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第1章 アメリカ 資料シリーズNo194「諸外国における教育訓練制度―アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス―」|労働政策研究・研修機構(JILPT)

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Academic year: 2018

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(1)

第 1 章 ア メ リ カ

第 1 節 職 業 訓 練 制 度 を め ぐ る 状 況 1 . は じ め に

ア メ リ カ の 職 業 訓 練 の 歴 史 は 、 欧 州 諸 国 と 比 べ る と 短 い 。 建 国 か ら 現 在 に 至 る ま で の 国 家 の 成 立 過 程 の 特 殊 性 が 、 教 育 訓 練 に も 色 濃 く 反 映 さ れ 、 独 自 の 形 を 生 み 出 し た と 言 え る 。 ア メ リ カ と い う 国 の 社 会 的 ・ 経 済 的 な 背 景 と と も に 、 そ の 教 育 訓 練 の 特 徴 を 端 的 に 述 べ る と し た ら 、 以 下 の よ う に 指 摘 す る こ と が で き る だ ろ う 。

第 一 に 、 職 業 訓 練 政 策 の ベ ー ス に あ る の は 、 教 育 が 十 分 に 行 き 届 い て お ら ず 、 経 済 的 に も 恵 ま れ な い 移 民 た ち へ の 対 策 と い う 価 値 観 で あ る 。と り わ け 、19世 紀 末 に 増 加 し た「 新 移 民 」 の 青 年 た ち を 、 い か に 健 全 な 形 で ア メ リ カ 社 会 に 吸 収 す る か と い う 課 題 を 解 決 す る た め の 議 論 か ら 、 職 業 訓 練 政 策 は ス タ ー ト し て い る 。 現 在 で も 、 社 会 的 ・ 経 済 的 に 不 利 な 条 件 を 背 負 っ て い る 移 民 は 多 い 。 ア メ リ カ の 職 業 訓 練 政 策 を 考 え る 上 で は 、 常 に タ ー ゲ ッ ト と し て こ れ ら の 移 民 層 が 念 頭 に 置 か れ て き た と 言 っ て よ い1。ア メ リ カ は 、先 進 国 の 中 で は 最 も 格 差 が 大 き い2。企 業 か ら 教 育 訓 練 を 提 供 さ れ て い る 割 合 も 、高 学 歴 者 の 方 が 高 い 。し か し 同 時 に 、底 辺 層 が そ こ か ら 抜 け 出 す た め の 制 度 も 、 検 討 さ れ 続 け て き た 。

第 二 に 、 転 職 率 が 高 く 、 流 動 的 な 労 働 市 場 が 形 成 さ れ て い る と い う こ と で あ る 。 そ れ だ け に 、 ス キ ル ア ッ プ や 資 格 取 得 へ の 需 要 は 高 く 、 そ の た め の 教 育 訓 練 機 関 は 公 民 と も に 充 実 し て い る と 言 え る 。 社 会 人 や 主 婦 、 高 齢 者 や 移 民 な ど 、 伝 統 的 な 学 部 学 生 と は 異 な る 層 も 多 く 通 う 、 コ ミ ュ ニ テ ィ カ レ ッ ジ は 、 そ の 一 つ の 代 表 で あ る 。

第 三 に 、 学 校 教 育 に お け る 職 業 教 育 の 果 た す 役 割 が 大 き い と い う こ と で あ る 。 早 い 段 階 か ら 将 来 の 職 業 を 意 識 し た コ ー ス が 敷 か れ 、分 岐 し て ゆ く 欧 州 諸 国 の 制 度 、そ し て OJTを 中 心 と し た 企 業 内 教 育 が 大 き な 比 重 を 占 め る 日 本 の 制 度 と 、 異 な る 点 で あ ろ う 。 そ し て 、 若 年 層 で あ れ ば ハ イ ス ク ー ル 、 そ れ 以 降 で あ れ ば コ ミ ュ ニ テ ィ カ レ ッ ジ な ど 、 公 的 な 教 育 機 関 の 存 在 感 が 大 き い こ と も 特 徴 と 言 え る で あ ろ う 。 こ の こ と を 可 能 に し て い る の は 、 連 邦 政 府 か ら の 各 種 補 助 制 度 で あ る3

第 四 に 、 地 方 分 権 的 な 性 質 を 持 つ と い う こ と で あ る 。 他 の 制 度 と 同 様 、 連 邦 政 府 は 職 業 訓 練 政 策 に 対 し て 補 助 金 を 出 す 役 割 が 主 で あ り 、 そ の 実 行 は 州 政 府 や 各 種 委 員 会 に 委 ね ら れ 、 裁 量 が 与 え ら れ て い る 。

本 章 で は 、 こ の よ う な 背 景 を 持 つ 国 の 中 で 、 現 在 の ア メ リ カ の 教 育 訓 練 制 度 を 概 観 す る 。 は じ め に 、 前 提 と し て の 労 働 市 場 の 状 況 に つ い て 述 べ た い 。

1 横 尾 (2013) 参 照 。

2 2013年 の ア メ リ カ の ジ ニ 係 数 は0.396と 高 い 数 値 と な っ て い る 。OECD Income inequality参 照 。

https://data.oecd.org/inequality/income-inequality.htm

3 横 尾 (2013pp.4-7参 照 。

(2)

2 . 労 働 市 場 の 状 況 と 特 徴

( 1 ) 概 観

2008年 の リ ー マ ン シ ョ ッ ク の 後 、 失 業 率 は 大 き く 跳 ね 上 が り 、 雇 用 労 働 者 数 も 減 少 し た 。 そ の 後 、 徐 々 に 失 業 率 は 低 下 し つ つ あ る が 、 未 だ 以 前 の 水 準 に は 戻 ら ず 、 景 気 後 退 に よ り 雇 用 創 出 は 思 う に 任 せ な い 状 況 が 続 い て い る 。 農 業 労 働 者 を も 含 め た 失 業 率 の 推 移 を 他 国 と 比 べ て み る と 、 以 下 の 図 表1-1 の 通 り と な る 。 そ し て 、 非 農 業 部 門 の 雇 用 者 数 の 推 移 は 、 図 表 1-2 の 通 り で あ る 。 い ず れ も 、 リ ー マ ン シ ョ ッ ク の 影 響 を 非 常 に 大 き く 受 け て い る こ と が 表 れ て い る 。

図 表1-1 農 業 部 門 を 含 む 失 業 率 の 推 移 ( 2000年 −)

出 所 :OECD harmonised unemployment rate (HUR)よ り 筆 者 作 成

図 表1-2 非 農 業 部 門 総 労 働 者 数 の 推 移 ( 2006年 −、 単 位 : 千 人 )

出 所 :BLS Current Employment Surveyよ り 筆 者 作 成 0.00%

2.00% 4.00% 6.00% 8.00% 10.00% 12.00%

US OECD平均

124,000 126,000 128,000 130,000 132,000 134,000 136,000 138,000 140,000 142,000

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

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ア メ リ カ の 場 合 、 失 業 率 に は 人 種 、 年 齢 、 学 歴 、 産 業 に よ り 、 違 い が あ る こ と が 特 徴 で あ る 。 そ し て 、 高 い 失 業 率 が 続 い て い る 背 景 に は 、 産 業 構 造 の 転 換 も 挙 げ ら れ る だ ろ う 。 リ ー マ ン シ ョ ッ ク の 影 響 の 大 き か っ た 建 設 業 、 製 造 業 と い っ た 産 業 の 労 働 者 た ち は 、 景 気 の 影 響 を 被 る こ と が 少 な く 、 現 在 で も 需 要 の 高 い 医 療 ・ 介 護 と い っ た 産 業 へ 移 る こ と を 忌 避 す る 傾 向 に あ る4

非 農 業 労 働 者 の み で み る と 、201610 月 現 在 で は 、 全 体 の 失 業 率 は 4.6% と 、 同 様 に 減 少 傾 向 に あ る 。 た だ し 、10 代 の 失 業 率 は 15.2% と 、 若 年 層 の 雇 用 状 況 は 依 然 と し て 悪 い 。 ま た 、 人 種 に つ い て も 、 白 人 は 4.2% 、 ア ジ ア 系 は 3.0% と 平 均 を 下 回 る の に 対 し 、 黒 人 は 8.1% 、 ヒ ス パ ニ ッ ク 系 は 5.7% と 高 い 。 ま た 、 長 期 の 失 業 者 (27 週 以 上 ) は 失 業 者 全 体 の 24.8% を 占 め る が 、 そ の 数 も 減 少 し つ つ あ る 。

( 2 ) 学 歴 と の 関 係

図 表1-3は 、201610月 現 在 に お け る 、25歳 以 上 の 学 歴 別 の 失 業 率( 季 節 調 整 済 み )で あ る 。 明 ら か に 、 学 歴 が 高 い ほ ど 失 業 率 は 低 く な る 。

