産業組織 II
Part I: イントロダクション
若森 直樹
東京大学経済学部 2017年度 A2ターム
産業組織 II について (1/2)
▶ 授業担当者
▶ Instructor: 若森 直樹 (経済学研究科棟1212室)
▶ Office Hours: 火曜13:15-14:00 (シラバス訂正!)
▶ Teaching Assistant: 松村 悠里 (赤門総合研究棟 院生室329)
▶ Office Hours:
▶ インストラクターのバックグラウンド
▶ 2004年 慶應義塾大学経済学部 卒業
▶ 2006年 東京大学大学院経済学研究科修士課程 修了
▶ 2011年University of Pennsylvania, Ph.D. in Economics
▶ 2011-2012年 カナダ中央銀行(Bank of Canada)
▶ 2012-2015年 マンハイム大学(Universit¨at Mannheim)
▶ 2015-現在 東京大学
産業組織 II について (2/2)
▶ 履修の前提条件: (駒場レベルの)ミクロ経済学,計量経済学
▶ 講義のスタイルについて
▶ 教科書は用いず,講義ノートを配布する
▶ 教材の配布: 当日の午前1時までにアップロード
▶ 講義中には積極的な発言を!
▶ 授業中に全部で5-7回程度の出席確認/Quizを行う
▶ 評価は以下の二つの値の大きい方に基づいて行う
1. 平常点(小テスト・出席・Quizを含む)30% +期末試験70%
2. 期末試験100%
1月や2月に単位催促のメールを送らないように!
Part I: イントロダクション
産業組織論( Industrial Organization) とは? (1/4)
▶ 完全競争市場の仮定:
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▶ 完全競争市場(及び市場の普遍性,凸性)の下では,望ましい 資源配分が達成
演習問題 1.1
完全競争の仮定が成り立つような市場の例を一つ挙げよ.また,ど のような産業でも良いので一つの産業を挙げ,その産業が上記のど の仮定を満たしていないかを説明せよ.
産業組織論( Industrial Organization) とは? (2/4)
▶ 経済主体の一つである企業に主に着目
▶ 不完全競争市場において企業がどのように競争し,どのような 帰結をもたらすのか?
1. 戦略的相互依存性 2. 製品差別化 3. 不完全情報
4. 参入障壁/異なる生産技術
▶ 市場支配力(Market Power)
⇔ 限界費用より高い価格を設定できる力
▶ 存在しているのか?
▶ どのように市場支配力を獲得・維持しているのか?
▶ 企業が市場支配力を持つことで市場の効率性を歪めているか?
▶ 政府はどのような役割を果たすべきか?
産業組織論( Industrial Organization) とは? (3/4)
▶ 産業組織論の分析対象
1. 市場構造(Market Structure)
▶ 企業の境界,垂直統合,垂直的取引関係
▶ 企業数,企業の参入・退出
▶ 製品差別化
2. 市場行動(Market Conduct)
▶ 価格・生産量
▶ 設備投資
▶ 研究開発
▶ 広告戦略
3. 市場成果(Market Outcome)
▶ 利潤(生産者余剰),プライス・コストマージン
▶ 消費者余剰
▶ 技術進歩の速度
産業組織論( Industrial Organization) とは? (4/4)
▶ 産業組織論の歴史
▶ Harvard学派(1930-1950): SCPパラダイム
▶ Chicago学派(1950-1980): 「理論なき実証」の批判
▶ 新産業組織論(1980-): ゲーム理論の台頭
▶ 実証産業組織論(1990-): ゲーム理論と計量の融合
▶ 関連隣接分野
▶ 企業理論(Theory of the Firm)
▶ 経営戦略論(Strategic Management)
ミクロ経済学の復習 (1/3): 復習すべき重要な概念
▶ 需要関数と逆需要関数
▶ 費用関数,総費用,限界費用,平均費用,固定費用
▶ 利潤関数
▶ 消費者余剰,生産者余剰,社会的余剰
▶ 死荷重
▶ プライス・コスト・マージン
ミクロ経済学の復習 (2/3)
演習問題 1.2
ある財の逆需要関数がP(Q) = 10 − Qで,独占販売している企業 の費用関数がC(q) = 2qで与えられていたとする.
▶ 企業の利潤関数を定義せよ.
▶ 企業の選ぶ価格と数量を求めよ.
▶ 消費者余剰と生産者余剰を求めよ.
▶ 死荷重を求めよ.
