Ⅳ 健康福祉局 保険年金管理課
1 堺市国民健康保険出産費資金貸付金
(1)制度の概要
堺市国民健康保険条例第 6 条の規定による出産育児一時金の支給を受けることが見 込まれる世帯主に対し、出産育児一時金の支給が行われるまでの間、被保険者の出産
に要する費用を支払うための資金を無利子で貸し付ける制度である。平成 13 年 6 月に
創設されている。
この制度は、妊娠 4 ヶ月以上となってから貸付けが行われ、出産育児一時金が申請 された際に支給額と相殺して回収することを原則としている。貸付限度額を出産育児
一時金の 80%とし、残りの 20%は出産育児一時金の申請によって受給できるようにさ
れているため、出産育児一時金の申請手続を失念される例はなく、概ね短期間に回収 されている。
なお、この制度による貸付けは堺市国民健康保険事業特別会計で行われている。
(2)根拠法令等
堺市国民健康保険出産費資金貸付規則
(3)所管部署
健康福祉局 保険年金管理課 市民人権局 各支所 保険年金課
(4)貸付金の全般的状況
【表Ⅳ−1】直近 3 年間の状況 (単位:千円)
新規貸付 期末残高
年度 期首残高
件数 金額
回収
件数 金額
平成14年度 3,320 86 20,470 17,590 26 6,200 平成15年度 6,200 94 22,260 24,920 16 3,540 平成16年度 3,540 113 26,880 24,260 27 6,160
【表Ⅳ−2】直近 3 年間の回収状況 (単位:千円)
年度 区分 調定額 収入済額 収入未済額 回収率
現年度 17,590 17,590 − 100.0%
過年度 − − − −%
平成14年度
合計 17,590 17,590 − 100.0% 現年度 24,920 24,920 − 100.0%
過年度 − − − −%
平成15年度
合計 24,920 24,920 − 100.0% 現年度 24,260 24,260 − 100.0%
過年度 − − − −%
平成16年度
合計 24,260 24,260 − 100.0%
(5)実施した監査の手続
① 貸付実行業務については、堺支所の平成 16 年度の貸付けについて、貸付申込書、貸
付決定通知書、借用書等関係書類を閲覧及び照合し、堺市国民健康保険出産費資金貸 付規則に準拠して、適切に貸付決定及び貸付実行されていることを検証した。
② 債権管理業務については、堺支所の平成 16 年度の貸付けについて、出産育児一時金
支給申請書及び残額交付の領収書等関係書類を閲覧及び照合し、出産育児一時金支給 時に適切に相殺され、貸付金が回収されているかを検証した。また、担当者への質問 及び収入金調定伺書の閲覧により、特別会計上も適切に回収処理されていることを検 証した。
出産育児一時金の支給額と相殺されない場合においては、堺市国民健康保険出産費
資金貸付規則第 7 条第 2 項及び第 10 条において即時返還等の規定があるが、適時に返
還させているか否か、返還させていない場合の経緯及び回収状況について質問を行っ た。堺支所の管轄の該当者については、分割返還誓約書、督促活動の履歴等関係書類 を閲覧した。
(6)監査の結果及び意見
① 出産育児一時金との相殺の網羅性について
貸付けを実施した場合、国民健康保険電算システムに登録される。出産育児一時 金の申請時には、国民健康保険電算システムの画面で、貸付けの有無を確認し、貸
付額相殺後の支給金額を決定している。堺支所の平成 16 年度貸付け分については、
国民健康保険電算システムへの償還登録も適正に行われている。しかし、国民健康 保険電算システムから、登録されている貸付額を印字した出産育児一時金申請書を 出力して利用するようにし、出産育児一時金の支給を登録すれば償還処理されるよ うにする等、システム的に相殺の網羅性を確保するような手当ても検討することが 望ましい。
② 特別会計上の回収処理について
出産育児一時金の支給時に相殺して回収した場合は、資金の移動がないため、特 別会計上は、相殺部分について貸付金返還収入(歳入)と出産育児一時金(歳出) に振り替える処理が必要となる。保険年金管理課で、各支所の保険年金課から相殺
した情報を収集し、この振替えを行っている。しかし、平成 14 年度において、相
殺して回収したという情報が各支所から保険年金管理課に網羅的に提出されなか ったことにより、この振替えが 7 件 1, 680 千円失念しており、平成 15 年度になっ
てから振替えられている。この結果、決算附属書の数値は以下の状況となっている。
平成 14 年度 貸付金返還収入 1, 680 千円過小 年度末残高 1, 680 千円過大 平成 15 年度 貸付金返還収入 1, 680 千円過大
このような事態を受け、各支所からは、出産育児一時金申請書と貸付申込書を同 時に回収することとし、保険年金管理課で特別会計上の処理が終了すると、貸付申 込書に処理済であることを記載して各支所に返却するよう、再発防止策が講じられ ている。
