クォークと原子核
https://sites.google.com/site/genshikakubutsurigaku/
クォーク 記号 Q S C B T
アップ u +2/3 0 0 0 0
ダウン d -1/3 0 0 0 0
ストレンジ s -1/3 -1 0 0 0
チャーム c +2/3 0 1 0 0
ボトム b -1/3 0 0 -1 0
トップ t +2/3 0 0 0 1
3世代・6種類のクォーク
陽子のスピン ½ スピン1重項
(antisymmetric)
1
2 −
1
2 u d −d u
フレーバー非対称
u
d
−u
d
− d
u
−d
u
2粒子でスピン0の 状態を作る
残りの
u
を加えるu
d
−u
d
−d
u
d
u
u
陽子のスピンとクォークのスピン
1
√ 18 ( 2 u
↑
u
↑d
↓+2 u
↑d
↓u
↑+2 d
↓u
↑u
↑−u
↓u
↑d
↑−u
↓d
↑u
↑−d
↑u
↓u
↑−u
↑u
↓d
↑−u
↑d
↑u
↓−d
↑u
↑u
↓)
p=2.792847356±0.000000023
N
n=−1.9130427±0.0000005
NμN= e
2 mp=3.1524512326(45)×10−14 MeV/T 核磁子(Nuclear magneton)
クォーク模型と陽子・中性子の磁気モーメント
・ 2からのずれ → 内部構造の存在を示す
・ 中性子の磁気モーメント
クォークの磁気モーメントによる理解
μ
u= e
u2 m
uμ
d=
e
d2 m
d陽子の磁気モーメント
1/2, 1/2= 2
3 1,11/ 2,−1/2− 1
3 1,01 /2,1/2
u u d u u d
陽子の波動関数
p = 2
3 2 u − d
1
3 d =
4
3 u −
1
3 d
μ n = 2
3 ( 2 μ d −μ u ) +
1
3 μ u =
4
3 μ d −
1
3 μ u (u ⇔ d の交換)
陽子
中性子
核子の磁気モーメント
p = 2
3 2 u − d
1
3 d =
4
3 u −
1
3 d
μ n = 2
3 ( 2 μ d −μ u ) +
1
3 μ u =
4
3 μ d −
1
3 μ u
m
u=m
de
u=−2 e
d u =−2 d
質量に関する仮定
クォークの磁気モーメント
クォークの電荷
μ p =−3 μ d
μ n =2μ d
p
n =−
3
2
実験結果は
−1.46 ....
クォークの質量
μ p =2.79μ N
m u =m d =938 MeV /2.79=336 MeV
μ p =−3 μ d
μ n =2μ d
μ= e
2 m
m
d= e
d2 μ
d=
−3e
d2 μ
p=
1
2 ×2.79μ
N=
m
p2.79 e
p=
m
p2.79
e d =− 1
3
p 4
3 u− 1
3 d 2.79 2.793 n 4
3 d− 1
3 u −1.86 −1.913
0 s −0.61 −0.614±0.005
4
3 u− 1
3 s 2.68 2.64±0.01
− 4
3 d− 1
3 s −1.04 −1.16±0.03
0 4
3 s− 1
3 u −1.44 −1.25±0.014
− 4
3 s− 1
3d −0.51 −0.65±0.01
3s −1.84 −2.02±0.05
バリオン クオーク模型 計算値 実験値
基準値
m
u=m
d=336 MeV
m
s=509 MeV
バリオン8重項の磁気モーメント
クォークの質量: ハドロンの質量から
素粒子 記号 質量(MeV) Q I
3 B S Y J
陽子 p+ 938 1 +1/2 1 0 1 ½
中性子 n0 940 0 -1/2 1 0 1 ½
ラムダ粒子 Λ0 1116 0 0 1 -1 0 ½
シグマ粒子 Σ+ 1189 1 +1 1 -1 0 ½
Σ0 1193 0 0 1 -1 0 ½
Σ- 1197 -1 -1 1 -1 0 ½ グザイ粒子 Ξ0 1315 0 +1/2 1 -2 -1 ½ Ξ- 1321 -1 -1/2 1 -2 -1 ½
パイ中間子 π+ 140 1 +1 0 0 0 0
π0 135 0 0 0 0 0 0
π- 140 -1 -1 0 0 0 0
