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-平成22年度第1四半期の判決について- 「特技懇」誌のページ(特許庁技術懇話会 会員サイト)

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全文

(1)

いたことや第三者への再頒布や開示が禁止していたこと 等の事実を認めることはできないので,甲1の配布の対 象者は,不特定の者であったと解するのが相当であると された事例]

本願発明:

 洗濯運転に使用する複数のスイッチおよび表示器を備え る洗濯機に関し,その複数のスイッチのうちの特定のス イッチを特殊操作することにより,洗濯機の検査モードに 変更でき,またその検査結果の表示をできるようにした。

「【請求項1】洗濯運転に関連する複数のスイッチおよび複 数の表示器を備えると共に,洗濯運転に使用されるモータ, 給水弁および排水弁等の負荷機器を備えた洗濯機を検査す るものにおいて,前記複数のスイッチのうちの特定のス イッチを特殊操作することにより検査制御を開始する検査 制御手段を備え,この検査制御手段は,複数のスイッチに, 各スイッチの通常使用時の機能内容と無関係に検査パター ンを割振っており,この各スイッチを個別に操作すること によって,該当する検査パターンに従い,複数の表示器へ の表示信号の出力を制御すると共に,前記負荷機器への制 御信号の出力を制御するようになっていることを特徴とす る洗濯機の検査装置。」

判示事項:

 甲 1 は,……全自動洗濯機 NA-F55A2 について作成した 「テクニカルガイド」で,「発行 平成 5 年 2 月」の記載等 から本件出願前にサービス業者に配布されたと推認され る。……洗濯機を取り扱うサ−ビス業者は全国に多数存在 し,又,甲 1 に,通し番号を付すなどして管理していたこ 第1 はじめに

 平成 22 年度第 1 四半期に言い渡しされた判決について その概要を紹介する。

 当期における判決総数は,特実が34件(査定18件,当事 者系16件),意匠1件(当事者系のみ)であり,審決取消件 数(取消率)は,特実9件(26.5%),意匠ゼロ件であった。  審決取消率の内訳を見てみると,特実では,査定系につ いては,取消率は 38.9%(取消件数 7 件)で,前年度の取 消率 26.9%を上回り,当事者系については,無効 Z 審決の 取消はゼロであり,無効 Y 審決の取消率は 20.0%(取消件 数 2 件)で,前年度の取消率 28.6%を下回り,当事者系全 体の取消率は 12.5%となり,前年度の取消率 29.0%を下 回った。

 取消事由についてみると,相違点判断の誤り(2件),引 用発明認定の誤り(1件),刊行物頒布判断誤り(1件),記載 要件判断誤り(1件),新規事項判断誤り(2件),訂正要件判 断誤り(1件),審判請求期間経過判断誤り(1件)であった。  今回は,これら特実の敗訴案件 9 件の中から 6 件を選ん で紹介する。なお,ここで紹介する内容,特に所感の項に ついては,私見が含まれていることをご承知おき願いたい。

第2 審決取消事例

1 特実系審決取消事件

 当期の審決取消を要因別に分けると以下のとおりである。 (1)新規性・進歩性

 ア 刊行物配布の認定誤り(事例①)  イ 引用発明の認定誤り(事例②)  ウ 相違点の判断誤り(事例③④) (2)新規事項追加判断の誤り(事例⑤) (3)訂正要件判断の誤り(事例⑥)

(1)新規性・進歩性  ア 認定の誤り(事例①)

① 平成21年(行ケ)第10323号(発明の名称:洗濯機の検 査装置)(3部)

 無効 2009-800039, 特許 3177077

  [甲1には,通し番号を付し配布先を特定して管理して

シリーズ

判決紹介

− 平成22年度第1四半期の判決について −

首席審判長 

小椋 正幸

操作パネル上のスイッチの うち,例えば,「スタート」「脱 水」「タイマー」のスイッチ を同時に押すと検査モード のスイッチ動作に変化する。

(2)

イ 引用発明の認定誤り(事例②)

② 平成21年(行ケ)第10361号(発明の名称:耐油汚れの 評価方法)(3部)

