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仁上幸治 2010 04 薬学図書館55 2 グッズ

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第 11回図書館 合展

笑顔を生み出す“魔法”の戦略ツール

―図書館グッズの研究・開発・普及活動―

仁 上 幸 治 ,中 島 玲 子 ,石 川 敬

[抄録] 図書館サービス計画研究所(図サ研)および,図サ研有志による図書館サービス・ツ ール研究会(LiGLAB:TLA助成金研究)は,グッズの国内外の動向,文献,作成方法に関 する調査研究を行った。その結果,図書館の広報,利用者教育,展示などを次のレベルへ引き 上げる取り組みの起点としてグッズを活用するという戦略の可能性を見出した。また,図書館 合展(2009)では図書館グッズのフォーラムを主催し,満席の盛況で参加者から高評価を得 た。これらの成果をふまえて,本稿では,1)マーケティングの強化,2)多品目展開,3)メ ッセージの再吟味,4)高認知度キャラクターの起用,5)イベント連動性の強化,6)パブリ シティの強化,の 6つの目標を提起した。

[キーワード] 図書館グッズ,キャラクター,広報戦略,PR,パブリック・リレーションズ, パブリシティ

1. は じ め に

図書館グッズには,図書館員が えている以上 の大きな効果がある。予算しだいで外注でも手作 りでも,国内外の良い事例(図書館にかぎらず) を参 にして作れそうな一品をとりあえず作って みれば,その効果がわかる。グッズを作り出すま での過程で図書館員の笑顔が増え,そのグッズを 受け取った利用者が笑顔になり,渡した図書館員 もうれしくなって,より高品質なグッズを作りた くなる。「笑顔の連鎖反応」とでもいうべき効果 である。その結果,図書館内の人間関係も明るく なり,業務全般の改善への積極的な 囲気が生ま れているという多くの報告を読めば,グッズを起 点にして広報,利用者教育,展示など次のサービ

ス改善への展開を図るという戦略的な取り組みが 成立すると えられる。

本稿では,他のツールと比べて「魔法」ともい うべき圧倒的な威力を秘めているグッズについ て,マーケティングの視点から,現状,最近の取 り組み成果,今後の課題を提示する。

2. 図書館サービス計画研究所の活動

図書館サービス計画研究所(略称「図サ研」) は,ホ ー ム ペ ー ジ と メ ー リ ン グ リ ス ト(以 下 ML)だけのバーチャル研究所である。もともと は,大学図書館研究集会(2001年)で仁上(当 時早稲田大学図書館)が,「そのまま える各種 実用ツール・教材・帳票類の 開共同利用を」と いうアイディアを提案したのがきっかけであっ た 。2006年に仁上がホームページに設立趣意書 を 開し ,「図書館利用教育 委 員 会 通 信」(63 号)に ML会員募集の記事を掲載した 。

目的とモットーは以下のとおりであった。「図 書館内外に蓄積された知識と技能,知恵と意欲, 技術と経験,等々をかき集めては,整理し,教訓 化・ツール化し,共有化・共同利用化していく

『万能道具箱』プロジェクトを中心に,あってほ 94

勤講師

〒 108-8345東京都港区三田 2-15-45 Takashi I

Koji NIKAMI

帝京大学 合教育センター

〒 192-0395八王子市大塚 359 Reiko NAKAJIMA

慶應義塾大学文学部非常

室兼図書館

〒 163-8677東京都新宿区西新宿 1-24-2 薬学図書館 55

SHIKAWA 工学院大学 合企画

,94-101,20

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しいのに今までなかった『図書館界の知恵袋』を 目指す。気軽・手軽・身軽の 3軽。職場や組織の しがらみなしの自由参加。義務感無用の快感重 視。興味本位の自由発想,思いつき重視。実用本 位の 利さ重視。失敗リスク回避型消極思 より ネック突破型お試し挑戦思 。ツールやグッズの 研究開発普及事業,現職者の研修事業,司書課程 の活性化などに興味のある関係者も無関係者もと にかく今すぐお申込を!」

