1 増加する無縁死
222、231、230、これは平成24年、25年、 26年に江東区内で無縁死、孤独死した人の数
です。江東区は去年の6月で人口50万人にな りましたが、毎年230人ぐらい無縁死、孤独 死の人が出ています。江東区は8割が集合住 宅です。UR賃貸は23区の中で江東区が一番 多く、都営住宅が一番多いところは足立、江
東は2番目に多いです。集合住宅が多いと地 域の絆等が希薄になります。
「行旅死亡人」という言葉があります。こ
れは法律用語で、名前も住所も分からず、遺
体を引き取る人もいない死者のことです。行
旅死亡人になると、官報に出ます。官報に、
例えば「ベレー帽をかぶった50絡みの男性が アパートの一室で死亡していました。どなた
かお心当たりのある方はご遺体を引き取りに
来てください」と公示されるわけですが、誰
も引き取り手はありません。無縁死、孤独死
した人は、大塚の監察医務院で検視され、親
族も何も見つからない人は行旅死亡人となり、
区役所が葬儀費用を出して火葬と無縁葬をし
ます。お骨は、お寺に合祀するためにゆうパ
ック等で送ります。私も自転車でお骨を持っ て行ったこともあります。
東京でも、集合住宅が多い地域は同じよう
な状況です。県全体で高知県は、平成23年の 1年間で62人。鹿児島県は平成22年で24人 です。鹿児島県に比べたら江東区は10倍です。 こういった状況が大都市ではあるわけです。
2 成年後見制度創設のきっかけ
平成11年までは、福祉サービスというのは 措置制度、希望は聞きますが行政が一方的に
決める制度でした。しかし、社会福祉基礎構
造改革で、平成12年度から福祉も全て契約に なりました。介護保険サービスも契約です。 希望するサービスを提供するところと自由に
契約すればいいわけです。
しかし、判断が不十分な人については、自
分でサービスを選択し、契約することが困難
です。それは後見人に任せましょうというこ
とで、平成12年から成年後見制度ができまし た。平成12年というのは介護保険が始まった 年です。福祉サービスが契約になったという
ことと同時に成年後見制度も始まったわけで す。
民法の禁治産、準禁治産者は、本人のため
ではなくて、相続人のための制度です。相続
人が本人の財産が散逸しないように、本人が
財産を使えないようにする制度だったので、
平成11年に廃止されました。代わりに成年後 見制度というのが民法でできたわけです。
3 判断が不十分な人とは
判断能力が不十分な人とは、認知症、知的
障害、精神障害の人です。精神障害というの
は統合失調症やうつ病、双極性障害等のこと
です。昔は、分裂病と言われていて、例えば
幻覚や被害妄想で妄想や幻聴等が主な症状に
なります。また、高次脳機能障害といって脳
にダメージを受けて判断能力が低下した人等
というのは、自分の権利を適切に行使できな
かったり、権利侵害の標的になりやすかった りします。
実は、判断能力がない人との契約は無効で
す。例えば、こどもは成人するまでの間は、
親権者、親が法定代理人です。法定代理人と
いうのは法律的な代理人で成年後見人も法定
代理人です。こどもが難しい契約や事件に巻
き込まれた場合は、法定代理人である親権者
が手続や支援を行います。ですので、成年後
見人というのは、認知症等で判断が不十分な 人のバックアップをするわけです。
4 判断能力が不十分な人の不利益
判断能力が低下した人というのは身体的、
精神的暴力などの虐待に遭いやすいです。ネ 【前期】第3回 6月30日(木)講演要旨
事例でわかる成年後見制度
~安心して老後を暮すために~
【講師】江東区権利擁護センター
係長
間庭
まにわ尚之
な お ゆ きグレクト、介護放棄も虐待です。
私たちが今いろいろと関わっているのは経
済的虐待です。例えば、今、80.50問題という のがあります。80歳の親と50歳の子が同居し ていて、子は就職していない。親の年金で暮
らしている。親は介護が必要なのに年金が減
ってしまうから、子がサービスを使わせない、
これも虐待です。これはネグレクトの虐待で
もあり、経済的虐待でもあります。すごく深
刻な問題ですが、こういう人を救うのは非常
に難しい。福祉の職員がボランティアみたい
な感じで関わったりするようになってしまう。
福祉の職員は、給料が安いのに本当に一生懸
命やっている。悪質な事例というのは非常に 多いので、何とかならないかと思います。
4 セルフネグレクト
セルフネグレクトとは、拒否が強い人、自
分で「支援を要らない」と言う人のことです。
明らかに支援が必要なのに、「ヘルパーさん要
らない」「支援は必要ない」と言い、ごみ屋敷
で亡くなるという事例があります。自分で自
分のことを放任しているということでセルフ
ネグレクトといいます。これは非常に関わり
づらい。なぜかというと、私たちは強制的に
その人を助けることはできない。その人の同 意がないと介入できないからです。
5 後見人の役割
成年後見人の重要な役割は、財産管理と身
上監護の2つです。身上監護とは、生活・医 療・介護などに関する契約や手続きを行うこ
とです。これを怠ると家庭裁判所から、後見 人を解任されたりします。
後見人は代理権、同意権、取消権という非
常に強い権限を持っています。代理権という
のは、その人の法定代理人として動けます。
取消権というのは、後見人は、認知症の人が
してしまった契約を問答無用で取り消せます。
ただし、100円のお菓子を買った等という軽微 なものは取り消せません。同意権というのは、
後見人の同意なくしては難しい契約は結べま
せん。認知症の方が契約を結ぶときには後見
人の同意が必要です。ですので、同意権で、
同意はしていないから契約は無効であると言
えますし、契約したとしても、取消権で取り
消せます。これが法定後見制度です。もう一
つ、任意後見制度というものがあります。簡
単に説明すると、自分たちが元気な間に、前 もって後見人を指定しておくことです。
6 成年後見人選任の流れ
認知症になった人がいた場合の相談先は、
地域包括支援センターです。江東区では長寿
サポートセンターといって中学校区に1つあ
ります。そこは高齢者福祉の支援の拠点です。
もし何かありましたら長寿サポートセンター に連絡してください。ただし、65歳未満の場
合は保健所です。
65 歳以上で認知症になった人に後見人をつ
ける場合は、家庭裁判所に申し込みを行いま
す。申し込みができるのは 4 親等以内の親族 です。4親等以内の親族がいない、身寄りがな い場合は首長が家庭裁判所に申し込みを行い ます。これを首長申立といいます。
近年、身寄りがない人が増えて、首長が家
庭裁判所に申し込みを行うケースが急増して
います。私たちが支援する場合というのはこ の首長申立の案件ばかりです。
この場合は後見人を専門職の団体に依頼し
ます。専門職で後見人を一番多く受けている
のは司法書士、次に弁護士、次に社会福祉士。
私は社会福祉士なので、後見人を務める資格 はあります。
申し立て後に裁判官が審判で後見人を選任
します。後見人の報酬は、本人の財産の中か
ら家庭裁判所が指定した金額になります。言
い値ではありませんので、お金が少ない、貯
金や年金等が少ない人は少ない報酬になりま す。
生活保護の人も受けられます。生活保護の
人の場合は管理する財産がほとんどないので、
後見人をつけることはあまりないのですが、
貧困ビジネスにひっかかってしまう人もいる
のでつけるときもあります。この場合、専門 職の人たちの報酬は区が出します。
7 ご相談ください
判断能力が低下したときは成年後見制度の
支援というのが非常に大きな武器になります。
身の回りで認知症の人がいたら、長寿サポー
トセンターへご連絡ください。権利擁護セン