第 65 卷 第 11 号 日本放射線技術学会雑誌
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パーソナルコンピュータを用いた医用画像処理の基礎
−Image Jを用いて DR画像編−
はじめに
近年PCの普及やマルチメディアの進歩に伴いX線 検査分野でのディジタル化が急速に進み，フィルム／ スクリーン（F/S）系から，CR・FPDなどのディジタル 画像に変化している．F/S系に比べダイナミックレン ジの拡大や濃度・コントラスト，フィルタ処理による 画質の変更が容易にでき，撮影者であり，画像診断 情報の提供者である放射線技師には，使い方によっ ては大変便利なものとなっている．ディジタル画像を 撮影し，臨床診断へ画像提供するうえで画質評価 と，より診断価値の高い画像の作成，検討において PCによるディジタル値での扱いが必要となる．F/S系 のときはMTFやWiener spectrumを測定・解析を行う のにマイクロデンシトメーターなど高額な測定機器が 必要であったがPCの進歩とディジタル画像の普及に よってDICOMデータの取得ができれば各施設におい て測定を行うことが可能となった．今回は解析の詳 細については本誌の特集や出版物，また各地でセミ ナーなどが行われているので割愛させていただく．こ こでは，X線検査分野でディジタル画像を扱ううえで DICOM画像の表示が行え，各種解析機能を備えたフ リーソフトのImage Jを使用しデータを取得し解析を 行うための基本的な使用法を紹介する．
Image Jを使用するにあたって
Image JはNIH Image for Machintoshに影響され， Javaで作られた画像処理プログラムである．これは， Java 1.1またはそれ以降のバーチャルマシンを搭載し ているどんなコンピュータ上でも，オンラインアプ レットとして，またダウンロードアプリケーションと して稼働する．ダウンロード可能なものはWindows， Mac OS，Mac OS X，Linux用があり，表示，加工， 分析，処理，保存，8-bit，16-bit，32-bitイメージの表 示 が 可 能 で，TIFF，GIF，JPEG，BMP，DICOM， FITSを含む多くの画像形式や列データが読み込み可 能である．使用者が定義した選択値の統計的な値を 使ってピクセル値や面積を計算すること，距離や角 度を測定すること，密度ヒストグラムや線形プロファ
イルプロットも作製できる．濃度やコントラストの調 節，シャープ／スムーズ化，エッジ検出やフィルタ処 理（空間フィルタ・周波数フィルタ）のような一般的な 画像処理機能を行える．Image Jを使用するにあたり 動作環境を設定することができ，Edit→Optionで開く と各種設定があるので使用目的に合わせ環境設定を 行うと使いやすくなると思われる（Fig. 1）．
今回の内容
DR画像の画像解析・画質調整を行ううえで必要な 操作を紹介する．
・Image Jによる画像の開き方
・画像解析に必要なディジタルデータの取得と便 利な操作
・ディジタル画像処理 ・便利なプラグインの紹介
1．Image Jによる画像の開き方
Image J は TIFF，GIF，JPEG，BMP，DICOM， FITSを含む多くの画像形式や列データが読み込み可 能である，今回はDR画像に関して説明を行うので DICOM画像を中心に説明を進める．現在ではPACS による画像の保存が主流になり，ほとんどのディジタ ル画像装置において出力画像はDICOM規格による規 格化がされている．Image JではDICOM規格画像は 容易に開くことができ，8-bit，16-bit，32-bitのほか RGB画像も展開可能である．
DICOM画像を展開するうえでいくつか注意が必要 である．DICOM規格内の光度測定解釈（Photometric interpretation）というものがあり，種類としてMONO- CHROME1・MONOCHROME2が あ る． こ の と き Image Jで表示したときにはどちらも同じようにネガ画 像で表示されるが，画像のピクセル値を取得すると 12-bitの場合，データの逆転が起こり，白が4095にな るか，黒が4095になるディジタルデータの逆転が起 こるので注意が必要である．この情報はDICOM画像 のTag情報で確認が可能である（Fig. 2）．