ただし、特別会計上の処理もれは発生しないように改善されているが、決算時に 残高の適正性を検証する手続が講じられていない。現状では、国民健康保険電算シ ステムには、個人別の貸付け、回収及び残高の状況を管理することができるが、全 体を合計する仕組みがない。適正な残高を把握するために、貸付け、回収及び残高 を全体合計で管理できるシステムとすることが望ましい。決算時には、このシステ ムの残高と特別会計上の残高を照合することで、特別会計上の回収処理が適正に行 われていることを検証できるものと考えられる。
債権管理の観点からも、少なくとも貸付金残高については内訳が管理できるよう にすることは必須であるが、システムを変更することが不可能であるとしても、各 支所の保険年金課から貸付け及び償還の履歴を入手するほか、残高内訳明細の作成 や、国民健康保険電算システムの個人別残高との照合等により、特別会計の残高検 証を行う必要がある。
なお、平成 17 年 9 月の監査に際し、各支所の保険年金課が、貸付番号、金額、
場合でも、国民健康保険電算システムとの整合性を、各支所の保険年金課が検証し ておく必要がある。
③ 即時返還等の手続について
堺市国民健康保険出産費資金貸付規則第 7 条第 2 項では、堺市国民健康保険の被 保険者の資格を喪失する等、特定の要件に該当した場合には、14 日以内に全額を返
還させる旨が規定されており、第 10 条では、不正の手段により貸付けを受けたと
認められたときは、直ちに全額を返還させると規定している。
第 10 条に該当すると判断された実績はないが、第 7 条第 2 項については、制度
創設以降、貸付中に被保険者の資格を喪失したケースが 10 件発生している。しか
し、規定どおり 14 日以内に回収された実績は 1 件のみである。残り 9 件について は主に経済的理由で履行期限の延長又は分割回収となっているが、これらを認める 決裁書類がない。経済的理由で履行期限の延長や分割回収がやむを得ない場合には、 事前に決裁権限を有する者の決裁を得る必要がある。
また、これらは全て納入通知書を発行し、回収された後に調定されている。出産 育児一時金支給時に相殺、回収される場合は、納入通知書が発行されないので、事 後の調定にならざるを得ない。しかし、被保険者の資格を喪失する等の事実の発生 時には全額返還させると規定されている以上、事実が発生した時点で回収の意思決 定が行われるのであり、この時点で全額調定したうえで、納入通知書を発行するの が適当と考えられる。被保険者の資格を喪失した時点で全額調定したものと仮定す ると、直近 3 年間の回収状況は【表Ⅳ−3】のとおりとなる。適時に調定し、回収 できなかった場合は、収入未済額として認識及び開示する必要がある。
【表Ⅳ−3】直近 3 年間の回収状況 (単位:千円)
年度 区分 調定額 収入済額 収入未済額 回収率
現年度 19,510 19,270 240 98.8%
過年度 − − − −%
平成14年度
合計 19,510 19,270 240 98.8% 現年度 24,030 23,240 790 96.7%
過年度 240 − 240 0.0%
平成15年度
合計 24,270 23,240 1,030 95.8% 現年度 24,340 23,840 500 97.9% 過年度 1,030 420 610 40.8% 平成16年度
合計 25,370 24,260 1,110 95.6%
履行期限の延長や分割回収を決裁した場合であっても、決裁された回収期日を基 準に調定すべきであり、実際の回収額のみを事後に調定するのは適当ではないと考 えられる。借受人から、国民健康保険出産費貸付金分割返還誓約書を入手している 場合でも、誓約書どおりに支払われていない場合が見受けられるが、回収遅延分に ついては、定期的に上長等に報告する仕組みとし、再度、回収条件を変更する場合 にも、書面で決裁を得るべきである。
なお、この貸付制度は、出産育児一時金の支給と相殺することを想定した制度で あるため、国民健康保険電算システムでは、分割回収等を管理できる仕組みとなっ ていない。既に述べたように、総額で管理できるシステムにすることが望ましく、 この変更に併せて分割回収される貸付金残高についても管理できるようにするこ とが望まれる。ただし、現時点では分割回収等に該当する件数は少ないため、手作 業による個人別残高管理及びシステムで集計される総額の調整によっても特段の 問題は生じないものと考えられる。
④ 延滞金の徴収について
堺市国民健康保険出産費資金貸付規則第 9 条には、償還すべき期日までに貸付金 の償還をしないときは、延滞金を徴収する旨が規定されている。しかし、既に述べ たように、回収するまで調定していないため、回収遅延を認識した実績がない。適 時に調定し、延滞した場合には、もれなく延滞金を徴収すべきである。
特段の理由があって延滞金を免除することを想定するのであれば、延滞金の免除 ができる旨を規定しておく必要がある。この場合でも、決裁権限者の決裁を得るべ きである。
⑤ 即時返還の対象債権について
平成 16 年度末の残高のうち、被保険者の資格を喪失している借受人の状況は、
以下のとおりであった。
【表Ⅳ−4】 (単位:千円)
借受人 貸付額 貸付日 資格喪失日 資格喪失
事由
平成16年 度末残高 A 240 平成14年12月6日 資格喪失未届 − 240 B 240 平成15年6月25日 平成15年7月1日 転出 170
