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2009年度ケベックスタージュ報告 外国語教育フォーラム|外国語学部の刊行物|関西大学 外国語学部

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2009年度ケベックスタージュ報告

Rapport sur le stage québécois en 2009

太 治 和 子

Nous avons participé au stage intitulé qui s’est déroulé à l’Université de Montréal, du 27 juillet au 14 août en 2009. Nous avons suivi, le matin, le cours de didactique qui nous a permis d’aborder les théories de base et de les mettre en pratique par des activités facilement utilisables dans notre classe de français. Nous avons eu 2 travaux à remettre avant la fi n du stage, un travail individuel centré sur l’exploitation et l’application des documents authentiques et un autre, en équipe, concernant la présentation d’une activité utilisant l’approche coopérative. L’après-midi, le programme socio-culturel était prévu : des conférences à propos de l’histoire et la situation actuelle du Québec, des visites guidées, l’observation d’ateliers des étudiants qui suivaient le cours intensif d’été à l’École de français. Cet article est donc le rapport détaillé de ce stage avec des commentaires.

1 .はじめに

 2009年 7 月27日から 8 月14日まで、日本フランス語教育学会の推薦を受けて、ケベック州政 府主催フランス語教員スタージュに参加した。これは、その時の研修内容報告である。研修の 名称は、 、開催場所はモントリオール大学の l’École de langues、参加者は、日本人 3 名とカナダ人 5 名の合計 8 人(全員女性)であった。日本人研修 者は、ケベック州から、宿泊費、受講料、空港から大学までのタクシー代、300カナダドルの給 付をうけた。

 研修の行われたモントリオールへは、東京成田発のトロント経由便で入った。大阪伊丹空港 を出発したのが 7 月26日午後 2 時、現地に着いたのは現地時間で26日夜 8 時であった。時差は 13時間である。気候は日本とほとんど変わらず蒸し暑く、滞在中前半はほぼ毎日のように短時 間ではあるが雨が強く降った。 滞在先は、 大学寮 Résidences de l’Université de Montréal, Pavillon Thérèse-Casgrain で、研修の行われた建物 Pavillon Jean-Brillant まで徒歩10分の距離 であった。

 カナダの公用語は英語とフランス語であるが、ケベック州では、1974年からフランス語が公 用語である(Loi 22)。また、1977年のフランス語憲章 Charte de la langue française(Loi 101)

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では、フランス語を仕事・教育・コミュニケーション・ビジネス商取引における通常日常言語 とすることがうたわれている。滞在中のさまざまな生活場面においては英仏両語で話しかけら れることも多かったが、ケベック州ではフランス化 francisation 政策がとられている。モント リオール大学で同時期に開催されていた夏期フランス語講座も、英語を母語とするカナダ人が 主な受講者であった。今回の研修参加カナダ人 5 人のうち 4 人1)は、第 2 言語としてフランス 語を教える教員であり、そのうちの 1 名は、小学校で immersion(フランス語ですべての科目 を教える)を担当している2)。もう 1 名は、モントリオールで移民を対象にフランス語を教え ていた。これまでに参加したフランスでの研修は、「外国語としてのフランス語」FLE がテーマ であったが、今回は第 2 言語としてのフランス語を教える教員と一緒であり、様々な意見交換 を通して新たに学ぶことが多く、非常に充実した研修となった。

2 .研修プログラムと研修内容報告

 まず、全体のプログラム構成を簡単に述べる。月曜から金曜まで毎日午前中、同一講師Virginie Doubli のもと、フランス語教授法のレクチャーと実習、意見交換ワークショップがあった。 2 つの提出課題も出されたが、この点については次章で詳しく述べる。午後には、ケベックの「社 会」「言語」「文学」「映画」「シャンソン」についての講演が 5 回あった。その他に自由参加行 事として、市内観光や夏期フランス語講座授業見学、土曜日にはケベックシティバスツアーも 用意されていた。

 以下に、 3 週間の研修時間割を挙げる。

第 1 週目( 7 月27日∼ 8 月 1 日)

