惑星地球科学Ⅰ( 2009 夏学期,水4,小河正基)
◆◆お詫び・お願い◆◆
このシケプリは授業ノートと大差ないです。悪しからず。
僕はパソコン等の扱いに疎いので読みにくい点が多々あるかと思います。その点もご容赦くだ さい。
あと、自分のノートと上クラのシケプリ(=参考文献)とで、数字(距離や年数など)が食い 違っている箇所がいくつかありましたが、その場合は自分のノートの方の数字を書きました。 内容(特に論理構造とか)に間違い(=授業内容との相違)があったら教えてください。
◆◆成績評価法◆◆
授業中の感想文が10点×3回=30点。期末テストが70点。
◆◆試験日程◆◆
7月22日(水) 15:05~16:45(90分間)
◆◆試験形式◆◆
持ち込みは何でもOK。設問は一問だけ。一つテーマが与えられるので、それについて作文を 書く。解答用紙はB4一枚、表と裏の両面。超長い論述だと思われる。
◆◆試験に対する先生の発言◆◆
90分間まじめに取り組めばそんな悪い点数にはならない。
作文力が問われる。自分の考えを論理的に筋道立てて説明する能力が必要。 自分の考えが問われるので、何が正しい・正しくないは関係ない。
「どうしても困るので単位ください」等といった泣き言を答案に書くな。
シケプリには頼らず、自分のノートを見るのが一番。(←俺の努力を水泡に帰す発言)
◆◆テスト対策◆◆
細かい数字とか原理を覚えてもテストにはあまり役立たない。アンダーソンなどの論の論理展 開を的確に把握しているかとかドグマをめぐる問題とかが重要になってきそう。小河先生は特 にアンダーソンが好きなようです。
理解を促すためにテストでは訊かれないであろう細かい内容も盛り込んだので、予習の際に重 要なことと枝葉末節との取捨選択をしておく必要があると思う。ぶっつけ本番だと情報量が多 すぎると思うから。ただ、テストは大論述なので、字数を埋めるためにもしかしたら使えるか もしれません。
◆◆目次◆◆(※俺が勝手に付け足した項目もいくつかあります)
■Ⅰ:『造山運動とプレート・テクトニクス』
Ⅰ-1・・・・造山運動
Ⅰ-2・・・・大陸移動説(ウェゲナー)
Ⅰ-3・・・・大陸移動説の復活
Ⅰ-4・・・・プレート・テクトニクス
Ⅰ-5・・・・プレート運動の原動力
Ⅰ-6・・・・仮説から真実へ
■Ⅱ:『地球内部構造』
Ⅱ-1・・・・PREM(Preliminary Reference Earth Model、球対称構造)
Ⅱ-2・・・・Anderson のマントル進化モデル A・・・・遷移層の化学組成は何か
B・・・・マントル化学組成の問題
C・・・・マントルの進化モデル(Anderson の考えた地球の成り立ち) C-1・・マグマオーシャン(45.5億年前)
C-2・・マントル進化モデル・本論 C-3・・結局 Anderson ってやつは・・・
Ⅱ-3・・・・Dziewonski とトモグラフィー A・・・・地震波速度の水平不均質構造 B・・・・マントルトモグラフィー
Ⅱ-4・・・・地球科学への波及効果
A・・・・沈み込んだプレートはどこへ? B・・・・下部マントル深部
B-1・・対流の脈動(パルス)とトモグラフィー B-2・・マントルの化学的不均質さ
Ⅱ-5・・・・Anderson と Dziewonski
■Ⅲ:『プルーム・テクトニクス』
Ⅲ-1・・・・ホットスポットとプルーム
Ⅲ-2・・・・ホットスポットと洪水玄武岩
Ⅲ-3・・・・白亜紀のスーパープルーム仮説
Ⅲ-4・・・・Large Igneous Provinces(LIP)と超大陸分裂
Ⅲ-5・・・・大陸成長とLIP活動
Ⅲ-6・・・・金星のLIP活動
Ⅲ-7・・・・スーパープルーム仮説
A・・・・スーパープルーム仮説について
B・・・・ゆりもどし
Ⅲ-8・・・・結局何が残ったか?
A・・・・プレート・テクトニクス B・・・・27億~20億年前 C・・・・プルーム→LIP s D・・・・地球内部構造
E・・・・A~Dを大雑把にまとめると
■Ⅳ:『仮想地球』
■Ⅴ:『授業終了』
Ⅴ-1・・・・内部進化と表層環境
Ⅴ-2・・・・最後に
◆◆用いた主な記号◆◆
■:大きなトピック、または話の転換点を示すのに使う。
□:■の中に含まれるトピック。「□」同士が並列とは限らず、時系列になっていることもあ る。
○:□の中にさらに含まれるトピック。
∴:「ゆえに」。結果・結論を示す。
∵:「なぜならば」。原因・理由を示す。
造山運動とプレート・テクトニクス
-1 造山運動
山はどうやってできるのか? 隆起によって山ができる?
18~19 世紀・・・アルプスは水平圧縮でできた?(地層が折りたたまれた?) 水平圧縮なら幅 100~200 kmの地面が圧縮されたことになるが?
■「地球の冷却⇒収縮」という論(苦し紛れ) 地球は元々は火の玉で、それが冷却されて収縮した
→その収縮運動が造山運動であり、表面にできたしわが山である だけど、地球一周=4万km、熱膨張率10-5
→これだと、100℃下がっても、4万×10-5×100=40kmしか収縮しない
→これではアルプスの圧縮を説明できない!
水平圧縮の原動力がわからないので、水平圧縮を無視した論が出るようになる
■古典的造山運動論(20世紀前半)
ベルーソフ(露)…水平圧縮は無し、その場で隆起・沈降するだけ
(例)スカンジナビア:2万年で200m隆起→80万年で8000m隆起
■他に挙げられた例…海水準の変化 海進・海退による山の形成
□海進・海退の原因
(1) 海水量の変化…氷河期
※今の北極とかの氷が全部融けると海面が70m上昇(海進・海退の最大高低差27 0mのうち70mを説明できる)
(2) 陸の隆起・沈降
(3) 海底の隆起・沈降⇒プレート・テクトニクス
■海底の隆起・沈降→プレート・テクトニクス 隆起の原因は?
