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人を育てるということ 「特技懇」誌のページ(特許庁技術懇話会 会員サイト)

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2012.8.21. no.266

人を育てるということ

特許庁技術懇話会 代表委員

  

井上 雅博

 今回の特技懇誌は、「人材育成」がテーマになっていますが、

実は、私は「人を育てる」という言い方があまり好きではあ

りません。特に、「あいつは俺が育てた。」とか、「私が苦労し

て指導し、ここまで育てあげました。」などと話すのを聞く と、それは少し違うのではないかと思うことがあります。も ちろん、貴重な時間を割いて教えてくれる人に感謝しなくて よいというつもりはありませんが、このような「人を育てる」 という言い方には育てる側の驕りのようなものが感じられる からです。

 すなわち、人は、あくまでも本人の意思と能力で「育つ」 ものであって、だれかが好き勝手に「育てる」ものではあり ません。当人が自ら意識を持って業務に取り組み、努力して 必要な知識や手法を身につけることで、はじめて育ったとい えるのであって、何か適当な目標を設定し、これを機械的に クリアしたからよいというものではないと思います。  育てる側が本当に心しなければならないのは、人が自ら「育 つ」ための適切な環境を提供するということではないかと私

は考えています。「育つための環境」と簡単に述べましたが、

どのような環境であれば人が育つのかは難しい問題です。懇 切丁寧に指導することが必ずしも、人をよく育てるとはいえ

ないようで、一例をあげると、松下幸之助氏の本1)に、優秀

な人が指導するとそれなりに優秀な人は育つのだが、名人と 呼ばれる人は不思議とそういうところから出ないという趣旨

のことが書かれていてなるほどと思ったことがあります2)

どうも、優秀な人は正しい効率的な手法だけを教えるので、 教えられる側はその手法を当然のものとして受けとめ、なぜ その手法が正しいのか、効率的なのかという点を考えないと ころがあるように思えます。一方、そうでない人に教わると、 間違ったことを教えられることも、無駄な作業を繰り返すこ ともありますが、そのような経験を積むうちに正しい情報を 選択する能力、自ら考えて効率的な手法を見出す能力を身に

つけ、結果として名人といわれる域まで育つことができたの ではないかと私なりに得心した覚えがありました。

 また、人材育成では、あまり早く結果を求めすぎないこと

も重要と思います。「学びて時に之を習う」ではありませんが、

学習というのは、学んだ知識を理解し、その後自ら実践して それを身につけるプロセスが不可欠です。私の経験からして、 短期間でいろいろと教え込もうとすると、このような習熟プ ロセスや自発的な思考力を奪ってしまい、中長期的には、か えって本人の能力をより大きく伸ばせないのではないかと感 じます。

 自ら教える側になるとわかることですが、教えることで自 分が教わることも少なくありません。人に教える過程で、自 己の知識を整理、体系化して理解を深めることもありますし、 教わる側から問題提起をされて、自分の考えが思い込みや一 面的な見方でしかなかったことに気づかされることもありま す。ですから、育てる側といっても、一方的に教える立場に あるわけではなく、時には教わる立場にもなるのだと心得る ことも必要なのかもしれません。私など、最近の若い人と話 をしていてその感をより強くしますし、まだまだ成長してい かなければならないとの思いを新たにします。

 さて、特技懇では、今年度いくつかの勉強会を新たに立ち 上げました。それは、自己研さんを希望する会員の皆さんに、 育つための環境を特技懇が提供することができたらと考えた からです。勉強会での成果は、勉強会に参加されていない会 員の皆さんにも何らかの形で還元していきたいと思っていま す。特技懇が会員の皆さんの成長にいささかなりともお役に たてれば幸いです。

1)松下幸之助著、社員心得帳

参照

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