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KKJ0035 041 048 中学校技術・家庭(家庭分野)「家庭生活と消費」における 「パフォーマンス評価」導入の試み

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Academic year: 2018

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(1)

熊本大学学術リポジトリ

K umamoto Univers ity R epos itory S ys tem

T itle

中学校技術・家庭(家庭分野)「家庭生活と消費」におけ

る 「パフォーマンス評価」導入の試み

A uthor(s )

安成, 美保; 八幡( 谷口) , 彩子

C itation

熊本大学教育実践研究, 35: 41- 48

Is s ue date

2018- 01- 31

T ype

D

epar t m

ent al Bul l et i n Paper

UR L

ht t p: / / hdl . handl e. net / 2298/ 39101

(2)

中学校技術・家庭(家庭分野)「家庭生活と消費」における

「パフォーマンス評価」導入の試み

成 美 保

*1

・八幡(谷口)彩子

*2

Introducing Performance-Based Assessment of Consumer Life and

Behavior

in

Japanese

Junior High School Home Economics Classes : Trial Lessons

M

iho Y

ASUNARI*1

and Ayako Y

AHATA

-T

ANIGUCHI*2

Abstract

Recently, “performance-based assessment” stands out as one of the methods used to evaluate studentsʼ learning with respect to thinking, judgment, presentation, etc.

The objective of this paper is to introduce “performance-based assessment” into home economics classes on consumer life and behavior in Japanese junior high schools, and to examine the process of introducing this assessment method and the potentialities and/or actual tasks conducted in conjunction with it.

To achieve this objective, we gave lessons on consumer life and behavior toJapanese junior high school students, introducingperformance-based assessment with the lastlesson. After these lessons, we analyzed and assessed descriptions from the students.

The results were as follows : 1) We developed a task for “performance-based assessment” involving buying T-shirts through internet shopping. 2) We developed the rubric for “performance-based assessment” from the viewpoint of buying objects, pigeonholing and analyzing the information on buying, their reasoning, and performance. 3)

Over 70% of students could clear the standard point in the task to select the appropriate T-shirt by analyzing information on the T-shirts. According to the questionnaires after the lessons, many students found the “performance-based assessment” task to be easy and interesting. 4) However, only 50% could give a logical explanation for selecting their T-shirt. Our analysis showed that students had difficulty with logical thinking and descriptions.

Key words:performance-based assessment, home economics education, consumer life and behavior, rubric.

21世紀は「知識基盤社会」であると言われる.「知 識基盤社会」では,社会の変化に伴って産業のしく みや職業のあり方等,大きく変化していくことが予 想される.答えが容易にみつからない諸課題に向き 合い,それを解決していくための力が21世紀を生き

る子どもたちには求められている.

2013年3月に,国立教育政策研究所教育課程セン ターは,「21世紀型能力」を提案した.勝野によれば, 「21世紀型能力」とは,問題解決・発見力・創造力,

論理的・批判的思考力,メタ認知等で構成される「思 考力」,「言語,数,情報を目的に応じて道具として

使いこなすスキル」であり「思考力」を支える「基 礎力」,思考力の使い方を方向付ける「実践力」の3 層から構成されるとされる(勝野,2013,pp.26-27).

現行学習指導要領(2008)では,基礎的・基本的 な知識及び技能の習得とともに思考力・判断力・表

現力の育成が重視されている.この思考力・判断力 *1 市立有明中学校(教育学研究科平成28年度修生)

*2 教育学科

(3)

等を把握するために,近年注目されているのが「パ フォーマンス評価(performance assessment)」であ る.「パフォーマンス評価」とは,現実社会に起こり

うる状況を模したリアルな問題場面(「パフォーマ

ンス課題」)を設定し,それに取り組ませることで, これまで評価が難しいとされてきた思考力・判断 力・表現力を評価するもので,あわせて「ルーブリッ ク」と呼ばれる評価基準表が用いられる.

日本においても理科や算数(数学)では研究が進 められているが,技術・家庭(家庭分野)では,こ れまであまり取り組まれてきていない.また,現行 中学校学習指導要領では,問題解決的な能力を育成 するために「生活の課題と実践」が,技術・家庭(家 庭分野)の衣食住や家族の内容には導入されたが, 内容「D 身近な消費生活と環境」では位置づけら れていない.そこで,内容「D 身近な消費生活と 環境」の学習における思考力・判断力等の能力が身 に付いたのかを評価するために,「パフォーマンス 評価」を開発し,その有効性について検証したいと 考えた.