図 表1-3 学 歴 別 失 業 率

学 歴 失 業 率()

高 校 未 卒 業 7.9

高 校 卒 業 4.9

カ レ ッ ジ 卒 業 3.9

大 学 卒 業 以 上 2.3

出 所 :BLS Current Employment Survey 2016よ り 筆 者 作 成

( 3 ) 産 業 別 の 需 要 と 失 業 率

図 表1-4は 、2006年 か ら2015年 ま で の10年 間 に お け る 、産 業 別 雇 用 者 数 の 推 移 で あ る 。 産 業 別 で 見 た 場 合 、近 年 最 も 需 要 が 伸 び て い る の が 、「 教 育 、医 療・福 祉 」で あ る 。ま た 、他 の 産 業 が リ ー マ ン シ ョ ッ ク 後 に 軒 並 み そ の 雇 用 者 数 を 減 少 さ せ て い る 中 に あ っ て 、 唯 一 、 減 少 を 経 験 し て い な い 産 業 で も あ る 。さ ら に 、2015年 1 年 間 で 実 に 701,000の 雇 用 が 増 加 し て い る 。 う ち 、472,000 が 医 療 ・ 福 祉 の 分 野 で あ り 、 特 に リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 施 設 と 病 院 で の 雇 用 増 が 大 き い 。次 に 増 加 率 が 高 い の が 、「 専 門 的 サ ー ビ ス 」の 分 野 で あ り 、中 で も コ ン ピ ュ ー タ ー シ ス テ ム 関 係 の 雇 用 が 増 え て い る 。 リ ー マ ン シ ョ ッ ク の 直 後 に 大 き な 打 撃 を 受 け た「 レ ジ ャ ー・ホ ス ピ タ リ テ ィ 産 業 」「 建 設 業 」は 、そ の 後 雇 用 者 数 で は 回 復 を 見 せ た も の の 、 雇 用 の 安 定 性 を 欠 く た め に 、 失 業 率 は 高 い 。

図 表1-5は 、201610月 現 在 に お け る 、16歳 以 上 の 労 働 者 の 産 業 別 失 業 率 で あ る 。こ れ に よ る と 、 最 も 失 業 率 が 高 い の が 「 農 業 部 門 」、 次 い で 、「 レ ジ ャ ー ・ ホ ス ピ タ リ テ ィ 産 業 」、

4 OECD2014pp.18-19参 照 。

(4)

「 建 設 業 」 と 続 く 。 こ こ で も 、 最 終 学 歴 が 高 く な い 労 働 者 の 割 合 が 高 い と 思 わ れ る 産 業 の 失 業 率 が 高 い こ と が わ か る 。 一 方 、 失 業 率 が 最 も 低 い 産 業 は 「 公 務 部 門 」 で あ り 、「 金 融 」「 教 育 ,医 療・福 祉 」「 運 輸 ,電 気・ガ ス・水 道 」が 続 く 。こ ち ら も 、高 い 最 終 学 歴 の 労 働 者 の 割 合 が 高 い と 思 わ れ る 産 業 が 多 い 。 ま た 、 景 気 動 向 に 左 右 さ れ に く い 産 業 で あ る こ と も 、 一 つ の 共 通 点 と な る で あ ろ う 。

図 表 1-4 産 業 別 雇 用 者 数 の 推 移 ( 単 位 : 千 人 )

出 所 :BLS Current Employment Surveyよ り 筆 者 作 成 ( ▲ は 前 年 度 比 マ イ ナ ス )

図 表1-5 産 業 別 失 業 率 お よ び 就 業 者 数 と 平 均 時 給

産 業 区 分 失 業 率 ( % ) 就 業 者 数 ( 人 ) 平 均 時 給 ($

鉱 山 、 採 石 、 石 油 、 ガ ス 採 取 4.7 682,000 31.76

建 設 5.7 6,704,000 38.28

製 造 業 ( 耐 久 ) 3.4 7,656,000 27.43

製 造 業 ( 非 耐 久 ) 4.7 4,604,000 24.06

商 業 ・ 小 売 4.4 21,926,300 23.86

運 輸 、 電 気 ・ ガ ス ・ 水 道 3.2 4,932,900 30.95

情 報 4.2 2,768,000 37.27

金 融 2.8 8,355,000 32.70

専 門 的 サ ー ビ ス 4.5 20,492,000 31.12

教 育 、 医 療 ・ 福 祉 3.1 22,869,000 25.87

レ ジ ャ ー ・ ホ ス ピ タ リ テ ィ 7.1 15,600,000 15.06

そ の 他 サ ー ビ ス 業 3.8 5,722,000 23.12

農 業 9.6

公 務 部 門 2.1 22,245

自 営 ・ 家 族 従 業 者 3.8

出 所 :BLS Current Employment Surveyよ り 筆 者 作 成

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 鉱 業 656 706 746 761 667

736 839 852 873 890

建 設 7,601 7,725 7,476 6,567 5,580 5,427 5,626 5,741 5,999 6,351 製 造 ( 耐 久 ) 8,982 8,890 8,693 7,832 6,989 7,168 7,396 7,515 7,591 7,764 製 造( 非 耐 久 ) 5,228 5,118 5,032 4,729 4,471 4,453 4,440 4,465 4,503 4,547 商 業 ・ 運 輸 ・

イ ン フ ラ

26,165 26,499 26,714 25,480 24,538 24,799 25,343 25,678 26,147 26,698

卸 売 5,840 5,969 6,035 5,762 5,455 5,481 5,620 5,714 5,780 5,853 小 売 15,354 15,450 15,570 14,783 14,388 14,535 14,816 14,941 15,258 15,510 情 報 3,053 3,030 3,026 2,891 2,738 2,676 2,663 2,661 2,721 2,734 金 融 8,307 8,389 8,277 8,018 7,733 7,680 7,735 7,837 7,915 8,061 専 門 サ ー ビ ス 17,297 17,834 18,037 17,065 16,520 17,056 17,694 18,212 18,770 19,370 教 育 、 医 療 ・

福 祉

17,946 18,415 18,979 19,481 19,820 20,153 20,571 20,943 21,220 21,731

レ ジ ャ ー ・ ホ ス ピ タ リ テ ィ

12,945 13,338 13,542 13,222 12,932 13,149 13,598 14,032 14,494 14,924

そ の 他 サ ー ビ

5,425 5,467 5,522 5,428 5,323 5,327 5,415 5,459 5,534 5,599

政 府 関 係 21,847 22,095 22,388 22,579 22,491 22,258 22,945 22,871 22,807 21,954

(5)

第 2 節 職 業 訓 練 制 度 の 体 系

図 表 1-6 ア メ リ カ の 教 育 訓 練 制 度 体 系

資 料 出 所 : 文 部 科 学 省 (2016.11「 平 成28年 版 諸 外 国 の 教 育 統 計 」

就 学 前 教 育 : 幼 稚 園 の ほ か 保 育 学 校 等 で 行 わ れ 、 通 常35歳 児 を 対 象 と す る 。

義 務 教 育:就 学 義 務 に 関 す る 規 定 は 州 に よ り 異 な る 。就 学 義 務 開 始 年 齢 を7歳 と す る 州 も あ る が 、実 際 に は6 か ら の 就 学 が 認 め ら れ て お り 、6歳 児 の 大 半 が 就 学 し て い る 。義 務 教 育 年 限 は912年 で あ る が 、10年 と す る 州 が 最 も 多 い 。

初 等 中 等 教 育 : 合 計12年 で あ る が 、 そ の 形 態 は6-3(2)-3(4)年 制 、8-4年 制 及 び6-6年 制 、5-3-4年 制 、4-4-4 制 な ど 多 様 で あ る 。 沿 革 的 に は 、 今 世 紀 初 め に は 8-4 年 制 が 殆 ど で あ っ た が 、 そ の 後 6-6 年 制 、 次 い で 6-3(2)-3(4)年 制 が 増 加 し 、 最 近 は ミ ド ル ス ク ー ル の 増 加 に と も な い 、5-3-4 年 制 が 一 般 的 で あ る 。 こ の ほ か 、 初 等 ・ 中 等 双 方 の 段 階 に ま た が る 学 校 も あ る 。

2012年 の 公 立 初 等 学 校 に お け る 形 態 別 割 合 を み る と 、3年 制 又 は4年 制 小 学 校7.0% 、5年 制 小 学 校34.6% 、 6年 制 小 学 校 14.2% 、8年 制 小 学 校 8.8% 、 ミ ド ル ス ク ー ル 17.9% 、 初 等 ・ 中 等 双 方 の 段 階 に ま た が る 学 校 8.7% 、 そ の 他8.8% で あ り 、 公 立 中 等 学 校 の 形 態 別 の 割 合 を み る と 、 下 級 ハ イ ス ク ー ル (3年 又 は2年 制 ) 9.2% 、上 級 ハ イ ス ク ー ル(3年 制 )2.2% 、4年 制 ハ イ ス ク ー ル52.2% 、上 級・下 級 併 設 ハ イ ス ク ー ル( 通 常 6年 )10.1% 、初 等・中 等 双 方 の 段 階 に ま た が る 学 校20.8% 、そ の 他5.6% と な っ て い る 。な お 、初 等・中 等 双 方 の 段 階 に ま た が る 学 校 は 初 等 学 校 、 中 等 学 校 そ れ ぞ れ に 含 め 、 比 率 を 算 出 し て い る 。

