惑星の運動と衝突多様体 ∗
坂元孝志
明治大学理工学部数学科
June 13, 2017
Contents
1 運動方程式と保存量 1
1.1 運動方程式 . . . 1
1.2 極座標の導入 . . . 3
1.3 保存量 . . . 5
1.4 ケプラーの第2法則 . . . 7
2 運動の軌道と円錐曲線 8 3 特異点の Blow-up による近衝突軌道の解析 12 3.1 零速度曲線,衝突軌道,放出軌道 . . . 12
3.2 特異点の Blow-up と衝突多様体 . . . 14
4 付録: 微分方程式の解の初期値に関する連続性 23 4.1 グロンウォールの不等式 . . . 23
4.2 微分方程式の解の初期値に関する連続性 . . . 25
4.2.1 パラメータに関する微分方程式の解の連続性 . . . 26
1 運動方程式と保存量
1.1 運動方程式
R3 上の2体問題の運動方程式(2体の惑星の運動方程式)は次で与えられる;
m1X¨1= gm1m2
X2− X1
∥X2− X1∥3,
m2X¨2= gm1m2
X1− X2
∥X1− X2∥3.
(1.1)
∗2017年度数理教育 I 講義資料.本稿の内容は [2] の13章を踏襲している.
ここで,Xj(t) ∈ R3 は2つの惑星の位置ベクトルであり,mj は Xj の位置にあ る惑星の質量,g は重力定数である.また,∥ · ∥ は ユークリッドノルム:
∥A∥ =
√
a21+ a22+ a32, A = (a1, a2, a3) であり, ¨X = d2X/dt2(加速度ベクトル)を表す.
Y (t) = X2(t) − X1(t)とおくと
Y = −g(m¨ 1+ m2) Y
∥Y ∥3 となる.
Y (t) = αX(t), α = [g(m1+ m2)]1/3 とおくと
X = −¨ X
∥X∥3 (1.2)
を得る.
X(t)が (1.2) の解ならば,その運動は R3 内の平面上に拘束される.実際, 運動方程式 (1.2) の速度ベクトルを V (t) := ˙X(t)で定義すると
d
dt(X × V ) = X × V + X × ˙V˙
= V × V − (X × X)∥X∥−3= 0 を得る.ここで,× はベクトルの外積を表す.よって,ベクトル
A := X × V
は R3 内の定ベクトル(すべての成分が定数であるベクトル)である. A ̸= 0 のとき,ベクトルの外積の性質より,
A · X = 0, A · V = 0,
すなわち, A と X, A と V がそれぞれ直交する.このことから,X(t) の運動 は A = X × V と直交する平面内に拘束される.
A = 0のとき,2 つのベクトル X と ˙X = V は一次従属の関係にある.した がってある実数値関数 g(t) が存在して
X = g(t)X˙
が成り立つ.X(t) = (x1(t), x2(t), x3(t))と成分表示すると,各成分について dxj
dt = g(t)xj, j = 1, 2, 3 が成り立つ.よって
d dt
[ xj exp
(
−
∫ t t0
g(s) ds )]
= ˙xjexp (
−
∫ t t0
g(s) ds )
+ xj
( d dt
(
−
∫ t t0
g(s) ds ))
exp (
−
∫ t t0
g(s) ds )
= ( ˙xj− g(t)) exp (
−
∫ t t0
g(s) ds )
= 0.
すなわち,
d dt
[ xj exp
(
−
∫ t t0
g(s) ds )]
= 0 が成り立つ1.両辺を [t0, t]上積分すると
xj(t) exp (
−
∫ t t0
g(s) ds )
− xj(t0) = 0 だから
xj(t) = xj(t0) exp (∫ t
t0
g(s) ds )
, j = 1, 2, 3.
を得る.このことから,A = X(t) × V (t) = 0 を満たす微分方程式 (1.2) の解は, ある実数値関数 g(t) が存在して
X(t) = exp (∫ t
t0
g(s) ds )
X(t0)
と書ける.これは,ベクトル X(t) が ベクトル X(t0)とが同じ直線上にあること
(惑星は直線上を運動すること)を意味している.
以上より,2体問題の運動方程式 (1.1) をはじめから(Xj ∈ R2 として)平面 内の運動方程式として考えても一般性を失わない.また, これまでと同様に X1
と X2 の差をとって適当にスケール変換すれば,R2 上の2体問題は(そのうち の1体が原点に固定された問題として)次の運動方程式に帰着される:
X = −¨ X
∥X∥3, X(t) ∈ R
2. (1.3)
1.2 極座標の導入
惑星の運動としてよく知られるのは,楕円軌道である.そうした軌道を記述する 上では,直交座標系よりも極座標によって惑星の位置を表現する方が便利なこと が多い.実際,r を原点からの距離,θ を x 軸から見て左回りを正とする偏角と
すると, 1
r = 1
κ(1 + ϵ cos θ)
は ϵ < 1 のとき,楕円を表す極方程式である(κ は定数). 問題極方程式
1 r =
1
κ(1 + ϵ cos θ)
を ϵ > 1, ϵ = 0, ϵ < 1 のそれぞれの場合について直交座標系の方程式に直せ.そ れぞれどのような曲線を描くか.
1exp(α) = eα である(e は自然対数の底).
方程式 (1.3) に極座標を次のように導入する; X(t) = (r(t) cos θ(t), r(t) sin θ(t)),
V (t) = vr(t)(cos θ(t), sin θ(t)) + vθ(t)(− sin θ(t), cos θ(t)).
この座標系では惑星(質点)の位置は (r(t), θ(t)) によって,速度は (vr(t), vθ(t)) によって定まることとなる.次に,新しい変数
r(t), θ(t), vr(t), vθ(t)
に関する運動方程式を (1.3) から導こう.そのために, ˙X = V なる関係を新しい 変数に書き直す必要がある.このことは
X = ˙r(cos θ(t), sin θ(t)) + r ˙θ(− sin θ(t), cos θ(t))˙ と V (t) の極座標表示を比較することで
˙r = vr, ˙θ = vθ
r (1.4)
であるとわかる.