▶ 独占と思われる具体的な産業名を挙げ,このモデルが妥当でな い理由(と可能であればモデルをどのように修正するべきか) を述べよ.
(例)電力産業 - 限界費用は一定ではないor 固定費用が考慮 されていない
ミクロ経済学の復習 (3/3): あなたの解答
ゲーム理論の復習
▶ 非協力ゲームの分類方法 1. 情報構造による分類
▶ 完備情報ゲーム
▶ 不完備情報ゲーム
2. 時間軸があるかどうかによる分類
▶ 静学ゲーム
▶ 動学ゲーム
▶ ゲームの分類とよく使われる均衡概念の対応
▶ 完備情報静学ゲーム↔
▶ 完備情報動学ゲーム↔
▶ 不完備情報静学ゲーム↔
▶ 不完備情報動学ゲーム↔
完備情報静学ゲーム ( 戦略型ゲーム ) の復習 (1/3)
▶ 戦略系ゲーム: G = {N, S, {πi}i ∈N}
▶ プレイヤーの集合: N = {1, 2, · · · , n}
▶ 戦略空間: S = S
1× S2× · · · × Sn, Si は各個人の戦略の集合
▶ プレイヤーの利得: πi: S → R: 利得関数
▶ ある戦略の組(s∗ 1,s
∗ 2,· · · , s
∗ n)が (∀i ∈ N) [πi(si∗,s
∗
−i) ≥ πi(si,s−i∗ ) ∀si ∈ Si] 満たす時,ナッシュ均衡という.
完備情報静学ゲーム ( 戦略型ゲーム ) の復習 (2/3)
演習問題 1.3
企業1と2が価格設定を行うゲームをプレイしており,利潤が以下 で与えられているとする.
低価格 高価格 低価格 2, 2 6, 1 高価格 1, 6 5, 5
▶ プレイヤーの集合,及び各企業の戦略の集合を定義せよ.
▶ 純戦略のナッシュ均衡を求めよ.
▶ (Optional) 混合戦略のナッシュ均衡を求めよ.
完備情報静学ゲーム ( 戦略型ゲーム ) の復習 (3/3)
▶ 純戦略と混合戦略
▶ 純戦略: s i ∈ Si
▶ 混合戦略: σi: Si→ [0, 1], (σi(si) ≥ 0,∑si∈Siσi(si) = 1 )
▶ ある戦略の純戦略の組(σ∗ 1, σ
∗ 2,· · · , σ
∗
n)が全てのi ∈ Nにつ
いて
E[πi(σ1∗, σ∗−i)] ≥ E[πi(σ1, σ∗−i) ∀si ∈ Si
を満たす時,混合戦略ナッシュ均衡という.
定理 (Nash, 1950)
Si(∀i ∈ N)が有限集合であるならば,戦略型ゲームG において混 合戦略の範囲内で少なくとも1つのナッシュ均衡が存在する.
完備情報動学ゲーム ( 展開型ゲーム ) の復習 (1/5)
▶ ゲームの要素
▶ プレイヤー
▶ 戦略(1)手番の順序, (2)各手番での行動, (3)各手番での情報
▶ 利得
▶ 例1 と 例2
完備情報動学ゲーム ( 展開型ゲーム ) の復習 (2/5)
展開型ゲームの戦略型表現
▶ 例1
企業1 \企業2 低価格 高価格 低価格 2, 2 6, 1 高価格 1, 6 5, 5
▶ 例2
完備情報動学ゲーム ( 展開型ゲーム ) の復習 (3/5)
▶ 以下の参入阻止ゲームを考える.
新規参入企業
既存企業
(-1,2) (5,5)
(0,10)
In Out
F A
カッコ内は左が参入企業,右が既存企業の利得
▶ ナッシュ均衡は妥当か?(空脅しのナッシュ均衡)
▶ 部分ゲーム完全均衡をバックワード・インダクションで求める ある戦略の組がゲームの全ての部分ゲームにおいてナッシュ均 衡の時,(その戦略の組を)部分ゲーム完全均衡と呼ぶ
完備情報動学ゲーム ( 展開型ゲーム ) の復習 (4/5)
演習問題 1.4
以下の参入阻止ゲームを考える.カッコ内は左が参入企業,右が既 存企業の利得だとする.
参入企業
参入企業 (3,6)
(5,5) (1,6) (6,1) (2,2)
In Out
H L
H L H L
1. ゲームを戦略型で表現し,ナッシュ均衡を求めよ.
2. バックワード・インダクションを用いて部分ゲーム完全均衡を 求めよ.