学生用 小坂研

13 

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全文

(1)

6 筋電図

Electromyography (EMG)

a.

 目的

本 実 習 項 目 は 、 神経 ・ 筋 疾 患 の 診 断 の 1 つ に 広 く 臨床 応 用 さ れ て い る の で 、 正 確 にそ の 導 出 方 法 を 取

得し 、生 体の 電気現 象と ノイズ とを 明確 にする 。ま た記 録波形 を理 解す るとと もに その発 生機 序に つい

ても考察する。具体的には以下のことについて学習する。

1)

筋電図から収縮と弛緩、伸筋と屈筋、主働筋と拮抗筋、同名筋と協力筋のそれぞれの関係を観察、

理解する。

 2)等尺性収縮と等張性収縮の相違、関節の動きと筋収縮との関係を学ぶ。

3)

M

波と

H

波を記録し、それらの発生機序について考察してからこれが筋自体の疾患の検査だけで

  なく、中枢神経系の疾患の診断にもなっていることを理解する。

 4)運動神経と感覚神経の伝導速度の記録方法、伝導速度、それらを変化させる因子について学ぶ。

b.

 解説

 1)骨格筋の種類

  

骨 格 筋 は 白 筋 と 赤 筋 に 分け ら れ る 。 白 筋 は 素 早 い 運 動 を 、 赤 筋 は ゆ っ く りと し た 持 続 的 な 運 動 を 司

り、

  前者は男性的、後者は女性的の筋肉に例えられている。

  また、個々の筋線維は収縮の特性により次の3種に大別される。

   1.FF線維・・・収縮速度が速く、疲労しやすい線維で、白筋に対応する太い線維

   2.FR線維・・・収縮速度が速く、疲労しにくい線維で、FFとSの中間の性質をもつ線維

   3.S線維・・・収縮速度が遅く、疲労しにくい線維で、赤筋に対応する細い線維

  さら に、 筋線 維を 支配 する α

運動 ニュ ーロ ンも 、相 動性運 動ニ ュー ロン

(phasic motoneuron)

と持 続性

運動ニューロン

(tonic motoneuron)

の2つの種類に分けられる。

2

)筋電図の種類

  一般的によく行われている主な筋電図の種類を挙げると

1.

動作学的筋電図(記録に表面電極を用いる場合、表面筋電図とよぶこともある。

  異なる筋の活動電位を同時記録し、そのあり方から正常あるいは異常運動のパターンを分析したり、

  随意的な筋の伸展に対する筋の放電パターンから筋トーヌスの状態を知る。

2.

普通筋電図

  針電極を用いて運動単位の状態を知ことができる。局所的な診断が可能な反面、筋に刺入した針電極

  が収縮により常に折れる危険性が伴うため、特に注意を要する。

3.

誘発筋電図

  間接的に皮膚表面上から知覚神経あるいは運動神経に電気刺激を加え、それに対する反応をみる。そ

  れら末梢神経の伝導時間から経路の違いなどを知る。

4.

単一筋線維筋電図

  単一筋線維活動電位の状態から神経筋伝達機能、筋線維の状態、運動単位、筋線維密度などを知る。

(2)

3

)誘発筋電図の発生機序

中 枢 神 経 系( 脳 幹 ま た は 脊 髄) か ら の 遠 心 性 イン パ ル ス が α

運 動ニ ュ ー ロ ン ( α

-motoneuron

( 運 動 ニ

ュ ーロ ン に はα

運 動 ニュ ー ロ ンと γ

運動 ニ ュ ーロ ン が あり 、 前者 は 錘 外線 維

extrafusal muscle

、 後 者は 錘

内線 維

intrafusal muscle

を 支配し ている )を介 して 骨格筋 に伝え られ 、筋収 縮が起 こる。 1個 のα

運 動ニ

ューロンは末端で枝分かれして、下図のように

10

数本から

1000

本以上の筋線維とシナプス結合している

ため、あるα

運動ニューロンが興奮すればそ

の支配下にある筋線維は同期して活動する。

その活動により周辺部に大きな電場がつく

られ、これを誘導したのが筋電図である。

 誘発 筋電 図に おける M波 は皮膚 表面 から α

運動 ニュ ーロ ンの軸 索を 刺激 するこ とに より、 興奮 が神 経ー

筋 接合 部 (

myoneural junction

) に伝 わ って 、 この 部位 で は神 経 伝達 物 質

neuro-transmitter

であ る アセ チ

ル コ リ ン が 放 出 さ れ 、終 板 電 位 (

endplate potential EPP

) を 発 生 し て 、 筋 肉 ( 錘外 線 維 ) に 活 動 電 位 を

発生 させ たもの である (実 習項目 6

.

