NIKKEI ELECTRONICS 2011.5.30
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インタビュー今こそ日本の環境技術を
世界に展開すべき
菅谷 常三郎
氏
米JAFCO America Ventures社 General Partner
(写真:栗原 克己)
─東日本大震災が発生し、東京電 力 福島第一原発の事故も起きた。日 本の危機は、米国ではどのように捉え られているか。
衝撃的の一言だ。中でも、原子力 発電所の事故のインパクトは、計り知 れないほど大きい。
日本といえば、産業インフラなどさ まざまな面を含めて信頼できる国と して認識されている。当然、原子力 発電所の安全管理も、しっかりやっ
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NIKKEI ELECTRONICS 2011.5.30 Interviewている、と思われていた。それが地 震および津波によって大きな被害を 受けたことは、米国民にとって驚くべ き事態だった。
「米国の原子力発電所は、日本より も安全管理が徹底されていないので はないか」と考える米国民は少なくな い。あの“安全な国”である日本でこ のような事故が起きてしまうのだか ら。いくら安全といわれても安心で きないことがはっきりしてしまったの である。
─米国の原発政策、さらにはエネル ギー政策全般にまで影響は広がりそ うか。
米国内でも、原子力発電の推進に 大きな影響を及ぼすだろう。個人的 には、原子力発電所の新規建設はい ったんは凍結される可能性が高いと 感じている。
米国にはもともと、原子力発電所 の利用に反対する勢力が存在する。 今回日本で発生した事象によって、 これらの反対勢力が活気づくのは間 違いない。
一方で、太陽光発電や風力発電な どの再生可能エネルギーを含む、クリ ーン・エネルギーに取り組む企業が勢 いづくことになりそうだ。米国では現 在、中長期的に石油エネルギーから 脱却することを連邦政府が提唱して いる。さらに、今回の事故で、“脱原 子力発電”に向けた取り組みの必要 性を訴える声も大きくなるだろう。こ
の二つの動きは、いずれもクリーン・ エネルギーの強力な推進役となる。
─シリコンバレーのベンチャー・キ ャピタリストは、この状況変化をどう 見ているか。
私の周囲のベンチャー・キャピタリ
ストは皆、「ブレーキから足を離す時
が来た」と言っている。それは、以下 のような意味だ。
ここ1年ほど、太陽光発電や風力発 電など、クリーン・エネルギー分野へ の投資が行き過ぎではないかという 見方が主流になっていた。このため、 多くのベンチャー・キャピタリストや 投資家が、同分野への投資を抑制し (ブレーキをかけ)つつあったのであ る。2000年代後半から同分野への投 資にアクセルを踏み続けていた投資 家らは、その速度をだんだんと緩め ている最中だった。
その流れが大きく変わる。ブレー キを踏んでいた足を上げ始めたのだ。 浮いた足は、当然アクセルを踏むこ とになる。つまり、クリーン・エネル ギー分野への投資を、再び活発化さ せるということだ。
シリコンバレー周辺の投資家の多 くがこのように感じているため、これ は間違いなく米国の大きなトレンドに なるだろう。太陽光発電や蓄電池な どを手掛ける企業を対象に、さらに 投資が進みそうだ。
ただし、このようなエネルギー技術 では、投資を長く続けないと革新的
なものが生まれない。このためには、 短期的なトレンドではなく、中長期的 なトレンドとして考えていくことが必 要になる。
─クリーン・エネルギーに関する投資 環境の変化は、日本のメーカーにとっ て市場拡大の好機と捉えていいのか。 日本には優れたクリーン・エネルギ ー関連技術がある。日本国内で現在 普通に使われている技術が、世界の 他地域では垂涎の技術だったりす る。問題は、これをいかに世界に展 開していくかということ。この点で、 大きな課題があると感じている。 例えば、World Intellectual Prop-erty Organization(WIPO、世界知的 所有権機関)の調査によれば、世界 のクリーン・エネルギー分野の特許の うち、日本の企業や研究機関はその 半数以上を保有しているという。つ まり、世界の環境技術の半数以上は 日本から生まれているということだ。 この話を日本の企業の方にすると、 「皆使えない特許ばかりだろ」と自じちょう嘲
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インタビューインタビューを終えて
「今、注目しているのはシンガポールだ」─。エネルギー分野など含め、国際的な投資案件 を数多く手掛ける菅谷氏。米国シリコンバレー地域を拠点に活動していますが、アジアの投 資案件が増えてきていることから、別の地域での業務も増えてきているそうです。中でも注目 しているのがシンガポール。市場成長の著しいインドと中国のどちらにも近く、日本からのア クセスも良い。しかも、米国同様に資金を集めるためのインフラが整っている、ということで した。確かに、シンガポールに行くと、中華系やインド系などアジアのさまざまな国の人々が エネルギッシュに働いている姿を見掛けます。シンガポールのクリーン・エネルギー・ビジネス などは今後、高い成長を見込めるのかもしれません。
しており、将来の成長性が低いから だろう。
─では、どのようにすれば、日本の クリーン・エネルギー技術を生かせる と考えているのか。
クリーン・エネルギー技術を、アジ アの新興国などを含む世界市場で活 用するしかない。例えば、日本の特 許を基にしてビジネスを創造し、それ によって世界で収益を得て日本に還 流させるというものである。
この際に非常に重要になるのが、 投資に対する考え方だ。日本メーカ ーは、投資の考え方に少し課題があ る。投資戦略が十分ではないため、 せっかくいい技術を開発しながら、そ れを世界に普及させる手前で他国の 別企業に奪われてしまうということ
が多々ある。
Liイオン2次電池はその代表例だ。 同電池は日本のメーカーが開発し、 一時期は世界市場で大きなシェアを 獲得するに至った。しかし、その投 資戦略は決して十分ではなかった。 ハイブリッド車や電気自動車などの 新たなLiイオン2次電池のユーザー が誕生した際に、その需要に合わせ た投資の拡大(生産規模の拡大)が
適切にできなかったのだ。このため 現在は、韓国の電池メーカーに同電 池のシェアを奪われる結果に至って いる。
もし、このLiイオン2次電池技術を 米国の投資家が事業化したらどうな るか。すさまじい金額を投じて一気 に生産数を拡大し、シェアを奪いに いくだろう。実際に、私の周辺にはそ うしたくてうずうずしている投資家が たくさんいる。
現在、世界で注目されている日本 のNAS(ナトリウム硫黄)電池につい ても、もっと投資して生産規模を拡 大すべき、という声を多く聞く。NAS 電池のような大容量蓄電システムを 利用したいユーザーは非常に多いた めだ。
たとえ自社が大事に育てた技術で あろうと、他国の市場で大きく収益を 拡大させるためには、他企業に事業 を委ねる必要がある。日本企業に求 められるのは、こうした選択肢をもっ と真剣に考える姿勢だ。すべて自分 でやろうとしていると、その果実の収 穫量は限られてしまうのである。