... . . 労働市場
慶田 昌之
労働市場は、家計の労働供給と企業の労働需要によって決ま る市場である。
新古典派マクロ経済学では、労働市場はこれまでに学んだ市
場と同じように市場で決定すると考える。
家計は、労働の価格である実質賃金 wをみて労働を供給す ると考えられる。
実質賃金とは、名目賃金 W を物価水準P で割ったもので ある。
w = W P
家計は余暇と消費の代替を考慮して労働の供給を決定する。
実質賃金の上昇に対して、家計の労働供給が増加するか減少 するかは、所得効果と代替効果の大きさによるために、理論 的には決定しない。
しかし新古典派マクロ経済学では、所得効果は代替効果に比 べて大きくないと仮定し、実質賃金の上昇に対して、労働供 給は増加すると仮定する。
Ns= ϕ( W P
)
これが労働の供給関数である。
企業の労働需要は、労働の限界生産性によって決定する。 ミクロ経済学で学ぶように、完全競争企業の利潤最大化の限 界条件は価格=限界費用である。
生産関数がY = F ( ¯K, N )であり、資本K¯ が一定であるの で、これを無視すると、
P = W × 1 dF/dNs
これを変形すると、
dF dNs =
W P であることがわかる。
これが労働の需要関数である。
以上について、より詳しくは岩田規久男著『ゼミナールミク ロ経済学入門』第11章を参照すること。
新古典派マクロ経済学の労働市場は、以上のような労働供給 と労働需要が一致するところで、実質賃金w = W/P と労働 量N が決定すると考える。
労働市場の均衡式は
Nd= Ns となる。
新古典派マクロ経済学では、失業はそのときの実質賃金では 働きたくない人か、転職をするために一時的に職のない人な どの摩擦的な失業しか存在しないと考えられる。
このような人を自発的失業者と呼ぶ。労働市場が均衡してい る場合でも、自発的失業は一定数いると考えられる。
ケインズ派マクロ経済学では、新古典派と異なり、労働市場 はその他の市場のような均衡はしないと考える。
ケインズはマクロ経済学の特徴は、名目賃金 W がある水準 に固定されると考える点である。ここでは、W¯ と表記する。 W¯ は、新古典派マクロ経済学が考える均衡価格よりも高い 価格であると考える。
そのために、労働供給は労働需要よりも多い状態、すなわち 超過供給の状態にあると考える。
この超過供給が失業である。
このような失業は、家計が労働を供給したいと考えても、需 要がないという意味で、非自発的失業と呼ばれる。
ケインズ派マクロ経済学では、ミクロ経済学で学んだよう な、名目賃金が低下して需要と供給が一致するということが 起こらないと考える。
このように、名目賃金が需給を一致させるように低下しない ことを賃金の下方硬直性と呼ぶ。
この点が新古典派マクロ経済学との大きな違いである。