岩石=MgO+CaO+SiO2+FeO+Al2O3
このうち、MgO+CaO は低密度、SiO2+FeO+Al2O3は高密度 前者が下に、後者が上にあった→密度の差から上下逆転→隆起
⇒これが19世紀のドグマ
-2 大陸移動説(ウェゲナー)
■大陸移動説の根拠:
1 大西洋両岸の化石が一致⇒陸続き
2 3億年前の氷河の跡(南米、アフリカ、オーストラリア、南極、インド) 3 気候帯の一致
4 海岸線の形状…大西洋両岸
■Argardの大陸移動説(1924) 大陸の衝突により造山帯が形成される
(例)インド亜大陸とユーラシア大陸の衝突→ヒマラヤ これは水平圧縮で山が形成されるというプロセスにも一致する
■古典的造山運動論 vs 大陸移動説
しかし、当時は古典的造山運動論がドグマだった
→公平に両者を比較できなかった(感情的になってしまう)
→大陸移動説は異端視された
■大陸移動の原動力とされたのは?
⇒マントル対流(1930年代)…地球内部で岩石が流体のように振る舞う 岩石の粘性率がわかったことで、簡単に対流が起こるということも分かった
-3 大陸移動説の復活
■磁場
地球内部の液体の鉄がダイナモのような役割を果たすことで地球磁場が生じる
□残留磁気について
鉄は500℃くらいで磁石となり、そして地球磁気と同じ方向に磁気を帯びて固まる
=(熱)残留磁気(※鉄は噴火した火山の溶岩に含まれる)
※ちなみに、残留磁気の強さと地球磁気の強さは相関関係にある
■残留磁気の強さ・方向の計測(1950年代~80年代) インド残留磁気を計測
6500万年前の残留磁気を調べると、「本来ならばこの向きのはずだ」という向き
になってない
→理由として2つの可能性がある
可能性1:南半球にあったインドが移動した⇒大陸移動? 可能性2:昔は地球磁場の向きが違った⇒極移動?
■APWP(Apparent Polar Wander Path)=見かけの(北)極移動曲線 北米を基準とした APWP とヨーロッパを基準とした APWP が4~2億年前で一致し た
→4~2億年前に一つの大陸だったので、移動が相対的なものとなり APWP が一致し た
→4~2億年前、北米とヨーロッパは一つだったが、それ以後、分裂
⇒大陸移動で分裂した
∴大陸移動説が認められた
-4 プレート・テクトニクス
大陸移動は確認されたが、その原動力は?
→大陸を乗せたプレートが動いているのでは?
■アイスランド沖の磁場
アイスランドの南方の海の磁気を調べると、海底山脈(海嶺)を軸として左右対称に なっている(強弱のシマ模様が左右対称になっている)(下図参照)
□シマ模様の磁場形成の理由
① 海嶺からがマグマ出る
② マグマの残留磁気がその時の地球磁気の方向と同じ方向になる
③ 地球磁気が逆転(逆転そのものに要する時間はかなり短い)
→ → → →
① ② ③ ① ・・・と繰り返すことで残留磁場がシマ模様になる
→こんなにきれいに対称なのだから何か理由がある はず!
■海洋底拡大
上で確認したように、海嶺からマグマが出て海洋底は拡大している(下図参照)
証拠:
海底から放散虫(殻のあるプランクトン)の化石を採取
→海底の年齢がわかる(∵放散虫の殻は時代により形状が異なる)
→海嶺から遠いほど海底は古かった
∴海洋底は拡大している
⇒つまり、海底/プレートが動いている…プレート・テクトニクス
■プレートについて
・地球の表面はプレート(剛体の板)で覆われている
・プレートは10cm/年ほどのスピードで動いている(←パルサーの測定結果から)
□プレート境界の種類
・海嶺(広がる境界)(火山の9割)(海洋地殻を形成)
・沈み込み型(陸のプレートと海のプレート)(地震多い)
・横ずれ境界(トランスフォーム断層)(例:サンアンドレアス断層)
※ちなみに、プレート境界じゃなければ地震が起きないと安心できるわけではなく、 何万年かに一回プレートのど真ん中でも地震は起こるそうです(すみません、理由は 覚えてません)
■ウィルソン・サイクル
海洋底拡大→プレートが動いている→大陸移動!⇒大陸移動説が確立(原動力はマン
←磁場の強弱の説明 シマ模様の対称軸は、
対称軸=海底山脈=海嶺=火山
トル対流とされる)
超大陸→分裂→移動→衝突合体→超大陸→…
↑このサイクルをウィルソン・サイクルと言う
■海底の深さと年齢
海嶺からは高温(1300℃)のマグマが出るが、海嶺から遠ざかると冷却されて熱 収縮する
∴古い海底=深い
■海進・海退の原理 結論から言うと、
プレートの動きが速い⇒海進 プレートの動きが遅い⇒海退
理由は上の項目(■海底の深さと年齢)の内容とリンクしています
□海進について説明すると、 プレートの動きが速い
→プレートが冷却される時間が比較的短い
→熱収縮の影響が小さいまま海洋底拡大
→海底の高さが高い
→海進
ってわけです(海退はこの逆)
□また、こんな説明も・・・
プレートには水分が含まれていて、プレートが沈み込むとこの水分が絞り出される 絞り出された水分によって岩石の融点が下がり、マグマとなって地上へ上昇 したがって、プレートの動きが速いと
→水分の供給ペースが上がる
→火山活動が活発になる
→CO2、火山ガスが増える
→地球温暖化
→氷が融ける
→海進
とも言えます
□補足(暇つぶし用。)
水 H2Oは固体よりも液体の方が体積が小さい(密度が大きい)という珍しい物質です ので、「氷が融けて水になった方が海水面が下がって海退になるのでは?」と考える 人がいるかもしれません。この考えは一見それっぽいですが誤りです。
海面上昇に主に影響するのは大陸氷河(高山などに存在)が融けることです。もとも と海にない氷が融けて水となって海に行くので、当然海水量は増えます。
ちなみに、海に浮かんでいる氷が融けても海水面の高さは変化しません。例えば、 コップに氷と水をいっぱいまで入れて、横から見たら浮いた氷がコップの縁よりも上 にはみ出るようにしてみてください。その状態で氷が融けても、コップから水はこぼ れません。浮力=ρ Vgみたいなやつが原因です。
■結局、海進・海退の原因は
・海底の深さの変化(プレート移動速度に関連)=プレート・テクトニクス
・海水量の変化
-5 プレート運動の原動力
それにしても、プレート・テクトニクスはなぜ起こるのか?