高 等 教 育 :総 合 大 学 、リ ベ ラ ル ア ー ツ カ レ ッ ジ を は じ め と す る 総 合 大 学 以 外 の4年 制 大 学 、2年 制 大 学 に 大 別 さ れ る 。 総 合 大 学 は 、 教 養 学 部 、 専 門 職 大 学 院 ( 学 部 レ ベ ル の プ ロ グ ラ ム を 提 供 し て い る 場 合 も あ る ) 及 び 大 学 院 に よ り 構 成 さ れ る 。 専 門 職 大 学 院 ( 学 部 ) は 、 医 学 ・ 工 学 ・ 法 学 な ど の 職 業 専 門 教 育 を 行 う も の で 独 立 の 機 関 と し て 存 在 す る 場 合 ( 専 門 大 学 、 専 門 職 大 学 院 大 学 ) も あ る 。

専 門 職 大 学 院 ( 学 部 ) へ 進 学 す る た め に は 、 通 常 、 総 合 大 学 又 は リ ベ ラ ル ア ー ツ カ レ ッ ジ に お い て 一 般 教 育 を 受 け( 年 限 は 専 攻 に よ り 異 な る )、さ ら に 試 験 ・ 面 接 を 受 け る 必 要 が あ る 。2年 制 大 学 に は 、ジ ュ ニ ア カ レ ッ ジ 、 コ ミ ュ ニ テ ィ カ レ ッ ジ 、 テ ク ニ カ ル カ レ ッ ジ が あ る 。 州 立 の2年 制 大 学 は 主 と し て コ ミ ュ ニ テ ィ カ レ ッ ジ あ る い は テ ク ニ カ ル カ レ ッ ジ で あ る 。

(6)

1 .WIAま で の 職 業 訓 練 政 策

冒 頭 で 述 べ た よ う な 特 徴 を 持 つ ア メ リ カ の 教 育 訓 練 制 度 の 成 立 過 程 の 出 発 点 は 、1906年 か ら 始 ま る 職 業 教 育 運 動 (Vocational education movement) で あ る 。 こ こ か ら 、1917年 に 、 初 め て の 職 業 教 育 連 邦 補 助 法 で あ る ス ミ ス・ヒ ュ ー ズ 法5へ と つ な が っ た 。こ の よ う な 運 動 が 起 こ っ た 背 景 は 、1880年 代 以 降 、東 欧・南 欧 か ら の い わ ゆ る「 新 移 民 」が 増 加 し た こ と で あ る 。 公 立 学 校 に 入 学 し た こ れ ら の 子 供 た ち は 、 言 語 や 宗 教 、 習 慣 な ど の 点 で 違 い が 大 き か っ た こ と も あ り 、 進 級 遅 滞 が 問 題 視 さ れ て い た 。 ま た 、 義 務 教 育 期 間 を 終 え た と し て も 、 彼 ら は 、 不 熟 練 ・ 低 熟 練 の 職 に 就 く こ と し か で き ず 、 生 涯 、 社 会 階 層 を 乗 り 越 え る こ と が 困 難 に な り 、 ひ い て は 国 力 の 低 下 に つ な が る 可 能 性 が あ る と い う 問 題 も 存 在 し て い た 。 こ の よ う な 事 情 か ら 、 公 的 な 職 業 教 育 制 度 の 確 立 が 議 論 さ れ る よ う に な っ た の で あ る6

ス ミ ス ・ ヒ ュ ー ズ 法 で は 、 全 米 の 州 に 職 業 教 育 の た め の 連 邦 補 助 金 が 支 出 さ れ る こ と が 規 定 さ れ て い る 。 そ れ だ け に 、 公 共 性 と い う 点 が 強 く 強 調 さ れ た 。 例 え ば 、 連 邦 補 助 は 公 立 の 機 関 に 限 ら れ る こ と 、「 新 移 民 」に 限 ら ず 、広 く ア メ リ カ 国 民 全 体 が 教 育 機 会 を 得 ら れ る こ と な ど で あ る 。 そ の た め 、 若 年 層 の み な ら ず 、 す で に 職 業 に 就 い て い る 成 人 や 職 を 失 っ て い る 成 人 に も 開 放 さ れ な け れ ば な ら な い と い う 理 念 を 持 つ7。 こ の よ う な 価 値 観 が 、1960 年 代 以 降 に 急 増 し た コ ミ ュ ニ テ ィ カ レ ッ ジ 等 に も 反 映 さ れ 、 現 在 の 形 を 作 っ て い る と 言 っ て よ い で あ ろ う 。

そ の 後 、 ニ ュ ー デ ィ ー ル 期 に 、 ワ グ ナ ー ・ ペ イ ザ ー 法 や 社 会 保 障 法 に お い て 、 さ ま ざ ま な 機 関 や プ ロ グ ラ ム が 生 み 出 さ れ た が 、 こ こ で は 、 あ く ま で 低 所 得 者 や 失 業 者 が 対 象 と な っ て お り 、普 遍 性 を 欠 い て い た 。そ の 後 、1961年 の 地 域 再 開 発 法 に よ っ て 、初 め て 連 邦 レ ベ ル で の 職 業 訓 練 計 画 が 定 め ら れ た 。こ の 時 期 は 、公 民 権 運 動 と も 相 ま っ て 、1962年 に は 、最 初 の 職 業 訓 練 基 本 法 で あ る 労 働 力 開 発 訓 練 法 、1963年 の 職 業 教 育 法 な ど 、ケ ネ デ ィ 政 権 に よ っ て 次 々 と 関 連 法 案 が 作 ら れ 、 拡 大 し て い っ た 時 期 で あ っ た8。 そ の 後 も 、 ア メ リ カ で は 約10年 か ら 15 年 の 周 期 で 職 業 訓 練 に 関 す る 新 し い 法 制 度 が 生 み 出 さ れ て い る 。1980 年 代 に な り 、 経 済 の サ ー ビ ス 化 や ソ フ ト 化 と い う 構 造 変 化 に 対 応 し 、 停 滞 し た 景 気 か ら 脱 却 す る た め に 、 労 働 力 の 付 加 価 値 を 高 め る た め の 職 業 教 育 訓 練 が 真 剣 に 議 論 さ れ る よ う に な っ た 。 自 前 で 充 実 し た 企 業 内 教 育 訓 練 プ ロ グ ラ ム を 用 意 で き る 余 裕 の な い 企 業 に と っ て は 、 さ ま ざ ま な 公 的 な 援 助 を 利 用 で き る こ と は 、 非 常 に 重 要 で あ る 。

2 .Workforce Investment ActWIA

こ の よ う な 中 か ら 、 ク リ ン ト ン 政 権 時 代 に 、 ワ グ ナ ー ・ ペ イ ザ ー 法 を 修 正 し た Workforce

5 ス ミ ス ・ ヒ ュ ー ズ 法 で は 、 中 等 段 階 の 職 業 教 育 に お け る 担 当 教 員 の 給 与 、 養 成 課 程 、 ま た 、 関 連 の 調 査 ・ 研 究 に 対 し て 、 連 邦 政 府 か ら 補 助 金 が 与 え ら れ る こ と が 定 め ら れ て い る 。 横 尾 (2013p.8参 照 。

6 横 尾 (2013p.131参 照 。 7 横 尾 (2013pp.424-425参 照 。 8 斎 藤 (1991p.180参 照 。

(7)

Investment Act of 1998、通 称WIAが 制 定 さ れ る に 至 っ た 。低 所 得 者 や マ イ ノ リ テ ィ へ の 援 助 中 心 と い う 、 ス ミ ス ・ ヒ ュ ー ズ 法 以 来 の 価 値 観 か ら 前 進 し 、 よ り 広 い 対 象 者 を 範 疇 に し た 点 で 、画 期 的 な 法 律 で あ る と 言 え る9。そ し て 、求 職 者 に 対 す る 金 銭 的 な 援 助 よ り も 、仕 事 の 斡 旋 、 キ ャ リ ア 形 成 に 関 す る 相 談 、 教 育 訓 練 の 提 供 と い っ た 、 求 職 者 を 実 行 へ 移 す た め の サ ポ ー ト に 重 点 が 置 か れ た こ と が 、 一 つ の 大 き な 特 徴 で あ る 。

