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金融論
unit 21マンデル=フレミング・モデル
マンデル=フレミング・モデル
マンデル=フレミング・モデルとは、IS-LM分析を閉鎖系財 から開放経済に拡張したモデルである。
閉鎖経済(closed economy)とは、外国との取引のない孤立し た国を想定するこという。
開放経済(open economy)においては、海外部門をも想定し、 閉鎖経済の環境に、貿易や国際間の資本移動をも含めた取引 を加えて考察する。
unit 20のIS-LM分析においては、閉鎖経済の中で金融政策 を考察した。
マンデル=フレミング・モデル
特に重要点は、為替レートが固定された固定相場制と自由な 変動が認められた変動相場制との政策効果の違いである。 固定相場制のもとでは、金融政策が無効である。
変動相場制のもとでは、財政政策が無効となる。
開放経済における IS-LM 分析
開放経済においては、閉鎖経済の枠組みに貿易や資本移動と いう要素を導入する。
開放経済にモデルを拡張したとき、新たに付け加わる要 素は、
輸出・輸入 外国為替市場
である。
IS-LM分析の枠組みに、これら2つの要素がどのように組み
込まれるかを考える。
開放経済における IS-LM 分析
モデルを開放経済に拡張すれば、これまで分析してきた財市 場と貨幣市場に、外国為替市場が付け加わる。
したがって、今後の議論は、 財市場
貨幣市場 外国為替市場
の同時均衡を考える必要がある。
開放経済における IS-LM 分析
最も簡単なモデルとしてJ国(日本)とA国(アメリカ、あ るいはJ国以外の海外経済全体)からなるモデルを想定し よう。
これを2ヶ国モデル(two-country model) と呼ぶ。
議論を簡単化するために、J国の経済規模はA国に比べて十 分小さく、J国の経済活動・政策がA国経済に影響を及ぼさ ないものとする。
これを小国の仮定という。
開放経済における IS-LM 分析
これら2つの国には通貨主権(monetary sovereignty) が存在 する。
自国内で財・サービスの交換を行うためには、それぞれの国 の発行する通貨のみが無制限に通用する。
他国の通貨は通用しない。
したがって、2つの国の間で財・サービスの売買を行うとき、 円とドルを高官売る必要がある。
たとえば、日本の会社が海外の会社から財を輸入するとき、 支払いのためのドルを必要とする。
このとき通貨の交換比率を為替レートと呼ぶ。
為替レートをeで表し、1ドルをe円という交換比率である
外国為替市場の均衡条件
新たに付け加わる外国為替市場の均衡条件を導出する。 自由な資本移動が認められるとして、今期と来期との2期間 にわたるモデルを考え、J国の金利をRJ、A国の金利をRA とする。
また、今期の為替レートをe1、来期の為替レートをe2で表 すことにする。
外国為替市場の均衡条件
図21-1は、日本の居住者が1000円をJ国内で1年間預金し たときと、ドル建てでA国に預金したときの収益とを比較し たものである。
J国内に預金したときの1年後の収益は1000(1 + RJ)円で ある。
一方、A国に預金し、1年後に円に交換した場合、 1000e2(1 + RA)/e1円となる。
外国為替市場の均衡条件
外国為替市場の均衡条件
こうした資金移動から何ら収益を得ない条件を外国為替市場 の均衡条件といい、以下のような式で与えられる。
1 + RJ = e2(1 + RA) e1
IS 曲線と為替レートの関係
開放経済で加わるもうひとつの要素は貿易である。
そこで輸出と輸入をそれぞれ、J国の財で測った財の実質輸 出量Xと実質輸入量Hとしてこれまでのモデルに付け加 える。
為替レートが上昇(円の価値が下がってドルの価値が上昇) すると輸出は増加する。
よって、輸出Xをe1の増加関数としてX(e1)と表す。
IS 曲線と為替レートの関係
これに対して為替レートの上昇によって輸入は減少するた め、輸入Hをe1の減少関数とする。
また、所得Y が増加すれば輸入Hは増加するので、HはY の増加関数である。
こうした性質を持つ輸入Hを、次のような一次式で表す。 H(Y, e1) = h0+ h1Y − H2e2
ここで、0 < h1< c、h2< 0である。
IS 曲線と為替レートの関係
X − H で定義される純輸出(貿易収支)は、J国の所得と為