代表的な光度測定解釈を以下に表示する． 獨協医科大学越谷病院
中島正弘
−パソコンソフト活用術−
2009 年 11 月
パーソナルコンピュータを用いた医用画像処理の基礎−Image Jを用いて DR画像編−（中島） 1569
MONOCHROME1 ： Fuji CR，Canon FPD
MONOCHROME2 ： Carestream Health（Kodak） CR，Konica CRなど
その他にDR画像の解析や画質調節を行うときに必 要な画像展開方法として，Lowデータでの展開があ る．DICOM Tagを切り離してしまいLowデータで展 開するには以下のような画像転送構文がある． ・暗黙的（Implicit）VRリトルエンディアン転送構文 ・明示的（Explicit）VRリトルエンディアン転送構文 ・明示的（Explicit）VRビックエンディアン転送構文 また，Lowデータ画像を展開する場合，以下のよう な画像形式を指定して行う．
8-bit unsigned integer［8-bit非符号化整数形式］ 16-bit signed integer［16-bit符号化整数形式（32， 768を加えて非符号化を変換済み）］
16-bit unsigned integer［16-bit非符号化整数形式］ 32-bit signed integer［32-bit符号化整数形式（浮動 小数点に変換済み）］
32-bit floating-point［32-bit浮動小数点形式］
＜例：12-bit画像のLowデータ画像を開く場合＞ Fig. 3のように画像の大きさをピクセル値で指定 し，2bytesデータなので16-bit unsigned integerを選択 し，White is Zeroにチェックを入れて画像を表示する ことができる．
2．画像解析に必要なディジタルデータの取得と 便利な操作
解析を行う画像を開くことができたら，次に下記の 解析方法のディジタルデータの取得方法を紹介する． ・ディジタル特性曲線
・MTF
・Wiener spectrum
今回はImage Jの使用法を紹介しているので詳細な データ解析の方法は割愛させていただく．まず，画像 の開き方は前項で記したとおりであり，その画像の中 からデータを抽出しなければならない．このときに便 利な機能としてEdit→Selection→Specifyを選択する とROIのサイズと位置を指定することができる（Fig. 4）． ディジタル特性曲線のデータを取得する場合はROIを 指定した画像データからAnalyze→Measure→Save As で保存を行うと数値データとして保存が可能であり， データはMS Excelで開くことができる．
このとき，Set Measurementsで欲しいデータを選び 取得することが可能になる（Fig. 5）．MTF用のスリッ トデータやエッジデータはピクセルデータで取得する ためFile→Save As→Text imageで取得可能であり同 じようにMS Excelで開くことができる．
Wiener spectrumの算出にはプログラムを個人で作 成して算出を行っているがプログラムを作成しなくて もImage JとMS Excelを使用して算出も可能である． データは256×256のROI設定後128ピクセルずつROIを オーバーラップさせ画像データを取得し，FFTを行い 周波数データを取得する，そしてMS Excelのシート 上で周波数binのデータを計算しWiener spectrumを評 価する．このときトレンド除 去を行う方法として Fig. 1 Optionによる環境設定
Fig. 2 画像データの確認
表示は同じだがピクセル値は逆になっている．
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Fig. 3 Lowデータの開き方 Fig. 4 ROIの設定 Fig. 5 測定結果の選択
測定する内容をチェックする ことで選択できる．
Image JのホームページよりプラグインのPolynomial fit を使用し二次元でのトレンド除去を行い，データの精度 を32-bit出力して解析を行うことが可能である（Fig. 6）．
3．ディジタル画像処理
ディジタル画像の最大の特徴である画像の操作に ついて紹介をする．
画像の操作には以下の操作が可能である． ・画像の調節
・画像の計測 ・フィルタ処理
