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1 / 16 公開質問状1

2017418

東北大学総長

里見 進 殿

2016 12 16 日に公表された東北大学宛て研究不正告発に対する調査

報告書は依拠すべきガイドラインに則らず,しかも事実誤認している。

ガイドラインに基づかない報告書は撤回し,再審議すべきである。

はじめに 問題の所在

昨年(2016年)1216日,東北大学の公式Webサイトに「研究不正疑義の告発に 関する調査結果について」と題した次の記事がリリースされた。

2013116日付け文書(差替え:2013228日付け,追加:2013331 日付け)及び201399日付け文書により,本学宛てに井上明久氏らを被告発者 とする顕名の告発がなされた件について,研究活動における不正行為への対応ガ イドライン(2007年(=平成19年)31日 研究推進審議会研究倫理専門委員会)

(以下,『ガイドライン』という。)に基づく本調査委員会(委員長:四ツ柳隆 夫(元国立高等専門学校機構顧問/元日本分析化学会会長))を設置し,本告発 に係る調査を行いました。

このたび,本調査委員会における研究不正の有無に関する調査結果を踏まえ

『研究不正は無かった』と判断しましたので,調査結果を公表します。詳細につ いては,『調査報告書』をご参照ください。

また,20121012日付け文書にて独立行政法人科学技術振興機構(以下,

JST』という。)から本学宛てに調査依頼のあった井上明久氏らを被告発者とす る顕名の告発案件についても,上記の本調査委員会において調査を行い,その調 査結果を踏まえ『研究不正は無かった』と判断し,JSTに報告しましたので,同様 に調査結果を公表します。」(引用終了)。

ここで紹介されている東北大学宛の201313月期の研究不正告発(以下,前告 発と略称)は,日野秀逸本フォーラム代表世話人らが行ったものであり,これに対す る調査報告書は,疑義は「研究不正ではなく」,「多数の誤りと説明等の不備がある

4.被告発者への提言 12ページ)」と結論した。調査報告書は疑惑対象論文に複数 の不正行為が存在することを事実上認めているが,それらに故意性がないから研究不 正ではないとの判断である。しかし,仮定と推論,あるいは不正に被告発者が気付か なかった可能性があるから故意性がない等,との間接的な否定である。研究不正であ るか否かはガイドラインに則って判断されるべきである。ガイドラインの該当部分を 以下に引用する。

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3 対象とする不正行為 本ガイドラインの対象とする不正行為は,発表され た研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造,改ざん,及び流用である。 ただし,意図しない誤謬や実証困難な仮説など,故意によるものでないことが根 拠をもって明らかにされたものは不正行為には当たらない。(1)捏造 存在しな いデータ,研究結果等を作成すること。(2)改ざん 研究資料・機器・過程を変 更する操作を行い,データ,研究活動によって得られた結果等を真正でないもの でないもの。(3)盗用(引用せずに終了)。」(下線は引用者,以下同様) ガイドラインは,告発された論文中に客観的な不正行為事実が認められ,かつ故 意性が認められると,研究不正行為と認定する。他方,告発された論文中の疑惑行為 が客観的にガイドラインの捏造,改ざん,盗用に,合致する行為であっても,それが 故意でなければ,つまり過失ならば,研究不正行為と認定しない。

また,ガイドラインは「63)③ 被告発者の説明及びその他の証拠によって, 不正行為であるとの疑いが覆されず,故意によるものと推定されるときは,不正行為 と認定される。また,被告発者が生データや実験・観察ノート,実験試料・試薬の不 存在など,本来存在すべき基本的な要素により,不正行為であるとの覆すに足る証拠 を示せないとき(上記②イ)も同様とする。」(引用終了)と,規定している。つま り故意でないことの説明責任は被告発者側にある。

調査報告書が,ガイドラインに基づいた調査結果による判定であるというならば, 当然,その結論である「研究不正は無かった」を支える論理の随所に,告発書が提起 した不正疑惑に対する被告発者の反論が,引用・紹介されていて然るべきである。し かし2つの「調査報告書」には,こうした記述が事実上皆無である。

以下では,2つの「調査報告書」のうち,東北大学宛て前告発に対する「調査報 告書」を取り上げ,この結論が本来依拠すべきであったガイドラインには準拠せず, しかも事実誤認に基づく不当なものであることを示す。これらを明らかにした後,「調 査報告書」に最終責任を負う東北大学総長里見進氏に対して質問を行う。

I 前告発の趣旨と調査報告書が認めた客観的不正行為事実

- 1 前告発の告発対象論文及び参照論文

201313月の東北大学に宛てた前告発で対象とした不正疑惑論文は次の2編で あった。

(1) JIM99論文:Mater. Trans JIM, Vol.40, No.12 (1999), 1382-1389. (Received June 17 1999; final form October 4, 1999), A. Inoue, T. Zhang, M. W. Chen and T. Sakurai

(2) JIM97論文:Mater. Trans. JIM, Vol.38, No.9 (1997), 749-755. (Received May 16, 1997), A. Inoue, T. Zhang and Y. H. Kim

次の論文は上記不正疑惑論文2編の参照論文である。

(3) JIM96論文:Mater. Trans. JIM, Vol.37, No.2 (1996), 99-108 (Received July 24,1995), A. Inoue, T. Zhang, W. Zhang and A. Takeuchi

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- 同一試料の外観写真が, 組成の異なる別の合金として論文に掲載された