新しい変数に関する運動方程式を,(1.3) X = ˙¨ V = −X/∥X∥3 にしたがって書き直そう.新しい変数(極座標系)では
V = ( ˙˙ vr− vθ˙θ)(cos θ, sin θ) + (vr˙θ + ˙vθ)(− sin θ, cos θ) である.一方,
− X
∥X∥3 = − 1
r2(cos θ, sin θ)
である.X(t), V (t) が (1.3) の解ならば,これら2式の右辺は等しい.よって,
˙
vr− vθ˙θ = − 1
r2, vr˙θ + ˙vθ= 0 を得る.これと ˙r = vr, ˙θ = vθ/r より,
˙
vr− vθ2/r = −r12, vrvθ/r + ˙vθ= 0. したがって,運動方程式 (1.3) の極座標による表示は
˙r = vr,
˙θ = vθ r ,
˙ vr= −1
r2 + vθ2
r ,
˙
vθ= −vrvθ
r
(1.5)
となる.
1.3 保存量
定義 1 (運動エネルギー)
微分方程式 (1.3) の運動エネルギー K(t) を
K(t) =1 2∥V (t)∥
2
で定義する.また,極座標表示では K(t) = 1
2[{vr(t)}
2+ {vθ(t)}2] である.
定義 2 (ポテンシャルエネルギー)
微分方程式 (1.3) のポテンシャルエネルギー U(t) を
U (t) = − 1
∥X(t)∥ で定義する.また,極座標表示では
U (t) = − 1 r(t) である.
定義 3 (全エネルギー)
微分方程式 (1.3) の全エネルギーとは,運動エネルギーとポテンシャルエネルギー の和のことをいう.全エネルギーを E(t) と記す.すなわち,
E(t) = K(t) + U (t) = 1 2∥V (t)∥
2− 1
∥X(t)∥ である.また,極座標表示では
E(t) = 1
2[{vr(t)}
2+ {v
θ(t)}2] − 1 r(t) である.
定義 4 (角運動量)
微分方程式 (1.3) の角運動量 ℓ(t) を
ℓ(t) = X(t) × V (t) = x1(t)v2(t) − x2(t)v1(t) と定義する.また,極座標表示では
ℓ(t) = r(t)vθ(t) である.
これらの定義において,元の座標 X, V による定義と極座標による定義が同じ 量であることは,極座標を直接代入すれば簡単に確かめられる.
微分方程式 (1.3) において,全エネルギーと角運動量は保存される.同じこ とであるが,微分方程式系 (1.5) においても 全エネルギーと角運動量は保存され る.実際,
dE
dt(t) = vrv˙r+ vθv˙θ+ r
−2
˙r
であるから,(1.5) によって( r(t), θ(t), vr(t), vθ(t)が (1.5) の解ならば) dE
dt(t) = vrv˙r+ vθv˙θ+ r
−2˙r
= −vr/r2+ vrv2θ/r − vrvθ2/r + vr/r2= 0. また,同様に
dℓ
dt(t) = ˙rvθ+ r ˙vθ
= vrvθ+ r(−vrvθ/r) = 0.
したがって,定数 h を t = 0 における全エネルギー(速度ベクトルと位置ベクト ルから定まる量)
h := E(0) = K(0) + U (0) = 1 2∥V (0)∥
2− 1
∥X(0)∥ で定義すれば,∥X∥ ̸= 0 である限り,すべての t ≥ 0 において
h ≡ 12∥V (t)∥2− 1
∥X(t)∥ が成り立つ.同じことであるが,この h に対して
h ≡ 12[{vr(t)}2+ {vθ(t)}2] − r(t)1 , (t ≥ 0, r ̸= 0) が成り立つ. 同様に,定数 ℓ を t = 0 における角運動量:
ℓ = X(0) × V (0) = x1(0)v2(0) − x2(0)v1(0) と定義すれば,∥X∥ ̸= 0 である限り,すべての t ≥ 0 において
ℓ ≡ X(t) × V (t) が成り立ち,さらにこの ℓ に対して
ℓ ≡ r(t)vθ(t), (t ≥ 0, r ̸= 0) である.
もちろん,h や ℓ を極座標表示 (1.5) から定まる全エネルギーや角運動量の, t = 0における値として定めても同じことであるし,ある t = t∗ において h や ℓ を定めても同じことである.
1.4 ケプラーの第2法則
角運動量が保存則されることの別の表現がよく知られるケプラーの第2法則であ る.この節では,角運動量の保存則からケプラーの第2法則を導く.
I ⊂ R を区間,X(t) = (x1(t), x2(t)) を t ∈ I における (1.3) の 解とする. t0∈ I を固定する. t0 < t, t ∈ I に対して,原点と X(t0) = (x1(t0), x2(t0))を 結ぶ直線を L1,原点と X(t) = (x1(t), x2(t))を結ぶ直線を L2とし,質点(惑星) が t0から t まで動くときの X(t) = (x1(t), x2(t))が描く曲線を γ(t) とする.2 つの直線 L1, L2 と γ(t) によって囲まれる図形の面積を S(t) とする.
定義 5 S(t) の導関数 dSdt(t) を,面積速度という.
Theorem 1 微分方程式 (1.3) の解 X(t) = (x1(t), x2(t))に対して,上で定義さ れた S(t) の面積速度は定数である.これをケプラーの第2法則という.言い換 えると, 任意の t0, t1, t2∈ I に対して,t1= t2 ならば S(t1) = S(t2)が,上で 定義された S(t) について成り立つ.
