経済学基礎
-第5回 企業行動の理論-
菅 史彦
内閣府 経済社会総合研究所
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 1 / 41
ある財の価格と数量が市場においてどのように決定されるのかを 考えるために、1つの財の市場を考える。
消費者・生産者は価格受容者(プライステイカー) 右下がりの市場需要曲線
右上がりの市場供給曲線
需要曲線と供給曲線の交点(=均衡)で価格と生産・消費量 が決まる。
さらに余剰分析などを通じて、政策が与える影響を分析すること ができる。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 2 / 41
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復習2:消費者理論
競争市場のモデルでは、需要曲線は所与として扱われていた。
→ 財の価格や所得が与えられた時、どのようにして消費を決 定するのかという問題は捨象されていた。
制度・政策をデザインすることを考えると、制約条件のもと での消費者の意思決定の問題をモデルに組み込む必要がある。 所得・価格が与えられたもとでの消費に関する意思決定の問 題を制約条件付き最適化問題としてきちんと定式化する。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 3 / 41
競争市場のモデルでは、供給曲線も所与として扱われていた。
→財の価格や賃金が与えられた時、どのようにして生産量を 決定するのかという問題は捨象されていた。
制度・政策をデザインすることを考えると、制約条件のもと での生産者の意思決定の問題をモデルに組み込む必要がある。 与えられた価格のもとで、利潤を最大化するために、企業が 生産への投入物と生産量を決定するプロセスをモデル化する。 まずは生産要素が一財のケースで考え、二財のケースに拡張 する。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 4 / 41
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生産関数
生産関数f(.)は、資源(L)の投入と生産物 y の産出の関係を表す。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 5 / 41
ここでは生産関数は増加関数で強凹 (Strictly Concave) 関数と する。
これは、限界生産性が逓減するということ。 例えば、
労働以外の生産要素(機械)があり、短期的には機械の数を増 やせない。
労働者を増やすと労働者に機械が行き渡らない。 追加で雇った一人あたりの生産能力が減ってゆく という状況を想定している。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 6 / 41
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利潤最大化
消費者の問題を効用最大化問題として定式化したのと同じよ うに、企業の問題を利潤最大化問題として定式化する。 消費者の場合と同様に、企業は価格受容者(プライステイ カー)であると仮定する。
財の価格を p、投入される生産要素(労働)の価格を w と する。
利潤は、
π ≡ pf(L) − wL と書ける。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 7 / 41
生産者の問題は、以下のように定式化される: maxL ≡ pf (L ) − wL
限界生産性が逓減してゆくのであれば、最適解 L∗が存在し、 pf′(L∗) = w
が成立する。
これは、もう一人雇うことによって得られる追加的な収入 pf′(L)=限界収入 (Marginal Revenue)が、もう一人雇うこと の追加的なコスト w=限界費用 (Marginal Cost)に等しくなる ところまで L を増やすということ。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 8 / 41
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生産関数と費用関数
生産関数から費用関数を導出する:
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生産関数から費用関数を導出する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 9 / 41
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生産関数と費用関数
生産関数から費用関数を導出する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 9 / 41
生産関数から費用関数を導出する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 9 / 41
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生産関数と費用関数
生産関数から費用関数を導出する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 9 / 41
生産関数から費用関数を導出する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 9 / 41
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生産関数と費用関数
生産関数から費用関数を導出する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 9 / 41
生産関数から費用関数を導出する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 9 / 41
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平均費用と限界費用
製品一単位あたりの生産コスト C(y)/y が平均費用:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 10 / 41
製品一単位あたりの生産コスト C(y)/y が平均費用:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 10 / 41
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平均費用と限界費用
もう一単位生産するのにかかる追加的なコスト C′(y)が限界費用:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 11 / 41
もう一単位生産するのにかかる追加的なコスト C′(y)が限界費用:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 11 / 41
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平均費用と限界費用
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 12 / 41
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 12 / 41
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平均費用と限界費用
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 12 / 41
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 12 / 41
前回までの復習
平均費用と限界費用
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 12 / 41
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 12 / 41
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平均費用と限界費用
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 12 / 41
費用関数を用いると、利潤は π = py − C(y) で与えられる。 すなわち、利潤最大化の条件は、p = C′(y)。
この条件は、価格 p と、そのもとで最適な生産量 y の関係を 記述するので、縦軸のラベルを p にすれば、限界費用関数は 個別供給曲線と見なすことができそう。
ちなみに π = 0 とおくと、p = C(y)/y となるので、限界費用 曲線と平均費用曲線が交わるところで利潤が Oとなる。 その点を損益分岐点 (Break Even Point)と呼ぶ。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 13 / 41
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供給曲線の導出
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 14 / 41
損益分岐点より下は供給曲線に含まれるのか?