画像の調節はImage JをDICOM Viewerとして使用 する場合や，ディジタル画像のデータ取得や画像調 整を行うときに必要になってくる．Tool barにあるpull downメニューのImageをクリックしてもらうと画像調 整に必要な項目が表示される．今回はDR画像を表示・ 調整するときに使用する項目をpick upして説明を行う． まず画像の表示bit数の変更はTypeをクリックして もらうと表示bit数の変換可能項目が表示される．こ のサブメニューはアクティブな画像の形式を決定した り，ほかの画像形式に変換したりするときに使用す る．DR画像で 8-bitの画像はほとんどないがImage J の機能の中で16-bitや32-bitでは機能しない項目があ るのでここで 8-bit画像に変換して必要な機能を動作 させることが必要である．Adjustでは画像の明るさ／ コントラスト，閾値，画像サイズを調節するコマンド が含まれ，アクティブな画像の明るさやコントラスト を変更するために使用する．明るさとコントラストは 画像のルックアップテーブル（LUT）の更新によって変 更されるがピクセル値は変わらない．
Fig. 6 Polynomial Fitによるトレンド除去
画像の計測はAnalyze→Set Measurements（Fig. 5） で計測する項目が決められ，Measureで結果を表示し saveすることによりExcelで開くことができる．画像の 特性や測定値を求めるときに使用する．またAnalyze の中のHistogramやPlot profileでは画像の性質などを 求められ，同じようにsaveしてExcelで開くことができ る．Tool内のROI Managerを使用すると大きさ位置を 記憶して一度閉じた画像でも同じ位置でROIが設定 できる．
算 術 的 操 作 が 簡 単 に 行 え，画 像 のAddition・ Subtractionなど画質の変更や評価などに活用できる
（Fig. 7）．
Image Jの特徴の一つは，たくさんのフィルタ処理 が可能であることである．ツールバーのProcessの中 に空間フィルタ，周波数フィルタとも装備されており Smoothing Sharpenのような空間フィルタとFFTを使用 した周波数フィルタも使用でき，空間フィルタを使用 しカーネル設定したフィルタ処理も可能である（Fig. 8）．
2009 年 11 月
パーソナルコンピュータを用いた医用画像処理の基礎−Image Jを用いて DR画像編−（中島） 1571
Fig. 7 算術的操作
サブトラクションや対数変換など 行える．
Fig. 8 空間フィルタのカーネル設定
Fig. 9 定域通過フィルタ 周波数空間で円ツールを使用してEdit→Fill or cutす
ることによりHi passフィルタやLow passフィルタなど のフィルタや定域通過フィルタを経験できる（Fig. 9）．また 画像評価を行うシミュレーションを行うときNoiseを 付加できる機能も備えていて，Noiseの種類も選べる ため使用してほしい．
4．便利なプラグインの紹介
Image Jはプラグイン機能を有しておりダウンロー ドした中にもたくさんの機能を持ったプラグインもあ るが，Image Jホームページからプラグインのページ に入るとたくさんの機能を実行するプラグインがダウ ンロード可能である．そのほかにLinkされているホー ムページにもたくさんの機能を持ったプラグインがあ るので活用していただきたい．通常 8-bitでのHisto- gram表示や16-bitでのHistogram表示がプラグインに より可能になることや，先に紹介したPolynomial fitな ども入手可能である．Javaでの環境によりプログラム を書くことのできる方などは自作のプログラムにより プラグインを作成することも可能である．
おわりに
今回はImage JのDR画像を扱ううえで基本的な操 作を紹介してきた．このほかにも便利な機能がたくさ んあるので十分活用してほしい．
最後に，Image JはDR画像のデータ解析やフィルタ 処理による画像調整を行うのに便利な機能を有して いるが，データ解析を行う意味や方法を熟知したうえ で各種解析を行ってほしい．データを取得できたとし ても解析方法や内容を理解していないと間違った データ解析を行ってしまう場合があるので注意が必 要である．
参考文献
NIH Image Manual（V1.61）