仁上の講演・ワークショップでも会員を募集し 続けた結果,会員数は着々と増加して現在 560人 を超えている 。名称は,私立大学図書館協会東 地区部会研究部企画広報研究 科会(以下, 科 会とする)の 1986年以降の研究テーマ「図書館 サービス計画」に由来している 。

3. 図書館サービス・ツール研究会の活動 3.1. 設立の目的と背景

図サ研の ML上で主宰者側から投げかけた投 稿テーマとしては,例題バンク,「超」票研究会,

「用語」見直し隊,ここが変だよ○図協!,『図書 館雑誌』誌面魅力アップ作戦,専門性,図書館員 イメージなどがあった。大学を中心に学 ,専 門, 共,国会図書館の図書館員や,大学・研究 機関の教職員,専任・委託・派遣のスタッフ,仁 上の授業の修了生,友人知人,そのまた友達へと 輪が広がり,会員有志は,全国各地で広報や利用 者教育関連テーマのセミナーや自主オフ会を開催 し会員間の 流を深めるようになった。

図 書 館 サ ー ビ ス・ツ ー ル 研 究 会(Library Goods Laboratory:以 下,LiGLAB[リ グ ラ ブ])は,図書館の広報と利用サービス支援に効 果的な手段としての図書館グッズの現況を調査 し,新しい製品の企画・開発・制作を目的とし て,図 サ 研 か ら ス ピ ン オ フ す る 形 で 設 立 さ れ た 。設立の背景には以下の 3点が挙げられる。

(1) 関心の高まり

近年,多くの図書館でキャラクターの制作をは じめ,独自に図書館グッズを作成して,広報活動 を実施する動きが広がっている。さらに,こうし たテーマに関する図書館員への研修会や,各館作 成の図書館グッズの展示も行われ ,図書館員の

関心が高まっている。 (2) 調査不足

図書館グッズの作成に関する全国的な状況や, その効果についての調査が行われていない。図書 館グッズは本来,図書館員の思いつきや自己満足 で作成されるべきものではなく,目的や受け取る 側の視点を 慮して企画されなければならない。 例えば,図書館グッズの種類にしても,図書館界 の狭い土俵で えるのではなく,さまざまな業種 における取り組みを把握したうえで選択する必要 がある。

(3) 共同制作の途絶

図書館界では共同制作による図書館グッズ作成 の取り組みが停滞している。1984年から 1994年 にかけて 科会が,さらに 1995年から 1999年に かけて日本図書館協会が,プロのイラストレータ ーによるポスターや栞,掲示用紙を共同制作とし て作成し,販売していた 。グッズの共同制作と は「ある組織が代表して立案し,イラストレータ ーの選定と 渉,印刷,グッズの受付などを行 い,申 込 機 関 が 印 刷 費 と 制 作 費 を 出 し 合 う 方 法」 で あ る。 科 会 が 2005年 ,2007年 に 販売したのを最後に,こうした取り組みは途絶え ている。残念ながら国内においては,米国図書館 協会(ALA)のような図書館界の広報戦略とし ての本格的な事業活動へ の 展 望 は 開 け て い な い 。

3.2. 東京都図書館協会の研究助成

こうした問題認識のもと,LiGLABが 2009年 度東京都図書館協会研究助成に応募したところ, 承認された。講評は下記のとおりであった。

・有意義な研究であり,助成するに値する。

・今後の図書館戦略の 1つとして,大いに期待で きる研究である。

・研究成果は広く 開していただきたい。

・製作した図書館グッズは,可能であれば,多く の図書館で販売できるよう,検討していただき たい。

研究テーマは「図書館グッズの調査・研究と企 画・開発」であり,研究期間は 2008年 12月 1日 から翌 2009年 11月 30日までの 1年間であった。 笑顔を生み出す“魔法”の戦略ツール(仁上ほか) 95