証明 L1 は s をパラメータとして
x1= s, x2= x2(t0)
x1(t0)s, 0 ≤ s ≤ x1(t0) とパラメータ表示される.同様に,L2 は
x1= s, x2= x2(t)
x1(t)s, 0 ≤ s ≤ x1(t) となる.また,曲線 γ のパラメータ表示は
x1= x1(s), x2= x2(s), t0< s < t である.
I1=
∫
L1
(x1dx2− x2dx1), I2= −
∫
L2
(x1dx2− x2dx1), Iγ =
∫
γ
(x1dx2− x2dx1)
とおくとグリーンの公式([1], 定理 5.17 およびその系)によって 2S(t) = I1+ I2+ Iγ.
線積分の定義により,
I1 =
∫ x1(t0) 0
( x1
dx2
ds − x2 dx1
ds )
ds
=
∫ x1(t0) 0
( sx2(t0)
x1(t0)− x2(t0) x1(t0)s · 1
) ds
= 0. 同様に,
I2 = −
∫ x1(t) 0
( x1dx2
ds − x2 dx1
ds )
ds
= −
∫ x1(t) 0
( sx2(t)
x1(t)− x2(t) x1(t)s · 1
) ds
= 0.
Iγ については,(x1(t), x2(t))が (1.3) の解であるから, Iγ =
∫
γ
(x1dx2− x2dx1)
=
∫ t t0
(
x1(s)dx2
ds (s) − x2(s) dx1
ds(s) )
ds
=
∫ t t0
(x1(s) ˙x2(s) − x2(s) ˙x2(s)) ds
=
∫ t t0
(X × V ) ds = ℓ
∫ t t0
ds
= ℓ(t − t0).
ここで,ℓ は角運動量である.したがって, S(t) = ℓ
2(t − t0) となる.ゆえに,
dS dt =
ℓ 2 であり,S(t) は t によらない定数である.また,
S(t2) − S(t1) = ℓ
2(t2− t1) であるから,t1= t2 ならば S(t1) = S(t2).
□
2 運動の軌道と円錐曲線
これまでに2体問題 (1.1) の運動方程式は,1体の質点の運動方程式 (1.3) ある いは (1.5) に帰着されることをみた.この節では,微分方程式 (1.5) の解を求め
る.解の軌道は円錐曲線(双曲線,放物線,楕円のいずれか)になることを確か めよう.r = r(t), θ = θ(t) から t を消去できれば,r を θ の関数と見ることがで きる.例えば,その導関数は,微分積分学で学んだ基本的な公式により,
dr dθ(θ) =
dr dt dθ dt によって計算できる.
さて,r = r(θ) と r を θ の関数としてみよう.関数 W (θ) を W (θ) := 1
r(θ)
で定義する.運動エネルギー K, ポテンシャルエネルギー U, 全エネルギー E を W を用いて表わそう.定義より,運動エネルギー K は
K = 1 2(v
2 r+ v2θ)
であった.微分方程式 (1.5) より,
vr= ˙r, vθ= r ˙θ が成り立つ.これを K の式に代入すると
K =1 2( ( ˙r)
2+ (r ˙θ)2) (2.1)
を得る.
dw dθ =
dw dr
dr
dθ = −{r(θ)}
−2
dr dt dθ dt
= −{r(θ)}−2 ˙r˙θ
より,
˙r = −dW dθ r
2˙θ.
(1.5)より, ˙θ = vθ/r と 角運動量 ℓ = r(0)vθ(0) = r(t)vθ(t)を用いると
˙r = −dWdθ r2˙θ = −dWdθ rvθ= −ℓdWdθ (2.2) を得る.角運動量 ℓ = rvθ は定数(保存量)であることを注意しておく.
また,やはり ˙θ = vθ/r と ℓ の定義より,
r ˙θ = vθ= ℓ/r = ℓW. (2.3) 関係式 (2.2), (2.3) を (2.1) に代入すると
K =ℓ
2
2 [
(dW dθ
)2
+ W2 ]
(2.4)
を得る.全エネルギー E は,運動エネルギー K とポテンシャルエネルギー U = −W の和であるから,
E = K + U = K − W である.よって,(2.4) より
E = ℓ
2
2 [
(dW dθ
)2 + W2
]
− W
全エネルギーは保存量( ˙E ≡ 0 が成り立つ)であるから,E = h (h は定数)と おいて整理すると W (θ) に関する微分方程式
(dW dθ
)2
+ W2= 2
ℓ2(h + W ). (2.5) を得る.
Proposition 1 W (θ)を微分方程式 (2.5) の解とする.このとき,次が成り立つ.
• 任意の実数 a に対して,W (θ + a) も (2.5) の解である.
• W (−θ) も (2.5) の解である.
証明 f を R2 上で定義された C1-関数であって,その逆関数 g := f−1 も C1- 関数とする.W (θ) を (2.5) の解とし,
φ = f (θ), θ = g(φ), (g = f−1)
とする. U(φ) = W (g(φ)) とおき,U(φ) が満たす微分方程式を考える.連鎖律
により, dW
dθ = dW
dφ dφ dθ =
dW dφ
df dθ である.独立変数を明示的に記せば
dW dθ (θ) =
dW dθ (g(φ))
= d
dφ(W (g(φ))) df dθ(g(φ))
= dU dφ(φ)
df
dθ(g(φ)). (2.6) W (θ)は微分方程式 (2.5) の解であるから,
( dW dθ (θ)
)2
+ {W (θ)}2= ℓ22(h + W (θ)) を満たす.これに,(2.6) と θ = g(φ) を代入すると
( dU dφ(φ)
df dθ(g(φ))
)2
+ {W (g(φ))}2= ℓ22{h + W (g(φ))}
となる.