マントル対流により、マントルの上のプレートが動いているのでは?
■マントル対流という概念の出所
19世紀…地球年齢の測定が始められる→地熱を手がかりとする
□地球年齢測定法その1(ケルビンの主張) 地球内部は熱い…炭坑堀などの経験から 1 km 下がると20〜30℃上がる 大陸地域の地熱は50〜60mW/m2
ケルビン…「地球はできたとき火の玉だった」→この仮説のもとで地球年齢を割り出 す
→5000万年という結果に しかし、地質学者は数億年と主張
□地球年齢測定法その2(放射性元素)
放射性元素(ウランU、トリウムThなど)が発熱するという性質を利用
→実際、高温において岩石は流動する
○大陸地殻上部の地熱
花崗岩(ウラン・トリウムが豊富)が発熱→10−9kW/kgの発熱
理論上45mW/m2の発熱、実際の観測結果は50〜60mW/m2→ほぼ同じ
∴大陸の地熱は花崗岩中のウラン・トリウムに由来
⇒地球の年齢測定には使えない
○海洋地殻上部の地熱
玄武岩(ウラン・トリウム少ない)…発熱はほとんどゼロ→地熱もゼロのはず しかし、実際の測定結果は80kW/m2⇒この熱はどこからくるのか?
⇒この疑問の答えが「マントル対流」
マントル対流による熱輸送が起こり、地下深くの熱が海底へ行く
■マントル対流の問題点
マントル対流の証拠は?流れのパターンはどうなっているのか?
→実際に地球の内部を見てみないと納得できない! ここでプレート・テクトニクスの登場
プレート・テクトニクス…地球内部のことはわからないけれど、表面は動いている 運動が観測可能…地震・火山を説明できる→マントル対流について知る必要なし! 70年代にはこれが成功したが、80年代に限界が生じる
・なぜ地球にだけプレート・テクトニクス?(火星・金星では起こらず)
・超大陸の分裂(ウィルソン・サイクル参照)をどう説明するのか? などの疑問が生じる
⇒やっぱり、地球内部を「見る」必要性が生じる
− 6 仮説から真実へ
70年頃、プレート・テクトニクス確立→しかし地震学者は抵抗(地球=固い…マン トル対流を起こすのか?)
アメリカ西海岸や日本の近海において、プレート・テクトニクスの理論と一致する観 測結果が得られた
また、当時の地質学者は共産主義かぶれが多かった(例:ロシアのベルーソフ)が、 これら年寄りの引退により、80年代後半あたりから地質学者の間でもプレート・ テクトニクスが広まる
地球内部構造
・地球は何でできている?
・地球磁場はどこでどうやってできた?
・地球はどのように形成・進化した?
⇒地球内部を「見る」必要性…地震波を用いる
-1 PREM(Preliminary Reference Earth Model、球対
称構造)
参考のために前もって用意された地球モデル、という感じ
(多くの研究家が前提を吟味することなくこのモデルを無条件で受け入れて研究して いる・・・らしい)
地球内部が均質だったら左図のように伝わるはずだが、実際に地球上に地震計をたく さん置いて測定したところ、右図のようになった
⇒この伝わり方から地球の内部構造を予測(下図)
だけど、地震波速度だけで予想したので何の物質かまではわからない 地球内部を地
震波がどう伝 わるか?
地震波にはP波とS波がある
・P波…横波(液体中も伝わる)
・S波…縦波(液体中は伝わらない)
※授業中にVSやVPと板書してあったの はそれぞれP波速度とS波速度のことで す
外核…S波が伝わらない
∴外核=液体
⇒密度がわかれば物質もわかる 例えば、 1g/cc・・・・・水
3~4g/cc・・・石 7以上g/cc・・・金属
重力加速度g=9.8m/s2、地球の質量M=6×1024kgなどから地球の平均密 度を割り出す
⇒地球の平均密度=5.54g/cc これは中途半端(石でも金属でもない)
∴地球=石+金属
さらに自転軸のゆらぎから地球の内側と外側のそれぞれの平均密度を出せる
⇒核=金属(12g/cc)、マントル=石(4g/cc)
■しかしまだまだ詳しいことはわからない
地球の内部構造・成り立ちなどを主張する二人の学者がいるので、以下それらの説を 紹介する
・Dziewonski:タコツボ型、すごく視野が狭い
・Anderson:学際派、いろいろ知ってる
-2 アンダーソンのマントル進化モデル
遷移層の化学組成は何か
コア:金属←どんな金属? マントル:石←どんな石?
↑これを調べる アンダーソンは
『地球の平均化学組成=太陽大気の組成(但しH、Heを除く)』 と仮定した
(∵地球と太陽は同じものからできている(授業では原始太陽系星雲がどうこうって 説明も加えてましたが忘れました))
∴O、Mg、Si、Fe、Ca、Al(たぶん多い順)で95%
(なお、CaとAlは他のに比べて量が少ない(合わせて5%程度)) コア=金属=Fe(∵Mgは酸化しやすい)
マントル=石=セラミック(酸化物)=MgO+FeO+SiO2
■ところが・・・
存在比がMgO/SiO2=1.07のはずなのに、上部マントルの石(パイロラ イト)を実際に調べると1.26であった
このズレが70年代から問題となる
上部マントルがMgOに富むということは、バランスをとるために、どこかにSiO2
の豊富な場所もあるはず
→アンダーソンは遷移層だと考えた(←ドグマ)
つまり、アンダーソンは『遷移層≠パイロライト』と主張したのである
■実際に確かめる
遷移層=パイロライトか否かを確かめる
⇒そこで、MgO、FeO、SiO2をマントルの状態と同じように調合し、遷移層の 環境を機械で再現する
・MgO、FeO、SiO2(パイロライトの構成物質)の粉を混ぜ合わせる
↓
・高温高圧にする(1500℃、14~24GPa(ギガパスカル))
↓ (※14GPa=1cm2あたり140tの圧力)
・どんな鉱物ができるか?
