合金のミクロの世界を制御する
大学院工学研究院・大学院工学院 准教授
大野
おおの
宗一
むねかず
(工学部応用理工系学科応用マテリアル工学コース)
専門分野 : 材料科学,計算材料科学,金属組織学 研究のキーワード : 金属,合金,シミュレーション,結晶成長 HP アドレス : http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/MSESC/
合金のミクロの世界とは何ですか?
合金とは複数の金属元素あるいは非金属元素を混ぜ合わせた材料のことですが、私は構 造物に使用される構造用材料を主な研究対象として、合金材料の状態を支配する摂理の解 明や今までにない性質をもった新しい合金材料の開発を行っています。私達の身の周りに は多くの合金材料がありますが、それらが開発されたプロセスをみてみると、材料開発の キーテクノロジーはミクロの世界の制御にあることが分かります。ここでいうミクロの世 界とは、肉眼で観察できるよりも小さく、原子や分子のレベルよりは大きなスケールのこ とで、10−9−10−4 mの世界です(図1、図2)。
図2に示したのは、合金を光学顕微鏡や電子顕 微鏡で観察したときに現れる模様の例です。顕 微鏡レベルの空間スケールにおいては、結晶の 配列が異なる領域や濃度が異なる領域が様々な サイズと形態を有して存在し、いわゆる空間パ ターンを形成しています。これが合金のミクロ の世界であり、顕微鏡で観察される空間パター ンを金属組織と呼びます。
何を目指しているのですか?
私が専門とするマテリアル工学は、ほぼ 全ての工学の基盤となる分野であるといわ れています。様々な分野において、新しい テクノロジーを実現するために新しい材料 の開発が求められています。先に述べたよ うに、新しい合金開発の鍵はミクロの世界 の制御、すなわち金属組織の制御にありま す。金属液体が固まるとき、固体金属を熱 したり変形させたりするとき、また合金の 成分を変化させたとき、その条件に敏感に 反応して多様な金属組織が現れます。そし て、そのパターン(粒子のサイズや形態な
出身高校:北海道北見北斗高校 最終学歴:北海道大学大学院工学研究科
マテリアル
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ど)に応じて、硬度、強度、変形能、電気伝導や磁気特性などの合金の性質が著しく変化 します。つまり、金属組織の制御が新材料開発の要諦といえます。
私は、金属材料の中でも特に鉄鋼材料を対象として、その金属組織を望みどおりに制御 することを目指した研究を行っています。鉄鋼材料は私達に最も身近な金属材料であり、 既に様々な用途で活躍していますが、更なる高度化・高機能化の余地があり、未だ多くの 可能性を秘めた魅力溢れる材料です。その用途や使用量から想像できるかもしれませんが、 新たな鉄鋼材料の開発というのは、レアメタルの問題、温室効果ガス排出の問題、エネル ギー問題といった大変重要な問題に直結する社会的意義の高い取り組みといえます。
どのように研究しているのですか?
金属組織を望みどおりに制御するためには、その組織が形成するプロセスを解明し、温 度や圧力など私たちが通常コントロールできるパラメータと組織の関連性を知る必要があ ります。シミュレーションは、これを実現するための有効な手段の一つです。私は金属組 織をシミュレートするための数学モデルの発展とシミュレーション・理論・実験を相補的 に組み合わせた研究を行っています。図3は、金属組織が形成する様子をシミュレーショ ンによって再現した結果を示しています。いずれも、鉄鋼材料の金属組織を計算したもの です。このようなシミュレーションによって金属組織のダイナミクスが解明されつつあり、 より優れた合金材料の開発へとつながっています。
次に何を目指しますか?
合金は異なる元素を混ぜ合わせた材料であることを初めに述べましたが、混ぜる元素の 種類とその成分量の違いによって無限の種類の合金が存在します。つまり、マテリアル工 学には無限の可能性があり、私達が想像もしていない未知の性質をもった合金がどこかに 眠っているはずです。シミュレーションを活用して、一つでも多くの優れた合金を探り当 てたいと思います。
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