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李年古 著「日本人にはいえない中国人の価値観」 「特技懇」誌のページ(特許庁技術懇話会 会員サイト)

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tokugikon

2009.5.22. no.253

 副題の「中国人とつきあうための68の法則」に対応して, 各章の冒頭には要約が添えられており,これらを拾い読み するだけでも興味深い。湖南省出身の著者は1987年の来日 以来,20年以上の在日生活を経験している。この間,大学 院で社会学,社会心理学を修めた後,中国経済誌を創刊, 現在では異文化コミュニケーションや労務者管理等に関す る企業内研修,中国市場調査等のコンサルティング事業等 も展開している。日中双方に造詣の深い立場から,中国人 の価値観を書き下ろした一冊である。

 ステロタイプな中国像・中国人像がインターネットやマ スメディア等を通じて喧伝され,ともすればそれに感化さ れてしまいがちな今日,中国人の価値観や行動様式に関す る冷静かつ客観的なテキストが求められている。しかし, 「中国関連の書籍は書店の本棚に溢れているにもかかわら

ず,中国人の価値観を,さまざまな視点からカバーしてい る本は一冊もなかった。とくに,ビジネスマンにぴったり の一冊が見つからなかった。」(4頁)本書は,このような問 題意識を背景として送り出されたものであり,中国人の伝 統的な価値観に始まり,金銭・商売関係,職業関係,人間 関係,更には対日観にわたる全十章から構成されている。  中国人の価値観を理解するにあたり,長年にわたって中 国社会を支配してきた儒教の影響を避けて通ることはでき ない。封建主義を支えてきた「孝行の文化」は,中国人精 神の屋台骨ともなり,国家や企業のあり方にも影響を与え てきた。また,権力闘争をくりかえす動乱の歴史のなか, 人間関係や交友関係には,特に敏感にならざるを得ない背 景もあったであろう。さらに,長い封建主義の歴史のなか, 法律はときの権力者の管理下に置かれるものであり,法律

よりも「人治」の裁量権が非常に大きく扱われてきたこと も見逃せない。今日の中国人の伝統的な価値観は,こうし た考え方を通奏低音として形成されているのである。  以上に加えて,その後の歴史的経緯にも見られるとおり, 20世紀後半に登場した社会主義的な価値観,そして資本主 義的な価値観に影響を受けた結果,現代における中国人の 価値観は,かなり多様な様相を呈している。社会主義との 関係では,強力な道徳教育とその偽善性を背景とする二重 人格の形成が指摘されている。また,市場経済への移行に ともない,「人治」から「法治」への動きがみられるほか, 拝金主義的な考え方,職業関係や人間関係に対する自由奔 放な考え方など,現代に特有な価値観も登場している。さ らに,同じ中国人でも地域によって金銭観・商売観が異な る点,職業倫理等に見られる個人主義的な考え方,属組織 的ではなく属人的に行動する点など,中国人の価値観が立 体的・網羅的に解説されている。

 そして,対日観では,顔が見えない一般的な場面におけ るマイナスイメージと,個別具体的な関係におけるプラス イメージとの矛盾・葛藤が説明される。この点,日本人の 対中観についてみても,状況は同様であるように思われる。 とすれば,相互間に横たわる不信感を払拭し,信頼を醸成 することが必要なのではないか。著者も指摘するように, 儒教的な価値観を媒介して俯瞰すれば,「日本人と中国人っ て,そんなに違わないのだ,という結論にたどり着くかも しれない。」(211頁)

紹介者  東北大学大学院法学研究科 平塚 政宏

書籍紹介

李年古 著 学生社

参照

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