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E in SM04 最近の更新履歴 物理学ノート

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Academic year: 2017

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(1)

4 カノニカル分布の基本的な応用

4.1 理想気体

単原子分子から成る理想気体のモデルとして,体積V(= L

3)

の箱に密閉された質量mの自由粒子N個か ら成る系を考える*18。この系のエネルギー固有状態は{n

(j)

α }α=x,y,z;j=1,...,Nという3N 個の正整数の組で指 定され,対応するエネルギー固有値は,E0

α=x,y,z N

j=1

(n(j)α )2で与えられる。ここでE0=2mLπ222 である。

問題14. 上記の系の逆温度βにおける平衡状態をカノニカル分布を用いて議論する。 14-1.分配関数Z(β, V, N )を定義に従って書け。

14-2.βE0≪ 1と課して総和を積分に置き換え,Z(β, V, N )を計算せよ。

14-3.エネルギーの期待値⟨ ˆHと熱容量を求め,熱力学と整合することを確かめよ。

14-4.ヘルムホルツの自由エネルギーF(β, V, N )を計算し,F(β, V, N )が示量性であることを確かめよ。 14-5.圧力P(β, V, N )とエントロピーS(β, V, N )を求め,熱力学と整合することを確かめよ。

4.2 常磁性体

身の周りにある磁石(強磁性体)は,マクロな磁気モーメントを持っている。マクロな磁気モーメントは,固 体中の電子が持つ微小な磁気モーメントの足し合わせである。磁気モーメントMが一様な磁場Hの中に置 かれると,HM の相互作用によって

EZ(M ) = −M · H (4.1)

なるゼーマン・エネルギーを持つ。

素粒子の1つである電子には,有限の質量と電荷*19の他に,スピンと呼ばれる固有角運動量がある*20。 そのため電子はµ0∼ 9.285 × 10−24J T−1の磁気モーメントを持つ。スピンに由来するこの磁気モーメント は,スピン磁気モーメント,あるいは単にスピンと呼ばれる。

z軸方向の一様磁場H= (0, 0, H)の中に電子が1つ固定されているとき,電子のエネルギー固有状態には スピンがz軸の正方向を向いた”上向き状態(↑)”とz軸の負の方向を向いた”下向き状態(↓)”が存在する。 スピンを表す物理量σˆ

σ=

{ 1, スピンが上向き

−1, スピンが下向き (4.2)

と定義すれば,各固有状態におけるエネルギー固有値は

Eσ= −µ0Hσ (4.3)

で 与 え ら れ る 。仮 にH > 0 な ら 上 向 き 状 態 の エ ネ ル ギ ー が 低 く ,下 向 き 状 態 の エ ネ ル ギ ー が 高 い 。逆 に

H <0なら上向き状態のエネルギーが高く,下向き状態のエネルギーが低い。このように,スピンは磁場と同

じ向きに揃おうとする傾向を持つ。

自習12. 磁気モーメントM と磁場Hのうち,示量変数および示強変数に対応するのはどちらか? また,電 場Eと電気分極P,電位V と電荷qの組でも考えてみよ。

*18

プリント#2の例題2を参照。

*19ミリカンの油滴実験および比電荷の実験で測定したように,e= 1.602 × 1019C,me= 9.109 × 1031kgである。

*20

電子は大きさ

1

2の固有角運動量を持つ。詳細は量子力学で学ぶ

(2)

16 4 カノニカル分布の基本的な応用 次に上と同様な電子がN 個ある場合に拡張する。各スピンにj = 1, 2, . . . Nと名前を付け,j番目のスピ ン変数σj

σj =

{ 1, スピンjが上向き

−1, スピンjが下向き (4.4)

と定義する。全体のエネルギー固有状態はN 個のスピン変数の組1, σ2, . . . , σN)で指定され全部で2N りある。各スピン間に相互作用がなければ,全系のエネルギーは

E12,...,σN)=

N

j=1

(−µ0j) (4.5)

で与えられる。

問題15. 1つのスピンσˆからなる系の分配関数Z(β, H, 1) を求めよ*21。さらにσˆの期待値⟨ˆσ⟩を求めよ。 問題16. 互いに独立なN個のスピンからなる系において,磁化mˆ

ˆ m:= 1

N

N

j=1

µ0σˆj (4.6)

と定義する。これはスピン1つあたりの磁気モーメントに対応する。 16-1.この系の分配関数Z(β, H, N )を求めよ

16-2.磁化mˆ の期待値⟨ ˆm⟩を計算しグラフで表せ。また,磁化mˆ のゆらぎσ[ ˆm]を計算せよ。 16-3.磁化率 χ(β)

χ(β) := ⟨ ˆm⟩

∂H H=0

(4.7)

を計算し,磁化率がどういった量か説明せよ。

16-4.ヘルムホルツの自由エネルギーF とエントロピーSを求め,断熱消磁について説明せよ。

4.3 調和振動子

角振動数ω1次元調和振動子の平衡状態を考える。この系のエネルギー固有値は En=(n+1

2 )

ω (4.8)

となることが量子力学で計算されている。ここで量子数nn= 0, 1, 2, . . .という非負の整数である。 問題17. 1次元調和振動子1個からなる系の分配関数Z(β, 1)を求めよ。またエネルギーの期待値⟨ ˆH1を計 算し,kT

ω の関数として図示せよ。

問題18. 互いに独立で角振動数の等しいN 個の1次元調和振動子からなる系を調べる。 18-1.分配関数Z(β, N )を求めよ。

18-2.内部エネルギーUと熱容量C(T ) =

∂U

∂T を計算し, kT

ω の関数として図示せよ。

18-3.ヘルムホルツの自由エネルギーF およびエントロピーSを求めよ。

*21

引数の1は,スピンが1個であることを表す。

(3)