事実-捏造疑惑

1は,JIM99論文のFig.1,JIM97論文のFig.2及びJIM96論文のFig.2 の再掲である。 各論文で作製した試料の外観写真が示される。これらの写真はコントラストに違いは あるが,赤色の楕円で囲った3本の釘状試料に着眼すると,形状は同一であり,その ほか映り込んだ物差しと3本の試料の位置関係等から,これら3本の試料写真は,同 一試料を被写体にして撮影したものとみて良い旨,東北大学宛に告発した。この告発 に対する「調査報告書」は次の事実を認定している。(検証結果その2

1 JIM99論文のFig.14本の試料のうちの左3本とJIM97論文のFig.23本の 試料およびJIM96論文のFig.24本の試料のうちの右3本の外観写真は完全 に一致する。つまり,同一試料である。

2 JIM97論文のFig.2のネガフィルムはJIM96論文のFig.2のネガフィルムと異な るが,96 年論文作成時のネガフィルムである(コマが違うのであろう。II-5. 参照)

1 JIM99論文,JIM97論文及びJIM96論文の作製試料の外観写真の再掲

JIM99論文とJIM97論文はともに,同一組成のZr基バルクアモルファス合金(以下, ZrBAと略記)の機械的性質が主題である。同一条件で熱処理を施したにも関わらず 両論文で機械的性質が大きく食い違っている。

新たな研究成果により従来の仮説や研究成果が否定されることは,研究活動の本 質であって,科学的に適切な方法により正当に得られた研究成果が結果的に誤りであ ったとしても,それは不正行為には当たらない。仮にJIM97論文の結果が誤りで,JIM99 論文の結果が正しいとしても,正当に引用,解説していれば,上記の観点から何ら問 題はない。しかしJIM99論文はJIM97論文との違いについて全く引用,言及せず,しか も新しく作製した試料の外観写真として,JIM97論文の写真(実はNd合金の写真)を 流用していることが,JIM99論文の機械的性質データが捏造であると疑われている理 由である。

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4 / 16 NdBA合金に関するJIM96論文作成時に撮影された試料外観写真が,約2年後と 約4年後に,それぞれZrBA合金に関するJIM97論文(Fig.2)JIM99論文(Fig.1)の試料 外観写真として使用された。外観写真はBA試料を作製したエビデンスである。ZrBA 合金の外観写真に,NdBA合金のそれを用いたことは,ガイドラインに規定する捏 造に相当する客観的不正行為事実であると考えられる。

- 3 各論文で同一試料の直径が異なって記載されている事実 改ざん疑惑

1の各写真のキャプション及び関連する本文に,試料直径が以下のように左から 順に記されている。JIM99論文は3451.5 ㎜,JIM97論文は135 ㎜,そしてJIM96 論文は1357㎜。赤色の楕円で囲った3本の試料は同一であると本調査委員会が 認定したが,試料直径がJIM99論文は345 mm,JIM97論文は135 ㎜,そしてJIM96 論文357㎜とすべて異なって記されていることが疑問である。

図2は本調査委員会が,3論文の印刷出版物の該当写真を1000dpiの髙解像度でス キャンして得た画像に,1357mmの長さの付箋を貼り付け,再度スキャンした 画像である。本調査委員会はこれらの写真から3論文の3本の試料の直径は357㎜が 正しいことを確認した。

図2 JIM99論文,JIM97論文及びJIM96論文の作製試料の詳細拡大写真{調査委員会, 調査協力について(依頼),2014221日付}

告発者らが2010年に最初の告発を行った時,印刷出版物の高解像度の写真を用い ることができず,日本金属学会が電子版で提供している解像度の低い写真画像を用い て試料直径を解析した。またJIM99論文の研究不正から調査を開始し,この論文の試 料直径の数値に疑いをもたなかったことから,2010年,2013年の告発時に,JIM99

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5 / 16 文の試料直径,345㎜が正しく,JIM97論文の135mmは誤記であると推断した。 さらに,被告発者がJIM99論文の345㎜が正しく,JIM97論文は誤りであると,別 の告発に対して回答していたことを信用していた。本調査委員会の上記データに接し たとき,われわれはミスを犯したことを自覚した。

ところで,調査報告書は,「検証結果 その3」の「3.2 試料サイズの混乱につい て」で「告発者自身が読み取った告発文中の数値にもまた,誤りがあるという混乱が 生じている」(「調査報告書」,6ページ)としている。本調査委員会から,試料直径 に関する誤りについて確認の質問があり,われわれは誤りを認め,関連して生じた新 たな疑惑を詳しく書いて返信した。このやり取りで問題になった試料直径に関して次 の記述が「検証結果 その1」に認められる。事実に反する結論であるのみならず,被 告発者の研究不正を不問にする悪質な記述である。長文になるが,正確を期すため当 該箇所を全文引用する。

「検証結果 その1 被告発者からのJIM96論文の写真と記述は正しいとの弁 明,ならびに告発者らが,被告発者らがJIM99論文の試料外観写真の直径は34, 5㎜であると同論文に明記し,別の告発に対する回答でもこれを認める証言をして いるため,JIM99論文の試料外観写真の直径は345㎜が正しく,他の論文の試 料外観写真の直径は誤記だと考え,その視点で告発書を作成したとの回答から, 告発者の指摘は誤っており,被告発者の弁明が正しかった。」(引用終了) 長くて理解が困難な文章であるが,「告発者の指摘は誤っており,被告発者の弁 明が正しかった。」が結論であると受け止めるのが普通である。しかし,告発者のど のような指摘が誤りで,被告発者の弁明の何が正しいのかわからない。告発者を不利 に導く,あるいは貶める意図が感じられる,不公平・不公正な記述である。