U (φ) = W (g(φ)) であったから U(φ) は微分方程式
( dU dφ(φ)
df dθ(g(φ))
)2
+ {U(φ)}2= ℓ22(h + U (φ)) を満たす.したがって,
dφ dθ =
df
dθ = ±1 (2.7)
ならば U(φ) も(独立変数 φ を θ と置き換えて)微分方程式 (2.5) の解である. θ から φ への変数変換
• φ = θ + a, a ∈ R
• φ = −θ
はいずれも (2.7) を満たす.
□
微分方程式 (2.5) の解を求めよう.(2.5) は dW
dθ = ±
√
−W2+ℓ22W +2hℓ2.
とかける.これは変数分離型の微分方程式である.両辺を θ で積分すると
∫ 1
√
−W2+ 2 ℓ2W +
2h ℓ2
dθ = ±θ + C.
根号の中を整理すると
−W2+ 2 ℓ2W +
2h ℓ2 = −
( W − 1
ℓ2 )2
+1 + 2hℓ
2
ℓ4 である.2hℓ2+ 1 > 0のときに話を限る.このとき,
W − 1 ℓ2 =
√2hℓ2+ 1 ℓ2 sin Z とおいて置換積分を行うと
Z = ±θ + C. よって,
W − 1 ℓ2 =
√1 + 2hℓ2
ℓ2 sin(±θ + C). したがって,
W (θ) = 1 ℓ2{1 +
√1 + 2hℓ2cos(±θ + C + π/2) }.
Proposition 1より,±θ + C + π/2 を改めて θ とおいた関数 W (θ) = 1
ℓ2{1 +
√1 + 2hℓ2cos θ }.
も (2.5) の解となる(もちろん直接 (2.5) に代入しても確かめられる).
W (θ) = 1 r(θ) であったから,
1 r =
1 ℓ2(1 +
√1 + 2hℓ2cos θ) となる.これは,
κ = ℓ2, ϵ =√1 + 2hℓ2 とおくと円錐曲線の極方程式
1 r =
1
κ(1 + ϵ cos θ)
に他ならない. すなわち,2hℓ2+ 1 > 0のとき,運動方程式 (1.3) の解の軌道は, ϵ > 1のとき双曲線,ϵ = 1 のとき放物線,0 < ϵ < 1 のとき楕円を描き,その焦点 はいずれも原点である.いずれの軌道を描くかは,角運動量 ℓ と全エネルギー h の関係によって決まる.特に,楕円となるのは h < 0 のときである(便宜上,ϵ = 0 のときを円と定義すると,全エネルギー h と 角運動量 ℓ が関係 1 + 2hℓ2= 0を 満たすとき,解は円軌道を描くことがわかる ).また,ℓ = rvθ= r2˙θ より,解は 軌道上を ℓ > 0 ならば左回り,ℓ < 0 ならば右回りに動く.
3 特異点の Blow-up による近衝突軌道の解析
3.1 零速度曲線,衝突軌道,放出軌道
全エネルギー E は
E(t) = 1 2∥V (t)∥
2− 1
∥X(t)∥
であった.h = E(0) とおくと,h は ∥X∥ ̸= 0 である限り,すべての t ≥ 0 にお いて保存される;
h = 1 2∥V (t)∥
2− 1
∥X(t)∥, (∥X(t)∥ ̸= 0, t ≥ 0) このことと,極座標表示 ∥X(t)∥ = r(t) を用いると
∥V (t)∥2= 2h +2r, (∥X(t)∥ ̸= 0, t ≥ 0) である.したがって,解が存在する r の範囲は
r ≤ −h1
である.特に,
r = −h1
のとき,∥V ∥ = 0 となる.すなわち,もし (1.5) の解が r = −1h に到達したとす るとその瞬間,速度は0となる.このことから円
{
(r, θ)| r = −1 h
}
を運動方程式 (1.5) の零速度曲線と呼ぶ.この節では,ℓ = 0, すなわち,質点が θ =定数 なる直線上を運動する場合を考える.
ℓ = 0, h < 0 における軌道 ℓ = 0のときを考える.
ℓ = rvθ= r2˙θ であったから,ℓ = 0 ならば
vθ= ˙θ = 0. (3.1) したがって,θ は定数である.また,(3.1) から定まる空間
{(r, θ, vr, vθ) | vθ= 0, θ = const.} 上における,微分方程式 (1.5) に従う運動は
{ ˙r = v
r
˙ vr= −1
r2
(3.2)
なる運動方程式に従う.
{(r, vr) | r > 0} における, (3.2) によって定まる解の軌道を考える.
dr dvr
= ˙r
˙ vr = −
vr
r2, (r > 0)
より,r を vrの関数としてみれば,vr< 0で単調増加であり,vr= 0で極大値
(最大値)とり,vr > 0で単調減少であることがわかる.もう一度 vr で微分し て,(3.2) をつかうと
d2r dvr2 =
d dvr
(−vr2r) = −
r2− vr· (
2rdr dvr
) r4
= −
r2− 2vrr ·(−vrr2) r4
= −r
2+ 2v2 r/r
r4 < 0, (r > 0)
である.よって,関数 r(vr)のグラフに変曲点はなく,グラフはすべての点で上 に凸である.以上のことと,
˙ vr= −1
r2 < 0, (r > 0)
より,{(r, vr) | r > 0} における運動方程式 (3.2) に支配される質点は,関数 r(vr) のグラフ上を,t の増加とともに vr が減少する方向に動く.
vr> 0にある点から出発した解の運動を r 軸上 ({(r, vr) | vr= 0, r > 0)} 上) に正射影した軌道を考えると,r(t) は t が増加するとともに,一度増加し,再び 減少することがわかる(r が最大となるのは r 軸と r = r(vr)のグラフとの交点 である).このことは,運動方程式に従う質点は R2 内の直線
{(r, θ) | r > 0, θ = const.}
上を,原点から離れる方向に動き,再び原点に向かって近づくことを意味してい る.もちろん,vr< 0にある点から出発した軌道は,t > 0 にわたって原点に近 づく方向に((r, θ) 空間では θ = const. なる直線上を)動く.