4.4 カノニカル分布とヘルムホルツの自由エネルギー最小分布・エントロピー最大分布

問題19. ある系がエネルギーEiの固有状態にある確率をpiとして,系のエントロピーSを S:= −k

i=1

pilog pi. (4.9)

で定義する。ここでは,指定された条件の下で許される状態の数である。

19-1.温度T が一定という条件の下,ヘルムホルツの自由エネルギーF

F := ⟨ ˆH⟩ − T S (4.10)

を極小にするpiはカノニカル分布であることを示せ。ここで⟨ ˆH⟩ =

i=1Eipiである。

19-2.エネルギーの期待値⟨ ˆH⟩ =

i=1Eipi = E が一定という条件の下,エントロピーSを極大にする 分布piはカノニカル分布であることを示せ。

4.5 カノニカル分布の古典極限

質量mの粒子N 個からなる系を古典的に考える。各粒子の位置座標をr1, . . . , rN,運動量をp1, . . . , pN とすると,系の古典的なハミルトニアンH は,粒子間相互作用のポテンシャルをφとして,

H(r1, . . . , rN, p1, . . . , pN) =

N

i=1

p2i

2m+ φ(r1, . . . , rN) (4.11)

と書ける。

系の古典的状態を指定するには,各粒子の位置座標r1, . . . , rN と運動量p1, . . . , pN を定めれば良い。すな

わち,6N次元の相空間*221Γ := (r1, . . . , rN, p1, . . . , pN)によって系の古典的状態が指定される。こ こで,古典的な状態すなわち点Γが量子力学的なエネルギー固有状態に対応し,

状態Γが出現する重み” ∝ e−βH(Γ) (4.12)

が成り立つと仮定する。逆温度βでの平衡状態を記述するカノニカル分布において,古典的な状態Γが現れ る確率密度をp(C, β)(Γ) と書くと,系が状態Γ近傍の微小体積∆Γに含まれる確率はp(C, β)(Γ)∆Γとなる。 確率密度を全相空間で積分すると1なので,この確率密度は

p(C, β)(Γ) = e−β

H(Γ)

∫ dΓ e−βH(Γ) (4.13)

のように規格化される。ここで,dΓ := d3r1· · · d3rNd3p1· · · d3pN6N 次元相空間上の積分である。この 確率密度より,古典的な分配関数は

Z(β) = 1 N!h3N

dΓ e−βH(Γ) (4.14)

と書ける。ここで,プランク定数hを使って分配関数が無次元数となるようにした。

*22Γ

空間と呼ばれることもある。

(4)

18 4 カノニカル分布の基本的な応用 問題20. 古典的極限でのカノニカル分布の確率密度(4.13)から,マクスウェル・ボルツマン分布

p(M−B,β)(p) =

( 1

2πmkT )

3 2

exp [

p

2

2mkT ]

(4.15)

p(M−B,β)(v) =( m 2πkT

)

3 2exp

[

mv

2

2kT ]

(4.16)

を導け。(4.16)式はマクスウェル・ボルツマン速度分布と呼ばれる。

問題21. 古典的な分配関数(4.14)について考える。

21-1.運動量の積分を実行せよ。またその結果を用いて低温と高温での性質を述べよ。

21-2.上の結果を体積V の立方体に閉じ込められたN個の自由粒子に適用し,その分配関数を求めよ。

問題22. 質量mで角振動数ωを持つ自由度1の調和振動子の平衡状態を古典的に考える。

22-1.分配関数の古典的表記を求め,エネルギーの期待値を計算せよ。

22-2.調和振動子の変位をxˆとして,xˆのゆらぎσ[ˆx]を求めよ。

問題23. ˜N 個の座標変数x1, x2, . . . , xN˜,及びそれらに対応する運動量p1, p2, . . . , pN˜ を持つ系を考える*23

この系の古典的なハミルトニアンが

H(x1, . . . , xN˜, p1, . . . , pN˜) =

N˜

j=1

p2j 2mj

+

M

j=1

mjωj2x2j

2 (4.17)

と書けるとする。ここでM ≤ ˜Nであり,mjは座標xjに対応する粒子の質量を表し,ωjは座標xjに対応す る調和振動子の角振動数を表す。この系の分配関数およびエネルギーの期待値を求め,エネルギー等分配則に ついて説明せよ。

問題24. 一様重力の下にある理想気体の平衡状態を古典近似のもとで調べる。位置座標をr= (x, y, z)とし,

0 ≤ x ≤ L, 0 ≤ y ≤ L, 0 ≤ z ≤ H (4.18)

を満たす体積V = L2H の箱に閉じ込められた質量mの単原子分子を考える。それぞれの粒子間に相互作用 はなく,ポテンシャル

v(r) = mgz (4.19)

による外力(重力)だけが働いているとする。

24-1.逆温度βの平衡状態における分配関数を求めよ。

24-2.エネルギーの期待値を求め,低温と高温での振る舞いを述べよ。

*23

対象とする系が3次元中のN個の粒子ならN˜ = 3Nである。また2次元中ならN˜= 2N1次元中ならN˜= Nとなる。

(5)

[4] [3][1][2]

参考文献

[1] 久保亮五,市村浩,碓井恒丸,橋爪夏樹. 大学演習熱学・統計力学. 裳華房, 1961. [2] 高橋康. 統計力学入門−愚問からのアプローチ. 講談社サイエンティフィック, 1984. [3] 田崎晴明. 熱力学=現代的な視点から. 新物理学シリーズ32.培風館, 2000.

[4] 田崎晴明. 統計力学I. 新物理学シリーズ37. 培風館, 2008.

参照

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