告発者の指摘とは,告発書に記した「JIM99論文に記載された直径345㎜が正 しく,他のJIM97論文の135㎜とJIM96論文の357㎜は誤り。」である。これが 誤りであることを,本調査委員会の指摘により,告発者らが認識したことは先に述べ た通りである。

図2の説明で述べたように,本調査委員会自身の調査で,JIM96論文の直径1,3,5, 7㎜が正しく,他の論文の試料直径は誤りであることが判明した。しかし調査報告書は,こ の事実をどこにも明記していない。伏せたのである。代わりに告発者の誤りを指摘し,被 告発者の弁明が正しかったと記載し,被告発者の論文記載の試料直径に関する疑義を 顕在化させないように努めたのである。

JIM96論文の直径1357㎜が正しいのだから,同一試料である,JIM99論文と JIM97論文の直径も当然,357㎜である。それをJIM99論文は345㎜,JIM97 文は135㎜と記した。ガイドラインの「改ざん」に相当する客観的不正行為事実で あると考えられる。

上述したように,NdBA合金の外観写真をZrBA合金の試料外観写真として掲 載したのは,捏造に問われる客観的不正行為事実である。さらに,JIM99論文とJIM97 論文の試料直径に改ざんがあれば,研究不正認定は必至である。研究不正の認定を避 けようとして,本調査委員会は,JIM99論文とJIM97論文の試料直径に触れることを注 意深く回避したのである。研究不正疑惑を隠蔽する工作の疑いが濃いと指摘せざるを

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6 / 16 得ない。

- 4 外観写真に別の組成の合金試料の写真が貼り付けられた事実 改ざん

疑惑

調査報告書は「JIM99論文へのJIM97論文の試料外観写真の転用は2つの論文を関 連づける目的で意図的に行われたものである」とした。しかし,JIM99論文Fig.1のキ ャプション及び本文は,JIM99論文Fig.1JIM97論文Fig.2を転載したものであることに 全く言及していない。JIM97論文の試料外観写真のJIM99論文への無断転用である。二 つの論文を関係づける目的ならば,前論文を引用し,必要に応じて説明するのが当然 である。

被告発者は意図的に行ったと言うから,事柄は重大である。JIM97論文の外観写 真(JIM96論文作成時に撮影したNdBA合金の別の視野の写真)がJIM99論文にその まま流用されているばかりか,図1で橙色の枠で囲った別の組成の試料外観写真を元の 写真に貼り付けて,この貼り付けた写真を撮影した写真をJIM99論文の製作試料外観 写真だと銘打って (写真の貼り付けについては一切言及せず)使っている。これは元 写真(この場合の元写真はJIM97論文のFig.2)の改ざん利用そのものである。調査報 告書は,この改ざん利用は意図的に行われた,すなわち故意に行われた,と言うのだ から,調査報告書は,この行為を研究不正と認定すべきであった。

II 研究不正であるか否かの判定 故意でないことが根拠をもって明らか

にされていない

- 1 似た形状の試料であるため,写真を取り違えて使ったとの弁明

調査報告書は「JIM97 論文と JIM96論文で同 一試料の外観写真が 掲載されたことにつ いて,被告発者 らは ,そ の事実を認めた上で『似た形状の試料であるため,JIM97 論文作成時に写真を取り違えて使った』とその故意性を否定している(検証結果 その2)」と記している。これは根拠が示されていない弁明である。そこで,以下 のように両論文の実験方法を比較検討した。

両論文に記載された「試料の作製方法」を比較すると,似た形状の試料は根拠がない のみならず,事実に反する弁明であることが容易に分かる。他方,写真を取り違え ては,本来の写真が存在したことが前提である。関係資料が海難事故で失われた とされるが,本来の写真がどのようなものであったかを,以下で推測する。

さて,図3(次ページ)はJIM96論文の,II 実験方法,に記された試料作製に関 する部分のコピーである。赤下線を引いた部分は「Nd90-

FeAl10母合金鋳塊から約50

㎜の一定長さ,110㎜の範囲の,異なる直径の円柱状試料が,円柱状の空隙(鋳込み 穴)を持つ銅製鋳型に溶融合金を注入鋳造することによって作製された」と記してい る。

図4(次ページ)はJIM97論文の,II 実験方法の項,に記された試料作製に関す る部分のコピーである。赤下線を引いた部分は,「円柱状合金は直径5㎜,長さ100

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7 / 16 の鋳込み穴をもつ銅製鋳型に鋳造して作製した。」と記している。この銅製鋳型 を使えば,直径5㎜で,長さが100㎜以下の円柱状試料が作製される。

図3 JIM96論文の,II 実験方法の項,に記された試料作製に関する部分のコピー

図4 JIM97論文の,II 実験方法の項,に記された試料作製に関する部分のコピー

両論文の実験方法を比較すると,作製される円柱状試料の寸法(直径,長さ)が 以下のように異なる。すなわち,JIM96論文の試料直径は110㎜の範囲の固定値(鋳 込み穴の直径)であるが,JIM97論文のそれは5㎜のみである。他方,JIM96論文の試 料長さは約50㎜と一定であるが,JIM97論文のそれは100㎜以下の任意の値を取ること ができる。