この様な,原点から離れる方向の直線軌道を放出軌道,原点に近づく方向の直 線軌道を衝突軌道という.また,vr> 0から出発した解は,原点から離れた後, 再び原点に向かって動くので,この様な解の直線軌道を 衝突・放出軌道と呼ぶ.
3.2 特異点の Blow-up と衝突多様体
この節では2体の惑星が衝突するとき,すなわち,r = 0 のときに何が起こるか を解析する.微分方程式 (1.5) において
ur(t) = r1/2vr(t), uθ(t) = r1/2vθ(t) によって新しい変数 ur(t), uθ(t)を導入すると
˙r = r−1/2ur,
˙θ = r−3/2uθ,
˙
ur= r−3/2[ 1 2u
2r+ u2θ− 1 ]
,
˙
uθ= r−3/2 [
−12uruθ
]
(3.3)
を得る.
Theorem 2 ([3], Theorem 7.7.2) F : Rn → Rn をなめらかなベクトル場とす る.G : Rn→ (0, ∞) をなめらかな n 変数関数とする.微分方程式
˙z = F (z), z(t) ∈ Rn (3.4) に対して,
dt
dτ = G(z)
の規則によって時間変数を t から τ に変換した微分方程式 dz
dτ = G(z)F (z), z(t) ∈ R (3.5) について,次が成り立つ;J ⊂ R を 0 を含む区間とする.γ(t) を (3.4) の解とす る.このとき,関数
B : J → R, B(t) =
∫ t 0
1 G(γ(s))ds はその値域 I ⊂ R において可逆である.τ = B(t) とおく.
β : I → J, τ 7→ t = β(τ) を B の逆関数とする:β = B−1.
このとき,
β′(τ ) = G(γ(β(τ ))) がすべての τ ∈ I について成り立つ.さらに,
˜
γ(τ ) = γ(β(τ )) は微分方程式 (3.5) の解である.
証明 G の仮定より,
B′(t) = 1 G(γ(t))
は,なめらかな正値関数である.よって,B(t) は可逆である(逆関数を持つ). β : I → J を B の逆関数とすると,
β′(τ ) = d dt(B
−1(t)) = 1
dB dt
= 11 G(γ(t))
= G(γ(t)) = G(γ(β(τ ))).
˜
γ(τ ) = γ(β(τ ))とおくと d˜γ dτ =
d
dτ(γ(β(τ )))
= β′(τ )γ′(β(τ )). γ(t)は (3.4) の解であるから
γ′(β(τ )) = F (γ(β(τ ))). よって,
d˜γ
dτ = β
′(τ )γ′(β(τ ))
= G(γ(β(τ ))) F (γ(β(τ ))) = G(˜γ(τ )) F (˜γ(τ )) であるから,˜γ(τ) は微分方程式 (3.5) の解である.
□ この定理によって,微分方程式 (3.4) の右辺に正値関数 G(z) をかけて得られる 微分方程式 (3.5) の解は,単に (3.4) の解の時間変数 t を t = β(τ) (τ = B(t) ) によって変換しただけのものとして得られることがわかる.しかも,B′(t)は正 であるから,t の増加とともに τ も増加する.従って,この時間変数の変換は微 分方程式の解の軌道の向きを変えることなく,(3.4) の解軌道を (3.5) にうつす. このような場合,微分方程式 (3.4) の定める力学系の流れは (3.5) の定める力学 系の流れと位相同値であるという.
このことを幾何学的に解釈すれば,(3.4) の定める Rn 上のベクトル場の各点 におけるベクトルを,その方向を変えることなく,長さを “G(z) 倍 ” したもの が (3.5) の定めるベクトル場であるとわかる.よって,それぞれのベクトル場の 積分曲線(それぞれの微分方程式の解曲線) はその方向を変えることなく,1対 1にうつりあう.
微分方程式 (3.3) の解析に戻ろう.前の定理によって,(3.3) に対して新しい 時間変数 τ を
dt dτ = r
3/2
によって導入しても解の定性的な性質は変化しないことがわかる.時間変数 τ の もとで微分方程式 (3.3) は
˙r = rur,
˙θ = uθ,
˙ ur=1
2u
2r+ u2θ− 1,
˙ uθ= −1
2uruθ
(3.6)
となる.元の運動方程式 (1.5) では r = 0 に特異性があったが,新しい微分方程 式系 (3.6) ではその特異性はない.よって,運動する惑星が原点に固定された惑 星に衝突するとき,すなわち,r = 0 のときの解の様子を調べることができる. 微分方程式 (3.6) が定めるベクトル場を Blow-up されたベクトル場という2.
r = 0のとき,(3.6) は
˙r = 0,
˙θ = uθ,
˙ ur=1
2u
2r+ u2θ− 1,
˙ uθ= −1
2uruθ
(3.7)
2ここでの Blow-up は「特異点の膨らまし」の意味である.同じ “Blow-up” という言葉は「微 分方程式の解の爆発」の意味でも使用される(解の爆発については例えば [4],などを参照のこと)
である.保存量である全エネルギーは h = 1
2(v
2
r+ v2θ) −1r であったから,新しい変数では
h = 1 2r(u
2
r+ u2θ) −1 r よって,
hr =1 2(u
2
r+ u2θ) − 1 となるが,これも r = 0 として
0 = 1 2(u
2
r+ u2θ) − 1. すなわち,微分方程式 (3.7) の解のうち,
Λ := {(θ, ur, vr) ∈ [0, 2π) × R2| u2r+ u2θ= 2}
なる空間上の解を調べれば十分である.この Λ を衝突多様体という.Λ は (r, θ, ur, uθ) 空間においては
Λ := {(r, θ, ur, vr) ∈ [0, ∞) × [0, 2π) × R2| u2r+ u2θ= 2, r = 0}
なる集合である.従って,微分方程式 (3.7) の,Λ 上での解の挙動を調べれば r = 0とその周辺での解 の振る舞いを知ることができる.