  不 服 2007-28437 号, 特 願 平 11-331836 号( 特 開 2001-147189 号)

 [本願発明のような平易な構成からなる発明では,判断

をする者によって,評価が分かれる可能性が高いといえ ……主観や直感に基づいた判断を回避し,予測可能性を 高めることが特に,要請されるとされた事例]

本願発明:

 従来の汚れの評価方法は,高価な試験装置が必要である とともに,測定に多くの時間と労力とが必要であり,評価 に多大なコストを要していた。本願発明は,評価を安価に 行い得る耐油汚れの評価方法を提供することを課題として いる。

【請求項1】被評価物(11)の表面(11a)を水平面に対して 特定の角度(α)に傾斜するように固定し,油脂とカーボン ブラックとを有する特定量の擬似油汚れ(14)を該被評価物 (11)の表面に滴下し,続いて特定量の水を該擬似油汚れ (14)よりも上方の該被評価物の表面に特定の高さから滴下 して,該擬似油汚れの残留状態により該被評価物の耐油汚 れを評価することを特徴とする耐油汚れの評価方法。」 と,配布先を特定して管理していたこと,第三者への再頒

布や開示が禁止していたこと等の事実を認めることはでき ないので,甲 1 の配布の対象者は,不特定の者であったと 解するのが相当である。

所感:

ア審決 審決が,甲 1(Technical Guide No.361 全自動洗 濯機 NA-F55A2)は,特許法 29 条 1 項 3 号にいう刊行物と は認められず,本件特許出願前に頒布された刊行物が存在 せず,本件発明 1 は,特許法 29 条 2 項の規定により特許を 受けることができないとすることはできない旨判断した。

イ判決 これに対し判決は,「特許法29条1項3号所定の「刊

行物」を「頒布」するとは,不特定の者に向けて,秘密を 守る義務のない態様で,文書,図面その他これに類する情 報伝達媒体を頒布することを指す。…………甲 1 につき, 頒布の対象者及び秘密保持契約の有無の観点から検討す る。……頒布の対象者について……本件全証拠によるも, 甲 1 のテクニカルガイドについて,通し番号を付すなどし て管理されていたことや,配布先を特定して管理されてい たこと,又は第三者への再頒布や開示が禁止されていたこ と等の事実を認めることはできない。そうすると,甲 1 の 配布の対象者ないし所持者は,不特定の者であったと解す るのが相当である。……秘密保持契約の有無について…… 甲 1 には,……公知の事項が多数含まれており,仮に,秘 密保持契約を締結するのであれば,守秘義務の対象を特定 するのが自然であるが,秘密として取り扱うべき事項の特 定がされた形跡はない。」と判示した。

ウ所感 判決は,甲 1 号証である「刊行物」が「頒布」され

たものであるかどうかを判断するには,①「頒布の対象者」 が不特定の者であると解されるかどうか,そして,②甲 1 号証の作成者と甲 1 号証の配布の対象者との間に「秘密保 持契約を締結した事実」が認められるかどうかについて判 断することが必要であるとしている。

 そして,①「頒布の対象者」が不特定の者であるかどう かは,甲 1 の作成目的,配布先,及びその管理の状況や第 三者への再配布や開示の禁止の事実について検討するこ と,また②の「秘密保持契約を締結した事実」の有無につ いては,秘密保持契約を締結する場合に行われる守秘義務 の対象の特定の有無について検討することが示されてい る。製品のマニュアル類が引用例として提示された場合の 「頒布」の認定判断の際に参考となる事例である。

(本願発明)

疑似油汚れ 被評価物

【引用刊行物Cの主な記載事項】

「2.1 試料 ……

2.2.2 表面への有機物付着の影響評価

(3)

されるのであって,そのような判断過程に基づいた説明が 尽くせない限り,特許法 29 条 2 項の要件を充足したとの 結論を導くことは許されない。」と判示した。

ウ 所感 容易性判断の予測性を高めるためには,本願の

【発明が解決しようとする課題】である「汚れの評価を安価 に行う」点について検討し,その安価化のために乾燥を省 略することについても論理付けすることが求められてお り,精緻な説示が求められている。

