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帝国書院 | 高校の先生のページ 高等学校 世界史のしおり 2007年 10月号

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Academic year: 2018

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− 24 −  東南アジア・インドの植民地商館との比較のた め、ここ数年来、函館・横浜・大阪・神戸・長崎 の居留地・商館の調査を行ってきた。やがて興味 ある事実に気づいた。大正14(1925)年に大阪 は周辺地区を合併・再編し、「大大阪」となり、東 京を抜いて日本最大の都市に変貌した(『大大阪』 大阪都市協会編、CD-ROM 復刻版、2006)。ほぼ 同時期、インド・ボンベイは英国植民地下にはあっ たが、「大ボンベイ Greater Bombay」を形成して、 カルカッタを抜いてインド最大の都市に成長して いた。ともに成長の契機は綿業生産・輸出の拡大 と機械工業の発展にあった。

 大阪の近代経済の歩みを詳細に分析した好著 『近代大阪経済史』(阿部武司著、大阪大学出版会、

2006)によれば、綿業と関連産業の展開は、伝統 的地場産業に大きな変化をもたらしたという。大 大阪に編入された周辺地域、とくに江戸期から河 内木綿、泉州木綿、大和木綿などの名で知られた、 地元農民による綿花の栽培は壊滅的な打撃を受け た。その契機が 1880 年代から本格的に始まった

内外綿や日本綿花など大商社によるインド(ボン ベイ)綿花の輸入と、東洋紡や大日本紡をはじめ とする大・小紡績会社による周辺地域での近代紡 績工場の綿糸・綿布生産である。

 ところで、大阪における交易拠点の建設は、17 世紀末の河村瑞賢による安治川開削を契機とする。 大阪の水運・海港建設の端緒は開かれたが、その 後はいわゆる鎖国政策によって、江戸末期までは 喫水線の浅い木造船舶の入港が可能な小規模な浚 渫・改修に留まった。200 年後の明治期に入って、 綿糸輸入とその後の綿布・綿製品輸出の対外貿易 の増大と機を一にして、1897 年に本格的な大阪 港の改修が行われた。

 実は、この時期、対外交易の拠点はすでに大阪 にあった。1868 年の大阪開市に伴って開設され た川口租界(外国人居留地)である。ここが海外 海運の拠点として大きく飛躍するはずであったが、 河口の水深が浅く、大型・重量船舶の停泊が不可 能であったため、神戸港にお株を奪われることに なる。インド航路を国策会社として独占した日本 郵船は、その後この大阪港を拠点にして、P&O などの外国商船会社と競合しながら綿花・綿糸の 輸出入に参入することになる(前号参照)。  関西では「船場(せんば)」は「今もなお繊維の町」 の象徴である。その北地区、備後町(びんごちょ う)の中心に、戦災の被害をまぬがれた「綿業会 館」は健在である。東洋紡の功績者である岡常夫 氏の遺産をもとに 1932 年に完工し、日本綿業倶 楽部のサロン・会館として使用された。東洋のマ ンチェスターのランドマークというには少々気が 引けるが、5階建て総タイル張りの会館はかなり モダンでしゃれた建築である。

 この並びの2ブロック西には「日本繊維輸出会 館」があり、その周辺には、江綿、トーア紡(旧 東亜紡)、シキボウ(旧敷島紡績)、テイジン(帝人) など多くの旧繊維商社、メーカーなどのビルが立 ち並んでいる。かつて「水都」であったナニワは、 やがて明治から昭和にかけて一大工業都市「煙都」 に変貌し、そして今日では「商都」としてグロー バル都市の再起をかけている。

「東洋のマンチェスター」をたどる ②

アジアの綿業センター

大大阪

追手門学院大学教授 重松伸司

参照

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