(その2) ―土木史の縦割り講義―
北九州市にあった九州共立大学(現在工学部は閉部)で、最初に土木史を講義した際、テキストとしてある 土木史の専門書を使用した。同書は土木技術の変遷や興味深い人物が多く登場し、「土木の何たるか」がよく 理解できる本である。ところが、テキストに沿って講義しているうち、だんだん講義がやり難く感じてきた。 各講義時間の話がスムーズに流れないのである。講義する方が迷っていて、聞く方の学生が理解できるはずは ない。原因は、テキストが古代から近代まで各時代に分けて論じられているため、各専門講義科目の都市計画・ 河川・道路・港湾・橋梁・測量等々については、各々の話が時代毎に分断されていて、話がつながらないから であると考えられた。
筆者が土木史に興味を持ったのは、三十数年ほど前、土木学会編「明治以前日本土木史」(昭和 11 年岩波書 店刊行)を古書店で購入し、時々読んでいたからである。同書の構成が〈第一編 河川・運河・砂防〉〈第二編 開墾・干拓・埋立・溜池・灌漑・排水〉〈第三編 港津・航路・航路標識〉〈第四編 道路・橋梁・渡場・関所〉
〈第五編 都市造営〉〈第六編 城塁〉〈第七編 水道〉〈第八編 測量〉〈第九編 土木行政〉〈第十編 施工法〉と 縦割りとなっていたのを思い出し、講義を各専門講義科目毎に縦割りで行うこととした。
講義内容は以下の通りである。
① 土木とは何か?
○ アフガニスタンにおける 中村 哲医師の土木事業
○ 土木名僧伝
② 土 木 史 序 論
③ 都市造営・国土デザイン
④ 道路・鉄道
⑤ 橋梁
⑥ 港湾・空港
⑦ 治水、溜池・ダム
⑧ 上下水道・用水
⑨ 測量
⑩ 日 本 の 将 来 と 土 木
原則として、各時間を「読み切り小説」とすること、講義はパワーポイントで行い、図・写真を多く取り入 れること、講義を要約したプリントを配布すること等を決め、テキストは使わないこととした。
そこで、テキストが時代毎の横割り構成であるのに対し、講義は各専門講義科目毎の縦割りで行うこととし た。学生たちには、講義の縦糸とテキストの横糸とで土木史という布が織り上がるから、試験のときテキスト をよく読むように忠告した。
専門学校の生徒は、敷かれた線路の上を如何に早く走るかという受験戦争の勉強は不得意である。しかし現 在は、右肩上がりの経済の時代は過ぎ、自ら線路を敷いて道なき道を進まなければならない時代に入っている。 受験戦争の勝ち組は、線路を敷く仕事には不向きである。原発事故の際の超エリートと言われた人々の混乱ぶ りを見ればよく分かる。受験戦争の勝者には線路を敷く仕事は不向きなのである。
有史以来、こつこつと線路を敷き、わが国をこれまでを支えてきたのは額に汗して働いてきた職人たちであ る。千年以上続いている会社が世界に7,8社有るそうである。最長の 1300 年間続いているのが大阪の建築 会社金剛組である。その他の社も全てわが国に存在する。職人仕事は、やる気があればできる。専門学校には、 本物の土木の職人を育てて頂きたい。