労働経済学(第5回)
広島大学国際協力研究科
川田恵介
復習:家族の経済学
• コストと便益を比べて、家計は意思決定を行う。
(ポイント)
機会費用:高賃金⇒余暇の機会費用 所得効果:所得増大⇒余暇への需要
• 二人家計の場合も基本同様に考えられる。
子供数の意思決定
• 子供とは?
経済学の視点 家計の効用が上がる( )
将来稼いで家計を助けてくれる( )
子育てには時間がかかる⇒ 費用の発生
二人家計モデル
• 夫と妻は、子育てと労働に時間を振り分ける。
• 所与の時給のもとで、労働時間を自由に選択でき る。
• のほうが賃金が高く、男性が市場労働に 特化し、女性は時間の一部を子育てに投入してい る。
賃金の変化
• 子供は 財とする。
• 男性の賃金の増大は、 を通じて、子供の 数を 。
• 女性の賃金増大は、
• を通じて、希望子供数を 。
• を通じて、希望子供数を 。
実証研究
滋野(1996, 大阪大学経済学):女性の就労が出産に負の効 果を持つ。
松浦、滋野(1996, 本):ホワイトカラー職であることが出産 に負の効果を持つ。
八代 (1998、 人口問題研究):家計所得が出産に正の影響 を持つ。
労働需要
• =企業側が、ある賃金水準のもとで、雇用し たいと考えている労働者数
• JR大阪駅周辺では、相次ぐ大型商業施設の誕生で求 人が急増。影響は同駅周辺にとどまらず、人気USJにも 及び、アルバイトの応募者が減っている。従 来900円 前後が相場だった時給が最近は1000円前後の店も 続出し、都心並みに上昇した。(毎日新聞より)
大卒市場:大卒求人数
リクルートワークス 大卒求人倍率調査
300000 400000 500000 600000 700000 800000 900000 1000000
万 人
大卒市場:規模別
リクルートワークス 大卒求人倍率調査 万
人
0 100000 200000 300000 400000 500000 600000 700000 800000
1000人 未満 1000人 以上
ハローワーク:新規求人数
労働力調査より
0 100000 200000 300000 400000 500000 600000 700000 800000 900000
63年 65年 67年 69年 71年 73年 75年 77年 79年 81年 83年 85年 87年 89年 91年 93年 95年 97年 99年 01年 03年 05年 07年 09年 11年
総数 パート除く パート
静学的労働需要モデル
• 企業により、雇用量は決定される。
• 企業は のみを支払う(労働者への福利厚生を 考えても結論は変わらない)
• 求人活動、労働者の解雇について追加的な費用が発 生しない。すなわち、企業は労働者の雇用量について の調整費用が発生しない。
労働需要
• 企業は自社の利潤を最大にするように、雇用量を決 定する。⇒ポイント:
企業は、賃金の水準を所与と考え、雇用量を決定する。
「限界」
労働者の限界○○
労働者が一人増えた時の、○○の変化量
労働者が一人増えた時の、生産量の増加量
労働者が一人増えた時の、費用の増加量
=費用関数の傾き=賃金
労働者が一人増えた時の、収入の増加量
=労働の限界生産性×価格
(例)限界生産性:凹型生産関数
Y
L
(例)限界生産性: S 字型生産関数
Y
L
利潤最大化雇用量
限界収入>限界費用(=賃金)⇒ 限界収入<限界費用⇒
利潤最大化雇用量⇒
限界収入の増大、限界費用の低下⇒雇用の 雇用量増大⇒収入 費用
雇用量増大⇒(最終的には)限界収入
(完全競争ならば)限界費用
価格の影響
• 生産物の価格、賃金の変化が、雇用量に与える影 響を考える。
• 賃金の上昇⇒ の増大⇒雇用量の
⇒ の労働需要関数
• 生産物の価格上昇⇒ の増大 ⇒雇用量の
資本の増加は雇用量を増やすか
• 近代において、さまざま産業用機械(資本)が発明さ れ、普及してきた。
例)紡績機、自動販売機、旋盤、パワーショベル等
• これらの技術進歩が労働者の雇用量にどのような 影響を与えるのであろうか?
ラッダイト運動( イギリス 19世紀初頭 )
Weblio より
「機械」が労働者の雇用を奪っている と考えた労働者による
「機械」を破壊する運動
労働の限界収入に与える影響
資本の増加は、生産量を増加させる
資本の増加が、 に与える影響が重要 これだけでは雇用量が増えるかどうかわからない。
補完と代替
労働と な資本:
資本水準の増加が、労働の限界生産性を増加させるよ うな資本
例)パワーショベルは重機の免許を持つ、高技能な労働 者と補完的である
労働と な資本:
資本水準の増加が、労働の限界生産性を低下させるよ うな資本
例)パワーショベルは重機の免許を持たない、単純労働 者と代替的である。
高学歴化と資本蓄積
• 近代における技術革新は、高技能労働者と補完的、 単純労働者と代替的であるものが多い。
• 結果、単純労働者への労働需要が減り、高技能労 働者への需要が増えた。
• この変化に対応するため、労働者の技能や知識へ の需要が高まり、高学歴化を後押ししたと考えられ る。
IT革命
• 近年の大きな技術革新:IT技術の進歩
Levy and Murnane(96, American Economic Review)
米国のある銀行の事例を調査し,コンピューターの導入 によって高学歴者に対する需要が増えた。
Autor, Levy, and Murnane (03, Quarterly Journal of Economics)
コンピュータは、労働者によるルーティンワーク的な作業 と代替的である。
まとめ
労働経済学 24
• 労働需要量と決定する要因として、労働の限界収入 が重要となる。
• 限界収入が上昇した場合労働需要は増大し、減少 した場合は減少する。
• さまざまな経済構造の変化が、労働需要に与える影 響は、労働生産性と補完関係にあるのか、代替関 係にあるのか、が重要視される。