空間フィルタリング
( 2017 年 11 月 20 日)
浅井紀久夫
1
本日のポイント
• 平滑化
• エッジの保存
• エッジ抽出
• 鮮鋭化
教科書
空間フィルタリング
2
空間フィルタリング
• 画素ごとの濃淡変換
– 出力画像の画素の値を計算するために、入力画 像の対応する画素の値のみを用いる
• 領域に基づく濃淡変換
– 出力画像の画素の値を計算するために、入力画
像の対応する画素とその周囲の画素を含めた領 域内の画素を用いる
3
線形フィルタの計算
• 出力画像(i, j)の位置の画素値
50×(-1)+50×(-1)+50×(-1)+50×(-1)+100×9 +100×(-1)+120×(-1)+120×(-1)+120×(-1)
=240
-1 -1 -1 積和演算 -1 9 -1 -1 -1 -1
50 50 50 50 100 100 120 120 120
240
フィルタ
入力画像
出力画像
(i, j)
4
線形フィルタ
• 入力画像をf(i, j)、出力画像をg(i, j)とするとき、 次式により計算される
ただし、h(m, n)はフィルタ係数を表す配列、
フィルタの大きさは(2w+1)×(2w+1)
∑ ∑
=− =− + += w
w n
w
w m
n m h n j
m i
f j
i
g( , ) ( , ) ( , )
5
平滑化
• 単純な平滑化
• 重み付き平滑化
• 特定方向の平滑化
6
平滑化
• フィルタによって覆われる領域 内の画素値の平均を求める
• 3×3画素、5×5画素
3×3画素
5×5画素
9 1
9 1
9 1
9 1
9 1
9 1
9 1
9 1
9 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
25 1
原画像
3×3画素
5×5画素
7
重み付き平滑化
• 加重平均フィルタ
– 単純な平均ではなく、フィルタの原点(通常は中 央)に近いほど大きな重みを付ける
3×3画素
5×5画素
16 1
16 2
16 1
16 2
16 4
16 2
16 1
16 2
16 1
256 1
256 4
256 6
256 4
256 1
256 4
256 16
256 24
256 16
256 4
256 6
256 24
256 36
256 24
256 4
256 4
256 16
256 24
256 16
256 4
256 1
256 4
256 6
256 4
256 1
8
ガウシアン・フィルタ
• 重みを、ガウス分布にする
– 平均化フィルタに比べ、見た目にあまり大きな違 いはないものの、なめらかで自然な平滑化効果
−
= 22
exp 2 2
) 1
( πσ σ
x x hg
− +
= 2 2 2 2
exp 2 2
) 1 ,
( πσ σ
y y x
x hg
9
ガウス分布
• 平均m、分散σ2が与えられれば、決まる分布
( )
−
−
=
2 2exp 2
2
) 1
( π σ σ
m
x x
h
g前ページでは、m=0だった 10
特定方向の平滑化
• 平滑化を特定の方向に限って行うフィルタ
– 一方向に流れるような効果
0 0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
5 1
5 1
5 1
5 1
5 1
11
原画像 フィルタ適用結果
単純な平滑化の問題点
• 平滑化により、画像に含まれるノイズなどの 不要な濃淡変動を軽減
• 画像にもともとあるエッジも滑らかにする
• 画像中のエッジは保ちつつ、ノイズなどの 細かな変動を平滑化したい
12
エッジを保存した平滑化
• 局所領域の選択
• k最近隣平滑化フィルタ
• バイラテラル・フィルタ
• メディアン・フィルタ
13
局所領域の選択
• 平滑化を行う領域を選択し、エッジを含まな
い領域のみ平均を行う
9通りの局所領域の中から、画素値
の分散が最小になる領域を選び、 その領域の平均値を出力とする。
欠点:計算量が多い
フィルタの原点
(エッジが含まれる領域では、分散 が大きくなる)
14
k 最近隣平滑化フィルタ
• 注目画素の画素値に対し、注目画素の近傍 領域中で近い値を持つ画素を、一定個数選 び出し、その選ばれた画素の画素値の平均 値を出力とする
– N×N画素の中から、k個選び出す
– 局所領域の選択と似ているが、直接的にエッジを 考慮しているわけではない
フィルタの原点 15
バイラテラル・フィルタ
• 二つの重みを付けた平滑化
– 注目画素からの距離による重み(ガウシアン・フィ ルタ)
– 注目画素との画素値の差に応じて、ガウス分布 に従う重み(差が大きければ、異なるものと判定)
原画像 平滑化フィルタ1回 平滑化フィルタ2回 バイラテラル・フィルタ
16
メディアン・フィルタ
• 領域内の中央値(メディアン)を、出力とする