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日

コーディネータ

と面談 教授法8:30∼11:30 教授法8:30∼11:30 教授法8:30∼11:30 教授法8:30∼11:30 9:00∼23:00 ケベックシティ 見学

14:00∼15:30 授業(シャンソ ン)見学

(希望者)

13:30∼16:30 講演:ケベック の歴史

13:00∼14:30 授業(発音)見学

(希望者)

13:30∼16:00

美術館見学 13:00∼植物園見学

19:30∼22:00 St-Joseph 礼拝 堂見学

(希望者)

19:30∼22:00 Mt-Royal 散策

(希望者)

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第 2 週目( 8 月 3 日∼ 8 月 8 日)

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日

8:30∼11:30

教授法 教授法8:30∼11:30 教授法8:30∼11:30 教授法8:30∼11:30 教授法8:30∼11:30 13:00∼17:00 モントリオール 旧市街見学 考古学博物館見

(希望者) 13:30∼17:30

講演:ケベック 映画

13:30∼16:30

グループワーク 13:30∼16:30 講演:口語仏語 とスタンダード 仏語

13:15∼16:00

歴史博物館見学 13:30∼16:30 講演:ケベック 文学

19:00∼23:00

(希望者)映画

第 3 週目( 8 月10日∼ 8 月14日)

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日

8:30∼11:30

教授法 教授法8:30∼11:30 教授法8:30∼11:30 教授法8:30∼11:30 10:00∼11:30 教授法 14:00∼15:30

授業(インター ネットとフラン ス語)見学

(希望者)

13:15∼16:00 フランス語教育 関連書店へ

13:30∼16:30 講演:ケベック シャンソン

13:15∼16:30 Biodôme 見学

(希望者)

11:30∼ 修了証授与

19:30∼21:30 Vieux-Port 見学

(希望者)

19:00∼23:00 映画

(希望者)

18:00∼ 夕食会

 以下に、毎日の研修内容を報告する3)

7 月27日(月曜日)

午前10時頃:コーディネーターである Jean Duchesneau から説明を受ける。

午後 2 時∼ 3 時半:ケベックシャンソンワークショップ(授業)見学。ケベックで親しまれて いる歌手を映像とともに紹介される4)。これらの歌手の多くが、研修期間中に開催されていた Les Francofolies(フランス語音楽祭。 7 月30日∼ 8 月 9 日)にも出場していた。なお、ケベッ クシャンソンは http://www.postedecoute.ca で試聴できる。

夕方 7 時半∼:St-Joseph 礼拝堂見学。

7 月28日(火曜日)

8:30∼11:30:教授法(第 1 回目)。ゲームを使って講師と研修員 8 名が自己紹介5)した後、学 校責任者 Suzanne Fradette とともに軽食を取りながら歓談。そのあとまた教室に戻って、これ

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からのプログラムの説明を講師からうける。私は、発音矯正とコネクター語に関する授業を希 望する旨講師に伝えた。

午後 1:30∼ 4:30:講演「ケベックの歴史」(講演者:Stéphane Kelly)。コロンブスのアメリ カ大陸発見から今日まで、カナダおよびケベックの歴史を紹介し、そのあと、今日のケベック 社会問題を分析した。かつてのケベックの家族形態は日本と同じタイプに属し(長男が跡を継 ぎ両親と暮らす)、その家族形態が崩れた後の社会問題(少子化、晩婚化、親元からの自立の遅 れ、等)を指摘されたが、日本にも通じるところが多く、非常に興味深かった。

夕方 7 時半∼:Mt-Royal 散策。

7 月29日(水曜日)

8:30∼11:30:教授法(第 2 回目)。フランス本土におけるフランス語の歴史とケベックフラン ス語について。俗ラテン語から17世紀ヴォージュラまでのフランス語史を概説した後、実際に ケベックで話されているフランス語がいかにフランス本国フランス語と異なるかを説明された。 日本では、「外国語としての」フランス語を学ぶ場合が大半を占めることから、スタンダードな フランス語にターゲットを絞った教育が待たれるところであるが、フランス語の豊かさとその 文化背景の多様性を学ぶためにも、(街中で話される)口語フランス語や地方フランス語も折に 触れて紹介する機会を設けるべきだと思った。研修生の間で活発な議論が交わされ、カナダの 語学教育事情を詳しく知ることができた。