筋細胞 の細胞 内電 位測定 の解説 を参 照)

。 H波 はG

Ia

線維( 求心 性線

維 )の 興 奮に よ り、 脊 髄で シ ナプ ス を越 え てα

運動 ニ ュー ロ ンに

monosynaptic

EPSP

が 生じ て 、活 動

電位 を発 生させ 、そ れが 神経線 維を 伝搬し 、神 経終 末部か ら終 板を越 えて 筋肉に 活動 電位 を発生 させ 、そ

れを 導出 したの であ る。 このよ うに M波お よび H波 の現れ 方に は特徴 があ る。す なわ ち先 に潜時 の長 いH

波  が、 次いで 潜時 の短 いM波 が出 現し、 M波 の出 現に伴 いH 波は徐 々に 減衰し 、最 終的 にはM 波だ けに

な る ( 図

4

B 参 照 )

。 そ の 原 因は 、 神 経 線 維 の 刺 激 に対 す る 閾 値 や 、 神 経に お け る 興 奮 伝 達 の性 質 で あ る

不応 期

refractory period

、 さらに 神経 インパ ルス の衝突 現象

collision phenomenon

)など が考 えら

れる。

c.

 実習をスムーズに遂行するにあたって!

 1) 全員が被験者になって体験すること。

(3)
(4)
(5)

.

 随意収縮時の表面筋電極

.

目的

ヒト の筋 を覆 う皮 膚に 表面 電極 を貼 付し 、筋 線維 の興 奮に よる 膜電 位の 変化 を貼 付し た表 面電 極か ら

その筋の運動単位の活動電位の和を記録する。

.

実験準備

銀板 電極 を電 極糊 を介 して 、対 象の 骨格 筋( 実習 では 各自 拮抗 筋ま たは 協力 筋の 筋電 図を 観察 する 。

例 :上 腕 二 頭筋 と 上腕 三 頭筋 ) の 表面 皮 膚上 に 筋 線維 の 走方 向 に約 3

cm

隔て て 二枚 貼 り、 そ れ ぞれ 絆

創膏 等を 用いて 固定 する。 この 際、皮 膚と 電極間 の抵 抗をで きる だけ小 さく するた め、 あらか じめ 皮膚

をア ルコ ール等 でよ く拭い てお く必要 があ る。妨 害電 波が混 入す るので 、付 近(腓 腹筋 であれ ば足 首、

上腕 の筋 であれ ば手 首)に 不関 電極を 貼り 接地す る。 本法で は、 個々の 筋を 分離し て、 その活 動電 流を

見ることは困難である。電極付近の筋全部の電流が記録される。

.

観察事項

表面 電極 法に より 、負 荷を 加え た場 合と 無負 荷の 場合 (等 尺性 収縮 と等 張性 収縮 )の 各運 動時 の筋 電

図を観察する。筋活動の強弱と筋電図との関係や主働筋と拮抗筋同名筋と協同筋などのそれぞれの相互

関係を観察記録すること。

(6)

【設問】

1

)双極誘導による表面筋電図の導出方法を詳しく説明せよ。

(7)

.

誘発筋電図によるM波・H波の観察

.

目的

 ヒト の末 梢神 経(混 合神 経)を 単一 の矩 形波で 電気 刺激 すると 、あ る筋 では2 度収 縮し、 潜時 の短 いも

の をM 波 、長 い もの を H波 と 言う 。 正常 安 静時 で は 、脛 骨 神経 (

tibial nerve

)の 膝 窩部 で の刺 激 によ っ

て下腿三 頭筋(

triceps muscle of calf

)からM波と H波が誘発さ れる。M波は運 動神経線維が刺 激され、

そのインパルスによって発生した筋の電気活動によるものであり、応答潜時(

latency

)は約

4∼5

msec

で あ る 。 H 波 は G

Ia

が 刺 激 さ れ て 、 そ の イ ン パ ル ス が 伸 張 反 射 経 路 を 経 由 し て 筋 を 興 奮 さ せ た た め に 生

じたもので、潜時は約

30msec

である。

(図

4

.

器具

.

装置

 誘導 電極 は表 面電極 を用 い、下 腿三 頭筋 に貼付 する 。観 察する 現象 は経 過が速 いた めにブ ラウ ン管 オシ

ロス コー プを用 いる 。ま た神経 を刺 激する ため に刺 激電極 と電 気刺激 装置 が必要 であ る。 本実習 では これ

らの機能を備えたニューロパック(日本光電)を用いる。

.