C 240 平成15年9月5日 平成15年10月20日 生活保護 200
D 240 平成16年5月19日 平成16年5月24日 生活保護 80
E 240 平成16年11月9日 平成16年11月26日 生活保護 180
F 240 平成17年3月4日 平成17年3月15日 生活保護 240
(注)2.借受人Aについては、堺市国民健康保険に届出のないまま貸付日以前である平成 14 年 11 月 28 日付けで夫の健康保険に加入しており、夫の健康保険へ出産育児一時金の申請も行っ ている。
上記については、いずれも、堺市国民健康保険出産費資金貸付規則に準拠して貸 付けが決定されている。しかし、借受人Aについては、堺市国民健康保険への届出 を失念しているため、形式的には貸付けの申込みが可能であるが、貸付日時点で、 既に対象者には該当していない。借受人Bについては、貸付けから転出まで 6 日し かなく、借受人は堺市国民健康保険から出産育児一時金が支給されないことは、予 測できたものと考えられる。生活保護受給対象者となり、国民健康保険の被保険者 の資格を喪失した借受人についても、貸付日から資格喪失日までは短期間である。
このような状況からみると、貸付決定を慎重に行うことが重要である。現状でも、
貸付制度を案内する書類に、「貸付条件」として資格喪失した場合は遅滞なく返還
するものとする旨が記載されており、窓口では説明されている。貸付制度の性質か ら、形式的に資格確認を行えば、貸付決定されることも止むを得ないと考えるが、 窓口に貸付相談や申請があった時点で、堺市国民健康保険から出産育児一時金が支 給されることが大前提であること、市外への転居や生活保護の受給等で被保険者で なくなった場合には即時に全額の償還を求められることについての説明を強化す ることが望まれる。市外への転居予定がないか、配偶者の健康保険への加入予定は ないか、勤務先の加入する健康保険への加入予定はないか等をチェックリストにし て提出を求めることも一案である。
また、即時返還の要件に該当する借受人が増加するようであれば、制度の悪用を 避けるため、保証人を付さなければならないよう規定することも検討する余地があ る。
⑥ 回収マニュアルの作成について
相殺できない貸付けの回収手続については、調定、納入通知書の発行、貸付台帳 の記載項目等を通常の項目だけでなく、履行期限延長の手続や延滞債権の督促方法 まで記載したマニュアルを作成し、全支所で統一的に運用することが望ましい。
⑦ 決裁権限者について
国民健康保険出産費資金貸付金の貸付け、償還等については、各支所の保険年金 課長が専決しているが、堺市役所支所事務分掌規則では、保険年金課長の専決事項 に明記されていない。事務分掌に「国民健康保険出産費資金貸付に関すること」が 列記されていることから、類推して専決事項としているようであるが、明確に規定 する必要がある。
2 堺市国民健康保険高額療養費資金貸付金
(1)制度の概要
堺市国民健康保険の被保険者に対し、国民健康保険法(昭和 33 年法律第 192 号)第
57 条の 2 に規定する高額療養費(以下、高額療養費という。)の支給対象となる療養
に要した費用の一部に充てるため、高額療養費として支給出来る額の 80%を限度に貸
付けを行う制度である。
高額療養費は、事後的に支給されるものであるため、一時的には、一部負担金を医 療機関に支払う必要がある。この一部負担金の支払いが困難である者に対して、高額
療養費の支給までの間、貸付けを行う必要があるものとして昭和 53 年 4 月に創設され、
運用されてきたものである。
貸付けは、堺市国民健康保険事業特別会計から行われ、毎年度、貸付金(歳出)及 び貸付金返還収入(歳入)に、それぞれ 10, 000 千円の予算が計上されている。
しかしながら、昭和 61 年 1 月から高額療養費受領委任払の制度が、市においても導
入され、年々利用できる医療機関が増加してきたことから、この制度の利用が普及し てきている。
この結果、平成 12 年度に 1 件貸し付けられた後は、貸付実績がない状況である。
(注)高額療養費受領委任払とは、高額療養費自己負担限度額だけを医療機関に支払い、残りの高 額療養費については国民健康保険から医療機関に支払う制度である。ただし、医療機関の同 意が要件となっている。
(2)根拠法令等
堺市国民健康保険高額療養費資金貸付規則
(3)所管部署
健康福祉局 保険年金管理課 市民人権局 各支所 年金管理課
(4)意見
① 貸付制度の有効性について
この制度は、平成 13 年度以降利用実績がない状態であるが、平成 12 年度以降継 続して 10, 000 千円の予算が計上されている。
より、最終的な自己負担額のみを支払えば済む高額療養費受領委任払制度を利用す る方が簡易であるため、この制度を利用できる医療機関が増加している。この点を 考慮すれば、利用件数が大幅に増加する可能性は低く、高額療養費資金貸付制度の 有効性は低い。
全ての医療機関に受領委任払制度の導入を義務付けることはできないため、制度 は存続せざるを得ないとしても、貸付金の予算額について、過去の実績等から過大 ではないかを見直す必要がある。