理 念 と し て 掲 げ て い る の は 、 連 邦 政 府 ・ 州 政 府 ・ 地 域 の パ ー ト ナ ー シ ッ プ 、 サ ー ビ ス の デ ザ イ ン と 提 供 の 中 心 を 担 う の は 各 地 域 の 労 働 力 投 資 委 員 会 (WIB: Workforce Investment Boards)で あ り 、こ れ ら が パ ー ト ナ ー シ ッ プ の 締 結 の 仲 介 者 と な る こ と 等 で あ る 。さ ま ざ ま な 主 体 の 仲 介 を 行 う こ と が 強 調 さ れ て い る よ う に 、WIAは 、求 職 者 、雇 用 者 双 方 を サ ポ ー ト す る も の で あ る 。 求 職 者 に は 、 ス キ ル レ ベ ル ・ 能 力 の 測 定 、 キ ャ リ ア ガ イ ダ ン ス の 実 施 、 求 職 の た め の ワ ー ク シ ョ ッ プ 、 そ の 他 の 訓 練 な ど を 提 供 す る 。 雇 用 者 に 対 し て は 、 求 職 者 の 経 歴 、 ス キ ル や 能 力 を 鑑 み た マ ッ チ ン グ を 行 い 、 埋 め に く い ポ ス ト を 分 析 す る サ ポ ー ト 、 そ し て 、 職 務 の 再 構 成 や レ イ オ フ の 手 助 け な ど も 行 っ て い る 。

こ れ ら を 実 施 す る 中 心 と な る の が 、 ワ ン ス ト ッ プ ・ セ ン タ ー で あ り 、 コ ア サ ー ビ ス は こ こ で 受 け る こ と が で き る 。 そ の 成 り 立 ち は 、 ウ ィ ス コ ン シ ン 州 な ど 、 い く つ か の 州 で 試 験 的 に 行 わ れ た 取 り 組 み を 、1998WIAで 連 邦 政 府 の 施 策 と し て 取 り 入 れ た も の で あ る 。連 邦 労 働 省 、連 邦 教 育 省 、連 邦 保 健 福 祉 省 、連 邦 住 宅 都 市 開 発 省 が 関 わ る た め 、根 拠 法 は 、WIOA、 ワ グ ナ ー・ペ イ ザ ー 法 、1973年 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 法 、社 会 保 障 法 、1965年 高 齢 者 法 、2006 年 カ ー ル ・D. パ ー キ ン ス 職 業 ・ 応 用 技 術 教 育 法 (Carl D. Perkins Vocational and Applied Technology Act of 20061974年 通 商 法 、合 衆 国 法 典38、第41章(38 U.S.C. Chapter 41 退 役 軍 人 に 関 す る 教 育 訓 練 )、地 域 共 同 体 サ ー ビ ス 包 括 補 助 金 法(Community Services Block Grant Actと 複 数 に ま た が る 。ま た 、貧 困 家 族 一 時 扶 助(TANF= Temporary Assistance for Needy Families) の 受 給 者 向 け プ ロ グ ラ ム 、1990 年 国 家 及 び コ ミ ュ ニ テ ィ ・ サ ー ビ ス 法

(National and Community Service Act)で 認 可 さ れ た プ ロ グ ラ ム 、そ の 他 の 適 切 な 政 府 も し く は 民 間 セ ク タ ー の プ ロ グ ラ ム も 実 施 し て い る 。

WIAに は 、こ れ ら の 義 務 付 け ら れ た プ ロ グ ラ ム を 実 施 す る 方 法 、つ ま り 、サ ー ビ ス を 提 供 す る パ ー ト ナ ー の 選 考 に つ い て フ レ キ シ ビ リ テ ィ が 与 え ら れ て お り 、 デ ー タ の 共 有 や 紹 介 も 許 可 さ れ て い る 。 パ ー ト ナ ー と な っ た 者 に は 、 ワ ン ス ト ッ プ ・ セ ン タ ー の 発 展 や 運 営 の た め の コ ス ト を 共 に 担 う こ と が 期 待 さ れ る 。 こ の パ ー ト ナ ー の 他 に 、 ワ ン ス ト ッ プ ・ セ ン タ ー は そ の エ リ ア の 必 要 に 応 じ て 、 追 加 的 な パ ー ト ナ ー を 選 ぶ 自 由 も 与 え ら れ て い る 。

WIAの 実 施 に 当 た っ て は 、 全 米 を 約600の 地 域 (Local Workforce Investment Area) に 区 分 し 、 約 3,000 の ワ ン ス ト ッ プ ・ セ ン タ ー が 設 置 さ れ て い る 。 こ れ ら は 地 域 の WIB に よ っ て 管 理 さ れ 、そ の 地 域 特 有 の 需 要 に 応 え る こ と が 求 め ら れ る 。WIBは 、連 邦 政 府 の ガ イ ド

9 沼 田 (2001pp.176-180参 照 。

(8)

ラ イ ン や 規 則 に 基 づ い て 作 成 さ れ た 各 プ ロ グ ラ ム を 管 理 す る 。WIBは 、地 域 の 計 画 を 発 展 さ せ 、 州 知 事 に 提 出 す る 義 務 を 負 い 、 各 地 の ワ ン ス ト ッ プ ・ セ ン タ ー の 運 営 者 を 指 名 し 、 サ ー ビ ス を 提 供 す る 権 利 を 持 つ 組 織 を 選 定 す る 。 各 地 の 委 員 会 は 地 域 の 行 政 単 位 、 主 と し て カ ウ ン テ ィ 政 府 の 拡 張 機 関 と し て 位 置 付 け ら れ る 。

地 域 の WIB は 、 企 業 や 市 民 の リ ー ダ ー か ら 構 成 さ れ 、 社 会 的 サ ー ビ ス の 組 織 、 教 育 機 関 や 労 働 者 団 体 に も 広 が る 。 雇 用 サ ー ビ ス を デ ザ イ ン し た り 提 供 し た り す る 際 に 、 企 業 の ニ ー ズ を 考 慮 に 入 れ る こ と が 必 要 で あ る た め 、WIAWIBの メ ン バ ー の 少 な く と も51% が 企 業 の リ ー ダ ー で あ る こ と を 求 め た 。 主 た る 契 約 の も と で 、 連 邦 と 州 か ら の WIA プ ロ グ ラ ム に 対 す る 資 金 は 、 カ ウ ン テ ィ や 地 域 の WIB に 支 給 さ れ る 。 実 際 の サ ー ビ ス の 提 供 は 、 そ の 他 の 公 的 な 機 関 ( 行 政 組 織 や 教 育 機 関 な ど ) や 民 間 の 組 織 ( 営 利 ・ 非 営 利 ) を 含 む 仲 介 者 に よ っ て 請 け 負 わ れ る 。 委 員 会 が 直 接 サ ー ビ ス 提 供 を 行 う こ と は な い 。

ほ と ん ど の 資 金 は 連 邦 政 府 か ら 出 資 さ れ 、 州 政 府 を 通 じ て 、 地 域 の 行 政 主 体 へ と 降 り て く る 。 各 地 域 の 委 員 会 は 、 資 金 提 供 者 と な る 地 域 の 行 政 主 体 と 、 プ ロ グ ラ ム を 管 理 す る た め の 主 契 約 を 結 ぶ 。 地 域 の 行 政 主 体 は パ ー ト ナ ー シ ッ プ を 形 成 す る 。 地 域 の 委 員 会 は 、 民 間 や NPOの よ う な こ れ ら の 受 託 組 織 と 求 職 の 援 助 や 教 育 訓 練 を 提 供 す る た め の 契 約 を 結 ぶ 。

WIAと パ ー ト ナ ー シ ッ プ を 結 ぶ 者 は 、適 格 者 審 査 を 経 な け れ ば な ら な い 。そ の プ ロ セ ス は

さまざまだが、WIAオリエンテーションやスクリーニングから始まることが多い。ここでは、候

補者がワンストップ・センターでサービスの提供を行う能力があるかどうか、目的やミッション を描き出せるかを審査する。これを経てから、正式な契約と認証が行われるシステムである。

図 表1-7 地 域 委 員 会 と の パ ー ト ナ ー シ ッ プ 関 係

出 所 :OECD2014p.23よ り 引 用

(9)

3 .WIAか らWorkforce Innovation and Opportunity ActWIOA) へ

こ の よ う な WIA に よ る 職 業 訓 練 ・ 斡 旋 の た め の シ ス テ ム が 始 ま っ て 16 年 の の ち 、2014 年 に WIA を 修 正 す る 形 で 生 ま れ た の が 労 働 力 革 新 機 会 法 (Workforce Innovation and Opportunity Act通 称WIOAで あ る 。WIOATitleⅠ か ら Ⅴ ま で 、5つ の 章 に 分 か れ る 。 TitleⅠ で は 、労 働 力 の 能 力 開 発 の た め の 活 動 に つ い て 、TitleⅡ で は 成 人 の 教 育 と リ テ ラ シ ー に つ い て 、TitleⅢ で は ワ グ ナ ー・ペ イ ヤ ー 法 の 修 正 条 項 に つ い て 、TitleⅣ で は 社 会 復 帰 法 の 修 正 条 項 に つ い て 、TitleⅤ で は 一 般 規 定 、 と り わ け WIA か ら の 移 行 規 定 に つ い て 、 そ れ ぞ れ 定 め ら れ て い る 。