 

ウ 相違点の判断誤り(事例③④)

③ 平成21年(行ケ)第10257号(発明の名称:リニアモー タユニット及びその組み合わせ方法)(3部)

 不服 2008-19695,特願 2005-251183(特開 2007-68326)  [引用発明においては磁気シールド板が推力を低下させ

る方向で作用しているものであるが,本願発明において は逆に推力向上に寄与するという予想外の効果を奏する ものであるとして審決が取り消された事例]

本願発明:

 隣り合うロッドタイプリニアモータにおいて,ロッドの 連れ動きを防止するための磁気シールド板を近接配置して も,その磁気シールド板が磁界を強くするコアの役割もす ることで,コア付のリニアモータと同様にロッドの推力を 向上させることができる。

判示事項:

(1)引用刊行物 C からは,耐油汚れの評価に当たって,時間, 労力,価格を抑え,手順を簡略化しようとする本願発明の 解決課題についての示唆はない。

 引用刊行物 C 記載の発明における,「乾燥工程を経由し ない滴下」という操作は,本願発明における同様の操作と, その目的や意義を異にするものであって,引用刊行物 C 記 載の発明は,本願発明と解決課題及び技術思想を異にする 発明である。

所感:

ア審決 審決は,「引用発明では,流下水を 150ml 滴下し,

15 分乾燥させ,その後,蒸留水を 150ml 滴下し,15 分乾 燥させているが,試料の汚れ度合いを評価する際の擬似汚 れとして,流下水の代わりに油脂とカーボンブラックを有 する擬似油汚れを用いた際に,上記引用刊行物 C に記載さ れた発明のごとく,乾燥する工程を省いて,本願発明のご とく,「擬似油汚れを該被評価物の表面に滴下し,続いて

特定量の水を」「滴下」することは当業者が容易になし得る

ものである。」と判断した。

イ判決 これに対し判決は,「本願発明における解決課題と

は異なる技術思想に基づく引用刊行物A記載の発明を起点 として,同様に,本願発明における解決課題とは異なる技 術思想に基づき実施された評価試験に係る技術である引用 刊行物C記載の発明の構成を適用することによって,本願 発明に到達することはないというべきである。」と判示した。  また,判決は,「本願発明のような平易な構成からなる 発明では,判断をする者によって,評価が分かれる可能性 が高いといえる。このような論点について結論を導く場合 には,主観や直感に基づいた判断を回避し,予測可能性を 高めることが特に,要請される。その手法としては,従来 実施されているような手法,すなわち,当該発明出願前公 知の文献に記載された発明等とを対比し,公知発明と相違 する本願発明の構成が当該発明の課題解決及び解決方法の 技術的観点から,どのような意義を有するかを分析検討し, 他の出願前公知文献に記載された技術を補うことによっ て,相違する本願発明の構成を得て,本願発明に到達する ことができるための論理プロセスを的確に行うことが要請 下,乾燥後,流水に 1 分間さらし,汚れ付着前の表面 との明度差(Δ L)を測定して泥の水洗除去性を測定す る方法で評価した。有機物付着量は,XPS 測定(検出 角度 5 度)により求めた表面炭素量で評価した。……」

(本願発明) コイル

ロッド ロッド

マグネット

磁気シールド板 リニアモータ

(4)

判示事項:

 引用例 1 のフラットタイプリニアモータに周知技術であ

るロッドタイプリニアモータを適用すると,フラットタ イプリニアモータにおいては磁束の分路として機能する ことから推力を減少させる方向で作用していた磁気シー ルド板が,逆に推力を向上させる方向で作用することを 当業者において予測できたことを認めるに足りる記載又 は示唆はない。

所感:

ア審決 審決は,本願発明は,「引用発明におけるリニア

モータを,上記周知技術であるロッドタイプリニアモータ とすることは当業者が容易に想到し得たものというべきあ る。 その際,引用発明における複数のコイルを覆ってリ ニアモータの外形を形成するハウジングは,必然的に,コ イル間に介在される「スペーサ」も覆うことになるといえ る。……ロッドタイプリニアモータのハウジング間に磁気 シールド板を介在させると必然的に推力を向上させる構造 となるから,引用発明のリニアモータを上記周知技術の ロッドタイプリニアモータとすることに付随して,引用発 明の磁気シールド板はリニアモータの推力を向上させるこ とになるといえる。」と判断した。

