応用ミクロ経済( 2014 年・後期)
計算練習と正誤判定問題
1. 戦略型のゲーム
1.1
まずは計算に慣れましょう.下の2 × 2ゲームa) – d)について,次の問にそれぞれ答えてください.i. 支配戦略はあるでしょうか.ある場合には列挙してください.
ii. このゲームは「支配される戦略の逐次消去」によって解けるでしょうか. iii. 純粋戦略のナッシュ均衡をすべて求めてください.
iv. 混合戦略のナッシュ均衡をすべて求めてください.
上の計算結果をよく観察して,以下の主張(a) – (h)が正しいかどうか,それぞれ理由と共に答えて下さい.
(a) ナッシュ均衡は必ずパレート最適な結果になる.
(c)「支配される戦略の逐次消去」で一つの結果に絞れた場合、それはナッシュ均衡である. (d) ナッシュ均衡は「支配される戦略の逐次消去」によって消去されない.
(e) パレート最適かつナッシュ均衡という結果もある.
(f) 2 × 2ゲームには必ず支配戦略が存在する.
(g) 2 × 2ゲームは必ず純粋戦略のナッシュ均衡をもつ.
(h) 2 × 2ゲームは必ず混合戦略のナッシュ均衡をもつ.
課題 ここまでは,与えられたゲームの計算結果を元に上の問に答えを出しました.その逆に,これらの問に 答えを出すためにご自身でいろいろなゲーム(例えば,いろいろな数値を入れた2 × 2ゲーム)を作ってみる と,より理解が深まります.
1.2
混合戦略についてもう少し調べてみましょう.下の3 × 3ゲームについて,次の問に答えてください.i. 純粋戦略のナッシュ均衡をすべて求めてください.
ii.「プレーヤー1がAとBの2つだけを正の確率で選択し,プレーヤー2がDとEの2つだけを正の確
率的に選択する」ような形の混合戦略ナッシュ均衡はあるでしょうか.
iii. 各プレーヤーが、それぞれ「3つ全ての戦略を確率的に選択する」ような形の混合戦略ナッシュ均衡は
あるでしょうか.
2. 展開形のゲーム
2.1
こちらもまずは計算に慣れましょう.次ページの図1「ゲームの木」で表現されるゲームについて,次の問に答えてください.
i. このゲームを戦略型ゲームとして表してください.(このようなゲームの「戦略」はどのように考えれ
ばよかったでしょうか.)
ii. 純粋戦略のナッシュ均衡をすべて求めてください.
iii.「バックワード・インダクション」の方法によって,このゲームを解いてください.
図1 ゲームの木
さらに計算に慣れましょう.図2「展開形ゲーム」で表現されるゲームについて,次の問に答えてください.
図2 展開形ゲーム
i. このゲームはいくつの部分ゲームをもつでしょうか.(ここでは「全体からなる部分ゲーム」は除いた
数を答えてください.)
ii.「ゲームを後ろから解く」方法によって,このゲームの部分ゲーム完全均衡のうちで「(Y, A)が選ばれ る」もの求めてください.
上の計算結果をよく観察して,以下の主張(a) – (d)が正しいかどうか,それぞれ理由と共に答えて下さい.
(a) 動学的なゲームにはナッシュ均衡が複数存在することがある. (b) 動学的なゲームには必ずナッシュ均衡が複数存在する. (c) 部分ゲーム完全均衡は複数存在することがある. (d) 部分ゲーム完全均衡は必ず複数存在する.
課題 問1.1.で課題として述べたこと(p. 2参照)をここでも試してみてください.つまり,この問に答える ためにご自身でゲームを作ってみましょう.
2.2
より複雑な計算をしてみましょう.下の展開形ゲームについて,次の問に答えてください.i. このゲームはいくつの部分ゲームをもつでしょうか.(「全体からなる部分ゲーム」は除いた数を答えて
ください.)
ii.「ゲームを後ろから解く」方法によって,このゲームの部分ゲーム完全均衡を全て求めてください.
3. 繰り返しゲーム
3.1
下の2 × 2ゲームを基に,繰り返しゲームを考えましょう.以下の問に答えてください.i. この2 × 2ゲームの純粋戦略ナッシュ均衡をすべて求めてください.
ii. この2 × 2ゲームをステージゲームとする「2回繰り返しゲーム」を考えます.第1期において戦略の
組み合わせ(U, L)が実現されるような部分ゲーム完全均衡はあるでしょうか.ある場合はそれを求め,
つづいて,下の2 × 2ゲームを基に,別の繰り返しゲームを考えましょう.以下の問に答えてください.
i. この2 × 2ゲームの純粋戦略ナッシュ均衡をすべて求めてください.
ii. こ の2 × 2ゲ ー ム を ス テ ー ジ ゲ ー ム と す る「2回 繰 り 返 し ゲ ー ム 」を 考 え ま す .こ の ゲ ー ム に は 部 分
ゲーム完全均衡は2つ以上存在するでしょうか.ある場合は2つ求め,ない場合はその理由を述べてく ださい.
上の計算結果をよく観察して,以下の主張(a), (b)が正しいかどうか,それぞれ理由と共に答えて下さい.
(a) 繰り返しゲームには「最後のステージゲームでナッシュ均衡をプレイしない」ような形の部分ゲーム完
全均衡がある.
(b) 繰り返しゲームでは「各ステージゲームでナッシュ均衡をプレイする」ような結果は部分ゲーム完全均
衡になる.
課題と発展的課題 やはりここでも問に答えるために様々なゲームを作ってみてください.簡単なゲームをご 自身で作ることがより深い理解の助けになります.例えば,以下の問いに答えを出してみてください:(c) 2回 繰り返しゲームにおいて「第1期にナッシュ均衡をプレイしない」ような形の部分ゲーム完全均衡がある.
3.2
上では有限回繰り返しゲームを調べました.ここでは無限回繰り返しゲームを考えましょう.問3.1. の一つ目の2 × 2ゲームにもう一度注目します.(以下にゲームの表を再掲します.)
こ の ゲ ー ム を ス テ ー ジ ゲ ー ム と す る 無 限 回 繰 り 返 し ゲ ー ム を 考 え ま す .各 プ レ イ ヤ ー の 利 得 は 割 引 因 子
δ(< 1)の等比級数の和とします.「トリガー戦略」によって戦略の組み合わせ(U, L)が維持されるのは δ が
どのような条件(不等式)をみたすときでしょうか.
注意
この練習問題ではカバーされていないトピックもいくつかあります.(例えば,立地ゲーム,ベルトラ ン・モデル,クールノー・モデル,シュタッケルベルク・モデル,むかでゲーム,最後通牒ゲームなどを含む 個別の応用例などがあります.また,講義12–14回目のトピックもカバーされていません.)ここの計算問題 が解けることは第一目標ですので,ここの典型的な計算をマスターした後には,いま挙げたような特別な応用 例の計算をよく理解するように勉強してください.(塩澤康平)