午後 1:00∼ 2:30:発音ワークショップ(授業)見学。フランス語の発音学習とその矯正につ いて、実際に体験することができた。フランス語の全母音子音の説明後、講師の後に次いでリ ピート練習し、問題のある生徒がいれば矯正を行った([y]は[s]や[t]とともに発音させ るなどの工夫が凝らされ、また、[r]は上を向いて発音、[φ]は上唇をかぶせるイメージで発 音するなど、必要に応じてジェスチャーも用いた)。最後に短い文章を読んだ。持ち帰ったテキ ストは、今後、自分の授業内でも使用していきたいと考えている。

7 月30日(木曜日)

8:30∼11:30:教授法(第 3 回目)。リーディングについて。テクストの大まかな理解 compréhension globale のための戦略を解説された後、実際に読解授業を体験する。まず、スト ーリーの前半を聞いて、後半を自由に創作し講師に提出する。次に、ストーリー全体を参加者 人数分に分割して自分のパートだけを読み、その後、口頭でストーリーをつなげていく。最後 に、各自が創作した後半を講師が読み上げ、再現した元のストーリーと比較した。「分割リーデ ィング」の手法は、自分のパートをしっかり理解して読んでおかないと全体の筋がそこでわか らなくなり、他のメンバーに迷惑がかかる。そういった意味で非常にモチベーションの上がる 手法であった。日本の授業でもすぐに応用可能であると思った。また、読むのに時間のかかる

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人のための参考文献Carol A. Fraser, «Lire avec facilité en langue seconde»,

61 2004, http://muse.jhu.edu/journals/canadian_modern_ language_review/v061/61.1fraser.pdf も紹介された。

午後 1:30∼ 4:00:モントリオール美術館見学。カナダの画家たち(Paul Kane, Krieghoff , Joseph Légaré, Suzor-Côté, Charles Huot, J. W. Morrice, Maurice Cullen, Le groupe des 7, James MacDonald Barnsley, Prudence Heward, Marc-Aurèle Fortin, Ozias Leduc, Alfred Pellan)の絵を見学した。個人的には、Fortin の絵が印象に残った。

7 月31日(金曜日)

8:30∼11:30:教授法(第 4 回目)。学習のための 3 つのストラテジーについて。métacognitive

(学習計画を立て、自己評価し、学習効果について反省をする)、cognitive(学習中に用いるス トラテジー)、 socio-aff ective(わからないところがあれば助けを求め、学習の際の緊張をといて リラックスする)の説明を受ける。特に、métacognitive が効果的な語学学習のために重要であ ることを知った。

午後 1:00∼ 5:00:植物園見学。園全体を見学した後、カナダ先住民族 les premières nations 庭園をガイド付きで見た。ガイドは先住民族の後継者のひとりであり、彼らが代々大切に用い てきた薬用植物の効用や見分け方の説明を聞いた。また、住居や船なども見学した。自らの文 化を誇りに思い、その文化を伝えることを使命とするガイドの姿勢に深い感銘を受けた。

8 月 1 日(土曜日) ケベックシティ見学。

8 時50分に寮の前に集合。フランス語夏期講座受講中の学生たちといっしょに 3 台のバスに分 乗しケベックシティに向かう。天気は快晴。12時過ぎに Lévis 到着、渡し船でケベックシティ に入る。公園で昼食を取った後、テラス・デュフラン、シャトー・フロントナック、要塞、州 議事堂を訪問。そのあとは自由見学となった。夕方 8 時に現地を出発、寮に戻ったのは11時過 ぎであった。

8 月 3 日(月曜日)

8:30∼11:30:教授法(第 5 回目)。協同学習 apprentissage coopératif について。語学の授業 にグループ活動を導入することの利点はこれまで何度も取り上げられてきたが、それでは、以 下のような問題が起きた際にはどうしたらよいか。その解決方法をめぐって討論した。