↓
・地震波速度測る
↓
・実際の地球地震波速度と比較
これで実際のやつと一致していれば遷移層もパイロライトということになる
⇒地震波速度が微妙に一致しなかった
⇒遷移層≠パイロライトとアンダーソンは結論付ける!(小さな違いにこだわっ た)
※これは当時のドグマの影響(「遷移層がパイロライトのはずがない!」)
※アンダーソンは発言力が大きかった
マントル化学組成の問題
(1)地球の形成=隕石の集積(45.5億年前) 隕石によって惑星が太る(隕石の集積→惑星形成)? もしそうなら、
地球の化学組成=隕石の化学組成(=太陽の化学組成(H、Heを除く)) のはず よって隕石=Mg+Fe+Si+Oだから
∴マントル=MgO+FeO+SiO2のはず
しかし既述の通り、MgO/SiO2の値が太陽大気では1.07なのに上部マント ルでは1.28なのである
⇒ということは上部マントルにはMgOが多いんだから、逆にSiO2が多い場所もあ るはずで、アンダーソンはこれが遷移層だと考えた
(2)マントルの熱収支
■マントルから出る熱
地球からは44TW(テラワット)の熱が出ている
大陸からは7TW出てるということがわかっている(∵花崗岩の放射性元素)
∴(大陸以外=海底=)マントルからは37TWのはずである
→でも、もしマントル=パイロライトとするとマントルからは6TWしか出ない計算 になる
→31TW足りないのは地球の冷却が原因なのだろう
→これに基づいて地球の冷却速度を計算すると、200℃/10億年になる
→だけど、実際の冷却速度の観測値は50℃/10億年である
→おかしい!
結論:マントルの下の方にU(ウラン)やTh(トリウム)の豊富な場所があってそ こが熱源になっているのだろう(∵放射性元素)
■上の結論から導かれること マントルの化学成層は、
・上の方→MgO多い、U・Th少ない
・下の方→SiO2・FeO・U・Th多い
でも、深さによって化学組成が違うのはなぜ?(→で説明)
マントルの進化モデル(アンダーソンの考えた地球の成り立
ち)
-1 マグマオーシャン(45.5億年前)
45.5億年前、地球に隕石が大量に衝突した(bの(1)参照) ここで隕石=鉄+石である
衝突するとそのエネルギーが熱に変わり、地球表面は溶融した⇒ マグマオーシャンの 形成
また、鉄は分離して地球内部へ沈んだ(∵鉄は重い) 要するに、
・石→マントルになる
・鉄→コア(核)になる
-2 マントル進化モデル・本論
-1のようにしてマグマオーシャンができた
マグマオーシャンの組成=MgO+FeO+SiO2+U+Th
融点 密度
MgO 高い 低い FeO 低い 高い SiO2
以下①~③は時系列で並べてある
1 まずはじめは、下の方にMgOが沈んでいき、FeOやSiO2や放射性元素は上 部に残る
上部…FeO・SiO2・U・Thが多い 下部…MgOが多い、U・Th欠乏
2 冷却されると、密度の違いから上下が逆転 3 ② で逆転した結果、
上部マントル・・・・・・・・・MgOが多い、U・Thが欠乏 遷移層(「下部」にあたる)・・・SiO2・FeO・U・Thが多い
(1 の図) (②③の図)
⇒これでアンダーソンの論は論理的に整合性がとれた!
■当然抱く疑問
① でMgOはなぜ沈むのか?密度が低いんだから沈まないだろ? と思ったので先生に訊いて解答を得ました
一言でいえば、
『(固体のMgOの密度)>(液体のFeOやSiO2の密度)』だからです
融点の高いMgOは固体だけど、融点の低いFeOやSiO2は液体になってしまって いるのです
-3 結局アンダーソンってやつは・・・
融点・密度に関して左の表を参照のこと また、U・Thはマグマに集まる性質を持 つ
⇒
・アンダーソンの話は全部ウソ
・これからの話も全部ウソ
・しかしアンダーソンは立派な人
アンダーソンは一人で数多くの分野の知識を持っているスーパーマンだったというこ とですね
-2の理論は実際きっちり議論するとすごく複雑で誰も理解できなかった
「正しいか正しくないかは問題ではなく、論理的に話を作れる人」だとアンダーソ ンを評した人もいる
-3 Dziewonski とトモグラフィー
Dziewonskiの専門分野:
不均質媒質(地球)の中での弾性波(地震波)の伝搬に関する数学の研究
トモグラフィー:地震波の到達速度や波形から地球内部の画像を描く方法のこと
地震波速度の水平不均質構造
→地球内部の同じ深さのところでも緯度・経度によって地震波速度(Vp、Vs)が 異なるということ
(それまでは深さだけで地震波速度が決まると考えられていた) ちなみに、先に説明しておくと、
・地震波速度が速い⇔低温
・地震波速度が遅い⇔高温
■下部マントル深部
太平洋とアフリカの下で地震波速度が遅いという結果が出る
=その領域はさしわたし数千km!(1984年発表)
■非難ごうごう
□測定技術
当時の地震波測定はアナログであり、地震の到達時間を読むことも難しい
⇒精度不足である!
□結果そのものが変だ
当時の観測技術から言えば、早い点も遅い点も出てこない(のっぺらぼうになる)は ずだ
(∵100~200kmなんて短い距離を探知できない)
■非難に対する Dziewonski の反論
「倍精度計算でやってるから大丈夫だ」(←トンチンカンな返答)
※ちなみに倍精度計算とは、普通は有効数字7桁(単精度)で計算するところを有効 数字14桁で計算すること
■Dziewonskiのゴリ押し
しかし、Dziewonski には発言力があった
→非難を押し切ってこの考えが地震学の主流になる
以後、観測精度が向上(デジタル化など)し、また海底など色々な場所に地震計を設 置した。さらに地震波の解析も厳密に行われるようになった
⇒すると・・・Dziewonski の考えは実は正しかったことがわかった!(たぶんま ぐれ)
マントルトモグラフィー
精度向上・デジタル化 海底ケーブルにも地震計をつける
⇒Dziewonskiが正しいということが証明される
Dziewonskiは baseline skip(すいません、これが何のことだかよくわかりませ ん)のグラフの読み取り方を知っていたので、地震波速度に緯度・経度が関係すると 考えていた
Dziewonski
∴ の結果が合っていたのは、答えからお迎えに行ったから(らしい)
-4 地球科学への波及効果
沈み込んだプレートはどこへ?