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3.3. 調査活動

LiGLABの主な活動内容は,①図書館以外で 配布されるグッズの一般的な傾向の把握,②国内 外の文献調査,③国内図書館における図書館グッ ズの作成動向の調査,④図書館グッズの試作・検 討,⑤図書館グッズに関する図書館員同士の 流 会への参加,であった 。活動成果の詳細につい ては,すでに報告書 を刊行した。

本稿では,上記の③国内図書館における図書館 グッズの作成動向の調査について紹介する。

(1) 調査の目的と方法

近年の図書館グッズ制作の動向を把握し,具体 的な図書館グッズの企画・開発に結びつけること を目的に,次の 3種類の調査を実施した。

a) ツクル側の調査(1: 共・大学図書館) 全国の 共・大学図書館(212館抽出)を対象 に,①図書館グッズ制作の有無,②作成したグッ ズの種類,③当研究会へ作成を期待するグッズな どを調査した。各館へは往復ハガキを郵送した。 回答率は大学図書館が 77%, 共図書館が 68% であった。

b) ツクル側の調査(2:図書館員)

図書館グッズを制作するにあたり,①どのよう な目的で制作し,②制作後,利用者について,ど のような反応・変化があったのか,③制作してい ない場合はその理由について,図書館員を対象に 調査した。予備調査を行った後,Webページに 入力フォームを作成し,図サ研をはじめ ML等 で広く周知した結果,全国の 共・大学・学 図 書館員 51名から回答があった(無記名)。

c) ツカウ側の調査(利用者)

図書館グッズを う側がどのような評価をして いるかについて調査した。具体的には,①もらっ て嬉しいグッズやその理由,②嬉しくない(困っ てしまう)グッズについて質問した。さらに,図 書館グッズ以外に,街や他機関などで一般的に配 布されるグッズについても同時に質問した。質問 は,予備調査を行った後,Webページに入力フ ォームを作成し,図書館友の会や大学の司書課程 受講生に依頼した。その結果,93名から回答が あった。

(2) 調査結果

上記の調査から,以下の点が判明した。

・図書館グッズを作成していない図書館が,館種 を問わず多かった。

・作成されている図書館グッズで最も多い品目 は,栞,バッグ(手提げ),クリアファイルで あった。

・図書館からもらって嬉しいグッズについて,利 用者は約 67%が「なし」と回答した。

・図書館グッズは,利用者とのコミュニケーショ ンを図るきっかけとなるツールである。 以上の結果について,LiGLABでは「第 11回 図書館 合展/学術オープンサミット 2009」のポ スターセッションにおいて,「ツクル・ツカウの 調査:新たな図書館グッズの開発に向けて」と題 して発表した 。この内容は前掲の報告書に掲載 した。また,『図書館雑誌』にも報告記事を掲載 する予定である。

3.4. グッズの試作

LiGLABでは,上記の調査結果を踏まえて, 図書館グッズの試作を目指した。図書館内外のユ ニークなノベルティグッズについて,現物収集と 理論研究を行った。対象品目は,図書館や資料に 直接関連するモノから,直接の関連は薄いモノま で多数あった。従来からなじみがあって安心感の ある品目は,受け取り側に違和感を与えず,スム ーズに浸透する可能性が高い。逆に,意外性のあ る品目は,大きなインパクトと広報効果を上げる 可能性を持つことがわかった。

検討の結果,①制作簡易度,②低コスト,③メ ッセージ性という 3つの観点から,下記の 3品目 を候補として った。

薬学図書館 55(2),2010

図 1 ツクロウ君」 96

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(1) ゴム印

図書館業務用のゴム印は,地味な印象が強い が,市販のものにはカラフルで魅力的な事例に事 欠かない。1個単位で発注でき,スタンプ台で自 で押すだけで印刷物や掲示に図書館からのメッ セージを手軽に載せることができる。平面限定と いう制約はあるが,安価で簡易なグッズ作成手段 である。ポイントはどんなメッセージをどう表現 すると効果が上がるのかという点である。LiG- LABでは,図書館 合展用に,図書館員に向け て「図書館グッズをつくろう!」というメッセー ジを贈るべくゴム印を作成して紹介した。図 1 は,フクロウをキャラクター化した「ツクロウ 君」である。