1 .早く作業を終えたグループ。 2 .あまり熱心に参加しない学生。

3 .グループの中での感情的なもつれや人間関係上のトラブル。

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4 .他の学生の発言を遮る学生。

 総じて、評価のありかたと教員の授業準備の重要性を指摘する意見が多数あった。例えば、 各学生に具体的な役割を与え(書記、発表係、資料集め係等)、評価を班単位とすることなどで ある。また、「ジグソー学習」についても講師から紹介があった6)

午後 1:30∼ 5:30:講演「ケベック映画」(講演者:Emmanuel Poisson)。ケベック映画の歴 史と現状を学んだ。数々の映画の名場面を実際に見ることができ、有意義だった。ただし、特 殊な言い回しや語彙、発音のせいで、字幕なしで内容を理解するのは難しいと感じた。

8 月 4 日(火曜日)

8:30∼11:30:教授法(第 6 回目)。語彙学習について。ケベックの特殊な語彙や表現を学ん だ。その後、グループ課題(模擬授業)についての説明があった。

午後 1:30∼ 4:30:グループワーク。模擬授業のための準備。

8 月 5 日(水曜日)

8:30∼11:30:教授法(第 7 回目)。評価について。学習者の現状レベルや問題点を知るための 評価 diagnostique、学習をさらにすすめるための評価 formative、そして学習目標が到達された かどうかを最終的に知るための評価 sommative について、講義を受けた。また、フランスでは

「改善すべき点」を強調するのに対して、カナダでは、「到達できた点」を強調する評価が一般 的で、評価に関しても文化的差異が存在することがわかり興味深かった。

午後 1:30∼ 4:30:講演「口語フランス語とスタンダードフランス語」(講演者:Claude Timmons)。ケベックのフランス語の特徴を紹介するとともに、フランス本土でのフランス語 の歴史にも触れ、口語には、「スタンダードな」言語と「スタンダードでない」言語の区別はそ もそも存在しないことを力説された。

8 月 6 日(木曜日)

8:30∼11:30:教授法(第 8 回目)。文と文を結ぶコネクターについて。論理的にテクストを書 くために必要不可欠な語彙を学び、実際に練習問題を解いた。短い文章を読み、その中にある コネクター語の役割を分析したうえで、他の語に置き換えるというものであった。筋道を立て て話を構成するために、この練習問題は非常に役立つと思う。自分の担当クラス内でも今後使 用していきたいと思った。

午後 1 時15分∼ 4 時:歴史博物館(元監獄)見学。19世紀初めの英国軍に対する「愛国者」た ちの歴史を学んだ。実際の牢獄も一部残っており、ガイドとともに見学した。

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8 月 7 日(金曜日)

8:30∼11:30:教授法(第 9 回目)。ヒヤリングについて。「大まかな理解を目指して聞く」、「詳 細を聞く」、「言外の意味をくみとる」の 3 つのヒヤリングについて説明をうけた。その後、実 際にケベックフランス語聞き取り授業を受けた。聞き取り練習問題に入る前にキーワードを黒 板に板書し、「誰が話しているのか」、「職業は何か」、「年齢はいくつか」などの諸情報を与える ことがいかにその後の内容理解を助けるか、また、具体的に何を聞きとらなければならないの か、その情報を使って何をするのかを明確にすることがいかに重要であるかを実際に体験する ことができた。内容を聞き取れたかどうかの評価は多くの場合、「書く行為や話す行為」でなさ れることが多いが、正確に聞きとれていても、それを言葉で再現することの方にむしろ問題が あることが多いので、絵や動作を使って評価するなど、評価方法に工夫が必要なことも学んだ。 午後 1:30∼ 4:30:講演「ケベック文学について」(講演者:Marc Rochette)。前半は、今日 のケベック文学作品の紹介7)。後半は、文学史やケベック文学全般の特徴の説明があった。

8 月 8 ∼ 9 日(土・日曜日)

