経済統計・宿題 #04 (解答)
担当:鹿野(大阪府立大学)
提出期限:
2014 年 07 月 11 日(金)pm 17:45、1階事務室前の提出 Box
解答 1. (a)
E( ˆµ) = 1
6E(X1) + 2
6E(X2) + 3
6E(X3) = 1 6µ +
2 6µ +
3
6µ = µ, (1)
Var( ˆµ) = 1 6
2
Var(X1) + 2 6
2
Var(X2) + 3 36
2
Var(X3) = 1 36σ
2+ 4 36σ
2+ 9 36σ
2= 7 18σ
2
(2) (b) 例えば次の推定量はµの不偏推定量である。
ˆµ′= 1 2X1+
1 4X2+
1
4X3, E(µ
′) = µ. (3)
(c) ˆµとX¯ はともにµの不偏推定量、E( ˆµ) = E( ¯X) = µだが、両者の分散を比較すると Var( ˆµ) = 7
18σ
2> Var( ¯X) = 6 18σ
2 (4)
でX¯の方が分散が小さく、より有効である。よってX¯ の方が望ましい。 2. (a) E(Xi) = µ、Var(Xi) = σ2なので、ˆµの期待値・分散はそれぞれ
E( ˆµ) = w1E(X1) + w2E(X2) +· · · + wnE(Xn) = µ(w1+ w2+· · · + wn) = µ
n
i=1
wi, (5)
Var( ˆµ) = w21Var(X1) + w22Var(X2) +· · · + w2nVar(Xn) = σ2(w21+ w22+· · · + w2n) = σ2
n
i=1
w2i.
(6) (b) (5)式より、
n
i=1
wi= 1 ⇒ E( ˆµ) = µ· 1 = µ. (7)
よって
n
i=1wi= 1を満たすウェイトを使ったˆµは、全て不偏推定量となる。
1
(c) i. (解答1)一般性を失うことなく、wiを1
nからの乖離
wi= 1
n + di (8)
で表す。この表記で不偏性の条件(7)式を表すと(以下、和の範囲を省略)
1 n+ di
= n· 1 n+
di = 1 ⇒ di= 0. (9)
また(6)式の分散は、上式の条件を満たすならば Var( ˆµ) = σ2 1
n+ di
2
= σ2
1 n2 +
2di
n + d
2 i
= σ
n· 1
n2 + 2 n
di+
d2i
= σ2 1 n +
di2
. (10)
上式はd1 = d2 =· · · = dn= 0と置けば最小となる。すなわちwi = 1
n + 0 = 1
nを
採用すれば、ˆµは最小分散の不偏推定量となる。このとき分散はVar( ˆµ) = σ
2
n 。
ii. (解答2)最小化問題を使う方法:不偏性の条件(7)式を満たしつつ(6)式の分 散を最小にするwiは、次の最小化問題の解である。
w1,wmin2,...,wn
σ2
n
i=1
w2i, subject to
n
i=1
wi= 1. (11)
この問題のラグランジュ関数および最小化の一階条件は
L(w1, w2, . . . , wn, λ) = σ2w2i + λ(1−wi), (12)
∂L
∂wi = 0 ⇒ 2σ
2w∗
i = λ∗, i = 1, 2, . . . , n. (13)
∂L
∂λ = 0 ⇒
w∗i = 1. (14)
(13)式を足し合わせ、λ∗について解くと 2σ2w∗i
=1
= nλ∗ ⇒ λ∗= 2σ
2
n . (15)
これを(13)式に代入すると 2σ2w∗i = 2σ
2
n ⇒ w
∗i = 1
n, i = 1, 2, . . . , n. (16) よってすべてwi = 1
n と置けば、分散が最小の不偏推定量、有効推定量を得る。 この結果から、標本平均X¯ がµの有効推定量であると言える。
3. カイ2乗分布の左右2.5%臨界値の定義から、
Prχ2L,0.025< χ2 < χ2R,0.025= 0.95. (17)
2
カイ2乗統計量χ2の定義に注意し、左辺カッコ内の大小関係を移項・変形すると χ2L,0.025< (n− 1)s
2
σ2 < χ
2
R,0.025 ⇔ χ
2 L,0.025
(n− 1)s2 < 1 σ2 <
χ2R,0.025 (n− 1)s2
⇔ (n− 1)s
2
χ2R,0.025
=L
< σ2< (n− 1)s
2
χ2L,0.025
=U
. (18)
よって母分散σ2の95%信頼区間[L, U]は L = (n− 1)s
2
χ2R,0.025 , U =
(n− 1)s2
χ2L,0.025 . (19)
4. 帰無仮説H0: µ = 800のもとで、t値はおよそ t∗= 836.67− 800
172.11/√18 = 0.904. (20)
一方自由度m = n− 1 = 17のt分布の2.5%臨界値はt0.025= 2.110。t∗= 0.904 < 2.110で、 t値は棄却域に入らない。∴帰無仮説は棄却されない。
解説
1. 母平均µの不偏推定量は、標本平均X¯ 以外にも無数に存在することが分かる。
2. (a)と(b)は、µに関し任意の不偏推定量ˆµ(標本平均を含む)を定義する問題。不偏性の
条件を満たすようにウェイトを与えれば、µの不偏推定量は無限に存在する。(c)はˆµを 使って、標本平均が有効推定量であることを証明する問題。
3. 臨界値および統計量の定義から出発して、うまく母数(ここでは母分散σ2)を挟むよう な形に変形すれば良い。
4. この分析では、理論値800からの正・負両方の乖離を考慮し、両側検定を採用している。 なお、実際のデータ分析では、統計値は割り切れない数になる。その場合は、適当に切り 捨てor四捨五入して良い。
3