ケインズ的財政政策
財政の 3 大機能
• 資源配分機能
– 「市場の失敗」の是正 = 効率性の達成
• 再分配機能
– 「不平等」の是正
– 「持てる者」から「持たざる者」への資源の移転
• 安定化機能→ここで議論
– 景気が悪いときには景気の落ち込みを緩和し,景気が「過剰」な場合はそ れを緩和する機能
– 財政政策+金融政策
注意:これら 3 機能は互いに背反しない(授業全体を通じて議論)
.
– 再分配は効率性に貢献する場合もある.
– 安定化政策は資源配分機能,再分配機能,もしくは双方をもつ場合がある
.
財政政策の短期モデル
• しばしば,不景気のときに財政支出の拡 大がもとめられる.
• それはどのようなロジックにもとづいて いるのだろうか.
• 短期的な経済変動(特に景気循環におけ る景気の落ち込み)に対する政府の対応 を考えるモデルを扱う.
乗数効果と財政政策
• 乗数効果:経済の一部で発生した「需要」の増減が経済 全体の生産量に波及する効果.
– 【乗数】掛け算で,掛けるほうの数
– 【乗数効果】投資や政府支出などの変化が他の経済変数に変化 をもたらす場合,最終的にはもとの変化の何倍の変化を生み出 すかを表わす効果(下で具体的に検討).
• 政府支出の乗数効果を利用して政策的に経済をコント
ロールしようとするのが(狭義の)「財政政策( fiscal policy )」.
公共事業 : 新たな需要となって,経済全体の需要を拡大する.
減税(増税) : 民間需要を刺激(抑制)することによって全体 の需要を拡大(抑制)する.
生産と所得
• 生産量Y: 特定の期間(典型的には 1 年間)に生み出された付加価値
– 生産された財の価値(=市場評価額)ではない. – 付加価値=生産された財の価値-中間投入財価値
• 企業単位での例:当該企業が生産した財の売上から当該財の生産に用いられた財の購入額を引 いた金額
• 付加価値の配分
– 企業が生み出した付加価値は誰かに配分される(誰かの取り分になる).
• 賃金→労働者
• 配当→株主
• 内部留保(企業の利益のうち企業内に留め置かれる分)もいつかは配分される→具体的にどう なるかは議論の余地有り
• 生産と(税引き前)所得
– 企業が生み出した付加価値は誰かに配分されるから,閉鎖された国全体で考えると
,付加価値を足しあわせたものは所得(税引き前)を足しあわせたものと等しい. – 開放経済(海外部門を考えた経済)では前提の変更が必要となるが,とりあえずは
閉鎖経済(海外部門を考えない経済)を前提として議論を進める.
短期モデルの前提
• 有効需要(齋藤ほか 2010 では「支出計画」と表記) E を全 て満たすように生産量Y が決定される.
• 結果,生産量 Yと有効需要 E は均衡する( = 等しくなる).
– 経済は不況に陥っており常に余剰能力が存在すると仮定.その結 果,生産能力による制約はなく,有効需要がある分だけ生産が可 能となる.
• 有効需要は,民間消費C ,民間投資 I ,政府支出 G からなる
.
– E = C + I + G
• ここでは閉鎖経済を前提.開放経済を考える場合は,純輸出(輸出マイナ ス輸入)が有効需要に加わる.
• ここでの政府支出には民間への所得移転(生活保護や公的年金)は含まな い.
消費 C
• 消費関数:可処分所得 Yd=YT と消費 C の関係
• T = 純税収 = 税収所得移転
• T > 0: 所得移転よりも課税が多い
• T > 0: 所得移転よりも課税が少ない
数式では : C=C(Yd) と表現.
可処分所得 Ydが増加すると消費 C も増加すると仮定するか ら,数式では, dC/dYd>0 ,もしくは, C’(Yd)>0 と表現.
• 仮定 1: 0 < dC/dYd < 1.
可処分所得 Ydの増加量ほど消費 C は増加しない.
• 仮定 2: 0 < C(0).
可処分所得 Ydがゼロでも,消費量はゼロにはならない.
