労働経済学1(第 12 回)
広島大学社会科学研究科 特任助教
川田恵介
技能訓練と教育
• 技能訓練や教育は、現代社会において、特に重要視 されている。
• 企業と人材産(労総合研究所)によると、2010年度の 従業員一人当たりの教育研修費は、4万1929円
• 家計調査によると、2010年度の月当たりの平均的な 教育への支出は、1万1,734円
• 平成23年度予算案のうち科学技術振興費を除く文教
大学教育(広大医学部)
社内研修(旭紙工株式会社)
公的職業訓練 (
多摩職業能力開発センター府中校)
人的資本
:労働者の能力や技能、等生産に寄与する 労働者の属性の総体
例)コンピューターを扱う技能、プレゼンテーション能力、 語学、対人コミュニケーション、円滑な人間関係 etc
生産量を向上させる、という意味で物的資本(工場や機 械)と似ている。
人的資本の特徴
• 本質として、
• 畜積の様相がきわめて多様
• どこで蓄積するのか(学校、企業 etc)
• いつ蓄積するのか(学生時代、社会人 etc)
• だれが蓄積の費用を負担するのか(本人、雇い主)
• どのような技能を蓄積するのか
Becker の人的資本
大きく2つの方向から分類した。
人的資本の種類 :すべて
の企業で活用できる。
:ある企 業でのみ活用できる。
企業 例)企業によるパソコン 研修
例)極めて特殊な技術の研 修
労働者 例)自費での資格の取 得
例)円滑な人間関係
費用を負担する主体
最適化問題
企業による訓練
利潤を最大にするように、人的資本蓄積を行う。 利潤関数:
(h:人的資本の水準、F(h):労働者一人当たりの生産量、 w(h):賃金水準、c(h):訓練費用、 L:労働者数)
(注) な需要関数を想定
最適化問題
労働者による訓練
効用が最大になるように、人的資本蓄積を行う。 効用関数:
(注)単純化のために垂直な供給関数を想定 ポイントは賃金
人的資本の蓄積水準がどうなるかは、賃金の動きに強く 依存する。
賃金の動き(一般人的資本)
賃金w
労働供給
労働需要
一般人的資本の水準が、ℎ’(ℎ′ > ℎ)まで増加した場合、企 業が支払う賃金は増加する。(増加させなければ、他の企 業に労働者を引き抜かれる。)
�� ℎ
�� ℎ’
一般人的資本蓄積
賃金(限界 収入)
訓練費用
一般人的資本蓄積
人的資本が高まることによる、追加的な生産量の増大 は、労働者の賃金に反映され、労働者の効用のみを増 大させる。
労働者が負担する場合、
賃金の動き(企業特殊人的資本)
賃金w
労働供給
企業特殊人的資本の水準が、増加したとしても、企業は 賃金を増加させなくてもよい。(他の企業での限界収入
(賃金)は変化しない。)
�� ℎ
�� ℎ’
企業特殊人的資本蓄積
賃金(限界 収入)
訓練費用 限界収入
企業特殊人的資本蓄積
人的資本が高まることによる、追加的な生産量の増大 は、労働者の賃金に反映されず、企業の利潤のみを増 大させる。
労働者が負担する場合、
一般的含意
問題は、費用の負担者と受益者のずれ
一般人的資本:すべての企業 で活用できる。
企業特殊人的資本:ある企 業でのみ活用できる。
企 業
負担: ≠受益: 負担: =受益:
労 働
負担: =受益:
負担: ≠受益:
効率的水準
賃金(限界 収入)
訓練費用
限界収入
一般人的資本の問題点
労働者に十分な所得があれば、労働者による技能蓄積 が行われるので問題はない。
労働者の所得が低く、技能訓練を行いたくてもできない場 合、公的な技能訓練や給付を行うことで、効率性を改善
企業特殊人的資本蓄積の問題点
労働者がどの程度真剣に人的資本蓄積を行うか、に技 能蓄積の成果が依存する。
効率的な企業運営のために、労働者に企業特殊人的資 本蓄積を促すような、しくみが必要。
不完備契約の問題
がきわめて重要
例)人的資本の蓄積水準が昇進を左右する。
企業には長期的な賃金体系を壊す誘因が存在する。 例)人的資本蓄積をさせておきながら、賃金を上げない。
企業に約束を守らせる仕組みが必要(慣習、組合、法規 etc (
実証研究
樋口、戸田(2005, 21世紀COE ディスカッションペーパー) 90年代前半までは、幅広い労働者に企業は技能訓練を 行っていたが、それ以降は一部の人材に教育訓練は集 中している。
学校
本格的に就労する前にも、労働者は人的資本蓄積を行っ ている⇒学校での教育
高等教育費の一部は、家計の負担によってなされている。
⇒一般技能を身につけようとする誘因が強い
政策的含意
• 所得の低い家計では、教育を受けさせたくても、受けさ せられない場合がある。また教育で一般人的資本が 身に付く場合、企業には費用を負担する誘因はない。
シグナリング
• 教育により一切人的資本が身につかなくても、大学に 進学する可能性がある。
• 限界生産性が高い労働者のほうが、大学入学にかか る費用が安い(受験勉強がしんどくない)とする。
• 企業は、大学に入学している⇒受験勉強を頑張ってい
シグナリング VS 人的資本
• 自分の限界生産性が高いことをアピールするために、
(生産性にはまったく寄与しない)大学に進学する。
大学に進学すると 人的資本:
VS シグナリング:
実証研究
Ono (2005, Industrial relations)
成績が同じような労働者の間でも、大学の偏差値と労 働者の賃金との関係には、正の関係がみられる。
Abe (2002, Labour Economics)
「銘柄」大学であるか否かは、労働者の賃金に大きな影 響を与える。しかし学部の効果を除去すると、その効果
「能力」 VS 学歴
教育年数
8.8% 「能力」
Ashenfelter and Rouse (1998, Quarterly Journal of Economics) アメリカの双子(一卵性)のサンプルを収集した。
仮定:双子の間では、能力は異ならない。
1.4%