本研究の目的は,中学校技術・家庭(家庭分野) の内容「D 身近な消費生活と環境」の学習事項「⑴ 家庭生活と消費」の学習において,生徒の思考力・ 判断力等を把握するために「パフォーマンス課題」 を開発し,「ルーブリック」を用いた「パフォーマン ス評価」を導入することでその有効性について検討 することである.

上記の研究目的を達成するために,以下の手順で 研究を進めた.

1 『中学校学習指導要領解説 技術・家庭編』なら びに中学校技術・家庭教科書等をもとに,中学校 技術・家庭(家庭分野)内容「D 身近な消費生 活と環境」「⑴家庭生活と消費」において育むべき 思考力・判断力等を分析し,「パフォーマンス評価」 を行うための「パフォーマンス課題」とルーブリッ ク(評価基準表)を開発する.

2 1で開発した「パフォーマンス課題」を導入し た授業計画・学習指導案を作成する.

3 2で開発した「パフォーマンス課題」等の妥当 性を検証するために,以下の通り検証授業を行う. 対象:上天草市立大矢野中学校第2学年(4クラ

ス)

時期:平成28(2016)年6月13日㈪〜7月1日㈮ 内容:中学校技術・家庭(家庭分野)内容「D 身 近な消費生活と環境」「⑴家庭生活と消費」

に関する6時間の授業において「パフォー

マンス課題」と「事後アンケート」に取り 組ませる.授業者は安成である.

4 「パフォーマンス課題」に取り組んだ思考のプ ロセスを記述したワークシート(121人分)と「事 後アンケート」(112人分)を分析対象として,開 発した「パフォーマンス課題」とルーブリックの 妥当性について検証する.

検証内容は以下の通りである.

①開発した「パフォーマンス課題」は,生徒にとっ て意欲的に(無理なく)取り組める課題であっ たか.

②開発した「パフォーマンス課題」とルーブリッ クは,事前に想定した思考力・判断力等を適切 に把握できるものであったか.

③開発した「パフォーマンス課題」とルーブリッ クを,技術・家庭(家庭分野)内容「D 身近 な消費生活と環境」「⑴家庭生活と消費」の題材

において,導入することが妥当か.

結果と考察

「パフォーマンス課題」の開発

「パフォーマンス課題」は,中学生と同年代の架空 の人物が,インターネットでの通信販売を通して, 「おそろいのTシャツを注文する」というリアルな

文脈を設定したものである.事前に『評価基準の作 成,評価方法等の工夫改善のための参考資料(中学 校 技術・家庭)』等をもとに,本題材において,習 得すべき知識やスキルを洗い出し,「さまざまな条 件をもとに必要な情報を収集・整理・分析し,それ らの情報を活用していく」という思考力・判断力等 を評価することを目指す「パフォーマンス課題」の 開発を目指した.

今回開発した「パフォーマンス課題」の内容と解 答用紙にあたるワークシートを図1・図2に示す. 「パフォーマンス課題」の内容は,ダンス部に所属す

る2人の中学生の会話からなるものである.課題に 取り組む生徒は,この内容から,そのTシャツを選 ぶポイントとして,①予算 ②納期 ③品質 の3 つが最低必要なポイントであることを読み取る必要 がある.

さ ら に,補足資料と し て架 空の 会社 3 社(① SHOP MIX ②クリエイト K ③まごころTシャ ツ製作所)のホームページを紙面上に表したもの(イ ンターネット上の実際の会社に,本研究の趣旨を伝 え画像を使用することを許可していただき作成し た.)を生徒に配布する(図3〜5).生徒は,これ 「パフォーマンス評価」導入の試み

(4)

美保

・八

口)

―4

3―

(5)

「パフォーマンス評価」導入の試み

― 44 ―

図3

TEL

図4

(6)

安成 美保・八幡(谷口)彩子

図5

(7)

らの資料の中から,Tシャツの購入に必要な情報を

収集・整理・分析していく.

また,ワークシートには,以下の4つの設問を記 載している.