図1に見られたように,JIM96論文Fig.2は直径1357㎜で,長さ3850㎜の試 料が得られている。試料頭部が膨らんでいるのは鋳型形状を反映した結果である。形 状が釘に似ているので釘状試料と呼ばれる。以上より,JIM96論文は,実験方法に記さ

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8 / 16 れた通りの寸法{直径(110㎜の範囲),長さ約50㎜}の試料が作製されていること が確認できる。

JIM97論文が,論文に明記された実験方法通りに試料が作製されるならば,

a)直径が5㎜,長さが0100mmの円柱状試料が得られる。これを撮影したのが, 本節の冒頭で記した,井上氏らが疑惑の「故意性」を否定するために提出すべき であった(実際には提出されなかった)本来の写真である。

(b) JIM97論文Fig.2には直径135㎜(本当は357㎜)の3本の釘状試料の写真 が掲載されている。これと(a)に記した本来の写真とは試料直径が異なる。従っ て,両者の写真を取り違えることは考え難い。

(c) JIM97論文は鋳込み穴の長さ(100㎜)の半分だけ溶融合金を鋳込めば,直径5

㎜,長さ約50mmの試料が得られる。しかしはみ出し部が生じない,つまり釘状 試料ではなく,円柱状試料が得られる。頭部の形状が異なるから,写真を取り違え ることは考え難い。

(d)JIM97論文は鋳込み穴の全長(100㎜)に溶融合金を鋳込めば,直径5㎜,長さ

100mmの釘状試料が作製できる。試料頭部の形状は似ているが,試料長さが2倍異

なる。

このような場合,写真がどのように違って見えるか比べてみる。所定サイズの釘 が入手困難なのでネジで代替して比較する。図5(次ページ)は直径5㎜,長さ100㎜の ネジと直径5㎜,長さ50㎜のネジ及びネジの頭部が欠けた直径5㎜,長さ50㎜の円柱の 外観写真を示す。

5 直径5㎜,長さ100㎜のネジと直径5㎜,長さ50㎜のネジおよびネジの頭部が欠け た円柱

直径5mm 長さ50mm 直径5mm

長さ100mm

形状が似ている? とても信じがたい

直 径 5 m m 、 長 さ 100m mの キ ャ ビ

テ ィ に 長 さ 50mm 相 当 分の 溶融 合金 を 鋳 造 した 場合 、頭 の バ リ 部分 は生 じな い は ずである

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9 / 16 長さが2倍違えば,両者の違いは一目瞭然である。写真を取り違えることは考え難 い。以上示したように,JIM97論文の実験方法の記述通りにZrBA試料が作製されれ

ば,JIM97論文のFig.2とは形状や試料長さが異なる。両者を取り違えるとは考え難い。

実験方法と掲載写真との矛盾を解消するには,実験方法に記された,「直径5㎜,長さ 100㎜の空隙を持つ銅製鋳型」,を変更しなければならない。しかし根拠を示すことな く,実験方法の記述を変更できない。仮にそのようにすれば,研究不正である。

- 2 調査報告書は, 前告発の 写真の取り違え は考えられないとの指摘を無

研究不正の告発に対して,記載ミスをした,使用するデータをうっかり取り違え た等の弁明がしばしば行われる。被告発者はこれまでに同様の言い逃れを何度もして いる。言い逃れを見越して,われわれは追加告発(2013331日)で,「2 試料の 外観写真を取り違えたとは考えらない理由」と題して具体的に指摘した。すなわち, 写真を取り違えて使ったという弁明は,前論文を知らなかった,あるいは忘れたと言 うことと同義である。問題の4論文の筆頭著者はすべて被告発者である井上氏である。 96979899年と4年間連続して論文が公表された。前論文を知らなかった,ある いは忘れた可能性は低いと思われる。(注:98論文は国際会議報告所収論文)

また,先行論文であるJIM96論文の試料直径,1357㎜の前半の135㎜を

JIM97論文はコピーペーストしたのではないかと先の告発書に記した。これについて

は後に言及する。

他方,前告発では,JIM96論文作成時に,3本のNdBA合金試料の左側に1φの 棒が存在する写真と存在しない写真を撮影し,前者をJIM96論文で,後者をJIM97論文 で使用したと指摘した。前告発は,次のように続けた。JIM97論文の外観写真は,論 文作成の約2年前に撮影され保管されていたものを使用した。写真の保管には,被写体 が識別できる番号,名前あるいは記号等が付されている。仮に被写体が不明の写真を ZrBA合金試料の外観写真として用いれば研究不正である。他方,NdBA合金の外 観写真と認識できる写真を,ZrBA合金の外観写真だとして使えば,それも研究不正 である。これら以外の場合に,「写真が取り違えられる」,というのは想像できない。 写真を取り違えたと弁明するなら,取り違えた相手,つまり,本物の写真を提示し, 取り違えたことの根拠を示して証明すべきであると。前告発でわれわれはこのように 指摘しておいた。しかし調査報告書にはJIM97年論文当時の被告発者らの写真の保管 や整理方法に関する具体的な記述が皆無であった。取り違えた理由として被告発者は,