固定費用 F は、生産量を 0 としても回収不能なコスト(=サ ンクコスト)と仮定。
生産しなければ 0 だが、1単位でも生産するとかかるコスト F˜を新たに導入する。
すなわち、C(y) = wL(y) + ˜F1[y > 0] + F とする。
前半 wL(y) + ˜F1[y > 0] を可変費用 (Variable Cost) と呼び、 VCで表す。
VCを y を割ったものを平均可変費用 AVC と呼ぶ。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 15 / 41
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供給曲線の導出
利潤は π = py − VC − F で与えられる。
Fは生産をやめても回収不能なので、py − VC > 0 である限 り、利潤がマイナスでも生産する。
すなわち、
p > AVC である限り、生産は行われる。
限界費用曲線(≈ 供給曲線)は平均可変費用の底を通るので、 そこが操業停止点 (Shutdown Point)。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 16 / 41
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 17 / 41
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供給曲線の導出
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 17 / 41
長期では、労働以外の要素も調整できるかもしれない。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 18 / 41
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長期と短期の総費用
長期では、労働以外の要素も調整できるかもしれない。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 18 / 41
長期では、労働以外の要素も調整できるかもしれない。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 18 / 41
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長期と短期の総費用
長期では、労働以外の要素も調整できるかもしれない。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 18 / 41
長期では、労働以外の要素も調整できるかもしれない。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 18 / 41
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長期と短期の総費用
長期では、労働以外の要素も調整できるかもしれない。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 18 / 41
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 19 / 41
前回までの復習
長期と短期の平均費用
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 19 / 41
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 19 / 41
前回までの復習
長期と短期の平均費用
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 19 / 41
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 20 / 41
前回までの復習
長期と短期の平均・限界費用
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 20 / 41
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 20 / 41
前回までの復習
長期と短期の平均・限界費用
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 20 / 41
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 20 / 41
前回までの復習
長期と短期の平均・限界費用
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 20 / 41
労働 L に加え、新たに資本 K を生産要素として考える。 生産関数は f(L, K) で与えられる。
生産関数は基本的には凹関数と仮定する。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 21 / 41
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生産要素が2つの生産可能性集合
図で見ると…
出典:神取道宏『ミクロ経済学の力』
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 22 / 41
生産要素の投入量 (L, K) を α > 1 倍したとき、生産量 y が k 倍に なるとする。このとき、
k < α倍なら収穫逓減 k = α倍なら収穫一定 k > α倍なら収穫逓増
一般的には収穫逓減の生産関数を考える。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 23 / 41
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等量線の導入
生産可能性集合から等量線を導出する。
出典:神取道宏『ミクロ経済学の力』
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 24 / 41
等量線は原点に向かって凸になっている場合が多そう。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 25 / 41
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限界代替率
等量線の傾きは、労働を一単位増やすことでいくら資本を節 約できるかを表す。
y= f (L, K )を全微分して、
dy = fLdL + fKdK
等量線上では生産量が一定なので、dy = 0 とおくと、 dK
dL = − fL
fK
左辺は等量線の傾きで、fL/fKを(技術的)限界代替率 (Marginal Rate of Substitution)と呼ぶ。
原点に向かって凸な等量線は、限界代替率逓減の法則を表す。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 26 / 41
図で見ると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 27 / 41