当時正しいとされていた考えは左図のようなもの
660kmより深くでは地震が無いという観測結果から、アンダーソンはマントルの 二層対流を主張した
アンダーソンはプレートはマントル対流の境目である660kmのところで曲がって 、 それより下には行かないと言った
しかし普通に考えて、厚さ50~60kmもある固いプレートがこんなところでまが るのか?
⇒トモグラフィーを見ると、深さ1000kmくらいになってもプレートが突っ込ん でいるところもある!
→深さ660kmのところでプレートが曲がるという説に必然性は無い
(※たしかに日本の下では660kmで曲がってるけど)
∴マントルの二層対流は間違い!
下部マントル深部
南太平洋・アフリカの下→Vp、Vsが遅い⇒高温
←マントルの二層対流 ↓
←アンダーソンの主張
←実際(世の中の大体)
また、VpとVsでトモグラフィーのパターンが食い違った⇒原因が二つ以上ある 原因の一つは温度(高温→Vp、Vs低下 低温→Vp、Vs上昇)
他の原因は化学組成?
-1 対流の脈動(パルス)とトモグラフィー
深さ660kmのとこは不連続面になっている(対流に対する障壁)?
※たまりにたまって上からベチョって落ちてくるのは低温のやつ
※そんで、低温のやつが落ちたかわりに、高温のやつが押しのけられて上に上がる
∴660kmのバリアーが対流の脈動を形成!?
■反対意見
バリアーがあるのはたぶんウソだ、と言われた 理由:バリアーの強さ調整
・弱すぎると低温のやつがたまらない
・強すぎると高温のやつが上がらない
⇒微妙な強さは自然界では調整できないだろう
※結局、現在の理解ではフラッシングは起こらないと考えられている
※ただ、この考えは歴史的にはプルーム・テクトニクスのきっかけとなったので有意 義であった
■結局正しいのは・・・ 全マントル対流が正しい
バリアーは無く、660kmのとこでマントルは多少もたつくものの、下まで行く
-2 マントルの化学的不均質さ
Ⅱ-2-で説明したように、
・上部マントル・・・MgOが多い、U・Thが欠乏
・遷移層・・・・・・SiO2・FeO・U・Thが多い
となっている
⇒しかし、全マントル対流なら撹拌されて均質になるはずだ!
⇒矛盾?
■矛盾の解消:プルーム・テクトニクス
下部マントル深部に周りと化学組成が異なるスーパープルーム(高温)が存在してい たのではないか?
※ 申し訳ないですが、この「■矛盾の解消」に関して論理的な説明ができません。と いうか言ってたことがよくわかりません。
-5 Anderson と Dziewonski
■Dziewonski
Dziewonskiは breakthrough を成し遂げた
→トモグラフィーによる研究が有意義だとわかった しかも実りが多い 一回やってしまえば、二回目からは誰でもできる
(∵「やりゃあできる」とわかればあとはがんばるだけ、精神的に楽) Dziewonskiの後継者…Vander Hilst、Grand、Masters など
■Anderson
Anderson…後継者がいない
(∵地球化学・地球形成論・地震学・マントル対流…etc を一人で理解できる人など
(Anderson 以外に)いない)
Andersonはこれらの知識から地球の進化を明らかにしようとした
↓
膨大な情報…手に負えなくなった
↓
新しい視点が必要、情報を取捨選択
↓
プルーム・テクトニクスへ
プルーム・テクトニクス
・プレート・テクトニクス…地表面(プレート)は動く ⇒造山運動・大陸移動・地震・火山の説明
・トモグラフィー…現在のスナップショットを撮っただけ(←歴史の積算の結果)
最終目標は全地球史を解読すること
Anderson…トモグラフィー・地球の化学組成・地球形成過程などから統一的な地球 観を示す→だけど Anderson の頭では分かっても、他の人には分からない
⇒とっかかりに何か現象を調べよう→どんな現象にしよう?
プレート・テクトニクス、トモグラフィー、地球史これら全部が関わるもの
∴プルーム…これを手掛かりに地球史を明らかにしよう
⇒プルーム・テクトニクスへ
-1 ホットスポットとプルーム
プルームについて考えるにあたり、ホットスポットを調査
■ハワイのホットスポット(典型的なホットスポット)
海嶺・海溝・沈み込み帯から遠く、プレート・テクトニクスと直接関係ない
→直接プルームと関係している
■プルームの観測
□海底地形
※なぜプルームがプレートを押し上げるのか?
→プルームは高温で、浮力を持っているから(って先生が言ってました)
□トモグラフィー
プルームの源はどこにあるのか?
→ホットスポットの分布を見る(ガラパゴス島、イースター島、セントヘレナ島、ア イスランドなど)
→特に多いのはアフリカと南太平洋…これらの場所はトモグラフィーで見ると地震波 速度が遅い=高温のところ
※スーパースウェルの高さは700mくらい
←プルームの図
※プルームは動かず、上のプレートは動くため 図のようになる
※ちなみに、左に行くほど低い山である(∵プ ルームから外れるから)
左図はスウェルという海底地形
プルームがプレートを押し上げてできたのだ、 と説明できる
⇒プルームの存在を証明するもの
地球断面図→
-2 ホットスポットと洪水玄武岩
■デカン高原
マグマの洪水→台地を形成
洪水のように溶岩が押し寄せてきてできたんだなぁ…ということで洪水玄武岩と呼ぶ
※ちなみに、玄武岩=FeO+SiO2
■プルームの構造
左図:頭部分(プルームヘッド)がダーッと溶けて、洪水玄武岩を形成
↓
右図:頭は横に薄く広がり、尻尾部分が残って穏やかにチョロチョロと溶ける…ホッ トスポット形成
■プルームヘッドの大きさ
洪水玄武岩の体積=マグマの体積⇒母岩の体積もわかる プルームの上昇は何によるか?
→マントル内で大規模な上昇流が起こっているのだろう
溶岩の層で台地が形成されている
・厚さトータルで2000mくらい
・2000万年間活動
・さしわたし2000~3000m(大きい)
←こうなっているのだろう
∴洪水玄武岩はプルーム活動の最初の一発
⇒
←マグマ=FeO+SiO2、母岩=MgO+FeO+SiO2であり、MgO:Fe Oの存在比はわかってるから
∴結果、プルームヘッドが1000km以上だとわかった(でかい!)