TitleⅠ の プ ロ グ ラ ム は 、ア メ リ カ 労 働 省 、特 に 教 育 訓 練 局 の 監 督 の も と に 置 か れ る 。こ れ ら の 2015年 度 の 予 算 は 48億 ド ル で あ り 、WIOA の も と で 行 わ れ る プ ロ グ ラ ム 全 体 の 53% を 占 め る 最 も 大 き な も の で あ る 。TitleⅠ に 与 え ら れ た 予 算 は 図 表1-8の 通 り で あ る 。

図 表1-8 2015年 度 か ら2020年 度 ま で のTitleⅠ の 予 算 ( 単 位 : 千 ド ル )

出 所 :Bradley2015p.38よ り 引 用

WIOA で 強 調 さ れ て い る の は 、「 統 合 さ れ た 、 仕 事 が 引 き 起 こ す シ ス テ ム 」 と い う こ と で あ る 。 具 体 的 に は 、 以 下 の よ う な ポ リ シ ー と な っ て 表 れ る 。

・ サ ー ビ ス 提 供 の 最 前 線 と 、 地 方 政 府 の 管 理 と の 調 整 。

・ 国 民 誰 も が ア ク セ ス で き る こ と 。 た だ し 、 最 優 先 さ れ る の は 、 低 所 得 者 や 低 ス キ ル の 労 働 者 で あ る 。

・ 自 由 に 訓 練 を 選 べ る 個 人 の 訓 練 勘 定 。

・ 産 業 界 と の パ ー ト ナ ー シ ッ プ に よ っ て 援 助 を 受 け て 作 ら れ る 、 キ ャ リ ア パ ス の た め の 戦 略 。 例 え ば 、

- 教 育 訓 練 の 入 り 口 と 出 口 は さ ま ざ ま で あ っ て よ い 。

(10)

- 成 果 の 測 定 指 標 と し て の 認 証 制 度 を 促 進 す る 。

- 部 門 ご と の 戦 略 作 成 に は 、 雇 用 主 が 関 与 す る こ と と し 、 雇 用 主 の ニ ー ズ と 地 域 の 労 働 市 場 の ニ ー ズ を 調 整 す る よ う な 情 報 を 集 約 す る 。

こ れ ら の 方 針 は 、 各 州 ・ 地 域 に 設 置 さ れ る 労 働 力 開 発 委 員 会 (WDBWorkforce Development Boardの メ ン バ ー の 構 成 に 関 す る 規 定 に も 表 れ て い る( 図 表1-9参 照 )。WDBWIA 下 の WIBWIOA 下 で 引 き 継 ぐ も の で あ る 。 か ね て よ り 、 地 域 の 企 業 に ど う い っ た ス キ ル を 持 っ た 労 働 者 の 需 要 が あ る の か を 明 ら か に し 、 そ れ に 沿 っ た マ ッ チ ン グ 、 お よ び 教 育 訓 練 を 行 う こ と が 大 き な 課 題 と さ れ て い た 。 そ の た め 、 企 業 側 か ら 選 出 さ れ た メ ン バ ー の 割 合 が 非 常 に 大 き い 構 成 と な っ て い る 。 委 員 は こ の ほ か 、 コ ミ ュ ニ テ ィ 組 織 、 教 育 訓 練 機 関 、 労 働 組 合 な ど で 構 成 さ れ る 。 各 州 、 市 、 郡 、 も し く は そ の 連 合 と い っ た 単 位 に 置 か れ た WDB に は 、 ワ ン ス ト ッ プ ・ セ ン タ ー の 運 営 が 任 さ れ て お り 、 委 員 は そ れ ぞ れ の 利 害 を 調 整 し な が ら 、 地 域 求 職 ・ 求 人 サ ー ビ ス 、 職 業 訓 練 等 の 事 業 を 行 っ て い る 。 事 業 の 認 可 と 予 算 配 分 、 評 価 が 連 邦 政 府 、 州 政 府 が 戦 略 の 立 案 、 評 価 、 連 邦 労 働 省 と の 調 整 、WDB が 関 係 者 の 利 害 調 整 と 求 職・求 人 サ ー ビ ス 、職 業 訓 練 等 の 事 業 を 実 施 、と い っ た 役 割 分 担 に な っ て い る 。 総 括 的 に は 州 知 事 が 予 算 配 分 と 評 価 を 行 う 。 予 算 は 、 連 邦 政 府 助 成 金 、 州 予 算 、 民 間 企 業 や 寄 付 金 財 団 か ら の 助 成 金 に よ っ て 構 成 さ れ る 。

図 表1-9 WIOAに お け るWDBメ ン バ ー の 構 成

州 地 域

最 低 人 員 :33名 最 低 人 員 :19

企 業 側 :17名 企 業 側 :10

州 知 事 :1名 労 働 者 側 :4

う ち 、2名 は 労 働 者 代 表

1名 は 徒 弟 訓 練 プ ロ グ ラ ム の 代 表 で あ る こ と

州 議 会 の メ ン バ ー :2名 教 育 訓 練 組 織 の 代 表 :2

選 抜 さ れ た 地 方 自 治 体 職 員 :2名 行 政 お よ び 経 済 開 発 の 代 表 :3名 う ち 、1名 は 経 済 ・ 地 域 開 発

1名 は 雇 用 サ ー ビ ス 1名 は 職 業 復 帰 の 代 表 で あ る こ と 労 働 者 側 :7

う ち 、2名 は 労 働 者 代 表

1名 は 徒 弟 訓 練 プ ロ グ ラ ム の 代 表 で あ る こ と

コ ア ・ プ ロ グ ラ ム の ス タ ッ フ 代 表 :4

出 所 :Bradley2015p.11よ り 引 用

(11)

WIAか ら の 修 正 点 と し て は 、訓 練 と そ の 成 果 測 定 の た め の 認 証 制 度 の 構 築 に よ り 大 き な 力 点 が 置 か れ た こ と が 最 も 大 き い 。成 果 の 説 明 責 任 は 、「 成 果 の 指 標 」と「 成 果 の レ ベ ル 」か ら な る 。 成 果 の 指 標 に つ い て は 、 州 お よ び 地 域 が 申 請 し た 客 観 的 な 数 値 で な け れ ば な ら ず 、 成 果 の レ ベ ル は 数 値 的 な ス コ ア で あ る が 、 州 ・ 地 域 ・ 教 育 訓 練 局 の 交 渉 に よ っ て 決 ま る 。 成 果 の 指 標 と な る の は 、 以 下 の6つ で あ る 。

① プ ロ グ ラ ム 終 了 後2四 半 期 の 間 に 、助 成 を 受 け て い な い 雇 用 に 就 く こ と が で き た 参 加 者 の 割 合

② プ ロ グ ラ ム 終 了 後4四 半 期 の 間 に 、助 成 を 受 け て い な い 雇 用 に 就 く こ と が で き た 参 加 者 の 割 合

③ プ ロ グ ラ ム 終 了 後2四 半 期 の 間 に 、助 成 を 受 け て い な い 雇 用 に 就 く こ と が で き た 参 加 者 の 所 得 中 央 値

④ プ ロ グ ラ ム の 参 加 も し く は 終 了 後 1 年 以 内 に 、 認 可 さ れ た 中 等 教 育 後 の 資 格 ( ま た は 中 等 教 育 の 学 位 か 同 等 の も の ) を 取 得 し た 参 加 者 の 割 合

⑤ 認 可 さ れ た 中 等 教 育 後 の 資 格 あ る い は 雇 用 に 導 い た 教 育 訓 練 プ ロ グ ラ ム に 参 加 し た 者 、 そ し て 資 格 に ふ さ わ し い ス キ ル の 習 得 に 達 し た 者 の 割 合

⑥ 教 育 訓 練 担 当 相 に よ っ て 作 ら れ た 、 雇 用 主 に 貢 献 し た 効 果 の 指 標

そ し て 、制 度 の 運 営 管 理 に も よ り 力 を 入 れ る よ う に な っ て い る 。WIOAの も と で は 、連 邦 政 府 か ら 各 州 に 対 し て 、 ガ イ ダ ン ス や 技 術 的 な 援 助 が 文 書 に よ っ て 行 わ れ る 。 各 州 は こ れ に 対 し 、 連 邦 政 府 か ら 許 可 を も ら え る よ う な 制 度 運 営 の 計 画 書 を 提 出 し な け れ ば な ら な い 。 地 域 の 運 営 主 体 や 訓 練 提 供 者 は 州 か ら 、 州 は 連 邦 か ら 、 よ り 強 い 監 視 を 受 け る こ と に な っ た と 言 え る 。