イ判決 これに対し判決は,「引用例 1 には,推進力向上

に寄与しないフラットタイプリニアモータに,ロッドタイ プリニアモータを適用することの動機付けが示されている わけではなく,また,磁気シールド板が推力向上の効果が 生じることを予測できることが示されているわけではな い。のみならず,引用例 1 のフラットタイプリニアモータ に周知技術であるロッドタイプリニアモータを適用する と,フラットタイプリニアモータにおいては磁束の分路と して機能することから推力を減少させる方向で作用してい た磁気シールド板が,逆に推力を向上させる方向で作用す ることを当業者において予測できたことを認めるに足りる 記載又は示唆はない。そうすると,ロッドタイプリニアモー タが周知の技術であったか否かにかかわらず,引用例 1 に, ロッドタイプリニアモータを適用する示唆が何ら記載され ていない以上,当業者が,周知技術を適用することにより, 相違点……に係る本願発明の構成とすることを容易に想到 し得たものであるということはできない。」と判示した。

ウ所感 判決では,「引用発明においては推力を低下させ

る方向で作用している磁気シールド板が逆に推力向上に寄 与するという予想外の効果を奏するものである」としてお 【請求項1】同極が対向するように積層された複数のマグ

ネット(7),及び前記複数のマグネット間に介在される磁 性材料からなるポールシューを有するロッド(2)と,前記 ロッドを囲み,前記ロッドの軸線方向に積層された複数の コイル(3)と,前記複数のコイル間に介在されるスペーサ と,前記複数のコイル及び前記スペーサを覆ってリニア モータの外形を形成するハウジング(6)と,を備え,前記 マグネットの磁界と前記コイルに流す電流によって,前記 ロッドをその軸線方向に直線運動させるロッドタイプリニ アモータを,前記ロッドの軸線が互いに平行を保つように 複数組み合わせたリニアモータユニットであって, 前記ハウジングは,前記複数のコイル及び前記スペーサを インサート成型することにより形成され,

一つのロッドタイプリニアモータのロッドを移動させると, 隣のロッドタイプリニアモータのロッドがつられて動いて しまう程度に隣り合うロッドタイプリニアモータを近接さ せた状態において,前記隣り合うロッドタイプリニアモー タの前記ハウジング間に磁性材料からなる磁気シールド板 (5)を介在させ,

前記磁気シールド板(5)は,前記コイル(3)を覆う前記ハ ウジング(6)間を前記ロッドの軸線方向に通ると共に,前 記ハウジング(6)から前記ロッド(2)の軸線方向に露出し, そして,前記磁気シールド板(5)は,隣り合うロッド同士 が互いの磁界の影響を受け難くすると共に,リニアモータ の推力を向上させるリニアモータユニット。」

引用発明(甲1):(特開平11−43852号) 可動子

永久磁石

コイル

カバー(磁気遮断鉄板)

可動子

(5)

【請求項1】銅(Cu)製の巻線型コイル(1)と IC チップの 最外層が塑性流動を生じうる金(Au)膜で構成された接続 端子(3)とを,両者の界面付近に,該巻線形コイルの絶縁 膜を溶融させうる温度以上で金と銅との塑性流動を生じさ せうる温度範囲で加熱させつつ,塑性変形後の巻線形コイ ルの該当部位の厚さ t と変形前の線径 D との比率 t / D が, 0.1 を越え,かつ 0.8 以下となるように設定した加圧力で 加圧することによって形成した Au / Cu 全率固溶体を介し て,接合した非接触ID識別装置用の巻線型コイルとICチッ プとの接続構造。」

判示事項:

 引用発明 1 における金の金属層と銅線とを熱圧着によっ て形成した Au / Cu 合金を介して接合するに当たり,接合 り,特に,発明特定事項の「一つのロッドタイプリニアモー