■巨大なプルームの頭
母岩をパイロライトと仮定すると…巨大なプルーム
母岩を玄武岩と仮定すると…洪水玄武岩と同じ体積のプルーム(←大したことない体 積)
∴現在は、たぶん巨大なプルームヘッドは間違いだろう、と思われている
-3 白亜紀のスーパープルーム仮説
■白亜紀の地球
白亜紀…1 億年くらい前、恐竜の時代
1.5~0.5億年前…大量の洪水玄武岩が噴き出していた
(例:オントン・ジャワの洪水玄武岩)
1000kmのプルームならば→プレート運動にも影響?
⇒南太平洋でプレート運動にどんな影響があったか見てみよう プルームヘッドが1000km!
・マントル全体の厚さは3000km
・上部マントルは600km
∴左図のような状態?
左のグラフを見ると、スー パ ープ ル ー ム が 上 がる と プ レ ー ト 速 度 が 速 くな っ ている・・・?
スーパープルームが上昇する原動力は?
⇒フラッシング
■フラッシングとは・スーパープルーム仮説 スーパープルームが上昇する原理
-4 Large Igneous Provinces(LIP)と超大陸分裂
LIP=巨大火成岩岩石区
LIPs=LIP活動=異常に大規模な火山活動(例:洪水玄武岩、ジャイアント・ ダイク・スウォーム)
■ジャイアント・ダイク・スウォーム
※島弧の活動が活発になる と、海溝で石灰岩(Ca CO3)が取り込まれて、 CO2となって火山から出 てくる
※実際、白亜紀の平均気温 は 3 7 ℃ く ら い だ っ た
( 現 在 の 平 均 気 温 は 1 5℃くらい)
■ダイクのでき方
そして、火山内部を上がってきた溶岩が火口からではなくそのヒビの方から出てくる ことでダイクができる
ダイク形成後も、プレートの動きの影響によってダイクが成長する(放射状に伸びて いく)
■仮説
ジャイアント・ダイク・スウォームのできた時期は1.8億年前
これはちょうど北米・南米・アフリカの3大陸が分裂し始めた頃と一致する
∴『LIP 活動⇒大陸の分裂』?
■ちなみに
大陸移動のウィルソンサイクルは
大陸移動→衝突・合体→超大陸→分裂→大陸移動→… だが、「なぜ分裂するのか」 に関しては必然性は無い(他のはプレート・テクトニクスとかで説明できる)
⇒プレート・テクトニクスが持続することを説明できない!
この「分裂」の根拠を説明するために「LIP 活動⇒大陸の分裂」が見いだされたので ある
∴『LIP=地球上でプレート・テクトニクスを維持するメカニズム』? 現在の北米大陸・南米大陸・アフリカ大陸にまた がって輪っか状に存在する溶岩の板
これをジャイアント・ダイク・スウォームと言う 幅3000kmほどの巨大なもの
火山内部の活動が活発になると、火口からヒビが 入る(上から見ると放射状に)
(日本だと幅は数十km程度)
■最近の「スーパープルーム上昇→LIP 活動→大陸分裂」の例 2000万年前、エチオピア
洪水玄武岩が吹き出した3つの割れ目がある その3つとは、
・インド洋海嶺
・紅海
・アフリカ大地溝帯 である
— 5 大陸成長と LIP 活動
そもそも大陸というものは地球にだけ存在する(他の惑星には存在しない) また、花崗岩(白い石、SiO2が多い)でできているのも地球だけ
■大陸のでき方
□第1段階:島弧火山
・海でプレートに水分がしみ込む
↓
・地下でその水が絞り出される
↓
・水によって岩石の融点が下がり、マグマになる(※マグマ=黒い)
↓
・マグマ上昇
詳しい理由はとても複雑なので知らなくて 大丈夫(先生談)
↓
・ここでなんか複雑なよくわからないことが起こり、黒いマグマが白くなる(花崗岩 になる)(※余分な成分を地球の中に落としているらしい)
□第2段階:造山運動
大陸衝突にともなって岩石が変質する
□第1段階の年代はどうやってわかるのか?
大河の河口の砂を集める(流域のサンプルが得られる)
→この中からジルコンという鉱物に注目
(100 μ mくらい、めっちゃ固くて1000℃くらいまで変質しない、水でも変質 しない)
→ジルコンの年代を測定(ウラン・鉛などの同位体比で測定)
○ジルコン年代測定の結果
30億年よりも古いジルコン…(ほとんど)無し
27億年前と22億年前………ピーク(めっちゃある) 10億年〜現在………多数
○結論
30億年以前に形成された大陸…ほとんど無し 27億年前と22億年前…………大陸急成長 最近10億年………大陸成長大
■プレート・テクトニクスのスタイルの変化
27億年以上前は小さなプレートが無数にあった (地球全体が現在の西太平洋
(例:フィリピンやインドネシア)のような感じだった)
だが、27億〜20億年前くらいの時にプレート・テクトニクスの様式が変化し た!?
□『United Plates of America』
・27億年前、大陸のブロック(パーツ)ができる
↓
・20億年前、ブロックが合体して、北米大陸ができた
※だからカナダ人学者が『United Plates of America』とか言ったが、「カナダ人の くせに」的な感じでアメリカ人はかんしゃくを起こしたらしい
※ちなみに、地質調査でわかるのは第2段階の 年代である
■1つ1つのブロックはどうやってできたか?
普通は航空写真を使うが、それだと細かいことはわからない
→80年代、コール=ホフマンという人が北米大陸をすごい歩いて地質調査をした
(沈み込み帯で泥がたまる場所(付加帯)を調査した)
■わかったこと
27億年以上前…小さなプレートが無数にあった(現在の西太平洋みたいな状況)
→沈み込み帯もやたらたくさんあった
⇒しかし、20億年前の時点では大きい大陸とかができてる(プレート・テクトニ クスの様式の変化)
⇒問題となるのは、「27〜20億年前にどんな変化があったか?」である
■ここで、白亜紀の地球を思い出してみよう
「白亜紀のスーパープルーム⇒地球活性化」 ここから類推して・・・
27億年前にもなにか特別なプルーム活動があったのでは!?
■27億年前の変化(一つの説)
□27億年以上前、地球は二層対流だった(660km以深と以浅の二層)
→660km以深で熱がこもる
□27億年前、二層対流壊れて一層対流になった(フラッシング)
→以後、超大陸分裂、LIP 活動活性化
※ただし、これは一部の声の大きい人が主張したというだけにすぎない。従って信憑 性は(たぶん)無い。
— 6 金星の LIPs
金星では LIPs の親玉みたいなやつがある 半径(km) 平均密度
(g/cc) 地球 6400 5.52 金星 6040 5.23
上表のように内部構造はそっくりだが、内部活動は違うとわかった!