限界消費性向 d C /d Yd
• 限界消費性向 : 可処分所得が 1 単位増加した とき,消費がどのくらい増えるかを表す数値.
限界消費性向が 0.8 ならば,可処分所得が 1 万円増 えたときに,消費は 8000 円増加する。
限界消費性向が 0.7 ならば,可処分所得が 1 万円増 えたときに,消費は 7000 円増加する.
• 「限界= marginal 」概念 : X が Z に影響を与 える場合, X が 1 単位変化したときに, Z がど れくらい変化するかを表す概念(ここでは, X が可処分所得で Z が消費)
消費関数の特定化
• 単純化のため線形として仮定
• C=C(Y)=C0+c Yd=C0+c(YT)
– C0: 可処分所得がゼロでも必要となる消費量
(所得がゼロでも最低限必要な消費量) – c: 限界消費性向
C = C0+c(YT) = C0+cYcT
dC/dY = c
グラフ
Yd :可処分所得 C: 消費
C=C(Y)=C0+cYd
c0
c
民間投資 I と政府消費 G
• 民間投資I
– 金利によって決定されると想定するが,ここでは金利の影響は考えない. – ここ(財市場)の分析では,所与(モデルの外から与えられる)と仮定する
.→後ほど議論する IS-LM 分析によって,金利の影響も同時に吟味する.
• 政府支出G
– 政府が裁量的に統制できると想定
– 民間投資と同様,所与(モデルの外から与えられる)と仮定する.→ここで はGを変化させるとYがどう変化するかに興味がある.
– 政府消費や公共投資など政府による直接の財・サービスの購入をさす.民間 への現金給付等の所得移転は含まない.給付などの所得移転の場合はGが変 化するのではなく,課税のようにYdの変化を通じたCの変化として現れる. – Tの考え方
• T > 0: 所得給付よりも課税が多い
• T < 0: 所得給付よりも課税が少ない
有効需要の理論:財市場の均衡
有効需要が生産を決定
• 有効需要は,海外部門を考えない(純輸出を 無視する)から
E 消費( C ) + 民間投資( I ) + 政府消費支出
( G )
• 消費 C は生産(=所得)から影響をうける
C=C(Yd)
• したがって,有効需要 E は
E C(Yd)+I+G
となる.
• 総需要 E は消費 C を通じて Y の影響を受 ける。
Y :所得
E C(Y-T)+I+G=C0+cY-cT+I+G
c0
c0-cT+I+G
E: 有効需要
財市場均衡と乗数効果
• 均衡条件 : 生産は需要に等しくなるように自由に調 整できる(調整が完了した状態=均衡).
• 均衡条件 : Y = E → Y = C(Yd)+I+G
• この均衡条件 Y = C(YT)+I+G を満たす生産量 Y が 均衡における生産量となる。
• C(Y)=c0+cY とすると、以下を得る。 Y = c0+c(Y T)+I+G
• これを Y について解く : Y = c0+cY-cT+I+G → Y-cY
= c0-cT+I+G → Y ( 1-c )= c0-cT+I+G → Y = (c0-cT+I+G)/ ( 1-c )
モデルの構造(とっても簡単)
• 簡単な線形方程式体系 Y = E
E C0 + c(Y T) + I + G
• 外生変数 : I, G, T → 連立方程式体系の外で 与えられる
• 内生変数 : Y (=E) → 連立方程式体系の中で決 まる解
• パラメータ : C0, c → 変化しないと仮定.も ちろん,パラメータ変化の影響も分析できる.