ケベックシティ見学。ケベックシティで、「ヌーベルフランスフェスティバル」が行われていた ので、予定プログラム(モントリオール旧市街見学)を欠席して、ケベックシティをもう一度 訪れた。かつてのケベック文化を実際に体験することができ貴重な週末であった。

8 月10日(月曜日)

8:30∼11:30:教授法(第10回目)。発音について。音声学の基本と発音記号の説明があった。 後半は課題(模擬授業)準備のため、ラボに移った。

午後 2:00∼ 3:30:インターネットを使ってフランス語を学ぶワークショップ(授業)見学。 出席学生がいなかったため、いくつかのサイトを紹介された。

8 月11日(火曜日)

8:30∼11:30:教授法(第11回目)。発音矯正について。個人的には一番興味をもった授業であ った。発音矯正の手順は以下の通り。

1 .問題のある音を調べる。日本人学習者であれば、たとえば[r]。

2 .[r]がききとれるかどうかを調べる。たとえば、[l]と区別できるかどうか。語群や文 を聞かせて何度[r]が聞こえたかを尋ねる。

3 .矯正。次のような方法を紹介された。  −口の形や舌の位置などを見せて発音させる。  −発音の仕方を説明する。

 −違う音と対比させて(たとえば、[l]と[r])発音させる。

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 −ネイティブの発音を聞かせてリピート練習。

 −ジェスチャーを使ったり、発音しやすい子音母音の組み合わせで練習させたり([ra]は

[ry]よりも発音が容易である)、発音を容易にするイントネーションを用いたり([i]は 上を向いて上昇イントネーションで発音するとよい)、[ɛ][e][i]を順に発音させて[ɛ]

[e]の二つの音をマスターさせたりするなどの方法を学んだ。 4 .音とつづりと意味をセットにして反復練習。例:lit「ベッド」/riz「米」

5 .文単位で、イントネーションやリズムにも注意しながら発音練習をする。短い文章を生徒 に作らせても良い。

6 .最初の聞き取りに戻り、習熟度を調べる。

 豊富な練習問題にアクセスできるサイト http://phonetique.free.fr/ も紹介された。

午後 1:15∼ 4:00:フランス語教育関連書店へ。授業で用いるテキストや教授法の参考書など を購入した。

8 月12日(水曜日)

8:30∼11:30:教授法(第12回目)。 2 つのグループ課題発表(模擬授業)。 1 番目のグループ は、「レストランで注文する」(対象学習者は高校生)がテーマであり、 2 番目のグループは、

「電話でピザを注文する」(対象学習者は小学生)がテーマであった。

午後 1:30∼ 4:30:講演「ケベックシャンソン」(講演者:Frédéric Fortin)。ケベックシャン ソンの歴史を映像と音と共に紹介された。また、シャンソンを教材として使用する際に役立つ サイト http://www.francparler.org/dossiers/chanson.htm も紹介された。

8 月13日(木曜日)

8:30∼11:30:教授法(第13回目)。前半:グループ課題発表(模擬授業)。後半:言語と文化 について。私は 1 番目のグループとして、immersion クラスを担当している女性と一緒に発表 した。教材として使用したのは観光ポスター、対象学習者はフランス語を習い始めたばかりの 大人とした。詳しくは、次章で述べるが、ポスターの写真を出発点として様々な授業活動を展 開できたことと、グループ活動のためのストラテジーが効果的に用いられていたことが高く評 価された。

 もう一つのグループ発表は、広告分析(対象は高校生)であった。

 そのあとで、ビデオ( )を見た。異文化に対するステレオタイプな偏見がテーマ で、言語を学ぶことは、相手の文化を尊重し同時に自己の文化を大切にする姿勢を学ぶことだ と思った。異文化間コミュニケーションのためのマニュアルとして、以下のサイト http://www. ecml.at/documents/pub123aF2005_HuberKriegler.pdf を紹介され、帰国後読んだが非常に面白 く、今後、自分の担当クラスでも一部使用したいと検討中である。

