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第 11 章
総需要・総供給モデル
11.1 物価と実質マネーサプライ
物価: 様々な財・サービスの総合的な価格水準
•例:消費者物価指数(Consumer Price Index) – 2015年の価格水準:100.0、2016年:99.9
•物価は経済状況の変化とともに自然と変動する
実質マネーサプライ: 名目マネーサプライから物価の影響を排除したもの=MPs
•名目マネーサプライで、実際にどれだけモノを購買できるか表す 例: 名目マネーサプライが20%、物価が20%上がる場合
•実質マネーサプライは変化しない
•給料が上がっても、モノの値段も同様に上がれば、実質的な購買力に変化はない
11.2 総需要と総需要曲線
総需要: 支出側GDP =消費+投資+政府支出+純輸出 IS-LMとの関係:IS-LMの均衡GDPが総需要に対応
総需要曲線(Aggregate Demand Curve): 物価が変化したときの総需要の変化を表す
•「安いほどたくさん買う」というミクロの需要曲線に形状は似ている
• IS-LMモデルから導出(総需要はIS-LMモデルで求められるのだから当然)
•「物価が上がると購買力が下がる」ことを表している
明海大学マクロ経済学:影山純二(学生用) 総需要曲線の導入: 物価が上昇したケースを考える
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明海大学マクロ経済学:影山純二(学生用)
11.3 総供給と総供給曲線
意味: 国全体の供給合計(供給力、生産力)
総供給曲線(Aggregate Supply Curve): 物価が変化したときの総供給の変化を表す
•様々な形状が考えられるが、ここでは「短期」と「長期」を考える 短期: 物価が変化するだけの時間的余裕がない(価格メカニズムが不完全)
•企業は急に価格を変化させることができない→購入量にあわせて生産量を調整
•何らかのショックが経済を襲った時、生産量(総供給)で調整
•結果、総供給曲線は水平になる
長期: 物価が変化するだけの時間的余裕がある(価格メカニズムが完全)
•長期的に考えると供給量は生産能力(潜在GDP、完全雇用GDP)で決定
•何らかのショックが経済を襲った時、購入量が生産能力に等しくなるように、価格が調整
•結果、総供給曲線は潜在GDP (完全雇用GDP)上で垂直になる 潜在GDP、完全雇用GDP: 人口、資本量、技術などによって決定
総供給 物価 (P)
AS 物価は変化せず 生産量が変化する
総供給 物価 (P) AS
最適な生産量を 達成するように、 物価が調整される
右上がりの総供給曲線: 短期と長期の間(中期)の総供給曲線と考えることが可能
11.4 総需要・総供給 (AD-AS) モデル
長期的な均衡点: 何のショックもなければ経済(GDPや物価)はその点から動かない
•需要曲線と2本の供給曲線が交差する点
•均衡GDP (実際のGDP)と潜在GDPが一致 –消費者の買いたい量と企業の作りたい量が一致
11.5 課題
(A4、上部に課題番号、学籍番号と氏名、計算過程も記入、読みにくい場合は減点) 1. 総需要曲線を、物価が下落した場合を利用してグラフを用いて導出せよ。61