実験方法

 刺激電極の置き方の注意

1

)刺激電極を二頭股筋の腱の間で膝窩中央より

10cm

程中枢側にあてること。

2

)皮下脂肪が多い人は、少し強い刺激を要することがある。

3

)筋のよく動いている点に記録電極を置くこと。

4

) 皮 膚 表 面か ら 神 経 が 走 行 し て い る部 位 を 探 索 す る の で 被 験 者に 電 気 刺 激 に よ る 反 応 を聞 き な が ら 行

  とより早くみつけることができる。

 実験の手順(図3

d

ー左)は、まず記録電極(

R1, R2

を下腿三頭筋のヒラメ筋上の皮膚面に約3

cm

し て貼 付 す る。 接 地 電極 (

E

)は 刺 激 電極 (

S

)と 記 録 電極 の 間 に付 け る 。刺 激 電 極の 基 準 電極 ( 陽 極側 )

は下腿部に、探査電極(陰極側)は膝窩部の脛骨神経上にあてる。

 刺激 強度 は0 から始 めて 漸増す る。 筋が 最もよ く収 縮す る場所 を適 当な 強度の 電気 刺激を 与え なが ら探

し、そこに記録電極を固定する。この刺激に用いる矩形波の持続時間は

0.2

1.0 msec

(できるだけ短い方

がよい)と し、これを約

0.8

1.0 sec

に1回の頻度で 繰り返す。刺激装置 には定電流刺激と定 電圧刺激が

あるが、各 々

1mA

から

2mA

、あるいは

50V

から

100V

くらいで適 切な刺激点を解剖学的 知識を参考に

しながら探査する。

d.

観察・記録

 刺激 強度 を次 第に高 めて いくと 、ま ずH 波が現 れ、 次い でM波 が現 れる 。さら に刺 激強度 を高 める とM

波 の 振 幅 は増 大 し 、 H 波 の 振 幅は 逆 に 減 少 す る ( 図

4

B )

。 刺 激 強 度 を 更に 高 め て 最 大 強 度 にし て も M 波

の振 幅は 一定の 大き さ以 上には なら ない。 種々 の刺 激条件 にお けるこ れら の波形 の推 移を メモリ ーオ シロ

スコープで観察し、記録する。刺激は耐え難いほど不快なものではないことを各自がよく体験すること。

(8)
(9)

【設問】

問1 電気刺激によって筋活動電位が発生する機序について考えよ。

問2 H波及びM波を発生する電気刺激の強度による違いを説明せよ。

問3 H波を発生する伸張反射回路及びM波の生ずる経路を描記せよ。

(10)

3.誘発筋電図による末梢運動神経伝導速度

     

MCV ( motor nerve conduction velocity )

.

目的

 ヒト の末 梢神 経を皮 膚上 におい た表 面電 極で刺 激し 、誘 発され たM 波の 潜時と 距離 を測定 する こと によ

りそ の運 動神経 の伝 導速 度を測 定す る。こ れは その 運動神 経線 維(α

線維 )の最 大伝 導速 度を表 す。 臨床

的 に は お も に 針 筋 電 図 との 併 用 に よ り 末 梢 神 経 障 害 (

neuropathy

) の 診 断 ( 傷害 部 位 及 び 性 質 の 診 断 )

に役立つ。

.

器具・装置

 (2)のM波・H波の観察と同じである。

.

実験方法

1

) ヒ ト の場 合 、 運 動 神 経 の 伝導 速 度 が 測 定 し や す い末 梢 神 経 は 上 肢 で は正 中 神 経 と 尺 骨 神 経、 下 肢 で は

脛骨 神経 と腓骨 神経 であ る。本 実習 では尺 骨神 経を 用いて 運動 神経の 最大 伝導速 度を 測定 する( 図

3

b参

照 )

。 刺激 電極 は尺 骨神 経の 遠位 側刺  激 部位

(S1)

とし て手 関節 近位 部、 また 近位 側刺 激部 位

(S2)

と し

て上腕骨内側上顆付近の尺骨切痕部の皮膚上にそれぞれ装着して

supramaximal

(最大刺激出力の更に

20%

25%

増)の強度で電気刺激する。

記 録 電 極

(R)

は 小 指 球 ( 小 指 外 転 筋 ) の 中 間 部 と 小 指 基 節 骨 基 部 に 表 面 電 極 を 装 着 す る 。 手 関 節 部 に

全周性にアース電極を装着する。

刺激は

1 Hz

で、持続時

0.2ms

の矩形波を用いる。刺激強度は徐々に大きくし、最大の誘発電位が生じる

(11)

.

