環境にやさしいエネルギー
都市ガス
杉山裕之
対象学年 3 時間●小学4・5・6年 ●中学 年度版2012
テキスト
008 都市ガス
ごあいさつ
最新環境教育(二酸化炭素(CO2)等)授業用テキストシリーズは、2005 年に発刊されるやいなや全 国に広がりました。津々浦々の教室で、テキストに基づく授業がなされ、たくさんのドラマが生まれま した。子どもたちの感想は、「おどろき」に満ちたものでした。「日本の技術がこんなにすごかったこと をはじめて知った」「日本人であることを誇りに思った」「たくさんの技術者の努力がすごいと思った」…。
日本の子どもたちは、日本の技術者の二酸化炭素削減への努力を知ることにより、日本人であるこ とを誇りに思ったのです。このような授業は、これまであまりありませんでした。
テキストシリーズを作って7年が経ちました。その間も、日本の技術は進歩しています。地球温暖 化対策など環境をめぐる国際情勢も大きく動いています。
日本企業は、すでに省エネルギー技術の開発で実績をあげ、世界で最高水準のエネルギー効率を達 成しており、我が国の二酸化炭素排出量はアメリカや中国に比べて相当に低いレベルにあります。
オリンピック競技に例えたら、日本は 100 mを 10 秒フラットで走っているのに、アメリカ、中国は、 100 mを 10 数秒で走っている、20 秒で走っている状態と言えます。
京都議定書は、こうした世界各国の違いを考慮に入れず、削減目標を設定しました。日本は、100 m 10 秒フラットをさらに縮めて9秒4にしなければならないというように、非常に厳しい条件となり ました。
こうした厳しい条件の中で、日本企業は、さらに効率を改善して二酸化炭素の排出を抑制する努力 をしてきました。
環境問題という地球全体に関わるテーマについて、その途中過程を「授業化」し、多くの子どもたち に正しく伝えるのは、教師の大切な役目だと思います。TOSS の各教科の専門家が全国から集まり、日 本を代表する多くの企業の専門家や研究者と連携をとりテキストを作成しました。
今回の改訂においても、多くの方の協力をいただきました。
今後も全国各地で授業がなされ、「日本の努力」「日本の前進」「これからの課題」について、子どもた ちが理解してくれたらと思います。
最新環境教育研究会代表 TOSS 代表 向山 洋一
最新環境教育(二酸化炭素(CO
2)等)授業テキスト指導案
2/授業テキスト指導案 授業テキスト指導案/3 主な発問・指示
1.身のまわりで使われている都市ガスを調べよう
〈問題1〉
下の絵で都市ガスを使っているところ、または使っている かもしれないと思うところを○で囲んでみましょう。
〈問題2〉
家の中以外にも町に出ると、いろいろなところで都市ガス が使われています。何にガスが使われているか下のイラス トをみて書きましょう。
【まとめ】
都市ガスは、主に火や熱が必要なところに使われているほか、 最近では、大規模な冷暖房や小規模な発電にも使われていま す。
2.都市ガスはどこからやって来るのか、たどってみよう
〈問題3〉
都市ガスはどこから私たちの家にやってくるのでしょう。 下の図でたどってみましょう。
【まとめ】
天然ガスを原料とする都市ガスは、ガス田で掘り出され、 液化されてタンカーで運ばれ、ガス工場で気化されたもの が、導管(パイプライン)で私たちの家庭まで届けられます。
3.環境にやさしい天然ガス
(1)海外から液体にして運ばれる天然ガス
〈問題4〉
都市ガスの原料には、天然ガスとプロパンガス(LPG)などが 使われます。このうち、海外から運ばれてくる天然ガスは、 液体にして日本まで運ぶので、液化天然ガス(LNG)といいま す。日本の都市ガスの原料でいちばん多く使われているもの はなんでしょうか、下のグラフを見て□の中に書きましょう。
指導上の留意点
・テキスト通りに進める。
テキストの問題を読み、子どもたちに 答えさせていく。
・家の中にあるものの名前を全員で声を 読ませてもよい。
確認
・何を○で囲んだか、発表させる。
・答えを確認し、テキストに赤鉛筆で○ をつけさせる。
意見が分かれたものについては、深入 りしないことも必要。
・都市ガスの用途として給湯、蒸気の供 給、空調(冷暖房)、調理、工場での生 産工程(ものづくり)、発電などがある。 それぞれの建物や施設で、可能性のあ る用途を考えてみる。
・絵で通り道を「赤鉛筆」でなぞらせ、 一つ一つの場所を○で囲ませる。
・日本では天然ガスは液化して体積を 減らし、タンカーで海外から運んで いる。
