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2015.9.12 週刊東洋経済
講 義 5 ネットワーク理論
職場で影響力持つ
「構造的空隙」とは
撮影:今井康一
│教える人│
慶応義塾大学
三橋 平
教授部署の同僚や客先と行けば、普段と違う話が聞けてそこで得られた情報やうわさ話に価値を見いだすでしょう。 この例え話は、閉じたネットワークのEさんのところには重複した情報が出回り、複数の情報源の間を分断する形ですき間が存在するAさんのほうが、得られる情報は多岐にわたることを表しています。 分離しているD、B、Cさんを唯一Aさんだけが仲介でき、3人から得られる情報を結合できるのもAさんのみ。3人とのネットワークを維持するコストはAさん、Eさんとも同じですから、より多くの情報を手に入れることができるAさんのほうが効率的です。結果、Aさんのほうが昇進が早いということになります。この考え方は、米国の社会学者ロナルド・S・バートが提唱している﹁構造的空隙論﹂によるものです。 ②つながっている他者︵B・C・DさんとF・G・Hさん︶はそれぞれ誰とつながっているのか この①②の構造を分析すると、Aさん、Eさんの意思決定パターンやより高い成果を上げることができるのはどちらなのかが説明できます。 ここで注目すべき点は、﹁空 くう隙 げき﹂と呼ばれるすき間です。Aさん、Eさんともに3人とつながっていますが、Aさんがつながっている3人、D、B、Cさん同士はつながっていません。他方、Eさんがつながっている3人、G、F、Hさん同士はつながっています。つまり、すき間の空いた︵構造的空隙︶ネットワークと閉じたネットワークという構造の違いがあります。 職場のランチタイムを考えてみましょう。毎日同じ部署の同僚とランチに行くと話すネタはいつも同じで飽きてしまいますよね。たまに違う 場で影響力を持つ人の特徴は?﹂という問いかけに対する一般的な回答としては、声が大きい人、明るく周囲に気を配る人、冷静沈着な人、技術を持った人などが挙げられます。このように、性格や理念などの内面的な要因や、性、年齢、身分など属性的な要因によって人の行動やパフォーマンスを説明しようとするアプローチを、属性主義といいます。 一方、ネットワーク理論では﹁ある人が影響力を持つかどうかを、その人がどのように他者とつながっているのかによって説明しようとするアプローチ﹂が行われます。 右下図を見てください。図は職場の﹁アドバイスネットワーク﹂を表しています。AさんとEさんのどちらのほうが昇進が早いと思いますか?①Aさん、Eさんが誰とつながっているのか
「 職
F
H C B
A
D
G
E
どちら
9/12号_1特_経営学
p17_ネットワーク理論
Aさん、Eさんの の
ほうが昇進が早いか?
なぜその人が
影響力 を持
つのか。ネット
ワーク理論で
解明 できます
慶應義塾大学 2 0 1 5 / 0 9 / 0 7 1 9 :0 1 :2 3
特集/経営学の教科書
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週刊東洋経済 2015.9.12たは自社を意図的にネットワーク内の有利なポジションに置くことができるのかはわかっていません。できることといえば、日頃から他人との類似点を見つける努力をすること。自分と似ていない人と出会ったときには多様性を受け入れて関係を構築し、新しい情報を吸収できるように準備しておくことでしょう。 離しているサプライヤーを仲介できるのは唯一自動車メーカーのみ。各サプライヤーから得られる情報を結合できるのも自動車メーカーだけで、一見、すき間を数多く含んだネットワークを構築しているように思えます。ただ、長い年月を経て築かれた自動車メーカーとサプライヤーとの間には強いつながりが生じ、同質的な情報がネットワークに循環していく可能性が高く、すき間が意味を成していないことがありえます。また、当初はサプライヤーとサプライヤーとの間に直接つながりがなくても、今では間接的につながっている可能性があります。 これらは、﹁形成の4原則﹂で説明することができます。①他者とのつながりは過去にすでに信頼関係が形成されたものを繰り返し継続して使いやすく、②新しいつながりを作ろうとする場合、ネットワークの中心にいる人物を優先的に選択してしまいがちです。③時間が経つに従ってつながった他者同士がつながり、すき間が消滅する可能性は高く、④自分と似ていない者とつながったほうが価値の高い情報を得られますが、人間の本質としては、同類や同じステータスを好む傾向にあります。そのため、ネットワークは同質的になりやすいのです。 実は現状、どうすれば自分を、ま い情報や今まで聞いたことがないような新しいものが多い﹂という考え方です。 ただ、構造的空隙も万能ではありません。活用するには、入ってきた情報の価値を見極め、さまざまな情報を関連づけて吸収できるだけの幅広い知識ベースが必要となります。そのため、階層が上の人ほど空隙の価値が高くなり、新入社員など階層の低い従業員は、閉鎖的なネットワークの中で自らのアイデンティティを培うほうが重要になります。 また、閉鎖的なネットワークが必ずしも悪いわけではありません。鉄道会社など何より安全が求められる職場では、協力や相互確認、価値観の共有が重視されます。加えて、複雑な知識や暗黙知の伝達は繰り返しのコミュニケーションを必要とします。この場合は強いつながり、つまり強い紐帯が求められます。 構造的空隙論を、自動車メーカーとサプライヤーの関係に置き換えてみましょう。分 構造的空隙論の背景には、マーク・グラノヴェッターが1973年に発表した﹁弱い紐 ちゅう帯 たいの強み﹂という概念があります。 紐帯とは、図の中で線で表されているつながりのことです。弱い紐帯とは、毎日顔を合わせている同僚や親しい友達ではなく、年に1~2回しか会わない知り合いとのつながりを指します。つまり弱い紐帯の強みとは、﹁自分とは情報系統が異なるたまにしか会わない知り合いからもたらされる情報は、普段接していな
ネ ッ ト ワ ー ク は す き 間 と 閉 鎖 の 組 み 合 わ せ
企業の枠を超えて結び付く 協働の原理とは。経営学的 視点で学びたい人にお薦め
若林直
円+有斐閣/税2400 樹 著 ネットワーク組織
肥満も性感染症も笑いも伝 染する? ネットワークがも たらす社会的な影響を考察
ニコラス・A・クリスタキスジェイムズ・H・ファウラ
講談社/円+税3000 ー 著 つなが
り
社会的ネットワークの驚くべき力
学びたいさらに
。研院産業労働関係学究博士課程修了科 後政策学部を卒業ネ、米コール大学大総合 学教論大授(マク組織ロ年)。に同1994 ●つはし・ひとしみ慶応義塾大学商学部 人は
ハリウッドの中心にいるのは
ケビン・ベーコン
ハリウッドでは、俳優のケビン・ベーコンがネットワークの中心にい る。直接の知り合いが約2600人、1人を介して約28万人、2人を介し て90万人とつながるという。俳優や映画監督などの名を入れると、 ベーコンとの関係がわかるサイト(oracleofbacon.org)がある
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