設問① Tシャツを選ぶポイントを書き出す. 設問② 3つの会社の情報を整理・分析する. 設問③ 設問①②をもとに会社を選ぶ. 設問④ 会社を選んだ理由を説明する.

これら4つの設問は,設問①〜④を通して,生徒 の思考過程を見取ることができるよう設定した.特

に設問④については,自由記述の形式で,生徒の思

考力・判断力等を把握できるよう工夫した. また,設問①②④に対応した,各設問「3点」満 点のうち,生徒に到達してほしい水準を「2点」に 設定したルーブリック(表1)を作成した.(※設問 ③は配点せず)

「パフォーマンス評価」を踏まえた指導計画の作成

中学校技術・家庭(家庭分野)内容「D 身近な 消費生活と環境」「⑴家庭生活と消費」における学習 を,3年間の授業計画のうち,中学校2年生の第 24〜29時の6時間として位置づけ,本題材で育むべ き力や生徒の実態等をもとに,また,今回開発した 「パフォーマンス課題」に取り組ませることを前提

として,学習指導案(6時間分)を作成した. 学習内容については,第1次は,自分の消費行動 を振り返らせることを通して,自分や家族の消費生 活に関心を持たせ,第2次から第3次にかけて,契

約の意味や販売方法と支払い方法等について学び, 物資・サービスの適切な選択,購入ができるように する.第4次から第5次にかけては,消費者トラブ

ルについて,その解決方法を考えさせ,消費者の権

利や責任について学ばせる.最後の第6次はまとめ

の時間とし,今回開発した「パフォーマンス課題」 に取り組ませる.

今回の指導計画は,「逆向き設計」(通常指導を行っ

た後で考えられる評価方法を指導の前に考えておく

という,いわゆる「逆向き」で指導計画等を考えて いく方法)(西岡,2008,p. 14)で作成した.題材で 育みたい力や今回開発した「パフォーマンス課題」 に対して,生徒が十分に取り組めるだけの思考力・

判断力等を育むべく「逆算」しながらの作業となっ

た.その結果,「家庭生活と消費」の学習は座学にな りやすいが,中学生に身近な通信販売等の消費行動

を例に取り上げたり,リアルな文脈を設定し,興味・ 関心を高めたり,ロールプレイやジグゾー法などの 参加型の学習形態を取り入れたりすることで,生徒

主体の学習となるよう工夫した.このように「逆向

き設計」の発想で題材を捉えることにより授業が改

善されたと考える.

「パフォーマンス課題(ワークシート)」の分析

生徒の記述内容をルーブリックをもとに評価(得 点化)した結果を表2に示す.

⑴設問①の分析

設問「①購入の際のポイント」については,「値段・ 品質・納期」の3つをあげることのできた基準点「2

点」以上の生徒は,75%を占めた.「値段・品質・納 期」のうち,「納期」についてが最も回答率が低かっ

た.その原因として,通信販売をテーマにして今回 開発した「パフォーマンス課題」の特性によるもの

と考える.また,生徒が「購入のポイント」として

記述した内容は多様であり,基準点に満たない生徒

においても,上記の3つのポイント以外にも多くの

ポイントを挙げていた.

⑵設問②の分析

設問「②情報の整理・分析」に関しては,3つの

ポイントについて正しく情報を整理・分析している 「2点」(基準点)以上の生徒が72%を占め,良好な

結果が得られた.

⑶設問③の分析

架空の3社の中から,Tシャツを注文する1社を 選択するものであるが,この設問については,多様

な選び方が考えられるため,選択結果を得点の対象

としていない.なお,授業を受けた生徒121人の選 択状 況は,①SHOP MIX 8% ②クリエイトK

59% ③まごころTシャツ製作所 42%(その他

1%)であった.

⑷設問④の分析

設問「④その会社を選んだ理由」に関しては,基 準点「2点」以上に達した生徒は,54%にとどまり,

ルーブリックの基準の設定や情報活用力・分析力・

論理的思考力・記述力等に課題があると考える.

「パフォーマンス評価」導入の試み

― 46 ―

(8)

導入した「パフォーマンス課題」における,児童

が選択した商品の組み合わせの状況については,ほ

とんどの児童が,5,000円の予算の範囲内で商品を 組み合わせて選んでいた.