形状が似ている試料と弁明した。しかし,上記したように,「形状が似ている」は, 根拠のない,事実に反する弁明である。JIM96論文の試料外観写真をJIM97論文に用い たことが過失,つまり故意でなかった証明は皆無である。

JIM96論文の試料外観写に関して前告発は,「3本の試料の外観写真撮影時に,1

㎜直径の試料が存在する写真と存在しない写真を相次いで撮影し,前者をJIM96論文 で使用し,後者をJIM97論文で使用した」,と指摘した。これは故意性があるという ことである。調査報告書は,「JIM97論 文Fig.2のネガは,JIM96論文Fig.2のネガと は

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10 / 16 異 な っ て お り 」と わ れ わ れ の 指 摘 を 事 実 上 肯 定 し て い る 。被告発者が故意性を否 定できないと同然である。被告発者は,故意でないことを,根拠をもって明らかにで きていないのである。

被告発者は再現実験を拒否しつつ,自分に都合の良い実験のみを行って済ませる というのは理にかなっていない。本調査委員会は,故意性に関する告発者の主張,被 告発者の主張と共に,それを証拠付ける当時の生データがすべて逸失しているため, 客観的事実を以て不正の有無を明確に結論付けることはできなかった,という。 しかし,このようなケースこそ,被告発者に再実験を要請し,客観的事実をもっ て,写真の取り違えに故意性があったか否か明確にすべきであった。現在,試料 が存在したとしても,当時試料が存在したことの証明にはならない。また,現在5㎜ 直径の試料が作製できたとしても,それは写真を取り違えたことの故意性を否定する こととは無関係である。

以上要するに,異なる論文で同一試料写真を掲載したことが故意でないことを, 被告発者は根拠をもって明らかにしていない。被告発者は故意でないことを,根拠を もって明らかにできないのだから,本調査委員会は不正行為と認定するのがガイドラ インに則ったやり方である。不正行為はないとした,調査報告書は事実誤認である。

III 前告発と本調査から明らかになった, 3論文で同一試料の直径が異なって

記載されている事実は,新たに発覚したデータ改ざんである。

繰り返すが,JIM97論文のキャプションおよび本文は,試料の直径が左から順に1, 35㎜と記載されている。しかし,この数値は全て誤りで,357mmが正しい。JIM97 論文の左端の製作試料の直径を1mmと判定することはそもそも無理である。他方,

JIM97論文の試料直径の誤った数値は,JIM96論文,Fig.2に示された4本の製作試料の

左3本の直径,135 ㎜ と一致する。

JIM96論文の研究成果の一部が,199721011日に米国で開催された,バルク アモルファス合金の構造と性質シンポジウムで,「強磁性バルクアモルファス合金」と 題して発表され,1998年 にMetallurgical and Materials Transactions A Vol. 29A 1998 1779として所収されている。この論文のFig.15JIM96論文のFig.2が採録され,そこに は試料直径が1357㎜と明記されている。

JIM97論文の投稿日は,上記国際会議で発表のわずか約3か月後の1997516日 である。JIM97論文の執筆時に,JIM96論文のFig.2(あるいは国際会議発表論文のFig.15) のキャプションを見て,135㎜の部分を書き写した可能性が濃厚である。

告発者が本調査委員会から指摘された試料直径に関する誤解を率直に認め,その 上で返書を送り上述した問題を記していたのであるから,本調査委員会は,被告発者 に対しても,この問題に関する説明責任を果たすように求めるべきであった。しかし

「調査報告書」にはこの問題への言及は全くない。 作製試料直径の表記には更に次の問題がある。

繰り返すが,「調査報告書」は「JIM99論文へのJIM97論文の試料外観写真の転用

(11)

11 / 16 は2つの論文を関連づける目的で意図的に行われた」(「調査報告書」,7ページ)と している。この調査結果(被告発者らの証言)が妥当ならば,両論文の試料外観写真 のキャプションにおける試料直径として表記される数値は同一でなければならない。 しかし,時系列に整理して,両論文におけるこの数値を見てみると興味深い事実が浮 かんでくる。表1は井上氏らによる3試料の直径表示の変遷を示す。

表1 論文中に記載された3試料の直径表示の変遷

発行年 論文 試料サイズ(直径)

1996 JIM96,Fig2 (NdBA) 1mm 3mm 5mm 7mm 1997 JIM97,Fig.2 (ZrBA) 1mm 3mm 5mm 1999 JIM99,Fig.1 (ZrBA) 3mm 4mm 5mm 注1) 3論文に共通する3試料は,同一試料の外観写真と確認された 注2) 数値の下線は,調査委員会認定とは異なる場合

被告発者らが,1999年時点で同一試料の直径を,JIM99論文,Fig.1のキャプショ ンで変更したのはなぜか? 対象となっている3論文には,それぞれ試料外観写真と ワンセットで,図6に再掲したX線回折(XRD)図形が添付されている。これによって, 外観写真に示された試料がアモルファス合金であることが根拠付けられている。

6 JIM99論文のFig.2,JIM97論文のFig.3 およびJIM96 論文のFig.1の再掲(X 回折図形) JIM99論文,JIM97論文では上から順に試料直径は345mmJIM96 論文では753mm,melt-spun ribbon 0.04x1mmと記されている。