(2) シール

シール は,ゴム印よりも色や形のデザイン の自由度が高く,さまざまなキャラクターや写真 をカラーで表現でき,比較的安価で大量に作成す ることができる。シール自体がグッズであるが, 印刷物や文房具などの日用品に貼り付けるだけ で,その品物を簡単に図書館グッズに変身させる ことができる点が大きな特徴である。

(3) 栞

読みかけ位置を示す実用的なグッズであり,小 型・軽量・薄型で大量に配布可能であるため,図 書館グッズの定番である。その機能を検討する と,下記の特徴がある。

・象徴性:図書に挟む実用品として,図書館の象 徴的なイメージを伝えることができる。

・メッセージ性:個人配付用媒体として,図書館 からの広報や利用者教育のワンポイントメッセ ージを載せやすい。

・操作性:図書に挟むという機能を持たせるため に素材や大きさに制約があるが,利用者は誰で も扱える。

・芸術性:表と裏の面積を自由に えるため,多 様な素材,イラスト・写真による高品質で芸術 性の高いビジュアル表現も可能になる。

・機能性:定規や拡大鏡などの実用機能を追加で きる。

・経済性:大量印刷による単価低減が可能であ り,ウェブからのダウンロードを利用者自身に

勧めて印刷経費をカットする方法も有力であ る。

・活用性:利用者への提供のしかたにさまざまな 工夫が可能である。①配布対象,②配布場所,

③配布時期,④配布方法などを多様に組み合わ せて設定すれば,より大きな効果を上げること ができる。

4. 図書館 合展フォーラム 4.1. 目的と概要

図サ研初の主催イベントとしてのフォーラム

(通称:図サ研フォーラム)は,LiGLABメンバ ーが主体となり,「図書館グッズが利用者と館員 を 元 気 に す る!― 実 例 発 表・討 論・物々 換 会―」と題して 90 1コマ,定員 150名で行わ れた。

LiGLABの概略および研究成果の報告と,低 予算で効果の大きい図書館グッズの可能性を探 り,各機関での図書館グッズ作成を推進すること を目的としたものである。

当日は満席の盛況となり,図書館グッズへの関 心の高さをうかがわせた。また,事後のアンケー トによると「今回のフォーラムに参加して良かっ たですか?」に対して「大変良い」41%,「良い」 48%,「今後の仕事や研究のヒントになりました か?」に対して「大変なる」43%,「なる」41% と,高い満足度を得た(有効回答数:148)。

また,(社)埼玉福祉会の協賛を得て,参加者全 員に配布資料を入れるビニールバッグを配り,ア ンケート提出と引き換えに ALAの栞などの図書 館グッズをお土産とした。

4.2. プログラム

プログラムは以下の通りである。盛りだくさん な内容で, 刻みの進行となった。

①図書館グッズ展示会……30

②基調講演(仁上)……10

③リレー発表(LiGLABメンバー:4本)…… 20

・LiGLABと TLA助成金(戸田)

・栞(し お り,Bookmark)作 成 の 枠 組 み(青 木)

・元気になった「その先」は?―海外文献調査を 法”の戦略ツ 97

笑顔を生み出す“魔 ール(仁上ほか)

ンブ

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中心に―(中島)

・ツクル・ツカウの調査 新たなライブラリー・ グッズの開発に向けて(石川)

④ う ち の こ 自 慢(各 図 書 館 の 事 例 発 表 4 件)……10

・和歌山県立医科大学図書館三 館

・嘉悦大学情報メディアセンター

・東邦大学習志野メディアセンター

・熊本大学附属図書館

⑤図書館グッズへの提言(2件)……6

・渡邉崇氏(広告制作ディレクター/コピーライ ター/法政大学 CSR研究所)