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夕方 6 時∼:夕食会。日本人研修生は、ケベック州政府関係者、モントリオール大学関係者、 在ケベック州日本領事館関係者とともに、夕食会に招かれた。

8 月14日(金曜日)

10:00∼11:30:教授法(第14回目)。動機付けについて、講師や研修生の間で活発な意見交換が あった。最後を締めくくるにふさわしいテーマであった。

11:30∼:修了証授与。

3 .課題について

  2 .でも触れたが、 3 週間の研修中に、 2 つの課題が出された。ひとつは、「身近な本物の教 材を用いた授業内容計画書(教案)」を電子データとして提出すること、もうひとつは、研修生 2 名ずつで模擬授業をおこなうことであった。今回の研修の総決算でもあるのでここで詳しく 報告したい。

 個人課題は、texte authentique(モントリオール滞在中に実際に出会うものを教材とする)を 用いて教案を作ることであった。私は学生証取得のための説明プリントを取り上げた。学習目 標は、テクスト内容理解と、疑問形容詞・疑問副詞の習得とした。学生証を発行してもらうた めには、「いつ?」「どこへ?」「なにを持って?」行かなければならないかを辞書を使わずに読 みとってもらい、その後、学生証を使って何ができるかを挙げてもらった。折に触れて文化の 違いも紹介する(モントリオール大学の学生証は現金チャージ可能で、様々なキャンパス内で の支払いもできる、等)。プリントに出てくる時間表現を利用して、時間・曜日・月・季節の語 彙復習も行う。次に、疑問詞を探してもらい、教員がそれを黒板に書き出して用法説明を行う。

「自己紹介」をめぐる疑問詞を使った応答練習でまとめの文法学習をした後、「人物当てゲーム」 で知識を定着させるところまでの90分の授業案を作成した。講師から、「授業・前(導入)」「授 業・中」「授業・後(評価も含めてのまとめ)」の構成に関して指導を受け、特に導入部分の改 善を求められた。授業の初めに、これから学ぶ項目の提示と目標設定を明確にしておかなけれ ば、学習効果やモチベーションが上がらないことを学んだ。進度ばかりに気を取られ、授業開 始後すぐに本題に入っていたが、これからは、導入部分(前回までの復習と今回新たに学ぶ内 容の大まかな提示、具体的な目標設定)にも時間を割き全体の構成を考えながら授業を組み立 てていきたいと思った。「授業・後」の知識を定着させる班単位のゲームについては、高い評価 をもらった。

 次に、ペアーになっての課題(模擬授業)について報告する。texte authentique を出発点と して班活動を中心とした協同学習授業を組み立てなければならない。対象はフランス語学習を 始めたばかりの大人とし、授業目標はこれまで習ったフランス語の知識をもとに簡単なフラン

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ス語テクストを書くこととした。題材はポスターの写真(森と湖の前に立つ男性と子供が描か れている)とした。60分授業の構成は次のとおりである。

導入

ステップ 1 (語彙復習)― 生徒が身につけている服をフランス語で述べてもらい、教師が黒板 の左に不定冠詞をつけて板書する。次に、ポスターを見せて、この中で使われている色を挙 げてもらい黒板の右に板書する。

ステップ 2 (形容詞の性数一致の確認)― 服の名詞(黒板の左に列挙)と色の形容詞(同じく 黒板の右に列挙)を生徒に組み合わせてもらい、線でつなぎながら、色の形容詞の性数変化 確認。例:「茶色のスカート」une jupe brune

ステップ 3 (語彙復習)― ポスターに戻る。写真の人物が誰であるかを想像してもらい、「父 と娘」le père et la fi lle などのように家族に関する語を板書。

ステップ 4 (動詞の 3 人称複数現在形の導入)― ポスターを見ながら、「彼らは何をしている か?」を考えてもらう。教師が板書していく( 3 人称複数現在形の発音されない語尾 -ent の 綴りの確認)。

ステップ 5 (テクストを作成するのに必要な語の導入)― ポスターの風景に関する語を生徒た ちに挙げてもらい、教師が冠詞とともに板書していく。例:「湖」le lac