JIM96論文では1mm直径の試料のXRD図形の代わりにリボン試料のXRD図形が示

されているが,3mm直径以上の3本の試料についてはXRDの検証が行われているのが 分かる。問題は,JIM97論文とJIM99論文のXRD図形に添えられた試料直径の表記(こ れは図のキャプションに記載されている試料直径の表記でもある)と両論文の試料外 観写真キャプションの試料直径表記との対応関係である。

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12 / 16 JIM99論文は試料外観写真に掲げられた直径3mm以上の試料は345mmである が,JIM99論文のFig.2にも同一直径(3, 4, 5㎜)のXRD図形が存在する。しかし,JIM97 論文,Fig.3345mmXRD図形は試料外観写真(Fig.2)の試料直径135mmと明 白に齟齬する。

われわれが,2010621日付けでJSTに宛てて,研究不正告発を行った際,告発 対象論文は,JIM99論文1つであり,JIM97論文は告発の参照論文であった。当時「1, 35mm」がJIM96論文と同じ並びの数値だとは知らなかった。被告発者らがNdBA 合金の写真をZrBA合金の写真と偽ってJIM97論文,JIM99論文を書いていたとは思 いもよらなかった。他方, 1990年代に被告発者らが執筆した論文は,試料外観写真と XRD図形がワンセットで掲載されていることが専らであった。このため,JIM97論文, Fig.2のキャプションにおける試料直径,「135mm」は誤記であり,Fig.3XRD図 形の「345mm」が正しいと思われる,と告発書に記入していた。

2014221日付けで本調査委員会から届いた質問状には,被告発者が2010年の告 発審議の際,JIM99論文Fig.1の試料外観写真の「試料abcの直径はそれぞれ34

5mmであり,1997年論文のFig.2では誤記になっています」,と証言したと記されてい

た。しかし,この証言には二重の虚偽がある。訂正したJIM97論文の数値が虚偽だし,

JIM99論文の数値も虚偽であったからである。

本調査委員会が認定した事実 -これはわれわれも認めた事実だが-,JIM96論文 の試料外観写真キャプションの数値が正しいならば,JIM97論文の試料直径,13, 5mmは,既述のようにJIM97論文の執筆時に,JIM96論文のFig.2(あるいは国際会議発 表論文のFig.15)のキャプションを見て,135㎜の部分を書き写した可能性が濃厚で ある。左端の試料直径と映り込んだ物差しとの乖離を勘案すると,これ以外にこうし た数値がここに記入される理由は考えられない。このことは,井上氏らが,「故意に」, つまり自覚してJIM97論文でJIM96論文のFig.2(あるいは国際会議発表論文のFig.15)を 改ざん流用をしたことの動かぬ証拠であると考えられる。

JIM99論文Fig.1の試料直径,345mmについてはどうか?井上氏らは本調査委 員会に対して,JIM99論文Fig.1は,意図して1997年論文のFig.2を転用=流用したと証 言しているが,単純な転用=流用であるなら(それ自体,井上氏らはJIM99論文で何 の断りもしていないのだから,明白な研究倫理違反だが),試料直径は135㎜でな ければならない。しかし実際に記入されている試料直径は345mmである。この数 値が記載されているのは,結局,JIM97論文の数値では,試料外観写真とワンセット で掲載したJIM99論文Fig.2(これはこれでJIM97論文のFig.3の転用=流用である)の XRD図形に記入された試料直径,345mmとの整合性がつかないから,JIM97論文,

Fig.2の数値を変更=改ざんした,と断じてよいであろう。言葉を換えれば,JIM99

Fig.1では,NdBA合金の試料外観写真が,ZrBA試料として掲げられている(デ ータ捏造)ばかりか,同時に試料直径が改ざんされている,と言ってよい。

IV 質問事項

以上を踏まえて,われわれは東北大学総長里見進氏に質問を行う。

(13)

13 / 16

(1)最初に述べたように,東北大学は公式 HP で,ここで取り上げた調査報告 書をリリースするさい,「研究不正疑義の告発に関する調査結果について」と 題した記事で,調査委報告書が依拠したガイドラインは,「研究活動における 不正行為への対応ガイドライン(2007年(=平成19年)31 日 研究推進 審議会研究倫理専門委員会)」であった,と明記している。調査報告書は,被 告発者には「不正は無かった」と判定したが,調査報告書が,このガイドラ インに基づいた調査結果による判定であるならば,当然,その結論である「研 究不正は無かった」を支える論理の随所に,告発書が提起した不正疑惑に対 する被告発者の反論が,引用・紹介されていて然るべきである。なぜなら, このガイドラインによれば,不正行為の認定は,客観的不正行為事実があり, しかもその行為に「故意性」がある場合である。他方,客観的不正行為事実 がありながら,被告発者が調査委員会による不正判定を免れる=回避すること が出来るのは,「根拠をもって」当該行為が「故意」ではなかったこと,つま り「過失」に過ぎなかったことを「明らか」にする場合に限られている。し かし詳しく見たように,調査報告書には,こうした記述が事実上皆無である。 もし,里見氏が東北大学のこの調査報告書の結論を是認するならば,な ぜ是認できるのかを,具体的で明確,明解に,かつ可及的速やかに,貴大学 の公式HPで公表されたい。

(2)調査報告書では,「不正は無かった」と縷々述べたのは,四ツ柳氏を委員 長とする本調査委員会であって,ガイドラインが想定している被告発者であ る井上氏らではない。

