オタクはマーケティング戦略にどのような影響を与えたのか
金融システム研究室 指導教員 飯島高雄 08175043 経塚慎之介
1.はじめに
従来では、オタクはアニメやゲームのマニ アと考えられてきたが、近年では釣り、鉄道、 切手など、伝統的なマニア市場にまで拡大して おり、今後は、健康やファッションなどの領域 まで広がりつつある。もはや、オタク市場は 「ニッチな個別市場」ではなく、より一般的な マス市場と捉えるべき存在になりつつある。 そこで本論文では、オタク市場の現状から新し いマーケティング戦略を導き出し、マス市場へ の応用を分析した。
2.オタクの行動と消費
2-1.では、日本のデフレーションと消費につ いて述べた。今日の日本経済は全体で見ると需 要が不足しており、このままデフレーション が進むと、ますます消費が落ち込むことが予測 されることが分かった。
2-2.では、オタクの行動様式について述べた。 ここではまず、オタク(市場)の定義につい て触れ、次に活況である理由として挙げられる ものについて述べた。ここでは活況である理 由から、オタク市場の活況はオタクの行動様式 に依存することが分かった。
2-3.では、オタクの行動理論について述べた オタクは消費、創造活動を繰り返し、徐々に理 想像に近づくにつれ、理想像への情熱はさらに 高まる。この理想像を追い求めて、「消費行 動」、「創造活動」、「情熱の高まり」のサイ クルを繰り返す姿こそが、オタク的消費であ るということが分かった。
3.オタクを考慮に入れた企業戦略の再考 3-1.では、2.で取り上げた高水準の消費を維 持するというオタクの行動様式を考慮して、マ ーケティング戦略の再考を試みた。従来の4P
とオタク市場の4Pを比べても分かるように、 従来の4Pとオタク市場の4Pは異なるもので あった。4P同士を比べた結果、オタク市場は 従来の市場よりも高水準の消費を維持すること が分かった。
3-2.では、2.で取り上げたオタクは消費だけ でなく、創作表現も行い新たな価値を創造する というオタクの行動様式を考慮して、商品開発 戦略の再考を試みた。従来のプロダクト・ライ フサイクルとオタク市場のプロダクトライフ サイクルを比べても分かるように、オタク市 場は従来の市場よりも創作表現も行い新たな価 値を創造することが分かった。
3-3.では、2.で取り上げたオタクはコミュニ ティにおいて積極的に情報発信を行うというオ タクの行動様式を考慮して広告戦略の再考を試 みた。従来の3Cとオタク市場の3Cを比べて も分かるように、オタク市場は従来の市場より もコミュニティにおいて積極的に情報発信を行 うということが分かった。
4.事例検討
4.では、2.、3.で説明した高水準の消費を維 持するというオタクの行動様式と消費だけで なく、創作表現も行い新たな価値を創造すると いうオタクの行動様式、コミュニティにおい て積極的に情報発信を行うというオタクの行動 様式を高消費、創造性、情報発信という形で事 例検討を行った。この事例検討により、オタク 市場のマーケティング戦略は、従来のマーケテ ィング戦略とは異なるものであることが分か った。
5.おわりに
従来のマーケティングでは、様々なコミュ ニケーション手段を用いて認知、購買促進を図 った上で、市場のニーズにマッチした製品・サ ービスを提供し、最適な市場投入価格で、効果 的に製品を届けることが最適な戦略であるとさ れてきた。しかし近年のデフレスパイラルに あっては、従来のマーケティングが限界にき ていることが示唆されていると考えられる。 その一方でオタク市場では、販売単価が下がら ず、むしろ高単価の商品・サービスが需要され ている。