中心授業活動:ここから、班単位でのグループ協同学習に入る。模擬授業では、研修員 6 名を 学習者と想定した。

ステップ 6 (班分け)― 班分けは、「偶然」による方法を採用した。各生徒に様々な単語が書 かれた紙片を配り、「色」、「服」のテーマ別に 2 つのグループに分かれてもらった(rouge と 書かれた紙をもらった生徒は「色」のグループに入る)。語彙の復習も兼ねる。

ステップ 7 (役割の割り当て)― この時点で、グループ一人一人に役割を割り振る。グループ 学習を円滑に行うためには、全員に何らかの具体的な役割を与えることが必要だと考えたか らである。今回の発表は、 3 名からなる 2 グループを想定したので、用意した役割は、「筆記 係」secrétaire「発表係」porte-parole「まとめ役」animateur の 3 つである8)。役割ごとに「し なければならない仕事」と「その仕事を遂行する際に役立つフランス語表現」を簡単にまと めたプリントを配った。

ステップ 8 ― ここではじめて課題を与える。教師がポスターの横に「父と娘は緑色の湖を見 ています…」Le père et la fi lle regardent le lac vert... と板書し、そのあとを続けて書いて もらう。これまでに学んだ語を組み合わせて、ポスターから浮かぶイメージをもとに簡単な ストーリーを班ごとに作成してもらった。

ステップ 9 ― 各班の「発表係」に作成したテクストを読みあげてもらった。 授業のしめくくり

ステップ10(自己評価)― 作成したテクストは、教師が回収する。グループ活動について反省

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してもらうために、自己評価用紙を配った。自分の担当した係を書いた上で、   与えられた役割をフランス語を使って果たしたか。

  他のメンバーの意見を尊重して聞くことができたか。   自分の意見をみんなに伝えたか。

  新しい事柄を学んだか。

について、 3 段階評価(「良い」「普通」「さらに努力の必要あり」)してもらった。

 講師をはじめ、研修参加者全員から高い評価を受けたのは、一つの題材(ポスター)を出発 点として多彩な授業活動を展開できたこと、フランス語を書く際にしばしば学習者が抱える問 題点、すなわち、形容詞性数変化と動詞の 3 人称複数現在形を効果的に学べたこと、グループ 活動をスムーズにするための様々なストラテジーが効果的に用いられていたこと(班分けの方 法。一人一人に役割を割り振ったこと。その役割を果たすために具体的に何をしなければなら ないか、どんなフランス語表現を用いたらよいかを示したこと。最後に自己評価を設けること でグループワークのフィードバックができたこと)であった。

  3 週間の研修期間内に 2 つの課題を提出することは、時間的に非常に厳しかった。しかし、 教員としてさらに成長し多くを学ぶための良い機会となった。特に、立場の異なる研修員と組 んで行った模擬授業では、これまでには気づかなかった授業方法の発見も数々あり、とても有 意義であった。

4 .研修をふりかえって

 今回の研修で最も良かった点は、教授法の全貌を短期間で学べたことである。学習ストラテ ジー、評価、協同学習、プロジェクトに基づいた学習、リーディング、ヒヤリング、語彙、文 法、発音、文化といったテーマ別に資料があらかじめ用意されており、資料を読んでから午前 の授業に参加することで、教員としての理論地盤が強固になったと思う。毎回の研修内容は研 修員の希望によって柔軟に変更も加えられ、また、興味のある分野については研修後も独自に 学習が続けられるよう、サイトや参考文献も豊富に紹介された。

 特に、発音矯正に関する授業は実り多いものであった。授業前に、夏期講習の発音クラスを 見学しており、その場で実際に経験したことを再度理論化することができた。具体例をあげれ ば、[r]の発音である。私は、授業見学の立場であったが、学生と同立場で[r]の発音矯正を 受けた。唇や舌の位置に関する絵を見せられ、発音の仕方を細かく説明され、ネイティブ講師 を見本にリピート練習、次いで、上を向いて発音させられたり、[ra]の音から始まり、一番困 難だと感じる[ry]まで、順を追って発音練習。最後に、[r]の音が繰り返し出てくる文章を いくつか朗読した。これは、実はすべて発音矯正理論にのっとった効果的な矯正方法であるこ とを、教授法のクラス( 8 月11日の研修報告を参照されたい)の中で知った。今後、自分の担