井上氏らがJIM96年論文の研究成果である釘の形状をしたNd基のBAの 写真の写真を,何の断りもなく,無断で,Zr基のBA写真と偽ってJIM97論文, JIM97論文に掲載した。JIM96年論文の研究成果である釘形状とJIM97年論文 の製作試料とが「似た形状の試料であるため,JIM97論文作成時に写真を 取り違えて使った」,と言うのが井上氏らの弁明である。これを「錯誤によ る取り違え」と本調査委員会は判定し「不正は無かった」と認定したのだが, この結論は明らかに誤っている。第1に,確かに,JIM96論文,JIM97論文,JIM96 論文の製作試料外観写真を横に並べて全体を概観すれば,図1に示したように, 製作試料は形状大きさ共に瓜二つである。しかしこれは,同じ写真を(正確

にはJIM97論文に比べると,それぞれ1本ずつ違うが)横に並べて見ているか

らであるに過ぎない。「Ⅱ-1 似た形状の試料であるため,写真を取り違 えて使ったとの弁明」で示したように,JIM97論文の「実験方法」欄を見る 限り,釘状の試料が出来るとすれば,その撮影写真の長さはJIM96年論文の 50mmではなく,100mm以上のものであり,100mm以下なら,そもそも釘状 の写真にはならない。この場合,直径は5mm以外のものは作製できない。そ もそも太さの違う3本釘や4本釘の写真ができるはずがない。したがって井 上氏の「似た形状の試料であるため,JIM97論文作成時に写真を取り違え て使った」と言う弁明自体が虚構の産物なのである。

写真の保管には,被写体が識別できる番号,名前あるいは記号等が付さ

(14)

14 / 16 れている。仮に被写体が不明の写真をZrBA合金試料の外観写真として用い れば研究不正である。他方,NdBA合金の外観写真と認識できる写真を, ZrBA合金の外観写真だとして使えば,それも研究不正である。これら以外 の場合に,「写真が取り違えられる」,というのは想像できない。前告発で われわれは,写真を取り違えたと弁明するなら,取り違えた相手,つまり, 本物の写真を提示し,取り違えたことの根拠を示して証明すべきだだと,指 摘しておいた。しかし調査報告書にはJIM97年論文当時の被告発者らの写真の 保管や整理方法に関する具体的な記述が皆無であった。取り違えた理由とし て被告発者は,形状が似ている試料と弁明した。しかし,上記したように,

「形状が似ている」は,根拠のない,事実に反する弁明である。JIM96論文の 試料外観写真をJIM97論文に用いたことが過失,つまり故意でなかった証明は 皆無である。ガイドラインに従って判定すれば,井上氏らは,JIM97論文,

JIM99論文で客観的不正行為事実が現存することを認めており,この行為に

「故意性」がなかったことを,根拠をあげて証明出来ていないのだから,調 査委員会は「不正があった」と認定すべきであった。里見氏は,こうしたわ れわれの事実認識を否定し,あくまで調査委員会の判定が正しいとの立場に 立つなら,その根拠を,具体的で明確,明解に,かつ可及的速やかに,貴大 学の公式HPで公表されたい。

(3)前告発でわれわれは,製作試料外観写真の直径寸法について誤った認識を 有していた。調査委員会から事前の問い合わせが2014221日付けであった 際,このミスに気付き,そのことを認めると共に,JIM97論文,JIM99論文の 試料直径の寸法表示に虚偽があること,加えて井上氏らは2010621日付け のわれわれの研究不正告発が東北大学対応委員会で審議されたときにも虚偽 申告をしていることを明記してその調査を調査委員会に要求した。しかし, 調査報告書を見ると,この論点は何事もなかったかのように調査報告書から 完全に消え去り,JIM97論文,JIM99論文の試料直径の寸法表示に改ざんの事 実があること,および証言があったことを全く不問に付している。本調査委 員会の試料直径探索の正当性を踏まえ,JIM97論文,JIM99論文を読み解くと, 両論文では,「III 3論文で同一試料の直径が異なって記載されている事実 は,前告発とその本調査から新たに発覚した研究不正(データ改ざん)であ る。」に記したとおり,新たな論文不正疑惑が生まれていると言って良い。 里見氏は,JIM97論文,JIM99論文の試料直径の寸法表示に明確な改ざん疑惑 を,本調査委員会の再審議させる必要があると考えないのか?不要だという なら,その根拠を,具体的で明確,明解に,かつ可及的速やかに,貴大学の 公式HPで公表されたい。

(4)「Ⅰ-4 外観写真に別の組成の合金試料の写真が貼り付けられた事実改 ざん疑惑」で詳しく見ているように,JIM99論文Fig.1のキャプション及び本 文は,JIM99論文Fig.1JIM97論文Fig.2を転載したものであることに全く言及 していない。JIM97論文の試料外観写真のJIM99論文への無断転用である。被 告発者の井上氏らは,これを「意図的に」行ったというのだから,事柄は重

(15)

15 / 16 大である。JIM97論文の外観写真(JIM96論文作成時に撮影したNdBA合金 の別の視野の写真)がJIM99論文にそのまま流用されているばかりか,図1で 橙色の枠で囲った別の組成の試料外観写真を元の写真に貼り付けて,この貼 り付けた写真を撮影した写真をJIM99論文の製作試料外観写真だと銘打って