・岡本真氏(ACADEMIC RESOUCE GUIDE

(ARG)) 4.3. 当日の様子 (1) 図書館グッズ展示会

今回のイベントの目玉の 1つである図書館グッ ズ展示会は,会場前列の椅子を取り払い,テーブ ルを 12本設置して行った。フォーラム参加申し 込み時に「図書館グッズを作成している」と回答 した申込者へ出品を呼びかけ,9月に開催された 旭川での講演会・展示会の出品物を,許諾を得て 再展示した。ほかに,図書館グッズを卒論テーマ にしている大学生からの個人参加もあり,募集期 間は短いながら見ごたえのある展示となった。

また,展示スペースの周囲や会場のあちこちで 参加者同士の 流の輪が開き,和やかな 囲気で 情報 換する姿が見られたのも運営側としてうれ しい光景であった。

出品グッズは「外部発注の部」(25エントリ ー)と「自機関作成の部」(35エントリー)に けて参加者による投票を行った。

(2) 基調講演

図サ研主宰でもある仁上による基調講演では, 図書館グッズ研究の問題提起や,収益の上がる図 書館グッズの提案,他 野のグッズ事例や芸能人 を起用した図書館 PRのアイディア披露など,図 書館界の古い常識にとらわれない発想の重要性を 訴えた。

(3) リレー発表

LiGLABメンバー 4名が壇上で短い発表を行 った。研究会発足の経緯,図書館グッズの可能性

や発展性,図書館グッズの海外事例やマーケティ ングを視野に入れた開発指針,グッズに関するア ンケート結果の概要など,研究成果の中からイン パクトのある話題に った。

(4) うちのこ自慢

参加者から 4件の応募があり,オリジナルキャ ラクターや関連グッズの紹介,効果,利用者との 協同事例などについて発表があった。どの館のグ ッズも個性的で工夫あふれるうえに完成度が高 く,まさに「うちのこ自慢」の名に違わぬ事例ば かりであった。

発表者は多忙な業務の合間を縫って画像入りの 発表スライドを準備し,聴衆もメモを取ったりス クリーンを撮影したりしながら熱心に耳を傾けて いた。作ってみた図書館員からは,図書館活性化 効果を実感できたとの発言があり,フォーラムの キャッチフレーズの「図書館グッズが利用者と館 員を元気にする」が裏付けられた。

(5) 図書館グッズ企画への提言

図書館」という限られた領域の中でのグッズ 開発には行き詰まりがあるという懸念から,プロ の広告マンである渡邉氏と,日ごろ活発な情報発 信を行っている ARGの岡本氏に,図書館グッズ への提言を依頼した。

渡邉氏は,グッズ企画のコツとして利用者の図 書館外での生活や行動に想像力を働かせることの 重要性などについて,出品グッズを例にとりなが ら解説した。岡本氏は,昨今の「ゆるキャラブー ム」に安易に乗る風潮に警鐘を鳴らすとともに, 緊縮財政の中で経費によるグッズ作成禁止の可能 性と説明責任に言及,さらに,「買いたい」と思 わせるようなグッズの企画開発の必要性を訴え た。

4.4. フォーラムを振り返って (1) 準 備

ここでフォーラムの準備について触れておきた い。今回は準備期間の短さとスタッフ人員の不足 が大きな問題となった。実際の準備開始は,前述 の旭川講演会・展示会の後の 9月下旬であり,以 降,常に後手に回った状態となった。これらを補 うための工夫をいくつか紹介する。

98 薬学図書館 55(2),2010

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・ICTの活用

ブログによる告知,無料レンタルサービスを利 用した Webフォームによる参加申し込み受け付 けと名簿作成の自動化,電子チラシ配布などで省 力化を行った。LiGLABメンバーが顔を合わせ るのは月 1回の 2∼3時間であるため,実質的な 打ち合わせは ML上で高頻度に行われた。

一方,参加申込者との連絡では,迷惑メールフ ィルタや申込者のメールアドレス誤入力によるメ ール不着で齟齬が生じることもあった。主催者側 はもちろん,申込者側への注意喚起や自動返信メ ールアドレスの周知などの予防策を講じるべきで あった。