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当クラスでも積極的に取り入れ、研修の成果を学生たちに還元していきたいと思っている。   5 名の講演担当者からも、ケベック文化全般にわたる多くの情報が与えられた。参考文献や サイトの紹介、詳細な講演内容のプリント配布、本や CD も配られ、研修終了後もメールの形 でサポートが続いている。講師の方々のケベックフランス語やケベック文化に対する熱い思い が伝わってくる。

 また、はじめに触れたが、今回の研修は、 5 名のカナダ人と一緒であった。彼女たちは、第 2 言語としてのフランス語を教える立場にあり(英語教員 1 名をのぞくが)、日本人教員とは異 なる。ケベックではフランス語は身近な言語であるが、日本では、実際に使う場面が限られる ため、コミュニケーションの道具としてのフランス語習得に困難をかかえる。一方、第 2 言語 としてフランス語を教える彼女たちの問題はむしろ、文法やライティングにある。彼女たちと 3 週間の研修をともにすることで、日本におけるフランス語教育を見直し、「それでは、日本で は具体的に何ができるか」「何を目指すべきか」と自分に問いかけるきっかけとなった。外国語 としてフランス語を学ぶ日本学生と、第 2 言語としてフランス語を学ぶカナダ学生の間で交流 を始めようとの提案も研修生から出されている。また、以前から興味を持っていた immersion の体験談も聞くことができ、カナダの生活や文化を直接知ることもできた。非常に幸運であっ たと思う。今後も、彼女たちとネットワークを保ち続け、さらに教員として研鑽を積んでいき たいと思う。

1 ) 1 名は、英語の immersion 担当者であった。

2 ) 彼女は、アルバータ州に住んでおり、 2 人の娘もまたフランス語の immersion クラスに通い、家 での使用言語もフランス語である。彼女自身の母語は英語である。

3 ) 自由参加行事のいくつかは欠席した。筆者の参加したプログラムのみを述べる。 4 ) 映像とともに紹介された歌手は、次の通り。

ネオ・トラディショネル(Neo-Trad):Les Cowboys Fringants, Mes Aïeux 女性アーティスト:Ariane Moff att, Stephanie Lapointe, Cœur de pirate 男性アーティスト:Jean Leloup / Jean Leclerc, Pierre Lapointe ヒップポップ:Loco Locass

ロック/ポップグループ:Malajube, Alfa Rococo クラシック:Félix Leclerc

5 ) 各自、自己プロフィールのキーワードのみを紙に書いて講師に提出し、講師はそれを黒板に書き出 していく。他の研修生とともにその人物のプロフィールをキーワードから想像して当てるというゲー ム。このゲームのおかげで、お互いすぐに打ち解けた。

6 ) 例を挙げて説明する。「フランス語史」のテーマでクラス全体を 4 班に分け、A グループは「16世 紀フランス語」、B グループは「17世紀フランス語」、C グループは「18世紀フランス語」、D グルー プは「19世紀以降のフランス語」を資料とともに学習する。その後、各班構成員 1 名ずつから成る新 たな班を再度作る。各メンバーは、元の班で学習したことを他のメンバーに伝える。最後に、クラス 全体で「フランス語史(16世紀∼今日まで)」全範囲のテストをし、評価する。

(13)

7 ) 紹介された作家は、次の通り。

Louis Hamelin, Pierre Yergeau, David Homel, Aude, Jacques Ferron, Gilles Pellerin, Andrée A. Michaud, Pierre Perrault, Joseph-Charles Taché, Paul Chanel Malenfant

8 ) 班の構成人数によっては、その他に、「(与えられた時間内に活動を終了するための)時間管理係」 や「(綴りの確認などの)辞書検索係」、「班メンバー全員がフランス語を使うように促す係」などが 想定できる。

参照

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