も う 一 つ の 大 き な 修 正 点 は 、 サ ー ビ ス 提 供 の 「 ワ ン ス ト ッ プ 性 」 を よ り 強 め る こ と が 義 務 付 け ら れ た こ と で あ る 。 ワ ン ス ト ッ プ ・ セ ン タ ー で は 、 失 業 保 険 給 付 の サ ポ ー ト も 行 わ な け れ ば な ら ず 、 ス タ ッ フ は そ の た め の 手 続 き を す る 能 力 を も 求 め ら れ る よ う に な っ て い る10

ワ ン ス ト ッ プ ・ セ ン タ ー が 州 独 自 の プ ロ グ ラ ム か ら 始 ま っ た こ と か ら 、 そ の 姿 も 州 別 に 異 な っ て い る 。 行 政 機 関 の 外 局 や 非 営 利 組 織 と し て 行 政 か ら 独 立 し て い る と こ ろ も あ る 。 そ の 割 合 は お よ そ 半 々 で あ る 。 名 称 は 必 ず し も 統 一 さ れ て お ら ず 、 独 自 の 名 称 を つ け て い る 州 も あ る 。た と え ば ミ シ ガ ン 州 で は「 ミ シ ガ ン ワ ー ク ス ! 」で あ る 。WIOAに 基 づ く も の だ け で な く 、WIOAに 基 づ か な い も の も 存 在 し て い る 。

ワ ン ス ト ッ プ ・ セ ン タ ー は 、 基 礎 的 な 求 職 情 報 お よ び 労 働 市 場 情 報 を 提 供 す る 「 コ ア サ ー

10 OECD2016pp.120-121参 照 。

(12)

ビ ス 」、ス タ ッ フ の 支 援 の 下 で こ れ ま で の キ ャ リ ア の 包 括 的 な 評 価 や ケ ー ス マ ネ ジ メ ン ト な ど を 行 う「 集 中(intensive)サ ー ビ ス 」、短 期 、長 期 の 講 習 の 受 講 も し く はOJTに よ っ て 行 な わ れ る 「 職 業 訓 練 」 の 三 つ が 主 要 な 事 業 で あ る 。 そ の 内 容 は そ れ ぞ れ のWDB が 地 域 の 特 性 に あ わ せ た も の と な っ て お り 、 全 国 で 統 一 し た 仕 組 み を も っ て い る わ け で は な い 。 求 職 者 の 大 半 は コ ア サ ー ビ ス の 利 用 に と ど ま り 、 集 中 サ ー ビ ス 以 降 に 進 む の は 3% 程 度 、 そ れ 以 降 に 進 む 利 用 者 の う ち 、25% が 限 定 的 な 訓 練 を 受 講 し 、35% が 個 人 訓 練 勘 定 バ ウ チ ャ ー

(Individual Training Account vouchers) を 活 用 し て8ヶ 月 程 度 の 訓 練 を 受 講 す る 。 ワ ン ス ト ッ プ ・ セ ン タ ー は 事 業 実 施 に お い て 、 自 ら が 担 う 場 合 と 外 部 の 非 営 利 機 関 に 委 託 す る 場 合 が あ る 。 事 業 が 委 託 さ れ た 場 合 、 そ れ を 負 う の は 、 非 営 利 の カ ウ ン セ リ ン グ 機 関 や 非 営 利 の 民 間 職 業 訓 練 プ ロ バ イ ダ ー 等 で あ る 。 コ ミ ュ ニ テ ィ カ レ ッ ジ が 担 う こ と も あ る 。 そ の 仕 組 み や 内 容 は 州 、市 、郡 と い っ た 行 政 単 位 ご と だ け で な く 、ワ ン ス ト ッ プ ・セ ン タ ー ご と に も 異 な っ て お り 、 一 般 化 す る こ と は 難 し い 。 同 様 の こ と は コ ミ ュ ニ テ ィ カ レ ッ ジ の 運 営 に も い え る 。 そ も そ も ア メ リ カ に は 大 学 設 置 に 関 す る 連 邦 法 は 存 在 し て い な い 。 コ ミ ュ ニ テ ィ カ レ ッ ジ の 設 立 主 体 は 州 や 市 、 郡 、 郡 の 連 合 体 と い っ た よ う に 統 一 し た 基 準 が あ る わ け で は な い 。 運 営 は 地 域 の 関 係 者 の 利 害 を 調 整 し つ つ 行 わ れ る 。 ま た 、WDB の 委 員 と し て 参 加 す る 場 合 も あ る 。

4 . 職 業 能 力 評 価 制 度

2009年 よ り 、学 位 以 外 の 職 業 に 関 す る 資 格・認 証 制 度 の 効 果 に 関 す る 研 究 チ ー ム 、Federal Interagency Working Group on Expanded Measures of Enrollment and Attainment (GEMEnA)が 連 邦 政 府 に 立 ち 上 が っ た 。こ れ ま で 、取 得 し た 伝 統 的 な 学 位 が も た ら す さ ま ざ ま な 影 響 に 関 す る 研 究 は 数 多 く 積 み 重 ね ら れ て き た 。 し か し 、 そ れ 以 外 の 資 格 ・ 認 証 の 所 有 状 況 や そ の 種 類 、 所 有 者 の 属 性 や キ ャ リ ア に も た ら す 影 響 な ど に つ い て は 、 こ れ が 初 め て の 研 究 で あ る 。

(13)

図 表1-10 教 育 水 準 ご と の 資 格 取 得 割 合 ( 18歳 以 上 ) Regular

education level

No alternative credential

Professional

certification, license

Educational certificate

Number Percent Number Percent Number Percent

Total 161,557 75.2 46,326 21.6 19,113 8.9

Less than high school

22,240 93.6 1,315 5.5 411 1.7

High school completion

59,056 83.1 9,891 13.9 4,482 6.4

Some college 32,134 76.5 8,064 19.3 4,243 10.2

Associate’s degree

11,457 63.8 5,409 30.2 3,059 17.1

Bachelor’s degree

26,196 67.3 11,447 29.5 4,027 10.4

Master’s degree

8,291 52.5 7,018 44.6 2,180 13.9

Professional degree

1,015 31.6 2,178 67.7 436 13.7

Doctorate degree

1,531 58.8 1,004 38.7 274 10.6

出 所 :Ewert and Kominski2014, p.3よ り 引 用

こ の プ ロ ジ ェ ク ト の 成 果 で あ るEwert and Kominski2014) で は 、 非 常 に 興 味 深 い 事 実 を 明 ら か に し て い る 。は じ め に 、学 位 以 外 の 資 格・認 証 の 取 得 状 況 で あ る が 、18歳 以 上 の ア メ リ カ 人 の 21.6% が 、 何 ら か の 職 業 上 の 資 格 ・ 認 証 を 取 得 し て い る 。 ま た 、8.9% が 何 ら か の 課 程 の 修 了 証 を 所 有 し て い る 。 い ず れ も 取 得 し て い な い の は 、75.2% で あ る 。 ま た 、 こ れ ら の 割 合 は 、 取 得 し て い る 伝 統 的 な 学 位 と 強 い 相 関 関 係 を 持 つ も の で あ っ た 。 学 歴 が 高 け れ ば 高 い ほ ど 、 資 格 ・ 認 証 の 所 有 率 も 高 い の で あ る ( 図 表1-10参 照 )。

ま た 、 こ れ ら の 取 得 割 合 に つ い て 、 男 女 で 大 き な 差 は 見 ら れ な か っ た が 、 人 種 に つ い て は 差 が 大 き い 。何 ら か の 資 格・認 証 を 取 得 し て い る 人 の 割 合 は 、White-non Hispanicで は24.3 で あ る の に 対 し 、 最 も 少 な いHispanicで は 12.7% と 2倍 の 開 き が あ る 。 年 齢 層 別 で 比 較 し て み る と 、30 歳 か ら 49 歳 の 、 い わ ば 働 き 盛 り の 年 齢 層 で 最 も 取 得 割 合 が 高 く 、18 歳 か ら 29歳 ま で の 約2倍 の 割 合 と な っ て い る 。

産 業 別 の 比 較 で は 、「 教 育 、医 療・福 祉 」の 分 野 で 取 得 率 が 最 も 高 く 、47.6% で あ り 、次 い で「 金 融 、保 険 、不 動 産 」が35.6% で あ る 。こ れ に 対 し 、「 農 林 水 産 業 」・「 鉱 業 」で は13.0% 、

「 芸 術 、 エ ン タ ー テ イ メ ン ト 、 レ ク リ エ ー シ ョ ン 、 宿 泊 、 飲 食 サ ー ビ ス 」 が 13.6% 、「 製 造 業 」が13.9% な ど 、取 得 率 に は 産 業 ご と に 違 い が 生 じ て い る( 図 表 1-11参 照 )。な お 、資 格 ・ 認 証 の 分 野 と そ の 取 得 者 数 、 割 合 は 図 表1-12の 通 り で あ る 。

