力学演習 No.6 (May 26, 2010) 簡単な運動II∼空気抵抗を伴う落下運動∼ 1
y
v
0v
yt=0
v
y㸠º~
問題1. 速度に比例する空気抵抗f = −kmvが働く場合(k ≥ 0)*1,y= 0 から初速度v0で質点を投げ上げる運動を考える。
1-1.鉛直上方をy軸に選び,運動の概略図を描け。
✎右図を参考にして作用する力を書けばよい。
1-2. kの次元がT−1(SI単位系ではs−1)であることを確認せよ。 1-3.運動方程式を書け。
1-4.運動方程式を積分し,y方向の速度vy(t)が次式で表されることを示せ。
vy(t) = −
g
k+(v0+ g k)e
−kt
. (1)
1-5.速度vy(t)を積分し,高さy(t)が次式で表されることを示せ。
y(t) = −g kt+
1 k(v0+
g k)(1 − e
−kt). (2)
1-6.十分時間が経った後(t ≫ k−1)での速度すなわち終端速度v∞と,y∞(t)を求めよ*2。 1-7. vy(t)とy(t)をtの関数としてグラフで表せ。
1-8. kt ≪ 1の場合,vy(t)とy(t)がそれぞれ下のように展開できることを確認せよ。
vy(t) = (v0− gt) − k(v0t −g2t2) + O(k2), (3) y(t) = (v0t −g
2t
2) − k(v20t2−g 6t
3) + O(k2). (4)
1-9.最高点に達する時刻thと高さyh,更に
kv0
g ≪ 1の場合にそれぞれを展開すると
th= 1 klog
(1 +kv0 g
)= v0 g
[1 −kv0 2g + O(k
2)], (5)
yh= v0 k −
g k2log
(1 + kv0 g
)= v
2 0
2g
[1 − 2kv3g0 + O(k2)]. (6)
となることを示せ。
指数関数と対数関数のTaylor展開(Maclaurin 展開) ex= 1
0!+ x 1!+
x2
2! + · · · + xn
n! + · · · =
∞
∑
n=0
xn
n!, (7)
log(1 + x) = x 1 −
x2 2 +
x3
3 + · · · + (−1)n−1x
n
n + · · · =
∞
∑
n=1
(−1)n−1x
n
n . (8)
問題2. 同じく,速度に比例する空気抵抗f = −kmvが働くとき,xy平面で仰角α方向に原点から初速度V で質点を投げる。
2-1.運動方程式を書け。
2-2.運動方程式を積分し,速度vすなわちvx(t)とvy(t)を求めよ。 2-3.速度を積分し,位置すなわちx(t)とy(t)を求めよ。
2-4.十分時間が経った後(t ≫ k−1)の位置や速度について考察せよ。
*1
このような空気抵抗をStokesの粘性抵抗力という。速さ v= |v|が比較的小さい時,あるいは物体の大きさが比較的小さい時に 実現する。実例は,雲や霧雨の水滴,煙突からの煙,花粉の空中飛行,プランクトン・バクテリアの水中の泳ぎなど。
*2
ミリカンの油滴の実験の場合,k∼ 4 × 10
5s−1となり t≫ 10−5sでは v∞∼ 2 × 10−5 m/sの等速運動と考えてよい。また 同様に,半径0.1mmの水滴(霧雨)の場合,k∼ 10 s
−1
なり t≫ 0.1sでは v∞∼ 1m/sの等速運動と考えてよい。
2
y
v
0v
yt=0
v
y㸠º~
問題3. 速度の2乗に比例する空気抵抗f = −κmv
2
が働く場合(κ ≥ 0) *3, y= 0から初速度v0で質点を投げ上げる運動を考える。
3-1.鉛直上方をy軸に選んで,運動の概略図を描け。
✎右図を参考にして作用する力を書けばよい。
3-2. κの次元がL−1(SI単位系ではm−1)であることを確認せよ。 3-3.運動方程式を書け(上昇中と下降中で分けて考える必要がある)。
✎ついでに下降中の終端速度v∞を運動方程式だけから求めてみよう。
3-4.上昇中における運動方程式を積分し,速度vy(t)が次式で表されることを示せ。
vy(t) =√ g
κtan(γ −
√gκ t), (9)
γ= tan−1(√ κ gv0
)
. (10)
3-5.質点が最高点に到達する時刻thが次式になることを示せ。
th=√1 gκtan
−1(√ κ gv0
). (11)
3-6.上昇中の高さy(t)および最高点の高さyhが次式で表されることを確かめよ:
y(t) = 1 κlog
[cos[√gκ(th− t)]
]+ yh for t ≤ th, (12)
yh= −
1 κlog
[cos[√gκ th]]≥ 0. (13)
3-7.下降中における運動方程式を積分し,速度vy(t)が次式で表されることを示せ:
vy(t) = −
√ g κtanh[
√gκ(t − th)] for t ≥ th. (14)
3-8.この質点が等速運動になる条件およびその終端速度v∞を求めよ。 3-9.速度vy(t)をグラフで表せ。
3-10.下降中の高さy(t)が下のように表されることを確かめよ。
y(t) = −1 κlog
[cosh[√gκ(t − th)]]+ yh for t ≥ th. (15)
双曲線関数の定義と微分
cosh x := e
x+ e−x
2 , sinh x :=
ex− e−x
2 , tanh x :=
sinh x cosh x =
ex− e−x
ex+ e−x, (16) cosh2x − sinh2x= 1, 1 − tanh2x= 1
cosh2x, (17)
(cosh x)′ = sinh x, (sinh x)′= cosh x, (tanh x)′= 1
cosh2x. (18)
*3
この空気抵抗をNewtonの抵抗法則という。この法則が成り立つ条件など詳しいことは流体力学で学ぶ。