任意の θ ∈ [0, 2π) に対して θ と θ + 2π を同一視すれば Λ はトーラスであ る.実際,θ は極座標における動径方向の座標であるから,この同一視によって Λ をトーラスと考える方が自然である.
Λ上で
u2r= 2 − u2θ だから集合 Λ 上で ur(t)は
˙ ur= 1
2(2 − u
2
θ) + u2θ− 1 = 12u2θ
に従う;
˙θ = uθ,
˙ ur=1
2u
2 θ,
˙
uθ= −12uruθ
(3.8)
微分方程式 (3.8) について,以下のことがわかる;
• uθ̸= 0 ならば ˙ur> 0である.すなわち,uθ̸= 0 ならば ur(t)は t ととも に増大する.
• uθ= 0のとき,u2r= 2より,ur= ±√2となる.さらに,このとき,
˙θ = ˙ur= ˙uθ= 0 である.すなわち,Λ 上の集合:
C+:= {(θ, ur, vr) ∈ [0, 2π) × R2| uθ= 0, ur=√2} C−:= {(θ, ur, vr) ∈ [0, 2π) × R2| uθ= 0, ur= −√2} はいずれも (3.8) の平衡点からなる集合である.
次に,Λ 上の軌道を考える.新しい変数 ψ を
ur(τ ) =√2 sin ψ(τ ), uθ(τ ) =√2 cos ψ(τ ) によって導入し,微分方程式 (3.8) をつかうと
˙
ur=√2 cos ψ · ˙ψ = 12(√2 cos ψ)2= cos2ψ を得る.よって,
ψ =˙ √1
2cos ψ, ψ ̸= π/2 + nπ, n ∈ Z. 一方,
˙
uθ= −√2 sin ψ · ˙ψ = −12(√2 cos ψ ·√2 sin ψ) = cos ψ sin ψ. よって,
ψ =˙ √1
2cos ψ, ψ ̸= nπ, n ∈ Z. 以上より,
˙θ =√2 cos ψ,
ψ =˙ √1 2cos ψ
(3.9)
を得る.
この微分方程式に従う,(θ, ψ) ∈ [0, 2π) × [0, 2π) 上の軌道を調べるために,ψ を θ の関数としてみると
dψ dθ =
dψ dτ dθ dτ
= 1 2 より,
ψ(θ) = 1
2θ + ψ(0) を得る.すなわち,
Lα:= {
(θ, ψ) ∈ [0, 2π) × [0, 2π) | ψ(θ) = 12θ + α }
, α ∈ R
と定めると (θ, ψ) ∈ [0, 2π) × [0, 2π) 上の軌道は直線の族 Lα(α ∈ R) で与えられ る.さらに,平衡点 C± は
C+:= {(θ, ψ) ∈ [0, 2π) × [0, 2π) |ψ = π/2} C−:= {(θ, ψ) ∈ [0, 2π) × [0, 2π) |ψ = 3π/2}
であるから (θ, ψ) 空間において2つの直線 ψ = π/2, ψ = 3π/2 を形づくる. まとめると,以下のことがわかる;
• ψ ∈ [0, π/2) から出発した軌道は,直線の族 Lα(α ∈ R) に沿って単調に ψ = π/2に近づく.
• ψ ∈ (π/2, 3π/2) から出発した軌道は,直線の族 Lα(α ∈ R) に沿って ψ = π/2から離れる方向に動き,ψ = 3π/2 に近づく.
• ψ ∈ (3π/2, 2π) から出発した軌道は,直線の族 Lα(α ∈ R) に沿って単調に ψ = 3π/2に近づく.
次に,r ̸= 0,ℓ = 0 (ℓ は角運動量) での (3.6) に従う解の振る舞いを調べ よう(前の結果から,これは衝突・放出軌道になるとわかっている).ℓ = 0 のと き,vθ= uθ= 0 だから (3.6) は
˙r = rur,
˙θ = 0,
˙ ur= 1
2u
2r− 1,
˙ uθ= 0. となる.微分方程式
˙r = rur,
˙ ur= 1
2u
2r− 1,
(3.10)
の平衡点は (r, ur) = (0, ±√2)である((0,√2), (0, −√2)は,(3.9) の平衡点の集 合 C+ と C− にそれぞれ対応する).微分方程式系 (3.10) について,それぞれの 平衡点での線形化方程式の,係数行列の固有値を調べれば,(0,√2)は反発的な平 衡点,(0, −√2)は吸引的な平衡点であことがわかる.また,線形化方程式の(係 数行列の)固有ベクトルを調べることにより,局所安定多様体および局所不安定 多様体上の解の詳細を知ることができる3.実際, (3.10) の平衡点 (0,√2)は反 発的であるから,{(r, ur) | r ≥ 0, ur∈ R} 上でその安定多様体は 平衡点のみから なる集合
{(r, ur) ∈ [0, ∞) × R | (r, ur) = (0,√2)}
3微分方程式 ˙z = F (z), z(t) ∈ Rnの 平衡点を p とし,γ(z0, t)を z(0) = z0を満たす解とする. U⊂ Rnを p の近傍とする.集合 {z0∈ U | lim
t→∞γ(z0, t) = p}を平衡点 p の局所安定多様体とい う.また,集合 {z0∈ U | lim
t→−∞γ(z0, t) = p}を平衡点 p の不安定多様体という.