– n×nの局所領域における画素値を小さい順に並 べ、中央の画素値を注目画素に割り当てる
– ゴマ塩ノイズのようなスパイク状のノイズは軽減 される
原画像(ごま塩ノイズ入り) 平均化フィルタ メディアンフィルタ
17
エッジ抽出
• 画像中で、明るさが急に変化するエッジ部分 を取り出す
– 微分フィルタ
– プリューウィット・フィルタ – ソーベル・フィルタ
– 2次微分フィルタ
– ラプラシアン・フィルタ
18
微分フィルタ
• 関数f(t)の微分f’(t)は、以下のように定義
• ディジタル画像
– 右辺は、注目画素とその隣接画素との差分で 置き換えられる
h
t f h
t t f
f
h
) ( )
) ( (
'
lim
0
−
= +
→
19
差分
• x方向の差分
f
x′ = f ( i + 1 , j ) − f ( i , j )
) , 1 () ,
(i j f i j
f
fx′ = − −
0 0 0
0 -1 1
0 0 0
0 0 0
-1 1 0
0 0 0
0 0 0
0
0 0 0
2
− 1
2 1
注目画素と
右隣の画素との差 左隣の画素との差
半分ずれた位置の 微分値を求めている
両方の微分値の平均を取る
20
微分フィルタの結果
横方向の微分(差分)を求めているため、 画像の縦方向のエッジが強く出ている
縦方向の微分(差分)を求めているため、 画像の横方向のエッジが強く出ている
原画像
21
勾配の大きさ
• 各画素における横方向の差分をΔ
xf(i, j)、
縦方向の差分をΔ
yf(i, j)としたとき
(Δxf(i, j), Δyf(i, j))
は、画素値の勾配を表す。 勾配の大きさ
勾配の方向
2
2 ( ( , ))
)) ,
(
(∆x f i j + ∆y f i j )
, (
) , tan 1 (
j i f
j i f
x y
∆
− ∆
方向に依存しないエッジの抽出が可能
22
微分フィルタの問題点
• 濃淡が急激に変化するエッジ部分を検出
• ノイズに対しても敏感に反応
• ノイズを抑えながら、エッジを抽出したい
横方向微分 縦方向平滑化
入力画像 出力画像
縦方向のエッジ を検出
縦方向のエッジ
を残して、ノイズ低減
23
プリューウィット・フィルタ
• 微分と平滑化の組合せ
– >1つのフィルタを施すことと等価
0 0 0
-1 0 1
0 0 0
0 1 0
0 1 0
0 1 0
微分 縦平滑化
-1 0 1
-1 0 1
-1 0 1
プリューウィット・フィルタ
24
ソーベル・フィルタ
• 縦方向の平滑化のときに、中央に重みをつけ る
0 0 0
-1 0 1
0 0 0
0 1 0
0 2 0
0 1 0
微分 縦平滑化(重み付き)
-1 0 1
-2 0 2
-1 0 1
ソーベル・フィルタ
横方向のエッジ抽出(縦方向の微分)の場合も同様
25
微分フィルタとソーベル・フィルタ
の比較
原画像
微分フィルタ
ソーベル・フィルタ
26
ソーベル・フィルタの結果は、 微分フィルタに比べて
ノイズが抑えられ、なめらかな エッジが抽出される傾向がある
27
キルシュ法
• エッジの方向別にテンプレートを用意
• 画像とそれぞれのテンプレートとの積和演算
• 最大値が得られたテンプレートの方向を、エッジの 濃度が変化する方向とみなす
• その出力値をエッジの強度とする
5 5 5
-3 0 -3
-3 -3 -3
5 5 -3
5 0 -3
-3 -3 -3
5 -3 -3
5 0 -3
5 -3 -3
-3 -3 -3
5 0 -3
5 5 -3
-3 -3 -3
-3 0 -3
5 5 5
-3 -3 -3
-3 0 5
-3 5 5
-3 -3 5
-3 0 5
-3 -3 5
-3 5 5
-3 0 5
-3 -3 -3
28
キルシュ法の結果
原画像 キルシュ法適用後
29
2 次微分
• 2次微分は、微分を2回繰り返すこと
• ディジタル画像:差分を2回繰り返す
• 微分は、注目画素の右と左に半画素ずれた 位置の差分値を求めている
• フィルタ出力の差を求めれば、注目画素位置 の2次微分を求めることになる
30
2 次微分フィルタ
• 差分の差分
– >1つの2次微分フィルタを施すことと等価
0 0 0
0 -1 1
0 0 0
0 0 0
-1 1 0
0 0 0
1次微分フィルタ 1次微分フィルタ
0 0 0
1 -2 1
0 0 0
2次微分フィルタ
31
差分の差分
• x方向の差分の差分
• y方向の差分の差分
{ } { }
) , 1 (
) , ( 2 )
, 1 (
) , 1 (
) , ( )
, ( )
, 1 (
j i
f j
i f j
i f
j i
f j
i f j
i f j
i f fx
+ +
−
−
=
−
−
−
− +
′′=
{ } { }
) 1 ,
( )
, ( 2 )
1 ,
(
) 1 ,
( )