替レートの関数になっている。
開放経済において財市場の需給が均衡する条件は、総需要の 議論にこの純輸出を加えることによって、次の式で表される。
Yd = C(Y ) + I(R) + X(e1) − H(Y, e1)
= (a − h0) + I(R) + X(e1) + h2e1+ (c − h1)Y
IS 曲線と為替レートの関係
総需要をこのように定義した後、為替レートe1を与えられ たものとして、縦軸に利子率R、横軸に所得Y をとったグラ フ上で、財市場の均衡を表すIS曲線を描くと図21-2(a)に表 される右下がりのIS(e1)曲線となる
IS 曲線と為替レートの関係
IS 曲線と為替レートの関係
ここで利子率R∗を所与として、為替レートが上昇してe′1 (e1 < e′1)となったとき、どのようにIS曲線が影響されるか を考える。
輸出Xは、為替レートの増加関数であるのみならず、h2は 正と仮定されていたため、財の需要を示すYdは上にシフト する。
したがって、IS(e1)曲線は右にシフトすることになる。 つまり与えられた為替レートに応じてそれぞれ右にシフト する。
図21-2では、それぞれの為替レートに対応したIS曲線を IS(e ) IS(e′)
IS 曲線と為替レートの関係
このように開放経済におけるIS曲線は為替レートの影響を 受ける。
これに対して、LM曲線は、これまで説明してきた枠組みの 中では影響を受けない。
したがって、開放経済でも、unit 20の閉鎖経済において説 明したLM曲線を継続して用いることができる。
国際収支 (BP) とは
国際収支 (balance of payment)は、財・サービスの取引を表 す経常収支と、外国への投資による資産・負債の変化を表す 資本収支からなる。
このうち経常収支の主なものは貿易収支であり、すでに説明 したように、所得と為替レートの影響を受ける。
これに対して、資本収支の主なものは投資収支であり、資本 収支は利子率変動の影響を受け、(国内)利子率が上昇した とき、外国からの資本が流入して黒字となり、利子率が下落 したときは、資本が外国に流出するため赤字となる。
IS 曲線と為替レートの関係
ここで国際収支線あるいはBP線とは、国際収支を均衡させ る利子率と所得との組み合わせを表す直線である。
ここでは、資本移動が可能な状況を考察する。
小国の仮定からJ国の利子率はA国の利子律により決まるた め、以下の説明においてJ国のBP線は、資本移動があると きには、図21-3にあるように水平(R = RAで示される直線) となる。
BP線の上方では国際収支は黒字となり、下方では国際収支 は赤字となる。
BP
IS 曲線と為替レートの関係
IS 曲線と為替レートの関係
国際通貨制度は、固定相場制度と変動相場制度に大別される。 固定相場制度とは、それぞれの政府が自国通貨と他の国の通 貨の交換比率を一定の値に固定した通貨制度である。
そこでの交換比率を為替平価という。
変動相場制度とは、外国為替市場を介して、それぞれの国の 通貨が需給に応じて自由に交換される制度である。
以下では、固定相場制度のもとでの経済政策と、変動相場制 度のもとでの経済政策を、それぞれ考察する。
固定相場制度のもとでの金融政策
開放経済のもとでは、新たに外国為替市場が考慮すべき対象 となる。
その扱いは、固定相場制度と変動相場制度では大きく異なる。 固定相場制度の為替レートは、言うまでもなく為替平価で固 定されているため需給調整の役割を果たさない。
金融政策は為替平価の維持という役割を担い、国内経済の調 節として通貨量を増減させるという効果は達成できない。 したがって、固定相場制度のもとにおいて、財政政策に依存 することになる。
固定相場制度のもとでの金融政策
まず固定相場制度のもとにおいて、財市場、貨幣市場の均衡 が達成されている状況から出発して、外国為替市場の均衡を 探っていく。
e1を現在の為替レート、e2を将来の為替レートとする。 固定相場制度において、これらは為替平価e∗に固定されて いるため、e1= e2 = e∗が成立している。
したがって、IS曲線はe∗という為替レートでIS(e∗)と決定 される。
固定相場制度のもとでの金融政策
すでに導出した外国為替市場の均衡条件にこれを代入すると、
1 + RJ = e
∗(1 + RA)
e∗ = 1 + RA から、
RJ = RA
が導かれる。