(写真の貼り付けについては一切言及せず)使っている。これは元写真(こ の場合の元写真はJIM97論文のFig.2)の改ざん利用そのものである。里見氏 はこの疑惑について,本調査委員会に再審議させる必要があると考えないの か?不要だというなら,その根拠を,具体的で明確,明解に,かつ可及的速 やかに,貴大学の公式HPで公表されたい。

(5)この調査報告書が本来のガイドラインに従って審議された結果を取り纏め たものではないことは明白である。基本ルールに基づかない審議結果は再審 議させるのが当然である。里見氏は本調査委員会の再審議が必要だとは考え ないのか?不要だというなら,その根拠を,具体的で明確,明解に,かつ可 及的速やかに,貴大学の公式 HP で公表されたい。ちなみに,調査報告書が 再三繰り返すのは,「錯誤による取り違え」は不正ではない,という文言であ る。本来のガイドラインでは,「錯誤」であれ何であれ,客観的不正行為が「過 失」に基づくものであれば,確かに「不正」とは判定されない,と言う決ま りがある。しかしその場合には,被告発者が自らの責任で告発された客観的 不正行為事実が「過失」の結果であることを,根拠をもって明らかにする必 要があった。われわれはこのことにこだわった。

ところが,今回の本調査委員会の発足(21013111)の後,本調査 委員会の第1回会合(2013124)直前の20131126日付けで,東 北大学役員会が急遽制定した「研究活動における不正行為への対応ガイドラ イン」(以下,2013年ガイドライン)では,東北大学が最初に制定した2007年 31日付けのガイドラインにあった但し書き,「ただし,意図しない誤謬や 実証困難な仮説など,故意によるものでないことが根拠をもって明らかにさ れたものは不正行為には当たらない」がすっかり書き換えられ,「ただし,意 図しない誤謬や実証困難な仮説,過誤など故意に基づかない行為,科学的見 解の相違,研究分野における一般慣行によった行為,単なるデータの記載ミ スや錯誤による取り違えなどはこれに該当しない」となった。この改訂は看 過しがたい。①最初のガイドラインでは,被告発者が研究不正の嫌疑から逃 れるために行うことが義務づけられている「故意性」を否定する立証責任規 程が,つまり嫌疑が「過失」から生じたことに関する立証責任規程が削除さ れ,②同時に,嫌疑すなわち客観的不正行為事実が「過失」(「過誤など故意 に基づかない行為」,「単なるデータの記載ミス」,「錯誤による取り違え」)で あるかどうかは,調査する側(大学側)の判定マターになり,③この判定マ ターに,「過誤など故意に基づかない行為」,「単なるデータの記載ミス」そし て「錯誤による取り違え」という,「過失」に関する3つの代表例と「科学的 見解の相違」,「研究分野における一般慣行によった行為」という2行為が加 わり,大学側が,告発された客観的不正行為事実をこれらの行為(総計7行

(16)

16 / 16 為)に分類すると,いわばアプリオリに,「不正行為には当たらない」と判定 されることになったからである。この本調査では,こうした除外規程のうち,

「錯誤による取り違え」がJIM97論文とJIM99論文に適用され,調査報告書 では,「不正は無かった」と判定されたのではないのか。

もし,里見氏が,調査報告書ではこうしたルール違反がなされていない, との立場を取るなら,否定できる根拠を,具体的で明確,明解に,かつ可及 的速やかに,東北大学の公式HPで公表されたい。

(6)最後に,里見氏は,この調査報告書を公表する際,特に総長コメントを公 表し「錯誤」=虚実の取り違えという大学教員しかも被告発者には前総長食 経験者が含まれているにはあるまじき失態を再三学術論文で繰り返すのは 甚だ問題であるとして,調査委員会が報告書の末尾で行った被告発者への提 言,すなわち,疑惑論文が公表された学術誌に被告発者である井上氏らが訂 正を申し出ることについて,「適切に対応する責任ある行動を強く求め」た という。しかし,当該学術誌を見る限り,この実行はまだ報じられていない。 里見総長がわざわざこうしたコメントを出したのだから,最後まで井上氏ら に提言の実行を迫るべきではないのか。出来ない,と言うなら,その根拠を, 具体的で明確,明解に,かつ可及的速やかに,東北大学の公式HPで公表され たい。同時にその際,学術誌への訂正申し入れが,本来どうあるべきかの範 例も示すべきであることを申し添える。

図 1 は, JIM99 論文の Fig.1,JIM97 論文の Fig.2 及び JIM96 論文の Fig.2  の再掲である。 各論文で作製した試料の外観写真が示される。これらの写真はコントラストに違いは あるが,赤色の楕円で囲った3本の釘状試料に着眼すると,形状は同一であり,その ほか映り込んだ物差しと3本の試料の位置関係等から,これら3本の試料写真は,同 一試料を被写体にして撮影したものとみて良い旨,東北大学宛に告発した。この告発 に対する「調査報告書」は次の事実を認定している。(検証結果その 2
図 6  JIM99 論文の Fig.2,JIM97 論文の Fig.3  および JIM96  論文の Fig.1 の再掲( X 線 回折図形)   JIM99 論文, JIM97 論文では上から順に試料直径は 3 , 4 , 5mm , JIM96 論文では 7 , 5 , 3mm , melt-spun ribbon 0.04x1mm と記されている。 JIM96 論文では 1mm 直径の試料の XRD 図形の代わりにリボン試料の XRD 図形が示 されているが, 3mm 直径以上の 3 本の試料につ

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