, ( )
, ( )
1 ,
(
+ +
−
−
=
−
−
−
− +
′′ =
j i f j
i f j
i f
j i f j
i f j
i f j
i f fy
32
ラプラシアン
• 関数f(x,y)のラプラシアンは、次式で定義され
る
) , ( )
, ( )
,
( 2
2 2
2
2 f x y
y y x x f
j i
f = ∂∂ + ∂∂
∇
横方向の2次微分の結果と縦方向の2次微分の結果 を足し合わせる
33
ラプラシアン・フィルタ
0 0 0
1 -2 1
0 0 0
0 1 0
0 -2 0
0 1 0
横方向の2次微分 縦方向の2次微分
0 1 0
1 -4 1
0 1 0
ラプラシアン・フィルタ
) 1 ,
( )
, 1 (
) , ( 4 )
, 1 (
) 1 ,
(
) ,
2 (
+ +
+ +
−
− +
−
=
+ ′′
= ′′
∇
j i f j
i f j
i f j
i f j
i f
f f
j i
f x y
34
エッジの 2 次微分
• エッジの位置をはさんで、 プラスとマイナスの値が対 になって現れる
エッジ位置の両側に、プラスの値と マイナスの値が対になっている
画素値
入力画像
1次微分
2次微分
35
ラプラシアン・フィルタの結果
• 方向に依存しないエッジが直接得られる
ラプラシアンは微分を繰り返すことになるため、
ノイズを強調してしまう 36
ガウス分布関数のラプラシアン
• ガウシアン・フィルタをかけて平滑化を行った 後、ラプラシアン・フィルタを施す
– ノイズの低減
• LOGフィルタ(Laplacian Of Gaussian)
− +
−
= 2 + 2 6 2 2 2 2
log 2 exp 2
) 2 ,
( πσ σ σ
y x
y y x
x h
37
LOG フィルタの近似結果
σの値を適当に調整することにより、画像から抽出する対象の 構造の細かさを選択することができる 38
鮮鋭化
• 元の画像の濃淡を残したまま、エッジを強調 する
– 鮮鋭化フィルタ
– 鮮鋭化の程度の制御
39
鮮鋭化
• 鮮鋭化
– エッジが強調された画像
– エッジ部分の両側で、明るい(画素値が大きい)
部分はより明るく、暗い(画素値が小さい)部分は より暗くなり、かつエッジの傾斜が急になる
40
鮮鋭化フィルタ
• 入力画像をそのまま出力する(何もしない) フィルタから、ラプラシアン・フィルタを引き算 する
0 0 0
0 1 0
0 0 0
0 1 0
1 -4 1
0 1 0
何もしないフィルタ ラプラシアン・フィルタ
0 -1 0 -1 5 -1
0 -1 0
鮮鋭化フィルタ
41
鮮鋭化フィルタ(変形版)
• ラプラシアン・フィルタ(変形版)を引き算する
0 0 0
0 1 0
0 0 0
0 1 0
1 -8 1
0 1 0
何もしないフィルタ ラプラシアン・フィルタ(変形版)
0 -1 0 -1 9 -1
0 -1 0 鮮鋭化フィルタ
原画像 鮮鋭化フィルタ
42
鮮鋭化の程度の制御
• 鮮鋭化
– 入力画像からラプラシアン・フィルタの出力画像 を引く
• 鮮鋭化の程度を変える
– 定数培する倍率をk (k>0)
– kの値が大きくなると、鮮鋭化の度合いが増す
0 -k 0
-k 1+4k -k
0 -k 0
-k -k -k
-k 1+8k -k
-k -k -k 43
オペレータ
• このような格子状の数値の並び
– オペレータ、マスク
• このフィルタ処理は、畳み込みによるフィルタ 処理と本質的に同じ
– オペレータはインパルス応答に対応する
– インパルス応答とオペレータは、互いに行列を 180°回転させた関係
44
課題の予定
• 11月20日 通常授業
• 11月21日 補講
• 12月18日 課題の提案
– どんな作品、あるいは機能とするのか、概要を 一枚物レポートとして提出
– 必要事項
名前、学籍番号
タイトル
概要(ポイントは何か、面白いところはどこか、どの 手法を使って、どういう手順で進めるのか)
• 1月22日 課題の提出
45
課題例
• 写真と実物との合成
• 立体写真でもOK
– でも、ディスプレイがない
名前:高専太郎 番号:0000
タイトル:た、立った! 概要
ポイント:1つのカメラで撮影した写真に、 画像処理を施す
面白いところ:フィギュア(本物)と実写(パ ソコンに提示)の融合において、照明効果 を考慮する
手法:デジカメを使って素材を取得し、画 像処理ツールで輝度や色を修正する。実 写と実物が違和感なく見えるようにする。 手順:フィギュアを用意、背景画像を設定、 デジカメで撮影、画像処理ツールで編集、 調整
原理図など
SDガンダム
講義ノート
• 以下のURLから取得できる
– https://sites.google.com/site/asaizlaboratory/ imagemedia2017
47