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図 表1-11 属 性 に よ る 資 格 ・ 認 証 取 得 率 の 比 較

Characteristic Total No

alternative credential

Professional certification,

license

Educational certificate Sex

Male Female

Race and Hispanic Origin White alone

Black alone Asian alone

White, non-Hispanic Hispanic

Age 18 to 29 30 to 49

50years and older Industry

Agriculture, forestry, fishing, hunting, mining Construction

Manufacturing Wholesale trade Retail trade Transportation,

warehousing, utilities Information

Finance, insurance, real estate

Professional, scientific, management,

administration, and waste management service

Education service, healthcare, social assistance

Arts, entertainment, recreation,

accommodation, food service

Other service except public administration

Public administration Military

113,352 122,103

187,330 28,728 10,680 155,530 35,080

50,867 81,373 103,213

3,036 9,368 14,752 3,995 16,792 6,977 3,102 9,400 17,666

34,175

13,612

7,512 7,407 930

75.2 75.2

74.4 79.0 78.2 72.1 85.3

84.3 70.5 74.8

83.3 69.1 81.4 80.4 82.8 68.8 82.6 61.7 71.7

49.6

83.9

63.1 63.0 75.9

21.7 21.4

22.4 18.2 19.4 24.3 12.7

13.9 26.5 21.3

13.0 28.4 13.9 16.3 14.2 28.7 14.3 35.6 25.2

47.6

13.6

33.5 33.4 22.6

8.3 9.5

9.1 8.2 8.8 9.7 5.7

6.0 10.3 9.2

7.7 9.3 7.9 6.0 7.1 8.4 6.2 11.3 8.4

16.6

5.4

14.4 12.9 8.3

出 所 :Ewert and Kominski2014, p.5よ り 筆 者 作 成

(15)

図 表1-12 資 格 ・ 認 証 の 分 野 と 取 得 者 数 お よ び 割 合 Field Total (thousand) Percent

Architecture and engineering 1,099 2.4

Computer networking and administration

577 1.3

Computer application and design 519 1.1

Business/Finance management 2,719 5.9

Administrative support 419 0.9

Nursing/nurse assisting 6,005 13.1

Other medical/health care 5,450 11.8

Culinary arts 681 1.5

Protective service 1,035 2.3

Legal and social service 2,093 4.6

Education 7,691 16.7

Construction and manufacturing trade

3,222 7.0

Transportation and material moving

2,799 6.1

Public utilities 481 1.0

Other 9,565 20.8

出 所 :Ewert and Kominski2014, p.10よ り 筆 者 作 成

重 要 な 点 は 、 資 格 ・ 認 証 の 有 無 は 、 雇 用 状 況 に も 影 響 を 与 え て い る と い う こ と で あ る 。 有 業 者 で は 何 ら か の 資 格・認 証 を 取 得 し て い る 人 は 、28.1% で あ る の に 対 し 、失 業 者 で は12.6% に と ど ま っ て い る 。雇 用 形 態 に 関 し て も 、直 近4カ 月 間 で「 フ ル タ イ ム の 雇 用 」カ テ ゴ リ ー の 場 合 、29.4% が 何 ら か の 資 格・認 証 を 取 得 し て い る の に 対 し 、「 パ ー ト タ イ ム 、あ る い は フ ル タ イ ム と パ ー ト タ イ ム の 混 合 」で は26.4% 、「 時 々 働 い た 」で は24.9% 、失 業 者 で は 12.6% と 、 大 き な 差 が 出 て い る11

そ し て 、 収 入 に つ い て も 、 明 ら か な 差 が 見 ら れ た 。 若 干 の 例 外 も あ る も の の 、 概 ね ほ と ん ど の カ テ ゴ リ ー で 、 何 ら か の 資 格 ・ 認 証 を 取 得 し て い る 、 あ る い は 何 ら か の 課 程 を 修 了 し て い る 方 が 、 収 入 の 中 央 値 が 高 く な る ( 図 表1-13)。

11 Ewert and Kominski2014, p.7参 照

(16)

図 表1-13 学 位 と 資 格 ・ 認 証 に よ る 月 収 中 央 値 の 比 較 ( 18歳 以 上 、 単 位 : ド ル ) 学 位

ど ち ら も 所 有 し て い な い

資 格 ・ 認 証 あ り

課 程 の 修 了 証 あ り

Total 3,110 4,167 3,433

Less than high school 1,920 2,419 3,291

High school completion 2,500 3,053 2,917

Some college 2,947 3,333 3,333

Associate’s degree 3,240 3,810 3,200

Bachelor’s degree 4,417 4,583 3,775

Master’s degree 6,000 5,600 5,500

Professional degree 6,250 8,750

Doctorate degree 7,083 7,083 6,250

出 所 :Ewert and Kominski2014, p.8よ り 筆 者 作 成

無 論 、 資 格 や 認 証 と 言 っ て も 、 公 的 な も の か ら 極 め て 有 用 性 の 低 い も の ま で 、 そ の レ ベ ル は さ ま ざ ま で あ る 。 し か し 全 体 と し て 見 れ ば 、 雇 用 の 状 況 や 形 態 、 収 入 に 至 る ま で 、 こ れ ら を 取 得 し て い る こ と が 有 利 に 働 く こ と は 明 ら か で あ ろ う 。 伝 統 的 な 学 位 の み な ら ず 、 こ の よ う な 資 格 制 度 や 認 証 制 度 、 教 育 訓 練 課 程 も ま た 、 重 要 な キ ャ リ ア パ ス と し て 機 能 し て い る と 言 え る 。

第 3 節 対 象 者 別 の 職 業 訓 練 施 策 と 実 施 状 況

本 節 で は 、 対 象 者 ご と に 職 業 訓 練 を 見 て み た い 。 監 督 官 庁 の 大 き な 枠 組 み と し て は 、 若 年 者 向 け を 管 轄 す る の が 教 育 省 、 失 業 者 向 け を 管 轄 す る の が 厚 生 省 、 在 職 者 向 け を 管 轄 す る の が 労 働 省 と 考 え て よ い が 、そ れ ぞ れ に 重 な り 合 う 部 分 も あ る 。ま た 、WIOAに 基 づ く 教 育 訓 練 の 場 合 に は 、 対 象 者 が 若 年 層 や 失 業 者 で あ っ た と し て も 、 労 働 省 の 管 轄 と な る 。

1 . 若 年 者 向 け

若 年 者 を 対 象 と し た 教 育 訓 練 に 関 し て は 、 ハ イ ス ク ー ル を 中 心 と し た 学 校 内 に お け る 職 業 教 育 お よ び 職 業 訓 練 を 教 育 省 が 、 学 校 外 に お け る 職 業 訓 練 を 労 働 省 が 、 そ れ ぞ れ 管 轄 に し て い る 。 こ こ で は 、 学 校 外 に お け る 職 業 訓 練 を 中 心 に 述 べ た い 。

WIOAの も と で の 若 年 層 を 対 象 と し た 教 育 訓 練 は 、制 度 と し て 大 き く 二 つ に 分 け る こ と が で き る 。一 つ は 、労 働 省 が 実 施 す る ジ ョ ブ ・ コ ア(Job Corps)、も う 一 つ は 地 域 の 委 員 会 が 準 備 し た 若 年 層 向 け の 諸 プ ロ グ ラ ム で あ る 。

( 1 ) ジ ョ ブ ・ コ ア

ジ ョ ブ・コ ア と は 、1964年 よ り 続 く 、連 邦 政 府 が 実 施 す る 最 大 の 包 括 的 な 教 育 訓 練 プ ロ グ ラ ム で あ る 。 特 徴 的 で あ る の は 、 対 象 と し て い る の が 16歳 か ら 24歳 ま で の 若 年 者 で あ り 、

(17)

所 得 が 低 く 、 学 校 の 中 退 や 家 出 、 養 子 縁 組 な ど 、 社 会 的 ハ ン デ ィ の あ る 者 に 限 ら れ る と い う こ と で あ る 。WIOA TitleⅠ の2016 年 度 予 算517,2624,000ド ル の う ち 、35% に 当 た る 181,8548,000 ド ル が 、 ジ ョ ブ ・ コ ア に 割 り 当 て ら れ て い る な ど 、 若 年 層 向 け の プ ロ グ ラ ム と し て は 最 も 大 き な も の で あ る 。