タのロッドを移動させると,隣のロッドタイプリニアモー タのロッドがつられて動いてしまう程度に隣り合うロッド タイプリニアモータを近接させた状態」に対応した,「磁 気シール板の連れ動き防止の効果」と「推力向上の効果」 との相乗効果を予想外の効果として評価し進歩性があると したものと思われる。

④ 平成21年(行ケ)第10295号(発明の名称:非接触ID識 別装置用の巻線型コイルとICチップとの接続構造及び これを構成する接続方法)(4部)

 無効 2008-800196 号,特許第 4097281 号

 [引用発明1における金の金属層と銅線とを熱圧着によっ

て接合するに当たり,引用例2に記載されたAu/Cuの 全率固溶体を選択することは,当業者において容易であ るとされた事例]

本願発明:

 自動認識の手段として用いられる非接触 ID 識別装置に 関し,その識別装置の巻線型コイル(銅(Cu))と IC チッ プの最外層(金(Au))とを,加熱と加圧により直接接続す る発明に関する。

(本願発明)

甲3(引用発明1(特表平7−506919号))

甲2(引用例2(特開昭57−109351号)) 金膜接続端子

銅製コイル

加圧

絶縁膜

電極

金膜接続端子

金属層

金ワイヤ

銅製コイル

銅線

銅単体のリードフレーム 全率固溶体の

合金層

絶縁膜

絶縁層

半田ごての先

接合層(Au-Cuの 全率固溶体) 【審決における相違点の認定】

(6)

(2)新規事項要件の判断の誤り

⑤ 平成21年(行ケ)第10303(発明の名称:携帯電話端末(1 部)

 不服 2007-18278,特願 2003-182514(特開 2004-7746)  [マイクに関して「機能」との明示的な記載がないとし

ても,「音響信号を音声電気信号に変換する」ことがマ イクの機能であるということができるとした事例]

本願発明:

 本発明は,無線電話装置の使用が禁止されているエリ ア内では,無線部への電力の供給が切断するが,その他 の電話帳機能等は使用できるようにした無線電話装置に 関する。

(補正後請求項:下線部分が追加補正)

【請求項1】 通信機能と,当該通信機能以外の時計機能, 電話帳機能,マイクによる音声を電気信号に変換する機能, スピーカによる電気信号を音声に変換する機能を含む複数 の機能とを有し,通信機能と通信機能以外の複数の機能に 係る表示を行う一つの表示手段と,電源キー,数字キー等 を備える入力手段とを有する携帯電話端末であって,  前記入力手段の電源キーを押下すると,前記表示手段 を含む各構成部分に電力が供給され,携帯電話端末の動作 が開始されて,前記通信機能と前記通信機能以外の時計機 能,電話帳機能,マイクによる音声を電気信号に変換する 機能,スピーカによる電気信号を音声に変換する機能を含 む複数の機能とが使用可能状態となり,前記入力手段の電 源キーとは異なるキー操作により通信機能を停止させる指 示が入力されると,当該通信機能を停止させて通信接続情 部の信頼性及び電気的特性を向上させるため,Au / Cu 合

金の相として考え得る相として,引用例 2 に記載された Au / Cu の全率固溶体を選択することは,当業者において 容易であるということができる。

所感:

ア審決 審決は,相違点について,甲第 2 号証(引用例 2)

には,「銅製のリードフレームと金ワイヤーの接合部に「全 率固溶体」が形成されるものが記載されているものの,銅 製のリードフームと金ワイヤーの接合部の温度が不明であ る以上,これを「金と銅との塑性流動を生じさせる温度範 囲で加熱させ」ていると認定はできない。」と判断した。

イ判決 これに対し判決は,「引用例 2 には,超音波を加

える旨の記載及びそれを示唆する記載がないことからする と,引用例 2 の金ワイヤと銅製のリードフレームとのワイ ヤボンディンは,熱圧着による接合と認めることができる。 ……引用例 2 において,金と銅との接合層の特性を全率固 溶体と金属間化合物との対比において記載していること, そして,その記載は金と銅との接合層に関する一般的な記 載であると解されることからすると,引用発明 1 における 「金と銅との塑性流動を生じさせうる温度範囲で加熱させ