■金星の調査
1991年、人工衛星マジェランが金星の表面地形を調べる
□海嶺も海溝も無い⇒プレート・テクトニクスが起こっていない
∵金星には水が無いから(∵地球よりも太陽に近い)
プレートに水がしみ込んでそれが地下で絞り出されて…、の流れは既述
このとき、水に触れた部分の岩石が粘度になって滑るため、プレートがどんどん沈み 込んでいく
水が無いと、プレートががっちりはまって動かない!
□ホットスポットがある
クレーターの密度から金星の表面の年代がわかる
→クレーターは少ない
→金星の表面は若い(5〜8億年くらい)
→プレート・テクトニクスが起こってないのにこれだけ若いということは…?
→洪水玄武岩が表面の多くを覆ったのだろう
→表面の約80%を覆ったことになるが、こんなに大規模な LIP 活動の原因は?
→プレート・テクトニクスじゃないなら、フラッシングだろう
→これが「リサーフェシング」
○金星のリサーフェシング
普段は上部は冷たいプルームの対流、深部で熱いプルームの対流
→たまに熱いプルームが上がってくる
→上下逆転(上が熱く、下が冷たくなる)、表面ではマグマオーシャンを形成
※この金星での大規模な LIP 活動を「リサーフェシング」と呼ぶ
■27億年前の地球
金星の観察から、「■27億年前の変化(一つの説)」(2個前のトピック)を根拠 づける人がいた
90年代後半、これが信じられるようになってしまう…
− 7 スーパープルーム仮説
スーパープルーム仮説について
(※この項目は既述の内容をまとめたものに過ぎません)
■スーパープルーム仮説って簡単に言うと… フラッシング
⇒スーパープルーム上昇
⇒LIP活動
⇒超大陸分裂+プレート運動活性化
■スーパープルーム仮説の根拠
□ホットスポットの分布 アフリカ、南太平洋に多い
□トモグラフィー
○太平洋とアフリカの下では地震波速度が遅い
→高温だとわかる→これスーパープルームだろ(ホットスポットを引き起こすプルー ムの源)
○沈み込んだプレートの形
トモグラフィーを見ると、日本の下で深さ660kmのところでプレートがたまって る
実はアメリカの下では660kmなんて関係なく下まで突っ込んでいるが、まぁとに かく日本の下ではたまっている
→660kmのところに境目がある→フラッシングの証拠
□地形(スウェル)
海底が盛り上がっているのはプルームがプレートを押し上げたからだろう
■過去へさかのぼってみよう
27億年以上前…無数の小さなプレート 20億年前…少数の大きなプレート
→27億〜20億年前の間にプレート・テクトニクスのスタイルが大きく変化
←LIP活動、大陸急成長の影響
∴27〜20億年前に大規模なフラッシングが起こったのだろう
□これは白亜紀(約1億年前)の地球と関連づけて考えられた 白亜紀=フラッシングの例→
・LIP 活動活発(例:洪水玄武岩)
・プレート速度大きい→島弧活動活発→大陸成長
ゆりもどし
スーパープルーム仮説に対して「なんか変だな」「この解釈でいいのか?」という 動き(=ゆりもどし)が起こった
(1)南太平洋のスーパープルーム
南太平洋ではプルームが上昇流を起こしている
↑今までは地面の盛り上がり(=スウェル)が根拠とされた
でも、本当にプルームは上昇するのか?
上昇流が起こるためにはスーパープルームが軽く(密度が低く)なければいけない
■スーパープルームは本当に低密度なのか? 鉄・シリコンが多い→重い
でも、熱膨張によって軽くなりもする
「熱膨張による密度低下」と「化学組成(FeO、SiO2の高密度)」の影響 どっちが大きい?→微妙
⇒もう実際に密度を計っちゃおう!
地震波を用いてスーパープルームの密度を調べると、アフリカ・太平洋の下は密度が 高いという計算になる
∴スーパープルームは重い!?
※この調査法が間違っているという人もいるが、この調査によって「必ずしも軽いと は限らない」と言えた
■重力測定(ジオイドの利用)
ジオイドとは:重力の向きに垂直な面
□ジオイドの形を決める要素1
もし太平洋の真ん中に低密度のスーパープルームがあったら
→軽いところは引力が弱いので、プルームの上らへんの重力の向きは外側にずれる
→プルームの上のジオイドはへこむ
□ジオイドの形を決める要素2 プルームは上昇する
→海底を持ち上げる
→元々海水があった場所に岩石が持ち上げられる
→プルームの上らへんの密度が上がる
→ジオイドが上にふくらむ
□結局要素1と2のどっちの影響の方が強いんだよ!? 2らしいです
理由は、「2の原因の方が距離的に近いから」
1は地下深くに原因があるのに対し、2は海底です
□結局、「盛り上がったジオイドになる」というのが正しい
→でも、そうすると、スウェルの高さは1500mにならなければならないという計 算になる
→実際に観測すると、スウェルは500〜700m
→どういうこと?
□解消されない問題
上に述べたジオイドに関する矛盾はいまだに解決されていない 何かが間違ってるはずだが、どこが違うかは誰にもわからない
だから、研究者が論文を書く時は地形の観測とジオイドのことは一緒に書かない。ボ ロが出るから。これが研究者の間の常識らしい。
(2)本当にフラッシングがあるのか?
■トモグラフィー
い つ も 6 6 0 k m で 沈 み 込 ん だ プ レ ー ト が 横 た わ る わ け で は な い ( = Slab peretiation)
■数値シュミレーション
フラッシングの条件は厳しい→地球の中で条件を満たせるのか?
(3)白亜紀のスーパープルーム仮説
■1億年前のプレート速度
1億年前、プレート速度が速かった
←白亜紀のスーパープルームの根拠
プレート速度は、現在も残っているプレートの一部を調査して計算された
(※調査法は地磁気のシマ模様を見るやつです)
→でも…現在まで残っている部分が狭すぎる上に、1.2〜0.9億年前には地磁気 が反転しなかったということもわかった
→この時期のプレート速度の測定は困難!
