労働経済学1 (第4回)
広島大学社会科学研究科 特任助教
川田恵介
労働供給の選択
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•消費と余暇から効用を感じる家計を想定し、就業選 択の問題を考察した。
•前回のモデル:固定的な労働時間と賃金のもとで、働 くか働かないかの選択問題を考察した。
•労働時間は、雇用主との交渉、労働条件の選択を通 じて、ある程度労働者が選択可能。
月当たり実労働時間
(毎月勤労統計調査より)
実労働時間=所定内労働時間+所定外労働時間
140 145 150 155 160 165 170 175 180 185 190
1500 1700 1900 2100 2300 2500 2700
1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
実質時給 労働時間
家計の選択行動
労働時間:h、賃金(時給):w、総時間:T、物価:p、非労働 所得:b、消費水準:c、余暇時間:l。
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(仮定)時間と予算の制約下で、自身の効用を最大にする ように家計は労働供給を決定する。
家計の制約
予算制約: 、時間制約:
⇒選択可能な余暇時間と賃金の組み合わせを調べたい。 連立してhを消去すると、
• �は余暇の“価格”と考えられる( 費用)。
• 余暇を増加させるには、消費を我慢する必要がある。
家計の目的:無差別曲線
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余暇時間 消費量
消費量は多いけど、 労働時間が長い
高い効用
消費量は少ないけど、 労働時間が短い
無差別曲線についての仮定
•右上にある無差別曲線のほうが、効用が高い。
•同一個人について、無差別曲線は交わらない。
•右下がりである。
•左下に向かって膨らんである。
左下に向かって膨らんでいる無差別
曲線
労働経済学1 8
余暇 時間 消費量
低い効用
低い効用
クイズ(異なる家計)
余暇 消費量
家計1
家計2
家計1は新たな消費点を望 むが、家計2は望まない。
労働時間の選択
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余暇 消費量
T
�
�
�� + �
�
w/p
賃金の増大
• 予算制約線�� + �� = �� + �の傾きと切片のと もに増大させる。
• wの増大は所得を増大させる( )、一 方で余暇の価格も増大させる( )。
• 労働時間への影響: 所得効果VS代替効果
賃金の増大(その1)
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余暇時間 消費量
�� + �
�
賃金の増大によって、労働時間が増 大し、労働供給が増える。
賃金の増大(その2)
余暇時間 消費量
�� + �
�
賃金の増大によって、余暇時間が増 大し、労働時間が減少する。労働供 給が減る。
賃金の増大
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• 所得効果が十分に大きい場合、賃金の増大に よって、余暇時間は増大する。
• アンケート結果:時給が800円から1000円に増大し た場合、平均0.28時間した(47人中11人は増大、 11人は減少した)。
非労働所得の増大
• 制約線の切片のみ増大させる。
• bの増大は所得のみを増大させる( )。
非労働所得の増大
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余暇時間 消費量
�� + �
�
非労働所得の増大によって、労働時 間が減少し、労働供給が減る。
二人家計モデル
• ここまでの議論では、家計があたかも一人の労働 者のみで構成されていると想定してきた。
• 複数の労働者が家計を構成する場合も多々ある
( )。
• 複数の労働者の内、誰がどの程度働き、家事をす るか、という の問題が生じる。
データ
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平成18年の社会生活基本調査より、夫婦と子供か らなる共働き家計について、
• 男性の週当たり平均労働時間は45.1時間、女性 は25.6時間
• 男性の平均育児時間は男性は8時間、女性は36 時間
データ
労働経済学1
• 家事時間は、男性は11時間、女性は208時間
• 共働き家計であっても、生活時間の配分は夫婦間 で大きく異なる。
• 同調査、カテゴリーにおける標本数は、
形態 標本数
夫が有業で妻も有業 22,364 夫が有業で妻が無業 13,866
夫が無業で妻が有業 1,266
夫が無業で妻も無業 2,965
夫婦間での“役割分担”
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• なぜ夫婦間で家事と仕事の分担が、大きく異なる のか?
( による説明):慣習等の影響で、女性 が家事、男性が仕事という“意識”が存在している。
( による説明):適切な分担をすることで、互 いの比較優位を生かせ、家計の状態を改善できる。
男女間の“役割分担”
0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250 0.300 0.350 0.400 0.450
まったく 賛成
どちらかといえば賛成 どちらかといえば反対 まったく
反対
男性 女性
結婚後は、夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ
二人家計モデル
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• 二人労働者によって家計は構成される。
• 各労働者(夫と妻)は消費財と家事から効用を得る。
• 家事は、市場から購入できない。
• 各労働者は、消費と家計内生産に時間を振り分ける。
• 以下� ≤ �のケースを分析対象とする。
夫の消費:��、妻の消費:��、家事水準:�、夫の労働時 間:ℎ�、妻の労働時間:ℎ�、夫の賃金:��、妻の賃金:�� 夫が家事を行う割合:s
制約式
• 時間一単位当たり、一単位の家計内生産が可能。
• s:夫が家事を行う割合、T:総時間、h:労働時間 夫の時間制約式:
妻の時間制約式: 予算制約式:
時間制約式を予算制約式に代入すると、
� �� + �� = ��(� − ��) + ��(� − 1 − � �) + �
家計内分業
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• 整理すると、
� �� + �� + �� + �� − �� � � = ��� + ��� + �
�� > ��ならば 、�� < ��ならば 、とする ことで、家事の機会費用を最小化できる。
⇒賃金の高い一方の労働者が家事を行うことで、より高 い消費と家事を両立できる。
男女間賃金格差
1.4 1.45 1.5 1.55 1.6 1.65 1.7 1.75
1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
縦軸=男性の所定内賃金/女性の所定内賃金
家計内分業
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• � = 0が選択されるならば、
� �� + �� + ��� = ��� + ��� + �
• 余暇の機会費用は、
• 男性の賃金の増大は、�が正常財ならば、確実に�を
• 女性の賃金の増大は、所得効果 代替効果なら ば�を増大させ、所得効果 代替効果ならば減少さ せる。
実証研究
• �:育児時間
滋野(1996, 大阪大学経済学):女性の就労が出産に負の効 果を持つ。
松浦、滋野(1996, 本):ホワイトカラー職であることが出産 に負の効果を持つ。
八代 (1998、 人口問題研究):家計所得が出産に正の影響 を持つ。
まとめ
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• 労働時間を労働者が選択できる場合、賃金上昇が労働 時間に与える影響は理論的には不明瞭。
• 多くの実証研究では、平均的な労働者については、労 働時間を増大させる結果を得ている。
• 家計内分業は、比較優位の結果からも生じえる。
• 次回からは、需要側の話をします。