第1章 ミクロ経済学について
ミクロ経済学
講義資料
なぜ市場を学ぶか
ミクロ経済学は市場を分析対象とする
市場とは,価格に基づいて人々がさまざまな財・サービスを
する仕組みのこと
財・サービスの値段である価格にもいろいろある
お金の取引に関する価格は金利
通貨の取引に関する価格は為替レート 労働サービスの取引に関する価格は賃金 住宅サービスの取引に関する価格は家賃
→ このように,経済の多くの取引は価格を通じてなされるので, 市場と 価格の働きを知ることは経済を理解する上できわめて重要
市場の分析方法(その1)
ミクロ経済学では,市場の機能を調べるときに
均衡分析を用いる
均衡分析とはいろいろな調整が行われて落ち着いた状
態のこと
超過供給(売れ残り)
超過需要(モノ不足)
x p
p*
D S
p1
p2
ある一つの市場に注目して分析する方法を部分均衡
分析といい,経済すべての市場に注目して分析する
方法を一般均衡分析という
一般均衡分析の方が一般的で望ましいと思われかも知れない
が,対象を絞った方が深い分析が可能である
何を分析するかに応じて使い分ける必要がある
→ 悪天候がりんご価格に及ぼす影響を分析する場合は部分均衡分析 を,りんご価格とみかんなど他の果物の価格との関連について分析 する場合は一般均衡分析が望ましい
市場の分析方法(その2)
分析方法には,実証的分析と規範的分析という区別も
ある
実証的分析:理論やデータを用いて,経済の現状を調べたり
将来の状態を予測したりする
→ 価値判断を伴わないので,客観的に正しいか否かを判別できる (「郵政民営化は経済を活性化する」というのは実証的命題)
規範的分析:望ましい経済状態を実現する方策を考える
→ 価値判断を伴うので,客観的に正しいか否かを判別できない
(「郵政民営化は国民の利益になる」というのは規範的命題)
市場の分析方法(その3)
1.現実を現実のまま理解することはできないので,現実
を理解するために理論モデル(模型)が用いられる
2.モデルとは,現実から本質的でない要素を省略するこ
とにより,現実を単純化したもの
家の模型を使った地震の実験
わが国のロケットの実験(23cmのペンシル・ロケットから始まった)
3.経済モデルは様々な変数からなる
価格,所得,消費量,生産量などなど
モデルとは
1.経済モデルには2種類の変数がある
モデルの外から与えられる変数 → 外生変数
(パラメーター)モデルの中で決まる変数 → 内生変数
経済モデル 内生変数 外生変数
外生変数
外生変数 外生変数
内生変数と外生変数
2.連立一次方程式でモデルを表現すると・・・
モデル
x , y c
1, c
2a
1, a
2b
1, b
2内生変数と外生変数
a
1x + b
1y = c
1a
2x + b
2y = c
2"
# $
3.外生変数と内生変数はモデルの設定によって変わる
りんごの需要量決定モデル[消費者の意思決定をモデル化]
りんご需要量は内生変数 りんご価格は外生変数
消費者の所得は外生変数 りんご需要量
りんご価格 所得
内生変数と外生変数
りんごの価格決定モデル [りんご市場での価格決定をモデル化]
りんご価格が外生変数から内生変数になったことに注目せよ! りんご供給量は内生変数
りんご需要量は内生変数 りんご価格は内生変数 天候は外生変数
消費者の所得は外生変数
りんご需要量 りんご価格
所得
りんご供給量
天候