・導管で運ばれることが、都市ガスの特 徴である。なお、天然ガスではなく、 製造ガスによる都市ガスの場合、工場で 石油などからガスをつくって送り出す。
・都市ガスの原料として、海外から輸入す る LNG が圧倒的に多いことをおさえる。
〈問題5〉
液化天然ガス(LNG)がどこから輸入されているか、下のグ ラフをみて、多い順に 3 カ国を□の中に書きましょう。
(2)二酸化炭素の出る量が少ない天然ガス
〈問題6〉
天然ガスは「地球にやさしい」「環境にやさしい」といわれま す。それはなぜでしょう。下の図をみて考えを書きましょう。
【指示】
燃やしたときに出る二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)、 硫黄酸化物(SOx)を比べました。石炭を 100 とすると、石油、 天然ガスはそれぞれどうなっているでしょうか。表をみて 気づいたことを書きましょう。
【まとめ】
天然ガスは、燃やしたときに出る二酸化炭素の量で、石炭 に比べ 60% 程度、NOx は 40%程度、SOx については、全 く発生しないというように、大気(空気)を汚さない「地 球にやさしい」「環境にやさしい」エネルギーです。
(3)都市ガスをむだなく使う
〈問題7〉
下の絵は、都市ガスを燃やして発電するときに、同時に発生 する熱も利用するコージェネレーションシステムあらわして います。発生する熱を何に利用しているか、書きましょう。
〈問題8〉
都市ガスのガスコージェネレーションシステムは、どのよ うな場所でどのようなことに使うことができるでしょう。 2ページの家庭、3ページの学校、商店、工場で考えてみ ましょう。
・主な輸入先については、地図などを 利用して、その位置を教える。
天然ガスは世界各地に豊富に存在し、 中東以外の地域からも確保できる。 2011 年度輸入先
1位 マレーシア 2位 カタール 3位 オーストラリア
・資料では、
①「石炭」「石油」「天然ガス」の3つ が比較されていることを 確認する。 ②その3つの化石燃料を二酸化炭素 (CO2)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸 化物(SOx)の3つについて、比較 しているグラフである。
そのために、まずは(他の2つを手 で隠して)二酸化炭素(CO2)だけ について、比較するといった進め方 も有効である。
・発電時と送電時にロスが生じる電力と 異なり、都市ガスは使用する場所ま で 100%保持された形で届けられる。 更にコージェネレーション(電熱供給) システムで電気と熱を都市ガスから取 り出せば、総合的なエネルギー効率は 大変高くなる(小規模分散電源)。
・2・3ページをもう一度見て考える。レ ストラン、ホテルをはじめどの施設 でも、あるいは家庭でもコージェネ レーションはエネルギーの有効活用 と二酸化炭素削減に役立つ。 1. 対象学年: 小学高学年・中学以上(3時間)
2. ね ら い: (1) 都市ガスがどのようにして私たちのところまでやって来て、何に使われているかをおさえる。
(2)環境にやさしい天然ガスの特質と、これを活かした利用法と可能性を理解する。
4.都市ガスの新しい使いかた
(1)家庭用燃料電池「エネファーム」
〈問題9〉
燃料電池のしくみを説明した下の文章の①~④の□にあて はまることばを□の中から選んで書きましょう。
(2)天然ガス自動車
〈問題10〉
天然ガス自動車は、ガソリン自動車やディーゼル自動車とく らべて、走るときに出る二酸化炭素の量はどのような違いが あるでしょうか。下のグラフを参考にして、考えを書いてみ ましょう。
〔発展学習〕未来の天然ガス利用
(1)燃料電池自動車
問題9と関連して、燃料電池のしくみについて、図をもと に説明したり、インターネットなどで、調べさせるとよい。
(2)メタンハイドレート
インターネットなどを使って、メタンハイドレートの可能 性について調べさせるとよい。
4/授業テキスト指導案
・問題9の解答
都市ガスを使った燃料電池は、都市ガ スから水素を取り出し、大気中の酸素 と反応させて電気を作る。その時に出 る熱でお湯を沸かす。水素と酸素から 発電するときに出るのは水だけなの で、従来よりも二酸化炭素を約 48% 減らすことができる。
・感想を何人かに発表させる。
・「天然ガス自動車」を街で見かけたこ とがないか、尋ねてみるとよい。
自分が住んでいる自治体で、ごみ収 集車やバスが天然ガス自動車になっ ているかどうか調べておくとよい。
・天然ガス自動車はガソリン車やディー ゼル車と基本的に同じしくみで、燃料 系統のみが異なるだけなので、実現性 が高い。