つつ,」「加圧すること」によって形成された接続構造であ

る Au / Cu 合金についても,全率固溶体か金属間化合物か, そのいずれかの相であるとみることができる。……引用例 2 の全率固溶体は属間化合物に比べて,電気抵抗が小さく, 化学的に安定し,機械的強度の劣化のない高信頼性の半導 体装置を得ることができるとの開示に基づくと,引用発明 1 における接合の Au / C 合金についても,金属間化合物 を避けて,Au / Cu 全率固溶体が形成されるように想到す ることは,当業者において容易であるということができ る。」と判示した。

ウ所感 判決は,引用例 2 に記載されている金属間化合物

を避けて,Au / Cu 全率固溶体が形成するとの事項を参酌 すれば,加熱温度や加圧力を適宜設定して Au / Cu の全率 固溶体が形成するように想到することは,当業者において 容易であるということができると判断しており,特許請求 の範囲に加熱温度が特定されているわけでもないから,引 用例に,全率固溶体を形成するために必要な塑性流動を生 じさせる温度範囲の開示までは必要とせずに,技術水準を 参酌して容易想到と判断したものと思われる。

通信機能

制御部

マイク

(7)

と,マイクによる「音響信号(音声)を音声電気信号に変

換する機能」(スピーカについても同様)も携帯電話端末の

機能と解釈すべき事案であったと思われる。

(3)訂正要件判断の誤り(事例⑥)

⑥ 平成21年(行ケ)第10326号(発明の名称:マッサージ機) (3部)

 訂正 2009-390072,特許 4249872)

 [特許請求の範囲の記載において「構成」が付加された

場合付加された後の発明の技術的範囲は,付加される前 の発明の技術的範囲と比較して縮小するか又は明りょう になることは,説明を要するまでもないとされた事例]

本願発明:

 施療子を任意の位置に位置決めすることができる操作装 置を備えたマッサージ機において,手動操作によって決め られた基準位置(例えば肩位置)を記憶できるようにした 発明に関する。

[本件訂正前発明2]

【請求項 2】(注 請求項 1 を引用する形式を書き改めた。 また,構成ごとに分説した。)

ア マッサージ機本体(2)と,使用者にマッサージを施す ように当該マッサージ機本体(2)に設けられていると 共に使用者の身長方向に移動自在な施療子(14)と,当 該施療子(14)を操作して任意の位置に位置決めするこ とができる位置操作部(49,50)を有する操作装置(40) と,を備えたマッサージ機において,

イ 前記位置操作部(49,50)の操作によって決められた施 療子(14)の位置をマッサージの基準位置として記憶す る記憶部(39)を備え,

ウ 前記施療子(14)の位置決めを行うための一定の時間を 設定しておき,その時間内に前記施療子(14)を移動さ せ,その時間が経過した時点での前記施療子(14)の位 置を検出しその位置を基準位置として自動的に前記記 憶部(39)に記憶させることを特徴とする

エ 前記基準位置は肩位置であることを特徴とするマッ サージ機。」

[本件訂正後発明2]

【請求項2】(注 構成ごとに分説した。)

ア マッサージ機本体(2)と,使用者にマッサージを施す ように当該マッサージ機本体(2)に設けられていると 共に使用者の身長方向に移動自在な施療子(14)と,当 報の交信を行わないようになり,前記通信機能以外の時計

機能,電話帳機能,マイクによる音声を電気信号に変換す る機能,スピーカによる電気信号を音声に変換する機能を 含む複数の機能はそのまま動作可能としたことを特徴とす る携帯電話端末」

判示事項:

(1) 特許法 17 条の 2 第 3 項の「明細書又は図面に記載した 事項」とは明細書又は図面のすべてを総合することに より導かれる技術的事項である。

(2) マイクに関して「機能」との明示的な記載がないとし ても,「音響信号を音声電気信号に変換する」ことがマ イクの機能であるということができ,また,マイクを 備えた携帯電話端末は「音響信号を音声電気信号に変 換する機能」を有していると認定することができる。

所感:

ア審決 審決は,「明細書の記載からは,使用可能な複数

の機能としては「通信機能」「電子手帳機能」「電話帳機能」

「時計機能」のみが示され,……使用可能又はそのまま動 作可能な複数の機能としての「マイクによる音声を電気信

号に変換する機能」「スピーカによる電気信号を音声に変

換する機能」は読み取ることができない」と判断した。

イ 判決 これに対し判決は,上記判示事項(1)の判示事

項及び上記(2)の「当初明細書等に「マイク」及び「スピー カ」に関して「機能」との明示的な記載ないとしても「音響 信号(音声)を音声電気信号に変換する」ことが「マイク 8」 の機能であり「音声電気信号を音響信号に変換する」こと が「スピーカ 9」の機能であるということができ,また「マ イク 8」及び「スピーカ 9」を備えた携帯電話端末が「音響 信号(音声)を音声電気信号に変換する機能」と「音声電気 信号を音響信号に変換する機能」を有していると認定する ことができる。」とし,「「通信機能」とは「無線信号の送受

信を行う」機能であって(当初明細書【請求項 2】参照)「通

話機能」と異なり,音響信号(音声)に直接関わるもので はないから,「マイク」や「スピーカ」の機能は「通信機能」 に含まれないと解される。」と判示した。

ウ 所感 携帯電話のような情報端末の分野における「機

(8)

囲の記載において「構成」が付加された場合付加された後 の発明の技術的範囲は,付加される前の発明の技術的範囲 と比較して縮小するか又は明りょうになることは,説明を 要するまでもない。本件において,本件訂正後発明 2 記載 特許請求の範囲に属するマッサージ機は,構成アないし構 成オのすべてを具備するものに限定される。本件訂正前発 明 2 では,何らの限定がされていなかったものに対して, 本件訂正後発明 2 では,「施療子(14)を移動させた後,前 記操作装置(40)への所定の操作を施すと,その所定の操 作が行われたときの前記施療子(14)の位置を基準位置と して検出する,マッサージ機おいて,」との構成を有する ものに限定されたのであるから,これに伴って,その技術 的範囲が縮小するか又は明りょうになることは,当然であ る。」と判示した。

ウ所感 特許請求の範囲の記載において「構成」が付加さ

れた場合は,その技術的範囲が縮小するか又は明りょうに なる。また,「構成」が付加される前の発明の技術的範囲 よりも文言上は縮小するものであっても,別異の発明に変 更する場合もあるので,発明の詳細な説明も参酌して,そ の点も慎重に検討・判断する必要があると考える。

☆上記以外の判決は,以下のとおりである。

特実系審決取消事件

(1)記載要件判断の誤り

⑦平成21年(行ケ)第10222号(発明の名称:情報処理装置, 情報処理方法,及びプログラム)(1部)

 不服 2005-19153,特願 2004-546415(特表 2004-38628)   [「発明展開度算出手段」に関する請求項の記載は,原告

が主張する他の文献や他の特許出願を持ち出すまでもな く,それ自体で明確であるというべきであるとされた事 例]

(2)新規事項要件判断誤り

⑧平成21年(行ケ)第10321号(発明の名称:ゲーム情報 供給装置)(3部)

 不服 2003-14784,特願 2001-210286(特開 2003-19360)   [当初明細書においては,サーバ及びその端末の構成が

共通性を有するものとして記載されており,補正明細書 の各請求項の冒頭に記載された……部分は,サーバと端 末を含んだ全体の構成を意味するものと解するのが合理 的であるとされた事例]

該施療子(14)を操作して任意の位置に位置決めするこ とができる位置操作部(49,50)を有する操作装置(40) と,

イ 前記位置操作部(49,50)の操作によって決められた施 療子(14)の位置をマッサージの基準位置として記憶す る記憶部(39)と,を備え,

ウ 施療子(14)を移動させた後,前記操作装置(40)への 所定の操作を施すと,その所定の操作が行われたとき の前記施療子(14)の位置を基準位置として検出する, マッサージ機において ,