ケイ中間子 K+ 494 1 +1/2 0 1 1 0
K0 498 0 -1/2 0 1 1 0 K0 498 0 +1/2 0 -1 -1 0 K- 494 -1 -1/2 0 -1 -1 0
エータ中間子 η0 548 0 0 0 0 0 0
m
=m
−≈m
0
m (K
+)=m( K
−)
≈m( K
0)=m( ̄ K
0)
m p
≈mn
0
m
≈m
0≈m
−
m
0≈m
−
(uud) ↔ (udd)
(uus) ↔ (uds) ↔ (dds)
(uss) ↔ (dss)
(ud) ↔ (du) ↔ (uu), (dd)
(us) ↔ (su)
(ds) ↔ (sd)
m u ≈md
m (u)≈m(d )
m≈m≈m0≈m−
m ∗≈m∗0≈m∗ −
m∗0≈m∗−
m =m −≈ m 0
m K∗=m K∗−≈m K∗0=m K∗0
クォークの質量: ハドロンの質量から
その他の多重項
(uuu)~(uud)~(udd)~(ddd)
(uus)~(uds)~(dds)
(uss)~(dss)
(ud)=(du)~(uu),(dd)
(us) = (su) ~ (ds) = (sd)
m −m∗=139 MeV m∗−m ∗=149 MeV m ∗−m =152 MeV
m s−mu≈ms −md ≈ 150 MeV
クォーク間の力と
スピンの向きを考慮にいれると
m
u=m
d=363 MeV
m
s=538 MeV
スピン
2/3
バリオンベクトルメソン
m0−m K∗=126 MeV m K∗−m0=112 MeV
スピン
1/2
バリオンm 0−m∗=77 MeV
S =1
S =0
u
とd
のスピンの向きによる違いストレンジクォークの質量
S =1
クォーク 記号 Q S C B T
アップ u +2/3 0 0 0 0
ダウン d -1/3 0 0 0 0
ストレンジ s -1/3 -1 0 0 0
チャーム c +2/3 0 1 0 0
ボトム b -1/3 0 0 -1 0
トップ t +2/3 0 0 0 1
u u u
S
3= 3
2
クォークはフェルミオン
→ 同じスピンのアップクォークは存在できない
→ 別の自由度が必要: 3成分必要 カラー自由度:
クォークは 赤
(R)
、青(B)
、緑(G)
のカラー(色電荷)を一つ持つ 反クォークは補色(反色):反赤(R)
、反青(B)
、反緑(G)
を持つ ハドロンは、白色となるようなカラーの組み合わせをとるR B G バリオン
R B G
反バリオン メソン
R R B B
G G
新しい自由度: カラー(色電荷)
colorbaryon= 1
6 R G B − R B G G B R − G R B B R G − B G R
coloranti-baryon= 1
6 R G B − R B G G B R − G R B B R G − B G R
colormeson= 1
3 R R G G B B
他の白色になる組み合わせ テトラクォーク
qqqq
ペンタクォークqqqqq
等々
新しいハドロン形態を持つ粒子が発見された
SPring-8
、Belle
等クォーク間の相互作用: 強い相互作用の理論
クォーク同士を結ぶもの = グルーオン → 「強い相互作用」 量子色力学 電子と原子核を結ぶもの = 光子 → 「電磁相互作用」
量子電磁気学
u u
近距離 遠距離 ポテンシャル 電磁相互作用: 強い 弱い 距離に反比例 強い相互作用: 弱い 強い 距離に比例
クォーク:
・ 陽子内部では「自由粒子」(漸近的自由性)
・ 陽子内部に「閉じ込め」られている
量子色力学:Quantum Color Dynamics: QCD
R
R B
B
RB
(またはRB
)の色電荷をもつ グルーオンを交換R B R G G R G B B R B G
R R − G G
2
R R G G −2 B B
6
R B
B B R
R
グルーオンも色電荷をもつので、グルーオン間にも相互作用が起こる
↔ 光子同士は相互作用しない(電磁相互作用) GB
G R
RB
グルーオンの色
e-
e
+e
-e
+e
-e
+e
-e e
+ -e
+e
-e
+e
-e
+e
-e
+e
-e
-低エネルギー(長距離)では、真空分極の影響で 電荷は小さく観測される