・ボランティアの活用

LiGLABメンバーのうち 3名が本務で当日参 加できず,進行スタッフが不足する事態となっ た。このため参加申込者の中からボランティアを 募り,受付,会場設営・撤去,アンケート回収, などの業務 担をお願いした。

発表・提言者もボランティアとみなし,幸い参 加者全体の 2割に相当する 28名の協力を得た。 事前の顔合わせは不可能のため,各業務をモジュ ール化して各々に業務内容と集合時間をメール連 絡した。ただし,1人あたりの業務の負荷の差 や,前述のメール不着による行き違いなども生じ ることとなった。なお,ボランティアは特典とし て参加費無料とした(志願後に告知)。

・出品グッズの管理

研究会の性格上,共有の作業・保管スペースを 持たないため,出品グッズの事前収集・ 類など ができず,持ち込みおよび展示作業はすべてフォ ーラム開始時刻直前にせざるを得なかった。出品 番号,グッズ名,機関名のリストと,それらの項 目を 1枚に 1件ずつ印字した A4用紙(グッズ マット)を受付開始前にテーブルに並べ,その上 に出品者自身が展示するよう誘導するなど,作業 がスムーズになるよう工夫・検討を行った。旭川 の再展示品はフォーラム直前まで旭川在住メンバ ーの谷本が保管し,会場近くの宿泊先に配送して 当日持ち込みとした。

・グッズ投票表彰式

投票結果を後日集計した結果,2部門の各 3位

までを入賞とした。入賞作は,得票数や受賞理由 とともに LiGLABのブログ 上で発表した。当 日の様子も記載されているのでご参照されたい。 ま た,2010年 1月 に 東 京・日 本 橋 で 行 わ れ た

「図サ研新年会」の席上,東京近郊の受賞館(者) も参加して,簡単な表彰式を行った。

(2) まとめ

前述の通り,参加者の満足度はおおむね高く, アンケートのコメントには,「各館の取り組みや 工夫に触発された」,「やり方がわかったので自 の館でもやろうという気になった」,「内容がバラ エティに富み充実していた」等の肯定的意見が目 に付いた。また,図書館員とは違った角度からの 識者 2名の刺激的な提言には,大きな反響があっ た。

一方,進行が押してしまい,予定していた質疑 応答やフロアからの発言の時間がなくなったこと は心残りである。また,展示スペースが狭く順路 が確立されていなかったり,見学者が個々にグッ ズ撮影を行ったりしたために滞留が起こり,十 に展示を見られない事態も発生した。次の機会が あれば,時間割 2コマ を確保して展示会と発表 セッションを けるなどの拡張を行いたい。 5. 今後の方向性

5.1. 6つの目標

最後に,今後の方向性について,6つの目標を 記しておく。

(1) マーケティングの強化

グッズ企画は綿密なマーケティングに基づいて 戦略的に行うべきである 。作成する前にサービ ス対象者のセグメント化,ニーズ 析などの基本 的な手順を踏めるようマーケティング用ツールキ ットの開発も含めて現場を支援する取り組みが望 まれる 。

(2) 多品目展開

一品目を作れれば,次の応用は比較的簡単であ る。日用品の基本ラインナップを取りそろえつ つ,意外性のある広報品目にも挑戦していく必要 がある。

(3) メッセージの再吟味

ポスターや栞などに印刷している見出しや本文 法”の戦略ツ 99

笑顔を生み出す“魔 ール(仁上ほか)

ンブ

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の内容を,図書館広報や利用者教育の視点から見 直して,伝えたいメッセージを整理し,目標達成 に最適な形に洗練していくことが望まれる。

(4) 高認知度キャラクターの起用

グッズのキャラクターは,当初は館員の手作り で十 であるが,次のステップとしては,地元出 身の有名漫画家やプロスポーツ選手など,大人に も子供にも圧倒的に知名度の高いキャラクターの 起用を狙うべきである。予算については,ALA に倣って無報酬協力の依頼を試みるなど, 共的 機関の強みを活かして 渉することをお勧めす る。