小国の仮定よりJ国の利子率は海外(A国)の利子率RAに 一致していなければならない。
よって、J国の経済を考えるとき、R = RAという水平なBP
固定相場制度のもとでの金融政策
ここで所得の増加を目的にJ国が金融政策によって貨幣供給 量を増加したとしよう。
LM曲線は右にシフトして、RJ < RAとなる。図21-4の(1) の矢印で描かれる状況である。
ところが自由な資本移動が認められている限り、有利な投資 先を求めて資本はJ国からA国へ移動する。
これは為替平価に切り下げ圧力がかかっている状況であり、 金融当局が為替平価を維持するためには、貨幣供給量を減少 させて金利をあげるしかない。図21-4の(2)の矢印。
固定相場制度のもとでの金融政策
固定相場制度のもとでの金融政策
つまり、金融政策当局が貨幣供給量を増加させても、国際間 の自由な資本移動を認める限り、その分だけ外国為替市場で 国内通貨の売り圧力が強まる。
これを放置すると、為替平価は維持できず、為替レートは切 り下がる。
固定相場制度のもとでは、このような状況を金融政策当局が 放置することは許されず、結局、国内の所得を増加させるた めに増加した貨幣供給量と同じ量を金融政策当局はは回収せ ざるをえない。
したがって、LM曲線はもとの位置に戻り、財市場、貨幣市
固定相場制度のもとでの金融政策
それでは、為替平価そのものを変更して平価切下げを行う と、どのような効果があるだろうか。
J国の為替レートをe∗からe+ (e∗ < e+) へ切り下げたと する。
図21-2で説明したように為替レートの上昇はIS(e∗)曲線を 右にシフトさせて、IS(e+) となり、LM曲線との交点は図 21-4の矢印(3)で示される位置に移動する。
平価切下げの場合は、一時的にJ国の利子率が上昇して資本 がJ国に流入したとしても、金融政策当局は貨幣供給量を増 やして、RAまで金利を下げる金融緩和政策を採用し、新た な為替平価に応じた均衡を実現させる。
変動相場制度のもとでの金融政策
変動相場制度のもとでの金融政策を考察する。
開放経済の枠組みで考えるとき、固定相場制度では通貨供給 量は、為替平価維持のために受動的に決まるため、金融政策 の政策効果は無効と結論される。
それに対して、変動相場制度では、為替平価維持という目的 はなくなるので、金融政策の余地が生じる。
変動相場制度のもとでの金融政策
まず、変動相場制度のもとでの外国為替市場の均衡条件を考 える。
1 + RJ = e2(1 + RA) e1
変動相場制度において、将来の為替レートe2は、もはや固定 された値ではなく、経済主体によって予想される値をとる。 したがって、どのような予想を設定するかで分析は異なって くる。
経済主体がどのようなよそうするかは期待形成と呼ばれ、静 的期待、適応的期待、合理的期待などが代表である。
変動相場制度のもとでの金融政策
ここでは議論を分かりやすくするために、最も単純な静的期 待を取り上げて解説する。
静的期待のもとでは為替レートは変化しないから
e1 = e2 = e# (定数)が成り立っているとすると、そのとき の外国為替の均衡条件は、
1 + RJ = e
#(1 + R A)
e# = 1 + RA となり、RJ = RAが導出される。
小国の仮定を考えると、J国にとって水平なBP線
変動相場制度のもとでの金融政策
J国の金融政策当局が貨幣供給量をMからM′へ増加させる 金融政策を採用したとしよう。
図21-5において、LM曲線は右にシフトして、新たな均衡点 における利子率はRJ > RAとなる(矢印(1))。
このため自由な資本移動が認められている限り、円が売られ ドルが購入されるため円安となり、為替レートは上昇する。 したがって、貨幣供給量の増加は期待に影響をおよぼし、為 替レートはこの後、e#からe##へ上昇した値 (e#< e##) をとる。
固定相場制度のもとでは、金融政策当局は為替平価を維持す るために貨幣供給量を減らす義務を負っていたが、変動相場
変動相場制度のもとでの金融政策
変動相場制度のもとでの金融政策
結局、上昇した為替レートに応じてIS(e#)曲線が右にシフ トし、IS(e##)となることになる(矢印(2))。
この結果、貨幣供給量の増加は、為替レートに働きかけるこ とを介して、所得Y を増加させることになる。
したがって、変動相場制度のもとでは、金融政策はマクロ経 済政策として有効であることが分かる。