乗数効果
• 均衡における生産量は
• 政府消費支出 G が ΔG 増加すると、生産量 Y は Δ G/(1-c) 増加する
16
0
1
Y 1 C cT I G
c �
均衡 : グラフによる確認
Y :所得 E: 有効需要
C0-cT+I+G
Y* :均衡所 E=Y
E C0+cY-cT+I+G
総需要(有効需要)の変化
18
Y :所得 E: 有効需要
E C0+cY-cT+I+G1
C0-cT+I+G0
Y*
E =Y
C0-cT+I+G1
Y
E C0+cY-cT+I+G2
Y2 C0-cT+I+G2
E C0+cY-cT+I+G0
乗数メカニズムの解釈
• 乗数のイメージ
– 景気拡大 : 需要増大→生産拡大→所得増大→需要 増大→……
– 景気縮小 : 需要減少→生産縮小→所得減少→需要 減少→……
• 派生需要
– 1 次需要の増加量= A; 限界消費性向= c
– 派生需要 : 2 次需要= cA; 3 次需要= c×(cA)=c2 A; 4 次需要 =c×(c2A)=c3A; …
– 全ての需要の増加量 : D=A+cA+c2A+c3A+…
乗数と等比級数
• 全需要の増加量 : D=A+cA+c2A+c3A+…
① D=A+cA+c2A+c3A+…
② cD=cA+c2A+c3A+c4A…
③ ① から②を引くと : D-cD=A
④ ③ を整理すると : D(1-c)=A
⑤ さらに整理すると, D=A/(1-c) .
初期需要が A 増加すると,需要全体は A×1/(1-c) 増加 . 1/(1-c)= 乗数
⑥ 0<c<1 だから, D > A .
練習問題
1. 閉鎖経済における有効需要のモデルにおいて生産量=所得 がどのように決定するかを解説しなさい.
2. 純税収の生産に対する効果をもとめなさい.
3. 政府消費を 1 兆円増加させる場合と,所得移転を 1 兆円増 加させる場合の,国内生産への効果を,閉鎖経済における 有効需要のモデルを用いて議論しなさい.
4. 閉鎖経済で,消費関数が C=50+0.8(Y-T) として与えられ, 民間投資 I ,政府消費 G ,純税集がそれぞれ 10 であるとし よう.
a. 限界消費性向はどれだけか b. この経済の生産量を求めよ
c. 政府支出が 10 増加すると、生産量はどれだけ増加するか
まとめ
• 均衡における生産=所得は、次の 2 つの方 程式を解くことによって求められる。
① 均衡式 : E = Y → 生産は総需要(有効需要) に等しくなる。
② 総需要(有効需要)の定義式(恒等式) : 純輸 出を考えない場合→
EC(Y-T)+I+G=C0+cY-cT+I+G
• G や I の値が変化すれば、①と②の解として 得られる生産量 Y も変化する(乗数効果)
金利と民間投資
• 企業には投資プロジェクトが複数ある.
– それぞれの投資金額をI1, I2, I3, … と表わす. – それぞれの収益率をa1, a2, a3, … と表わす.
– それぞれの投資プロジェクトから得られる収益は,a1I1, a2I2, a3I3, … .
• 投資に必要な資金は一定の金利 rで借入.
– それぞれの投資プロジェクトに必要となる利払いはrI1, rI2, rI3, … .
• ajlj > rljならば第j番目の投資プロジェクトは採択され,実際に 投資が行われる.
• → 金利r が減少(増大)するとより多くの(少ない)投資プロジェ クトが採択され,全体としての民間投資量が増加(減少)する.
投資関数
• 投資関数:民間投資 I と金利 r の関係を 表したもの
• 数式では : I=I(r) と表現.
• 金利 r が増加すると民間投資 I は減少す ると仮定⇒数式では, dI/dr<0 ,もしく は, I’(r)<0 と表現.
投資関数を考慮した財市場均衡
• 均衡条件 : Y = E → Y = C(Yd) + I(r) + G
• 民間投資量が外生変数(所与)である場合(以前のモデ ル)→連立方程式体系の解として Y が決定する.
Y = E
E C(Y T) + I + G
• 民間投資量が内生変数である場合(今回のモデル) Y = E
E C(Y T) + I(r) + G
→ Y と r はこの連立法的式体系の解として得られない
.