ジ ョ ブ ・ コ ア は 原 則 と し て 、 全 米 に 125 設 置 さ れ て い る ジ ョ ブ ・ コ ア セ ン タ ー で 約 12 年 、 生 活 を 共 に し な が ら 、 座 学 ・ 実 習 の 授 業 、 職 場 実 践 型 の 授 業 を 受 け る 。 こ れ に よ り 、 英 語 、 読 解 、 ラ イ テ ィ ン グ 、 数 学 や 科 学 な ど 、 ア カ デ ミ ッ ク な 知 識 の み な ら ず 、 職 業 訓 練 の た め の 知 識 や 技 術 を も 習 得 す る こ と が で き る 。 こ れ に 加 え 、 応 募 や 面 接 な ど 就 職 の た め の ス キ ル や 、 社 会 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の た め の 能 力 も 育 て て ゆ く 。 費 用 は 受 講 料 、 宿 泊 の た め の 諸 費 用 を 含 め 、 無 料 で あ る 。 年 間 約 5 万 人 程 度 の 参 加 者 が あ る が 、2013 年 の デ ー タ で は う ち81.5% が 就 職 し て お り 、 平 均 的 な 初 任 給 ( 時 給 ) は9.70ド ル で あ る 。

( 2 ) 若 年 プ ロ グ ラ ム (State Formula-Funded Programs for Youth Activity

WIOAで は 、若 年 層 の 労 働 力 投 資 活 動 に 対 し て 、助 成 金 を 支 出 し て い る 。WIAで も 同 様 の プ ロ グ ラ ム は あ っ た が 、 比 較 的 一 般 的 な も の で あ っ た 。 変 更 点 と し て 重 要 な の は 、 タ ー ゲ ッ ト を よ り 狭 め 、 学 業 と 雇 用 の 成 果 へ の 到 達 を 重 視 す る よ う に な っ た こ と で あ る 。 こ れ に も Title1予 算 の 17% に 当 た る8 8,380万 ド ル が 割 り 当 て ら れ て い る 。

対 象 と な る の は16歳 か ら24歳 の 者 で 、在 学 中 で あ る か 否 か を 問 わ な い 。た だ し 、WIOA に な っ て か ら は 、在 学 中 で は な い 者 の 援 助 に 力 を 入 れ る よ う に な っ て お り 、少 な く と も75% は 在 学 中 で は な い 者 の た め に 使 わ な け れ ば な ら な い と 定 め ら れ る よ う に な っ た 。WIA で は 30% に 過 ぎ な か っ た こ と を 鑑 み る と 、よ り 大 き な ハ ン デ ィ を 背 負 っ た 若 者 に 、大 き な 資 金 を 支 出 す る よ う に な っ た と 言 え る 。 具 体 的 に は 、 在 学 中 で は な く 、 年 齢 要 件 を ク リ ア し て い る 者 は 、 下 記 の 条 件 の い ず れ か を 満 た し て い な け れ ば な ら な い 。

【 在 学 中 で は な い 者 に 求 め ら れ る 条 件 】

・ 学 校 を ド ロ ッ プ ア ウ ト し て い る こ と

・ 直 近3カ 月 間 、 登 校 し て い な い こ と

・ 中 等 教 育 の 学 位 を 取 得 し て い る が 、 低 所 得 者 で あ り 、 基 礎 学 力 が 不 足 し て い る 、 あ る い は 英 語 を 学 習 中 で あ る こ と

・ 少 年 ( 成 人 ) 司 法 制 度 に 関 与 し た こ と

・ ホ ー ム レ ス 、 あ る い は 家 出 中 で あ る こ と

・ 妊 娠 中 で あ る 、 あ る い は 育 児 中 で あ る こ と

・ 身 体 障 害 者 で あ る こ と

・ 低 所 得 で あ る た め 、 教 育 の 修 了 あ る い は 雇 用 を 確 保 す る た め に 援 助 が 必 要 な こ と

(18)

在 学 中 の 場 合 に は 、 年 齢 制 限 が 異 な り 、14歳 か ら21歳 ま で と な る 。 低 所 得 で あ る と い う こ と の 他 に 、 下 記 の い ず れ か の 条 件 を 満 た し て い な け れ ば な ら な い 。

【 在 学 中 の 者 に 求 め ら れ る 条 件 】

・ 基 礎 学 力 が 不 足 し て い る こ と

・ 英 語 を 学 習 中 で あ る こ と

・ 犯 罪 歴 が あ る こ と

・ ホ ー ム レ ス 、 あ る い は 家 出 中 で あ る こ と

・ 妊 娠 中 で あ る 、 あ る い は 育 児 中 で あ る こ と

・ 身 体 障 害 者 で あ る こ と

・ 低 所 得 で あ る た め 、 教 育 の 修 了 あ る い は 雇 用 を 確 保 す る た め に 援 助 が 必 要 な こ と

提 供 さ れ る サ ー ビ ス に は 、 学 力 ・ ス キ ル ・ ニ ー ズ に 関 す る ア セ ス メ ン ト 、 各 参 加 者 に 対 し て の 計 画 作 成 、 中 等 教 育 修 了 や 中 等 後 教 育 受 験 資 格 取 得 の た め の サ ポ ー ト 、 進 学 へ の サ ポ ー ト 、就 職 の た め の 援 助 や 斡 旋 な ど が あ る 。そ し て 、予 算 の 少 な く と も20% は 、学 業 を 含 む 職 業 体 験 の た め に 費 や す 必 要 が あ る と 定 め ら れ て い る 。

な お 、2013年 の 参 加 者 数 は 、21万 人 で あ っ た12

( 3 ) 教 育 省 管 轄 の 職 業 教 育 ・ 職 業 訓 練

ア メ リ カ の 学 校 制 度 は ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 と 比 べ る と 、 普 通 教 育 中 心 に 構 成 さ れ て い る 。 し か し 、1984年 の カ ー ル .D・パ ー キ ン ス 職 業 教 育 法( 以 下 、パ ー キ ン ス 法 )制 定 が 契 機 と な り 、 ハ イ ス ク ー ル を 中 心 と し た 職 業 教 育 に 力 が 入 れ ら れ る よ う に な っ て い る 。1984 年 の 第 1 次 パ ー キ ン ス 法 は 、あ く ま で 社 会 的 に 不 利 な 条 件 の も と に 置 か れ た 若 者 を 対 象 と し て い た た め 、 学 校 内 で の 職 業 教 育 は 進 学 し な い 者 の た め の プ ロ グ ラ ム と み な さ れ る 傾 向 が あ っ た 。し か し 、 1990年 、1998年 、2006年 と 改 正 を 重 ね る ご と に 、そ の 対 象 者 は 広 が り 、ア カ デ ミ ッ ク な 教 育 を も 含 め た 職 業 教 育 と い う 価 値 観 が 形 成 さ れ て い っ た 。 現 在 で は 、 国 の 人 的 資 本 を 向 上 さ せ る た め の 一 般 的 な プ ロ グ ラ ム と い う 位 置 付 け で あ る13

ま た 、時 限 立 法 で あ っ た た め 現 在 は 廃 止 さ れ て い る が 、1994年 に 制 定 さ れ た「 学 校 か ら 職 業 へ の 移 行 機 会 法(School-to-Work Opportunity Act」も 、こ の 流 れ に 寄 与 し て い る 。こ れ に よ っ て 、 企 業 の 現 場 に 生 徒 が 赴 い て 技 能 訓 練 を 行 う よ う な 、 い わ ゆ る 「 職 場 学 習 」 が ハ イ ス ク ー ル に 導 入 さ れ た 。こ こ に お い て も 、WIOAの プ ロ グ ラ ム と 同 様 に 、企 業 と の よ り 良 い パ ー ト ナ ー シ ッ プ を 築 く こ と が 重 視 さ れ て い る 。

12 Department of Labor "FY 2016 Congressional Budget Justification - Employment and Training Administration - Training and Employment Services" p.36

13 石 嶺 (2012pp.58-60、 独 立 行 政 法 人 労 働 政 策 研 究 ・ 研 修 機 構 (2004pp.75-101参 照 。

図 表 1-2  非 農 業 部 門   総 労 働 者 数 の 推 移 ( 2006 年 −、 単 位 : 千 人 )
図 表 1-5  産 業 別 失 業 率 お よ び 就 業 者 数 と 平 均 時 給   産 業 区 分 失 業 率 ( % ) 就 業 者 数 ( 人 ) 平 均 時 給 ( $ ) 鉱 山 、 採 石 、 石 油 、 ガ ス 採 取 4.7 682,000 31.76  建 設 5.7 6,704,000 38.28  製 造 業 ( 耐 久 ) 3.4 7,656,000 27.43  製 造 業 ( 非 耐 久 ) 4.7 4,604,000 24.06  商 業 ・ 小 売 4.4 21,92
図 表 1-10  教 育 水 準 ご と の 資 格 取 得 割 合 ( 18 歳 以 上 )   Regular  education  level  No alternative credential  Professional  certification, license  Educational certificate
図 表 1-11  属 性 に よ る 資 格 ・ 認 証 取 得 率 の 比 較   Characteristic Total No  alternative  credential Professional  certification, license  Educational certificate  Sex   Male   Female
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参照

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