計測方法

1

画面上で観察された遠位側刺激及び近位側刺激により誘発されたM波をそれぞれプリントアウトする。

この 2つ の刺激 電極 間の 距離を M波 の潜時 の差 で割 った値 が最 大伝導 速度 となる 。こ の時 の被検 者の 体温

を知 るた め、肘 に温 度計 を挟ん で測 定する こと 。ま た、こ こで は2つ のM 波の波 形が 同一 である こと が必

要条件である。

2

) 神経 の伝導 速度 は、温 度に 影響さ れる ことか ら前 腕を 冷水や 温水 に浸し た後 、

1

) と同 様の実 験を 行っ

て伝 導速度と 温度の 関係を確 かめる 。本実習 項目の 場合、 予め

1

) の項目 で用いた

S1

S2

の刺激部 位を

印し てお き、後 腕を 冷水 や温水 に浸 けてか ら再 び同 部位刺 激( 記録電 極は 付けた まま で手 に持っ て腕 を浸

す)

で調べると、

それぞれの結果が比較されるので便利である。

(例えば、

予備実験では、

1

の実験で

32

60m/s

の人が、

47

℃の湯に

5

分間腕を浸けた後速度は

64m/s

、この時の肘の体温は

35

℃であった。湯の

温度にもよるが

6

分間以上腕を湯や冷水に浸さないと温度による速度の変化が出にくい)

【設問】

問1 運動神経の伝導速度を測定するために何故刺激部位を複数にしなければならないのか

問2 運動神経の伝導速度を求める2つの

M

波が同一でなければならないのはどうしてか

問3 この方法では何故最大の伝導速度しか測定できないのか

(12)

4.加算法による誘発電位の記録

感覚神経伝導速度

SCV ( sensory nerve conduction velocity )

.

目的

 運動 神経 伝導 速度と 類似 の方法 によ り感 覚神経 の伝 導速 度が測 定で きる 。ただ し、 感覚神 経の 場合 は神

経筋 接合 部にお ける 遅延 時間が ない ため2 ヶ所 を刺 激する 必要 はない 。ま た検査 には 、末 梢部を 刺激 し中

枢部 で導 出する 順行 性法 と、中 枢部 で刺激 し末 梢部 で導出 する 逆行性 法の 2種類 があ る。 逆行性 法は 順行

性法 に比 べ得ら れる 電位 が大き く加 算を必 要と しな い場合 があ るが、 運動 神経も 同時 に刺 激する ため アー

チファクトの影響を受けることがある。

.

加算の意味

 刺激により生ずる反応波などを得たいときに、実際に観測される信号には物理的な雑音

(外来ノイズや、

増幅 回路 自身の 出す ノイ ズ)や 、生 体の活 動で あっ ても刺 激と 関係の 無い 信号が 含ま れて いて、 判定 しに

くい こと がある 。あ る信 号(刺 激) と関係 のあ る部 分のみ を抜 き出す 方法 に、加 算平 均法 がある 。刺 激ご

とに 得ら れる波 形を 、刺 激点に 対し て同一 時間 軸上 で加算 平均 してい くと 、刺激 に関 係な い成分 は相 殺さ

れ、反 応波だけが残 る。√N回の 加算平均を したとき、雑 音は1/√

N

に減衰する ため、

S/N

比は N倍改

善される。

.

器具・装置

運動 神経 伝導 速度と 同じ 器具を 用い るが 、その ほか に指 の感覚 神経 の刺 激また は記 録のた めに 作製 され

た指電極が必要である。さらに加算器

(averager)

が必要である。

.

実験方法

順行性の伝導速度の測定には、刺激電極を指電極として小指の第一および第二関節に装着する。記録電

極は 尺骨 神経上 に装 着し た表面 電極 とする 。感 覚神 経の誘 発電 位は末 梢感 覚神経 線維 群の 活動電 位の 総和

であるが、M波に比べ極めて小さいので増幅度を大きくしなければならず(増幅度は

10

μ

v/div

とする)

また

30

100

回加算をする。刺激条件は運動神経伝導速度の測定の場合と同様でよい。

(13)

.

計測方法

伝導 速度 の算 出は 運動 神経 の場 合と異 なり 、1 ヶ所 の刺 激に より 誘発さ れた 活動 電位 の潜 時で 刺激 電極

と記録電極との距離を割れば良い。

【設問】

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参照

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