人がイメージするところの「中国」文明の 通史を想像し、期待するであろう。本書は一見オーソドクスなタイ トルを掲げながら、そのような期待を見事に裏切り、突きくずし、 そして全く新しい「中国」史像を示してくれる、知的興奮に満ちた 書である。著者・岡田英弘氏は、モンゴル史・満洲史に軸足をおき ながら、ひろく中国史・日本古代史などさまざまな分野で発言をつ づけており、その卓抜した史眼には定評がある。本書は「民族の世 界史」シリーズの1冊『漢民族と中国社会』(山川出版社、1983年) の中で通史に相当する1章として氏が執筆した「東アジア大陸にお ける民族」を新書版に増補したものである。

「中国」史・「中国」概念の解体と再構築 そもそも、われわれが 「中国の歴史を学ぶ」「古代以来の日本と中国の関係」などというと き、「中国」のさすものがけっして一様ではないことに思いいたる であろう。それはときに「漢民族」であり、「現代中国の領域」で

岡田英弘

中国文明の歴史

講談社現代新書 2004年

(本文264ページ 740円+税)

参照

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