しかも、現存する太平洋プレートの速度を調べると、1.8億年間ほぼ一定だとい うことがわかった
■海水準とプレート速度の関係
1億年前は海水面が高かった(現在より200mくらい高かった) だから、プレート速度が速かったのだろう、とされていた
(※「プレート速度が速い⇒海進」の理屈を思い出してください)
→でも、プレート速度は一定なんだろ……?
■海水準の問題の解決 2億年前、
超大陸パンゲアが分裂してその裂け目から新しい海底ができた また、海洋の古いプレートは沈み込んでいった
∴新しい海底が増えて、古い海底が減った
(※「新しい海底=浅い」「古い海底=深い」の理屈も思い出してください)
この影響で海面が上昇していったが、その後、太平洋の若いプレートが沈み込むよ うになったため、海水面は下がっていった
∴海水面は2億年前から上昇⇒1億年前をピークに現在まで下がる
■結論
「プレート速い⇒海面上昇」が正しいからといって「海面上昇⇒プレート速い」とは 言えない
− 8 結局何が残ったか?
結局、「プルーム・テクトニクス」から何がわかったのか
プレート・テクトニクス
北米大陸の地層の観測→27億年前もプレート・テクトニクスがあったとわかった それ以前のプレート・テクトニクスの様式は?→35億年前の地層を観察
■ノースポールの地層観測(35億年前)
ノースポール…オーストラリアのピルバラ地区の地名、「北極」なんてふざけた名前 だが、実際はめちゃ暑いらしい
□シリカの岩脈
絵が描けないのでここで説明することは困難ですが、シリカの岩脈が存在するという ことから火山活動や地面が水平に引っ張られる力が存在していたということがわ かった
∴35億年前もプレート・テクトニクスがあった
■さらにその前は?
38億年前にイスアと呼ばれる沈み込み帯があった
∴38億年前にもプレート・テクトニクスがあった
27億~20億年前
大陸急成長、プレート・テクトニクスの構造変化の時期
■27億年前の大陸活動
小さな無数のプレート+島弧火山
■現在の大陸活動
大きなプレート、クラトン(安定大陸)、プレートと接して活動するのは大陸の活動 縁辺(クラトンの端っこの方)
プルーム→LIP s
プルームの活動により超大陸が分裂
27億年前…特に活発 最近2億年も活発
地球内部構造
(※これはトモグラフィーの成果も大きい)
南太平洋・アフリカの下にはFeO・SiO2・U・Thが多くて高温のスーパー プルームが存在、その周りにはMgOが多くて低温のやつが存在する
スーパープルームの一部がちょっとプカプカ上昇したやつがホットスポット これは仮説云々とかじゃなくて観測事実に基づく
A~Dを大雑把にまとめると
大まかに言って2つのことがわかった
■地球の内部構造(これはそのまま)
■地球史(A~Cの大まかなまとめ) 27億~20億年前の変化
□変化以前
無数のプレートのカオティック(でたらめ)な運動 例:沈み込み帯がやたらたくさんある
□変化後
秩序だったプレート・テクトニクス
※確認になるが、これらは、プルーム・テクトニクスの仮説が原動力となって発見
されたのである
仮想地球
スーパープルーム仮説によってわかったことも多いが、Ⅲ-7-Bのような問題はい まだにある
→じゃあこれからどうすればいいのか?どうやってやっていくべきなのか?
今までのやり方は2通り(下記の(1)と(2))
(1)種々の知見⇒これらを総合⇒地球観
↑でもこれだと、膨大な情報が手に負えなくなるのが難点である
(2)あらかじめドグマを作る⇒情報の取捨選択⇒地球観
ここで、第3の道があった!!
(3)物理帝国主義
これは19世紀的な考え方である
■19世紀の考え方
f=ma、質量保存の法則、熱力学の法則(例:永久機関は存在しない)・・・など の物理法則が発見されている
これらはの物理法則は方程式で表される
→実際に解くことができる
→解けば森羅万象を説明できる??
↑実際、これはバカげた考えであり、例えば人間の気持ちを数式で表すことはできな い
■でも・・・
地球は比較的単純な系であるため、この19世紀的な考え方は地球に関しては使え るものであった
→数式に基づいてコンピュータでシュミレーションする
∴『スーパープルーム=沈み込んだ海洋地殻がたまったもの』だとわかった
■さらに・・・
現在のスーパープルームについてわかったが、地球史もコンピュータで再現できる のではないか?
□27億~20億年前の変化
カオティックなプレート・テクトニクス
↓変化
秩序だったプレート・テクトニクス、スーパープルーム
※ちなみに、スーパープルームが間欠的活動をすることでプレートが割れ、秩序だっ たプレート・テクトニクスが行われることになる(cf.ウィルソンサイクル)
□変化の原因は?
現在の地球と昔の地球とで何が違うのか?
→放射性元素U、Thの量が違う
=グラフで横軸を時間軸、縦軸を放射性元素による発熱量、とすると45億年前から 現在まで緩やかに下降している
(※ちなみに縦軸の単位は[℃/108年](1億年で何℃温度を上げるか)であり、4 5億年前は100、現在は25である)
よって、昔にさかのぼると
⇔放射性元素が増える
⇔スーパープルームが不安定になる(∵温度が上がることで急激な上昇流が頻発)
⇔カオティックなプレート・テクトニクス(上昇流の度にプレートをグシャグシャに 割る→やたら多くの沈み込み帯)
□上記をふまえて、27億年以上前のマントル プルームの上昇流が頻発
→大陸があってもすぐに沈んでしまう
∴大陸は成長できない
※この「□変化の理由」とかが正しいかどうかはわからない。コンピュータで計算し たらこうなった、というだけ。でも、地球の内部についてだいぶわかってきたと言え る。
授業終了
-1 内部進化と表層環境
地球内部の状況と表層環境とがリンクしているのでは?的な話 でも、この「惑星地球科学Ⅰ」の範囲外らしいから詳細は省略
結局「興味のある人は冬学期に『惑星地球科学Ⅱ』をとってください」って宣伝だっ た
-2 最後に
先生のお言葉
「この授業で学んだ内容は実生活では何の役にも立たないが、君たちにはこれを価値 あるものだとぜひ思ってほしい。なぜこんな役に立たないことを調べたのかと言うと 、 ただ単に『知りたいから』である。」
作成者:千葉( 2009.7.9 完成)