低エネルギー = 長距離 = 弱い結合 高エネルギー = 短距離 = 強い結合 電磁相互作用: 真空偏極によ電荷の遮蔽
sQ2= s
2 1−
2
3 log
Q22
真空偏極・Running Coupling Constant
q
q q
q q
q q q q
q q q
q
q q
q q q
低エネルギー = 長距離 = 強い結合 高エネルギー = 短距離 = 弱い結合
QCD
:グルーオン同士で 相互作用する
sQ
2= 12
33−n
flogQ
2/
2
=0.1~0.5 GeV
クォークがハドロンに閉じ込められエネルギースケール
= 摂動的計算の限界
漸近的自由性: Asymptotic Freedom
クーロンポテンシャル 距離に反比例
→ 遠距離では力が弱わまる
強い相互作用のポテンシャル 遠距離では距離に比例
→ 一定の力
→ クォークを「閉じ込める」
束縛エネルギー以上の エネルギーを与えれば 電子は電離する
クォークは束縛から逃れられない
裳華房テキストシリーズ・物理学 素粒子物理学(原 康夫著)より抜粋
重いクォーク間のポテンシャル 格子QCDによる数値計算
強い相互作用のポテンシャル
q
q
QCDポテンシャル
q クォークを陽子の外に取り出そうと、
強くたたき出すと
q
q q
q
q q q q
与えられたエネルギーで、
新しくクォーク・反クォーク対が生成される。
→ クォークはつねにハドロンの中に「閉じ込められる」 たたき出すエネルギーが強ければ、与えられたエネルギー分 ハドロンが形成される。
クォークの「閉じ込め」
e e−
q q
hadrons hadrons
t
粒子は、クォークの運動量方向 まわりの円錐内に生成される。
→ ジェット
e e−
電子・陽電子対消滅でのジェット生成
e
e
−c c
e
e
−bb
電子・陽電子対消滅でのクォーク対生成
R = e
e
− qq hadrons
e
e
−
−
電子・陽電子対消滅の断面積比の測定
カラー(色電荷)の実験的検証
R = e
e
− qq hadrons
e
e
−
−
R = ∑
q e
q2
e
q2e
q2
e
2e e−
q q
e e−
q q
e e−
q q
R = ∑
q3 e
q2
e
2nf=3 R = 3⋅
2 3
2
−1 3
2
−1 3
2
= 3⋅69 = 2R = 3⋅
2 3
2
−1 3
2
−1 3
2
2 3
2
= 3⋅109 = 3.33R = 3⋅
2 3
2
−1 3
2
−1 3
2
2 3
2
−1 3
2
= 3⋅119 = 3.66nf=4
nf=5
R ~2
R ~3.1
R ~3.5
色自由度に基づく計算
nf=3 R = 2 R = 3.33 R = 3.66 nf=4
nf=5
シンチレータ
金の薄膜 アルファ線
(
4He
原子核)
ほとんどが突き抜ける アルファ線が金の薄膜で大角度に散乱される
→ 原子中の重い点状の粒子存在
原子中に均一に分布している場合(トムソン模型)は大角度に散乱されない
d
d =
4 m
2 Z
1Z e
2
2q
4 q=2 p sin 2
入射粒子の運動量 p 実験室系での散乱角 θ 入射粒子の電荷 Z
1e
入射粒子の質量 m 標的粒子の電荷 Ze
原子の構造: ラザフォード散乱
陽子は「大きさ
(~fm)
」をもつ 電荷分布ρ(r)
点状粒子との散乱からのずれ 陽子の形状因子
F(q)
d =d 0⋅
∣
F q ∣
2 F q=∫
dV r e−i q⋅r電荷分布
The structure of the nucleon,
A. W. Thomas, W, Weise, Wiley-Vch
F q~
1
0.71 GeV1q
2
2 r ~e
−0.71 GeVr~e
−r 0.28 fm
陽子の形状因子:
フーリエ 変換
電子
陽子 ~ fm 精度(fm)
→ 数百MeVの光で測定
陽子・中性子(核子)の構造: 形状因子
高エネルギー粒子の『衝突』・『散乱』
だるま落としの特徴
・ 十分勢いをつけて
・ コマの 1 つだけを打ち抜くと
・ 他のコマはそのままで、打ち出される
・ 上のコマはだるまを倒さずに
・ 下にずれる
強くたたくと、コマはお互いに『自由』に振る舞う
↔ 漸近的自由性?