→もうひとつ連立方程式が必要.→ IS-LM 分析へ
IS 曲線
• 有効需要 E=C+I+G
C=C(YT): 消費は所得(生産)の関数 e. g., C=C0+c(YT)
I = I(r): 民間投資は利子率の関数であ り, r が増加すると I は減少
• 財市場の均衡 : 生産は有効需要と等しい Y=C(YT)+I(r)+G
• この均衡式を満たす Y と r の組合せが IS 曲線
IS 曲線は右上がり
G の増加は右(上)にシフト
r
Y=C(YT)+I(r)+G1
G0<G1
Y=C(YT)+I(r)+G0
IS-LM 分析における金利
金利
• 金利(元金に対する利子の割合)
• 名目金利と実質金利
– 名目金利:賃借契約に付された金利
– 実質金利:インフレの影響を除いた名目金利
(実質的な金利負担)
• フィッシャー方程式
– 名目金利=実質金利+期待インフレ率(予想 される物価上昇率)
実質金利と名目金利
• 名目金利 : r×100
• 現在 A 円の 1 年後の名目価値: A(1+r) 円
• 物価上昇率 : ×100
• 現在 A 円の現在を基準とした 1 年後の実質価 値 : A(1+r)/(1+) 円
• 1 年後の A(1+r) 円では,現在では A(1+r)/(1 +) 円の物品しか購入できない
• 実質金利 i の定義 : A(1+i) = A(1+r)/(1+)
フィッシャー方程式
• 名目金利( r )=実質金利( i )+期待インフ レ率()
• 実質金利 i の定義 : A(1+i) = A(1+r)/(1+)
A(1+i)=A(1+r)/(1+) (1+i)(1+)=(1+r)
1+r=1+i++i ri+
i は微小であるため無視
IS 分析における金利
• IS 分析においては実質金利が投資に影響 を与える
• ただし,短期分析においては物価上昇率 はゼロ( =0 )であるため,実質金利と名 目金利の区別はない( r = i+ = r =
i )
貨幣市場
貨幣市場を均衡させる利子率と生産量の関係( LM 曲線)を考えま す.
なぜ貨幣は需要されるのか
• 取引動機
商取引をする場合に交換媒体として貨幣が必要.
• 予備的動機
突然支払いが必要となることがあるので,それに備える
• 資産保有動機必要.
株式や債券で資産を保有すると,株価が変動したり,債 券に関しては債務不履行が起こったりする(=安全でな い).一方,貨幣には,このようなリスクはない.
しかし,貨幣の場合,現金保有は利子を生まず,貯蓄の 金利は低率である.さらに,インフレ(価格の持続的上 昇)が起こる場合は実質価値は目減りする(デフレ=価 格の持続的下落=の場合は逆).
貨幣需要 1 :取引動機からの影響
• 所得の増加は,経済活動の増大を意味すると考 えられる.
• 経済活動の増加は,市場取引の増加を伴うと考 えられる.
• したがって,所得の増加は貨幣の取引需要の増 加を引き起こす.
• ここでの所得は「名目」.実質所得が一定でも
,インフレが起きれば(価格が上昇すれば), それに応じて貨幣の取引量は増加する.
貨幣需要 2 :資産保有動機からの影響
• 金融資産→貨幣(現金と要求支払い預金),株式
,債権(国債・社債)など.
– 貨幣需要が増加(減少)すれば,それ以外の金融資産
(株式・債権)の需要は減少(増加)する.
• 貨幣や要求支払預金にはデメリットがあるが(貨 幣には金利が無く,要求支払い預金の金利は低 い),メリット=高い流動性(=「いつでも使え る」)もある.
• 金利が高くなると,貨幣以外の金融資産から得ら れる利得が相対的に大きくなる(貨幣を保有する
「機会費用」が高くなる).したがって,貨幣を 持つメリットは相対的に低くなり,貨幣保有量は 減少する.
貨幣需要関数
• 貨幣需要は金利と所得に影響をうける→
「貨幣需要は利子率と所得の関数である」
• L: 貨幣需要量
• r: 金利
• Y: 所得
• 貨幣需要関数 : L=L(r, Y)
• r が増えると、 L は減少する( L/r<0 )
• Y が増えると、 L は増加する( L/Y>0 )
貨幣市場の均衡
• M: 貨幣供給量→政府(中央銀行)が自由 に操作できると仮定.
• 均衡条件 : M=L → M=L(r, Y)
• 所得を固定して,貨幣供給量と金利の関 係を貨幣市場の均衡条件を用いて考える
.
貨幣供給量 M が増えれば金利は減少.