であり,不安定多様体は十分小さい δ に対して
{(r, ur) ∈ [0, ∞) × R | 0 ≤ r2+ (ur−√2)2< δ} である.また,平衡点 (0, −√2)の安定多様体は
{(r, ur) ∈ [0, ∞) × R | 0 ≤ r2+ (ur+√2)2< δ} であり,不安定多様体は平衡点のみからなる集合
{(r, ur) ∈ [0, ∞) × R | (r, ur) = (0, −√2)} である.
よって,次のことがわかる.
• 放出軌道は 平衡点
(r, θ, ur, uθ) = (0, const.,√2, 0) の不安定多様体に沿う軌道である.
• 衝突軌道は平衡点
(r, θ, ur, uθ) = (0, const., −√2, 0) の安定多様体に沿う軌道である.
以上で,衝突軌道,放出軌道と衝突点(特異点 r = 0)での様子を完全に知る ことができた.R2 平面上に (1.3) の衝突解 X(t) = (x1(t), x2(t)) の軌道を描く 上では,速度 ((vr, vθ)や (ur, uθ) )の情報は明示的に現れないことに注意する必 要がある.例えば,衝突・放出軌道を R2 平面上に描くと,同じ軌道上を逆向き に運動することになるので見かけ上,初期値に関する解の一意性に反するように 見える.しかし, 速度の情報まで含めた空間
{(X, V ) ∈ R2× R2| ∥X∥ ̸= 0}
で考えれば,衝突軌道上の速度ベクトルと放出軌道上の速度ベエクトルは逆方向 を向いているので,同じ軌道上にはない((r, vr)上での衝突・放出軌道の解析を 思いだそう).
同じことが Blow-up された Λ 上のベクトル場についてもいえる.Blow-up さ れたベクトル場 (3.10) では,衝突軌道は t → ∞ で 吸引的な平衡点
(r, θ, ur, uθ) = (0, const., −√2, 0) に到達する.一方の放出軌道は t → −∞ で反発的な平衡点
(r, θ, ur, uθ) = (0, const.,√2, 0)
に到達する.しかしながら,やはり Blow-up された (3.6) の解の軌道を (r, θ) 空 間に描く上でも,速度 (ur, uθ)の情報は明示的に現れない.
例えば,
Λ := {(r, θ, ur, vr) ∈ [0, ∞) × [0, 2π) × R2| u2r+ u2θ= 2, r = 0}
での運動と衝突・放出軌道の接続を (r, θ) 空間で見てみよう.θ∗ を定数とする. {(r, θ) | θ = θ∗} なる衝突軌道をたどって r = 0 に接続された軌道は,Blow-up さ れた特異点:{(r, θ) | r = 0} 上を一回転(θ が 2π だけ増加または減少)してから 同じ直線 {(r, θ) | θ = θ∗± 2π = θ∗} 上の放出軌道に接続される.したがって,衝 突・放出軌道と r = 0 とがぶつかる点で u2r= 2 であるという情報は (r, θ) 空間 における解の軌道を描く上では抜け落ちることになる.
微分方程式の初期値に関する解の連続性とこれらの情報から,近衝突軌道(衝 突軌道の近くの軌道)の様子を知ることができる.その軌道は,細長い楕円を急 旋回しながら原点に近づく.また,角運動量の保存則(ケプラーの第2法則)に よって,解が原点に近くなればなるほど速度は大きくなる.また,ℓ = r2˙θ だか ら旋回の向きは角運動量が正ならば右回り,負なら左回りである.
Blow-up さ たベクトル場 2つ 異 衝突・放出軌遈.赤円 { (r,θ) | r=0 } 上 軌遈,青円 零 速度曲線,直線 黒,灰色 衝突・放出軌遈を表 .近衝突軌遈 ,こ ら 衝突・放出軌遈 近くを 通 こ .
Blow-up さ たベクトル場 角運動量 正 近衝突軌遈
元 ベクトル場 角運動量 正 近衝突軌遈
零速度曲線{ (r,θ) | r=-1/h}
{ (r,θ) | r=0 }
衝突・放出軌遈
θ
衝突多様体 到遉 衝突・放出軌遈 衝突軌遈
放出軌遈
2π
2π
u
uθ r
衝突多様体上 軌遈 衝突・放出軌遈.θ 2π周期 あ ら2つ 放出軌遈 同 軌遈 あ
衝突軌遈
放出軌遈 放出軌遈
θ
4 付録 : 微分方程式の解の初期値に関する連続性
ベクトル値関数 F : Rn→ Rn がその定義域 D ⊂ Rn において次のリプシッツ条 件を満たすとする.
• ある定数 L が存在して,任意の定義域の2点 z1, z2∈ R について
∥F (z1) − F (z2)∥ ≤ L∥z1− z2∥ (4.1) が成り立つ.
このとき,微分方程式
˙z = F (z), z(t) ∈ Rn (4.2) について, 初期値に関する解の連続性が成り立つことを証明する.
4.1 グロンウォールの不等式
Lemma 1 (グロンウォールの不等式)v(t) と g(t) を区間 (a, b) 上の連続な実 数値関数で,任意の t ∈ (a, b) に対して v(t) ≥ 0,g(t) ≥ 0 を満たすものとする. このとき,a < t0< b である t0 と定数 C に対して,a < t < b を満たすべての t に対して
v(t) ≤ C +
∫ t t0
v(s) g(s) ds
(4.3)
が成り立つならば
v(t) ≤ C exp (
∫ t t0
g(s) ds )
(4.4) が成り立つ.
証明 a < t0≤ t < b とする.