(5) イベント連動性の強化

作ったグッズを館内で実用に供して終わりでは 芸がなさすぎる。図書館が仕掛ける講演会やセミ ナーなど話題性の高いイベントの際に,グッズの 無料配布や販売を連動させることで,広報効果は 倍増する。

(6) パブリシティの強化

高品質でメッセージ性と話題性のあるグッズを 多品目展開できたら,マスコミへの露出を目指す べきである。地元のテレビや新聞だけでなく,地 域のミニコミやメールマガジン,ML,さらには ブログやツイッターなどの話題増幅手段をフル活 用することによって図書館自体の認知度を格段に 高めることが可能になる 。

5.2. 図サ研の活動計画

これらの方向性を牽引し支援するために,図サ 研でもできるかぎりの活動を展開していきたいと えている。当面,以下の 5つのプランがある。 (1) グッズ制作促進キャンペーン

図書館グッズの制作推進活動として,「ツクロ ウ」君キャラクターを押し出して全国的に呼びか けを行う予定である 。栞などのグッズを通じて マーケティングの必要性を始め,企画する側の心 構えを訴えたい。

(2) 図書館グッズ全国マップ

グッズ自体の完成品の写真だけでなく,制作方 法や活用事例,費用など,これから作る図書館に とって企画のヒントになる情報も共有することが 有効である。グッズ状況が一覧できるようなサイ トを実現したい 。

(3) 図書館グッズに関するセミナーの開催 全国図書館グッズサミット 2010」(仮称)を この夏に計画中で,詳細は近日告知予定である。 秋の図書館 合展には昨年に続いて参加を予定し ている。

(4) 研究者へのアピール

図書館グッズはまだ研究テーマとして取り上げ る研究者が少ない。図書館と図書館員の存在価値 を高める有効な方策ならば,研究する価値がある はずである。グッズ研究の成果を論文執筆や学会 発表などの形で,積極的にアピールしていきた い。

(5) 上部団体への提言

各館での地道な取り組みだけでは全国レベルの 話題性を獲得することは難しい。各種図書館関係 協会・協議会など上部団体による各種イベントの 際に,グッズの話題性をてこにして,全国的に大 きな反響を巻き起こすことを狙う図書館振興キャ ンペーン計画の実施を訴えていくつもりである。 注・引用文献

1)仁上幸治.ホームページ上に「万能道具箱」を!

―情報リテラシー支援装置としての上部団体の 役割.大学図書館研究集会記録.18,2002,91-99. 2)図書館サービス計画研究所.(オンライン),入手

先 http://tosaken.blogspot.com/>, (参 照 2010-02-22).

3) CUE>利用教育委員会通信. 第 63号 (17巻 3 号),2006.(オンライン),入手先 http://www. jla.or.jp/cue/mm-63.html>,参照(2010-02-22). 4)仁上幸治.せめて大江戸一家の心意気で―トサケ

ンは司書職の「奇 跡 の V字 回 復」を 目 指 す ―

[聞き手:鈴木正紀].大学の図書館.27(1),2008, 5)私立大学図書館協会東地区部会研究部企画広報4-8.

研究 科会.過去の研究テーマ.(オンライン),入 手 先 http://www.jaspul.org/e-kenkyu/kika ku/history.htm>,(参照 2010-02-22).

6)図書館サービス・ツール研究会 (Library Goods Laboratory).略称 LiGLAB(リグラブ).(オンラ イ ン), 入 手 先 http://library-tools.blogspot. com/>,(参照 2010-02-22).研究会メンバーは,仁 上,中島,石川のほか青木玲子 (国立女性教育会館 客員研究員),秋葉小夜子 ((株)ブレインテック), 鈴木正紀 (文教大学越谷図書館),武尾亮 (女子栄 養大学学務部),戸田光昭 (駿河台大学名誉教授) の 8名である.

7)展示会には,例えば,下記のものがある.