図による説明(次)
貨幣供給量の変化と利子率
• 貨幣供給量が増加( M0→M1 )すれば,利 子率は低下( r0→r1 )する .
r
M, L r0
r1 L=L(r, Y)
流動性の罠 (Liquidity Trap)
• 貨幣供給量の増加に金利が反応しないこ と.
r
M0 M1 M, L r’
L
政府・中央銀行は貨幣供給量をコント
ロールできるのか?
• 貨幣( money )の分類
M2
M1
ハイパワード
・マネー = マ ネタリーベー ス
紙幣・硬貨
準備預金 中央銀行が提供する当座預金 民間銀行の要求払預金 普通預金+当座預金 民間銀行の定期預金 譲渡性預金( CD )
も含む場合あり.
• 中央銀行が統制できるのはたかだかハイ パワード・マネー(マネタリーベース) まで.
• しかし,以下ではあたかも中央銀行が M1 まで統制できると仮定し議論を進める.
実質タームでの貨幣需要
• 実質タームでの貨幣需要関数 : l=l(r,y)
• P: 物価水準→ yY/P: 実質所得
• 実質貨幣供給量 : M/P
• 実質タームでの貨幣市場均衡条件 M/P=l(r,y)
(今回は使用しない)
LM 曲線
• L: liquidity demand ⇒liquidity = 流動 性=貨幣(最も流動性が高い資産)を意味.
• M: money supply =貨幣供給を含意.
• 貨幣市場の均衡 : 貨幣供給量と貨幣需要量 は等しい
M= L(r, Y)
• この均衡式を満たす Y と r の組合せが LM 曲 線
LM 曲線は右上がり
• 所得が増加すると( Y0→Y1 ),金利は上 昇する (r0→r1) する.
r
M, L r1
r0
L0=L(r, Y0)
L1=L(r, Y1)
LM 曲線は右上がり
• M=L(r, Y) より,
dM = (L/r)dr + (L/Y)dY
• 貨幣供給は変化しないから, dM = 0 .し たがって,
0 = (L/r)dr + (L/Y)dY
dr/dY = (L/Y)/(L/r) = (+)/() > 0
• だから右上がり.
貨幣供給と LM 曲線
r
M0<M1
M0=L(r, Y)
M1=L(r, Y)
r
Y
流動性の罠と LM 曲線
流動性の罠
LM曲線
財政・金融政策: IS-LM 分析
財市場(閉鎖経済)
• 有効需要 E = C + I + G
C=C(Y): 消費は可処分所得の増加関数 C=C0 +c(YT)
I = I(r): 民間投資 I は金利 r の減少関 数
• 財市場の均衡 : 生産は有効需要と等しい
. Y = C(YT) + I(r) + G
• この均衡式を満たす Y と r の組合せが IS 曲線
IS 曲線は右下がり
G の増加で右(上)にシフト
r
Y=C(YT)+I(r)+G1
G0<G1
Y=C(YT)+I(r)+G0
貨幣市場(閉鎖経済)
• 貨幣需要 L=L(r, Y)
金利と所得(生産)は貨幣需要に影響を与える
利子率が増加すると貨幣需要は減少
所得が増加すると貨幣需要は増大
• 貨幣市場の均衡 : 貨幣供給量と貨幣需要量は等 しい
M= L(r, Y)
• この均衡式を満たす Y と r の組合せが LM 曲線
LM 曲線は右上がり
M の増加で右(下)にシフト
r
M0<M1
M0=L(r, Y)
M1=L(r, Y)
Y* 均衡所得の決定
54
r
Y
LM 曲線 IS 曲線
Y* r*
財政政策(政府支出の増加)
r
LM 曲線 IS 曲線
r’ r*
金融政策(マネーサプライの増加)
56
r
Y
LM曲線 IS曲線
Y* r*
Y**
金融政策が無効な場合(民間投資が金利
に反応しない場合)
r
LM 曲線 IS 曲線
r*
金融政策が無効な場合(
流動性の罠)
r
Y
LM 曲線 IS 曲線
財政政策の失敗(
100 %のクラウディングアウト)
r LM 曲線
IS 曲線
r’
r*
クラウディング・アウト
• 財政政策の発動によって,金利が上昇し
,それにより民間投資が減少してしまう こと(公的支出が民間投資を「押しのけ る= crowding out 」ことをイメージ).