U (t) = C +
∫ t t0
v(s) g(s) ds とおく.(4.3) より,
v(t) ≤ U(t) (4.5)
である.これと微分積分学の基本定理により, d
dtU (t) = v(t) g(t) ≤ U(t) g(t)
が成り立つ.C > 0 のとき,v(t), g(t) が非負関数であることと t0 ≤ t より,
U (t) > 0である.また,その定義から U(t0) = C. よって, U′(t)
U (t) ≤ g(t)
が成り立つ.[t0, t]上で両辺を積分すると
∫ t t0
g(s) ds ≥
∫ t t0
U′(s)
U (s) ds = log U (t) − log U(t0)
= log U (t) − log C = log(U(t)/C) すなわち,
log(U(t)/C) ≤
∫ t t0
g(s) ds. よって,
U (t) ≤ C exp (∫ t
t0
g(s) ds )
. (4.5)より,
v(t) ≤ U(t) ≤ C exp (∫ t
t0
g(s) ds )
. 次に,a < t ≤ t0< bのとき,
U (t) = C +
∫ t0
t
v(s), g(s) ds とおくと,(4.3) より,
0 ≤ v(t) ≤ C +
∫ t t0
v(s) g(s) ds
= C + −
∫ t0
t
v(s) g(s) ds
= C +
∫ t0
t
v(s) g(s) ds
= U (t)
より −v(t) ≥ −U(t). 前と同様に微分積分学の基本定理によって U′(t) = −v(t) g(t) ≥ −U(t)g(t).
したがって,
U′(t)
U (t) ≥ −g(t). 両辺 [t0, t]上積分すると
log U (t0) − log U(t) ≥
∫ t0
t −g(s) ds
よって,
log (C/U (t)) ≥ −
∫ t0
t
g(s) ds. だから
C/U (t) ≥ exp {
− (∫ t0
t
g(s) ds )}
.
よって,
v(t) ≤ U(t) ≤ C exp (∫ t0
t
g(s) ds )
= C exp (
∫ t t0
g(s) ds )
. 最後に C = 0 の場合を示す.点列 {cj}j∈N で,
cj > 0 (j ∈ N), lim
j→∞cj = 0
を満たすものを取る.このとき,
v(t) ≤ cj+
∫ t t0
v(s) g(s) ds
(4.6) が成り立つならば,上の議論と同様にして
0 ≤ v(t) ≤ cjexp (
∫ t t0
g(s) ds )
(4.7) が成り立つ.
j → ∞ とすると (4.7) は 0 ≤ v(t) ≤ 0 となり,v(t) ≡ 0 でなければならな いが,このとき,v(t) ≡ 0 と C = 0 に対して 不等式 (4.3) および (4.4) が成り 立つ.
□
4.2 微分方程式の解の初期値に関する連続性
初期条件 z(t0) = z0 を満たす微分方程式 (4.2) の解を γ(z0, t)とする.(4.2) の 両辺を [t0, t]で積分すると
z(t) = z(t0) +
∫ t t0
F (z(s)) ds (4.8) を得る.γ(z0, t)の定義から
γ(z0, t) = z0+
∫ t t0
F (γ(z0, t)) ds が成り立つ.z(t0) = ˜z0̸= z0 を満たす解についても同様に
γ(˜z0, t) = ˜z0+
∫ t t0
F (γ(˜z0, t)) ds が成り立つ. よって,
∥γ(z0, s) − γ(˜z0, s)∥ =
z0+
∫ t t0
F (γ(z0, s)) ds −
(
˜ z0+
∫ t t0
F (γ(˜z0, s)) ds )
≤ ∥z0− ˜z0∥ +
∫ t t0
[F (γ(z0, s)) − F (γ(˜z0, s))] ds
≤ ∥z0− ˜z0∥ +
∫ t t0
∥F (γ(z0, s)) − F (γ(˜z0, s))∥ ds.
リプシッツ条件 (4.1) より,
∥γ(z0, t) − γ(˜z0, t)∥ ≤ ∥z0− ˜z0∥ + L
∫ t t0
∥γ(z0, s) − γ(˜z0, s)∥ ds. グロンウォールの不等式より,((4.3) で C = ∥z0 − ˜z0∥, g(s) ≡ L, v(s) =
∥γ(z0, s) − γ(˜z0, s)∥ とすると )
∥γ(z0, s) − γ(˜z0, s)∥ ≤ ∥z0− ˜z0∥ exp (
L
∫ t t0
ds )
= ∥z0− ˜z0∥eL(t−t0). したがって,
˜lim
z0→z0
∥γ(z0, s) − γ(˜z0, s)∥ ≤ lim
˜ z0→z0
∥z0− ˜z0∥eL(t−t0)= 0.
これは,微分方程式 (4.2) の解が初期値に関して連続であることに他ならない.
4.2.1 パラメータに関する微分方程式の解の連続性 微分方程式がパラメータ λ ∈ Rmを含むとき,すなわち,
˙z = F (λ; z), z(t) ∈ Rn, λ ∈ Rm (4.9) のときを考える.
微分方程式
{ ˙z = F (λ; z),
˙λ = 0 (4.10)
について,初期値に関する解の連続性が成り立つ.このことから (4.9) について パラメータに関する解の連続性が導かれる.
実際,2つの異なるパラメータ値 λ = λ∗, λ = λ∗ に対する (4.10) の解を γ(λ∗, t), γ(λ∗, t) とする.これらは 初期条件 λ(0) = λ∗, λ(0) = λ∗ を満たす (4.10)の解である.よって, 初期値に関する解の連続性より,
λ∗lim→λ∗∥γ(λ∗, t) − γ(λ∗, t)∥ = 0
が成り立つ.
References
[1] 難波誠,「微分積分学」裳華房,1996
[2] M. W. Hirsch他, 著,桐木紳 他, 訳,「力学系入門 原著第2版 - 微分方程式 からカオスまで- 」共立出版,2007
[3] Christian Kuehn,「Multiple Time Scale Dynamics」Springer, 2015 [4] 柳田英二「爆発と凝集(非線形・非平衡現象の数理)」東京大学出版会,2006