(1)Lib+Live2009. 山 中 湖 真 冬 会 議. 2009. 1.24-26.(於:山中湖情報 造館)

薬学図書館 55(2),2010 100

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(2)ad!ライブラリー:大学図書館効果的広報戦 略.国立大学図書館協会東京地区・関東甲信越地 区合同事業.2009.1.29.(於:東京大学 合図書 館)

(3)みんなの工夫に学びたい!:情報 流のた めのポスター展示 (2009年度研修会特別企画). 私 立 大 学 図 書 館 協 会 東 地 区 部 会 研 究 部. 2009.10.22-23.(於:東京農業大学)

8)仁上幸治.広報活動における相互協力の拡大―ポ スター・本の栞の共同制作の歩み―.私立大学図 書館協会会報.86,1985,65-100.

9)武尾 亮ほか.共同制作からはじめる図書館広報 グッズの作成: 造的な活用と共有をめざして. 大学図書館研究.85,2009,p.12-21.

10)秋山朋子ほか.図書館広報手段と「Lib.PR:図 書館広報実践支援サイト」の立ち上げ に つ い て:図書館のベンリ!を利用者に伝える.私立大 学図書館協会会報.126,2006,148-154.

11)石川敬 ほか.図書館広報活動の共有化と相互支 援:現場の力を活かし可能性を探る.私立大学図 書館協会会報.130,2008,156-162.

12)仁上幸治. 本山の進まない構造改革―専門職崩 壊のデフレスパイラル―(特集 大学図書館と日 本図書館協会).大学の図書館.24(2),2005,28-31. 13)例えば,以下の 2例の案内と報告書を参照.

(1)旭川医科大学図書館主催・旭川市図書館共催 の講演会と図書館グッズ展示会 (2009.9.12).(オ ン ラ イ ン), 入 手 先 http://acesv.asahikawa- med.ac.jp/info/news-2009-017.html>, (参 照 2010-02-22).

(2)第 11回図書館 合展のフォーラム (2009.11. 12).(オンライン),入手先 http://library-tools. blogspot.com/2009/11/blog-post 4766.html>,

(参照 2010-02-22).

14)図書館サービス・ツール研究会.ライブラリー・ グッズの調査・研究と企画・開発.2010.2.(平成 21年度東京都図書館協会研究助成報告書),(オン ライン),入手先 http://library-tools.blogspot. com/2010/02/21.html>,(参照 2010-03-29). 15)ポスターセッションは来場者による審査投票の

結果,第 4位 (得票数 126票,有効投票数:2,520 票)という好成績を収めた.

16)シール以外に,ステッカー」,「ラベル」などの言 葉があるが,本稿ではシールとし, 裏に糊がつい た紙」と定義する (大辞泉 JapanKnowledge). 17)詳細は 5)のホームページを参照.

18)Siess,J.A.The visible librarian:Asserting your value with marketing and advocacy. Chicago,American Library Association,2003, 154p.(ISBN 9780838908488)

19)仁上幸治.図書館マーケティングとプランニン グ・プロセス論―経営革新をめざす『実行可能 な方法』の開発と導入 (特集 専門図書館のマー ケティング).専門図書館.192,2002,8-18. 20)仁上幸治.何を誰にどう訴えればよいのか(特集

図書館アピール).専門図書館,239,2010,2-7. 21)仁上幸治.グッズが図書館を元気にする!―暗い

状況でも楽しめる最強秘密兵器(特集 ライブラ リー・グッズ)[聞き手:鈴木正紀].大学の図書 館.28(5),2009,70-75.

22)例えば,以下の現役大学生によるグッズ紹介サイ トがある.kumori.(オンライン),入手先 http:// kumori.info/kojo/>,(参照 2010-03-29).

(原稿受付け:2010.2.22) 笑顔を生み出す“魔法”の戦略ツール(仁上ほか) 101

ノンブルの桁数増えたら柱の隔たり

1桁=6Q 2桁=12Q 3桁=18Q にする

参照

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