「事後アンケート」の分析

「事後アンケート」において「パフォーマンス課題」 への評価を尋ねたところ,図6の通り,「①課題に積 極的に取り組むことができたか」「⑤これからの生 活の中で今回の学習は生かされると思うか」につい ては,約8割の生徒が「とても」と回答しており,

良好な結果が得られた.「取り組みの時間」(②)に 関しても,9割以上の生徒が「とても」「まあまあ」 と答えている.一方,「③課題は実際の生活の中で 起きることに近い内容だったか」に関しては,「とて も」が37%と最も低かった.

「事後アンケート」で課題のおもしろいところや

苦手だったところ,気づいたことなどについて尋ね

たところ,「文でまとめたり,書いたりするのが少し 苦手」というような感想もあったが,「値段や素材を 見て自分が選びたい会社をしっかり考えることが楽 しかった」「実際に自分が選んでるみたいだったし,

資料もついていて本当のものみたいだったからドキ ドキした.(ワクワクする)」というものがあり,生

徒は課題を意欲的に捉えており,「学んだことを生 活に生かしていきたい」等の内容が多く見られたこ

とから,「学びの実践化」つまり「21世紀型能力」の

「実践力」に向かう力が形成されていると考える.

中学校技術・家庭(家庭分野)内容「D 身近な

消費生活と環境」「⑴家庭生活と消費」の学習におい て,生徒の思考力・判断力等を把握するための「パ フォーマンス課題」とルーブリックを開発・導入し,

その有効性について検討した結果を以下にまとめる.

⑴「パフォーマンス課題」(ワークシート)におい て,Tシャツを選ぶポイントを挙げ,必要な情報を

整理・分析する課題において,70%以上の生徒が基 準点以上に達していること,「事後アンケート」の回

答から,「パフォーマンス課題」に取り組む時間は, 30分で無理なく取り組めるものであったと判断でき ること,「パフォーマンス課題」に積極的に取り組み, 「楽しかった」とする記述が多く見られることなど

から,開発した「パフォーマンス課題」は,意欲的 に取り組める課題であったと考える.一方,会社を

選んだ理由を述べる課題については,基準点以上に

達した生徒は約50%にとどまり,根拠(ワークシー トの設問①②でまとめた表)をもとに,論理的に思

考し,最適の会社をどのように選択するのかを記述

する力には課題があったと考える.

⑵生徒のワークシートの記述状況から判断して, 「商品の選択に必要な条件を挙げ,購入する」という

既習事項(基礎・基本)を活用して考えることがで きる課題として,適切であったと考える.また,ルー ブリックも,想定した選択のポイント(値段・品質・ 納期)が記載されているかどうかを把握する上では 有効であったと考える.但し,生徒の多様な気づき の実態を踏まえて,ルーブリックの改善を行う必要 がある.

⑶開発した「パフォーマンス課題」とルーブリッ

クを技術・家庭(家庭分野)内容「D 身近な消費

生活と環境」「⑴家庭生活と消費」の題材において導

入することは,上記の検討結果から妥当であると考

安成 美保・八幡(谷口)彩子

(9)

える.しかし,本研究で開発したルーブリックは, 生徒の多様な実態をある程度踏まえたものに改善す ることが求められる.今後,さらなる「パフォーマ ンス課題」の開発を目指したい.

最後に,実地授業ならびに「パフォーマンス評価」 の取組にご協力いただいた上天草市立大矢野中学校

第2学年(4クラス)の生徒の皆さんに深謝申し上

げます.

引用文献

勝野頼彦(2013)『平成24年度 プロジェクト研究調査研究

報告書 教育課程の編成に関する基礎的研究 報告書5

社会の変化に対応する資質や能力を育成する教育課程

編成の基本原理〔改訂版〕』国立教育政策研究所,東京

国立教育政策研究所 教育課程研究センター(2011)『評価

規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料

(中学校 技術・家庭)』教育出版株式会社,東京

西岡加名恵(編)(2008)『「逆向き設計」で確かな学力を保障

する』明治図書,東京

文部科学省(2008)『中学校学習指導要領解説 技術・家庭 編』教育図書株式会社,東京

「パフォーマンス評価」導入の試み

参照

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