前回までの復習
限界代替率
図で見ると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 27 / 41
図で見ると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 27 / 41
前回までの復習
限界代替率
図で見ると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 27 / 41
等量線の凸性は生産関数の凹性と対応している。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 28 / 41
前回までの復習
限界代替率逓減の法則
等量線の凸性は生産関数の凹性と対応している。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 28 / 41
等量線の凸性は生産関数の凹性と対応している。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 28 / 41
前回までの復習
限界代替率逓減の法則
等量線の凸性は生産関数の凹性と対応している。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 28 / 41
生産要素間の代替関係を詳しく見るため、代替の弾力性 σを 以下のように定義する:
σ= d
K L/
K L
dffL
K/
fL
fK
すなわち σ は、等量線の傾き (MRS) が1%変化した時、生産 に投入された投入物の比率 (K/L) が何%変化したかを表す。 代替の弾力性は、
σ = d
K L/
K L
dffL
K/
fL
fK
= d log(K /L) d log(MRS) で計算できる。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 29 / 41
前回までの復習
代替の弾力性
図で見ると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 30 / 41
以下のような生産関数をコブ・ダグラス型生産関数と呼ぶ: y = f (L, K ) = ALαKβ
コブ・ダグラス型生産関数は α + β 同次関数。 MRSは、
MRS = A αL
α−1Kβ
A βLαKβ−1 = α β
K L log(K /L) = log(MRS) − log(α/β) なので、σ = 1
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 31 / 41
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例題2:CES 型生産関数
以下のような生産関数を CES 型生産関数と呼ぶ: y = f (L, K ) = a [γL−ρ+ (1 − γ)K−ρ]−ν/ρ CES関数は ν 同次関数。
MRSは、
MRS = fL fK
= γ 1 − γ
( L K
)−ρ−1
log(KL) = 1+ρ1 log(MRS) − 1+ρ1 log( γ
1−γ) なので σ = 1 1+ρ
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 32 / 41
CES関数の ρ を 0 に収束させたのがコブ・ダグラス。 CES関数の対数を取ると、
logy = log a − ν
ρlog[γL
−ρ+ (1 − γ)K−ρ]
右辺について ρ → 0 を考える。ロピタルの定理を使えば、 loga+ νγ log(L) + ν(1 − γ) log(K ) = aLαKβ が得られる。ただし α ≡ νγ、β ≡ ν(1 − γ)。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 33 / 41
前回までの復習
等費用線
同じ生産量を生み出す L と K の組み合わせをプロットしたの が等量線。
同じ費用を生じさせる L と K の組み合わせをプロットしたの が等費用線。
生産に必要なのが L と K だけなら、費用 C は、 C = wL + rK
で与えられる。
ある C についてこれを満たす L と K の組み合わせを描いたも のが等費用線。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 34 / 41
図で見ると…
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 35 / 41
前回までの復習
利潤最大化
ある費用水準 C のもとで利潤最大化する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 36 / 41
ある費用水準 C のもとで利潤最大化する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 36 / 41
前回までの復習
費用最小化
あるいは、ある生産量 y のもとで費用最小化する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 37 / 41
あるいは、ある生産量 y のもとで費用最小化する:
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 37 / 41
前回までの復習
利潤最大化
ある費用水準 C のもとで利潤最大化するにしても、ある生産 量 y のもとで費用最小化するにしても、等量線と等費用線が 接する L と K の組み合わせで生産が行われる。
すなわち、生産者が最適化しているならば、 fL
fK
= w r が成立している。
これは
fL
w = fK
r
とも書ける。すなわち、労働者に支払われた最後の1円と、 機械に支払われたレンタル料の最後の1円が生み出す生産量 が等しいということ。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 38 / 41
これは、生産者の問題を普通に解いても得られる。 生産者の問題は以下で与えられる:
max
L ,K pf(L, K ) − wL − rK 一階の条件は、
pfL − w = 0 pfK− r = 0
両式を p について解いて組み合わせれば、以下を得る: fL
fK
= w r
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 39 / 41
前回までの復習
利潤最大化の条件が意味するもの
要素価格の比率(w/r)は、限界生産性の比率(fL/fK)に等し いということ。
資本(機械)がたくさんあって、その割に労働者が少ないよ うな国(先進国)では、fKが小さく、fLは大きくなるので、 w/rは大きくなる。
逆に、人はたくさんいるが、その割に資本(機械)が少ない ような国(途上国)では、fK が大きく、fL は小さくなるので、 w/rは小さくなる。
これは現実に傾向として観察される。
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 40 / 41
図で見ると…
出典:神取道宏『ミクロ経済学の力』
菅 史彦 (ESRI) 経済学基礎 41 / 41