近距離 遠距離 電磁相互作用: 強い 弱い 強い相互作用: 弱い 強い
陽子の内部を探る: 電子とクォークの『衝突』と『散乱』
散乱された電子を詳しく調べる事で、
陽子の中に
『何個のクォーク』
が入っているか分かる
『ビリヤード』 + 『だるま落とし』
『ビリヤード』 + 『だるま落とし』
加速された粒子
例) 電子
陽子の中のクォーク
はじき飛ばされたクォーク
散乱された粒子
当たらないと素通り
深非弾性散乱実験(1960年代~)
SLAC 20 GeV
電子ビームによる実験陽子中に点状粒子(パートン:部分子)を発見
d σ dΩ=
4 m2Z12Z2e4
q4 ∝
∑
q Zq2
測定された電荷の自乗和 陽子
1
中性子
2/3
クォーク模型:
23
2
23
2
−13
2=1 2 3
2 −1 3
2 −1 3
2= 2 3
陽子
中性子
クォーク・パートン模型 四元運動量移行 Q2=−q2=− k −k ' 2
~ 1
Q2Q2=4 GeV2 ~0.1 fm Q2=400 GeV2 ~0.01 fm
核子の構造: パートン(部分子)模型
1990年 ジェローム・アイザック・フリードマン、ヘンリー・ケンドール、リチャード・E・テイラー 素粒子物理学におけるクォーク模型の決定的重要性をもった、
陽子および中性子標的による電子の深非弾性散乱に関する先駆的研究
散乱断面積~電荷の自乗和
運動量比
x
の運動量をもつクォークとの散乱 散乱された電子のエネルギー・運動量測定からP
x
1P
x
2P
x
3P
x= Q
2
2 P⋅q=
Q2
2 M E −E '
Q2=−q2=− k −k ' 2=4 EE ' sin2 2
k
k '
q
が決まる。
測定された微分断面積からクォークの運動量比分布
(パートン分布関数)を決定できる
断面積がQ2に依存しない
ブジョルケンのスケーリング
パートン模型の検証
陽子構造関数
陽子・中性子(核子)の構造: パートン分布関数
特に小さな運動量比で エネルギーが上がると
パートンの数が増えているように見える
スケーリングの破れ
(グルーオン輻射にともなうクォーク対の生成)
パートン分布関数(運動量比分布)
エネルギー スケール(低)
エネルギー スケール(高)
陽子構造関数
クォーク同士はグルーオンにより結合
→ 近距離で相互作用は弱くなる
→ クォークは「自由」に振る舞う
色電荷が「白色」になる組み合わせで存在
→ クォークは陽子の中に閉じ込められている
グルーオン輻射によるクォーク・反クォーク対生成
→ 運動量比の小さいクォーク・グルーオンの生成
→ 陽子の運動量の半分はグルーオンが担う