公共経済学 第 8 講 講義ノート 1/ 2
8 公共財問題の解決法 2 :クラークメカニズム、クラブ財
8.0 今回のアウトライン
A. リンダール・メカニズムの限界を超えるクラーク・メカニズムを理解し、その 限界も理解する
8.1 クラークメカニズム
12によるクラーク税
A. リンダール均衡が嘘に脆弱ならば、嘘をつかせないメカニズムはないか B. 嘘が自分には何のメリットもない状態を作り出すさらに巧妙なトリック
✓設定 ✏
• 複数の家計 i が私的財 xiと公共財 G から効用:u(xi, G)
• 政府が公共投資計画を発表して、一人あたり費用 C を提示する
• 家計はそれで得られる便益を表明 bi = Bi−C
• 総純便益
∑bsで正値であれば投資実行、負値であれば中止
• 投資実行の場合、政府は表明者以外の総純便益∑
s̸=i
bsが負値であれば
∑
s̸=i
bsを表明者に税金として請求
• 投資中止の場合、政府は表明者以外の総純便益∑
s̸=i
bsが正値であれば
∑
s̸=i
bsを表明者に税金として請求
✒ ✑
表8.1クラーク税の一覧表(テキストp.59:嘘申告は個人Cが−180) 個人 A 個人 B 個人 C 便益 (bi) 90 70 −80 クラーク税
嘘で投資中止のクラーク税
C. 自分以外の総意を覆して、その投資が決定されたといえる者が税を支払う 1. 自分の便益表明で負担額は変わらないが、投資決定は変えられる
1Clarke, E. H. (1971), ”Multipart pricing of public goods”, Public Choice, 11, 17-33.
2Clarke, E. H. (1972), “Multipart pricing of public goods: an example” in Public Prices for Public Products, S. Mushkin (ed.), Urban Institute, Washington DC.
Ver. 2.1 Masumi Kawade, 2017
公共経済学 第 8 講 講義ノート 2/ 2
2. わざと投資決定を歪めようと嘘をつくと大きなペナルティが科される D. 自分以外の社会純負担 (純利益) を支払うのがポイント
1. 自分の便益表明でも負担額は変わらないが、投資決定は変えられる
2. 嘘をついて支払うことになる費用は投資をさせるにしろ、中止させるにし ろ、そこから得られる純便益より大きい → 不用意に嘘をつくと損をする E. 嘘をつくと負担が増えるというこの妙策をクラークメカニズムと呼ぶ
1. ポイントは自分の評価とは関係のない費用を負担する点 (マイナス分負担)
8.2 クラークメカニズムの利点と問題点
A. クラークメカニズムは嘘を無力化
1. 自分の評価は自分の利益には関係なく、嘘をつくと逆に負担が増える B. 一方で、パレート改善できるかという問題が発生
1. 純便益なので、誰かの厚生が悪化も → パレート改善しない可能性 2. 財政余剰はそのまま使われず政府に納付 → パレート改善の可能性 C. 嘘は無力化できても新たな効率性の問題が・・・公共財は難しい
8.3 クラブ財
A. 公共財を公共財でなくしてゆく方法 — 利用者を限定
1. クラブや利用者の場合は、ほぼ関係者だけで排他的に利用できる 2. クラブ財:非競合性はそのままに、排除性を設けて利用者を限定する B. 排除性を確保、会費を取ることで非競合性があっても収益
1. 会員規模を前提に供給規模を設定・計算できる
C. 図書館の利用などは、現実には在住か在勤を要件としている
8.4 確認問題:次の文章の正誤について答えなさい
A. クラークメカニズムは嘘を抑制できても、パレート最適でなくなる
B. クラブ財は通常の公共財と異なり、クラブ員の供給競争により最適供給される
Ver. 2.1 Masumi Kawade, 2017