エ 前記所定の操作を行わなくとも,前記施療子(14)を移 動させて位置決めを行うために予め設定された一定の 時間が経過すると,前記施療子(14)の位置を検出しそ の位置を基準位置として自動的に前記記憶部(39)に記 憶させ,

オ 前記基準位置は肩位置であることを特徴とするマッサー ジ機。」

判示事項:

本件訂正後発明 2 は,本件訂正前発明 2 に対して,「施療 子(14)を移動させた後,前記操作装置(40)への所定の 操作を施すと,その所定の操作が行われたときの前記施療 子(14)の位置を基準位置として検出する,マッサージ機 において,」との構成が付加されたものである。……本件 訂正前発明 2 では,何らの限定がされていなかったものに 対して,本件訂正後発明 2 では,「……において,」との構 成を有するものに限定されたのであるから,これに伴って, その技術的範囲が縮小するか又は明りょうになることは, 当然である。

所感:

ア審決 審決は,「本件訂正後発明 2 においては,操作装

置への所定の操作を施す場合には,一定の時間が経過した 時点での施療子の位置を検出しその位置を基準位置とする ものではないから,本件訂正後発明 2 は,……本件訂正前 発明 2 を別異の発明に実質上変更するものである」と判断 した。

イ判決 これに対し判決は,「本件訂正後発明 2 は,本件

訂正前発明 2 に対して,「施療子(14)を移動させた後前記 操作装置(40)への所定の操作を施すと,その所定の操作 が行われたときの前記施療子(14)の位置を基準位置とし

て検出する,マッサージ機において,」(本件訂正後発明 2

(9)

(3)その他

⑨平成22年(行ケ)第10095号(発明の名称:CMOSイメー

ジセンサにおけるアナログディジタル変換装置)(2部)

  不服2009-21205,特願平11-364894(特開2000-261602)   [審判請求期間の計算を誤って認定し,法定期間経過後

の不適法なものとして特許法 135 条により却下した審決 が取り消された事例]

第3 おわりに

 以上,平成 22 年度第 1 四半期に言い渡しのあった判決 を紹介した。

 今回紹介した判決の上記(1)新規性・進歩性の審決取消 事例をみると,その審理にあたっては,本願発明の課題と その課題を解決する手段が何であるのかを正確に把握して 望むことが重要であると考える。

 上述した事例②の判決では,「主観や直感に基づいた判 断を回避し,予測可能性を高める……その手法としては, 従来実施されている……当該発明出願前公知の文献に記載 された発明等とを対比し,公知発明と相違する本願発明の 構成が当該発明の課題解決及び解決方法の技術的観点か ら,どのような意義を有するかを分析検討し,他の出願前 公知文献に記載された技術を補うことによって,相違する 本願発明の構成を得て,本願発明に到達することができる ための論理プロセスを的確に行うことが要請される」と指 摘している。すなわち,事例②においては,本願発明の特 徴点は,「汚れの評価を安価に行うために乾燥を省略する」 ということになるので,進歩性を否定するための公知技術 としては単に「乾燥を省略する」ことだけ示せばよいので はなく,その目的が「汚れの評価を安価に行う」ことであり, 「評価を安価に行う」ために「乾燥を省略する」という構成

が導かれることを説示しなければならないことになる。  進歩性判断の論理付けには,主観的な判断や論理的でな い後付けの判断を排除するために精緻な説示が求められる 場合があり、特に平易な構成からなる発明のケースにおい ては注意が必要である。

 また,新規事項の判断において(事例⑤⑧),新規事項 が追加されていると判断する場合には,本願明細書の発明 の詳細な説明及び図面の記載を多様な視点から詳細に検討 し,その追加されたとする技術的事項が導けない理由,矛 盾等を根拠(証拠)を示して具体的に説示する必要がある と考えられる。

 その他,審判請求期間の計算誤り(事例⑨)などは,そ の再度の発生防止に十分注意する必要がある。

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rofile

小椋 正幸

(おぐら まさゆき) 昭和52年4月 入庁

参照

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3.BおよびCライセンス審判員が、該当大会等(第8条第1項以外の大会)において、明

第16回(2月17日 横浜)

○決算のポイント ・

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