• その結果,そうでない場合と比べ,生産
=所得が減少.
• LM 曲線が水平でないかぎり,程度の違い はあれ,発生.
開放経済と IS-LM 分析
開放経済
• 有効需要に純輸出( X 輸出-輸入)を加える.
• E C(YT) + I(r) + G + X(e, Y)
• 純輸出 X は為替レート e と所得 Y に影響をうける.
– 為替レート(円建てのドルの価格)が上がれば(円安に なるので),輸出は増え,輸入は減る→純輸出は増える
.
– 所得が上がれば,輸入品の消費も増えるから,輸入が増 える.これは輸出には影響を及ぼさないので,純輸出は 減る.
• つまり, e↑ ⇒ X↑; Y↑ ⇒ X↓;
開放経済での IS 曲線
• Y = C(YT) + I(r) + G + X(e, Y) を満 たす r と Y の組み合わせ.
• 為替レート e に関する仮定
– 変動相場⇒円とドルの受給関係によって e が 決定
– 資本市場がオープン(国際金利 r* が存在)⇒ 国内金利が国際金利より大きければ(小さけ れば)資本が流入(流出)⇒資本の国際的な 流れは e に影響.
開放経済での財政政策
• 財政政策( G の拡大)
⇒IS 曲線が右にシフト
⇒ 国内金利上昇: LM 曲線は移動しないので,金利が上昇 し,国際金利よりも大きくなる.
⇒ 日本円の需要増 : 日本で貯蓄・投資をしたい外国人が増 加
⇒ ドル安円高 : 為替レート e の値が減少
⇒ 純輸出減少
⇒IS 曲線が左にシフト : 資本流入が以前のレベルに戻るま で(国内金利が国際金利と等しくなるまで)つづく
⇒G を増加する前の状態に戻る.
財政政策
r
LM 曲線 IS 曲線
国際金利 r*
G の拡大に よるシフト
e の減少に よるシフト
IS 曲線
開放経済での金融分析
• 金融政策( M の拡大)
⇒LM 曲線が右にシフト
⇒ 金利が国際金利よりも小さくなる
⇒ 日本円の需要減少 : 日本で貯蓄・投資をした い外国人が減少
⇒ 円安ドル高 : 為替レート e の値が上昇
⇒ 純輸出が増加
⇒IS 曲線が右にシフト⇒ LM 曲線のシフトで与え られる所得以上の所得増.
金融政策
r
LM 曲線 IS 曲線
国際金利 r*
③ 金利低下 による e の 上昇⇒ IS の
シフト
①M の増加 による LM
のシフト
③IS 曲線
①LM 曲線
② 金利低下
④ 所得増大
固定為替相場制の場合
• 固定為替相場制
• 第 2 次世界大戦後から 1971 年までは各国 の通過と米ドルとの交換比率(為替レー ト)は固定.
• 1 ドル 360 円
固定為替相場制度での財政政策
r
LM 曲線 IS 曲線
国際金利 r*
①G の拡大 によるシフ
ト
④ 国際金利と の差を埋める ように M の増
加
IS 曲線 ② 国内金利
が上昇
③ 国外から 資金が流入
固定為替相場制度での金融政策
70
r
Y
LM 曲線 IS 曲線
Y* 国際金利
r*
①M の拡大 によるシフ
ト
④ 国際金利と の差を埋める ように M を元
に戻す
② 国内金利 が減少
③ 国外から 資金が流出
財政・金融政策の有効性
• 閉鎖経済
– 財政政策はクラウディングアウトを生じる(金利が変化 しない場合よりも効力は落ちる).
– 貨幣需要が金利に反応しない場合は,財政政策は無力. – 民間投資が金利に反応しない場合は,金融政策は無力. – 流動性の罠がある(金利に貨幣需要がとても敏感に反応
する)場合は,金融政策は無力.
• 開放経済
– 変動相場制の下では財政政策は無力で金融政策が有効. – 固定相場制の下では金融政策は無力で財政政策が有効.