DI-00106 納豆(菌)およびナットウキナーゼと薬の相互作用 20080806 Q.納豆(菌)およびナットウキナーゼと薬の相互作用について
A.納豆は納豆菌を用いて大豆を発酵させたものです。納豆そのものや発酵ろ液には納豆 菌が生産するナットウキナーゼという酵素が含まれています。納豆はビタミンK1、ビタミ ンK2の他、植物性蛋白質、亜鉛やカルシウム等のミネラル、ビタミンB群等を含む栄養価 の高い食品です。納豆菌はヒト腸内で約1週間生存し、腸内でビタミンK2を多く産生し、 細菌のなかでもとくにビタミンK産生能力が強いとされています1),2)。
①納豆と薬の相互作用
添付文書上で納豆との相互作用の記載のある医療用医薬品は、ワルファリンカリウム
(ワーファリンほか)の内服剤のみです。ワルファリンカリウムは、添付文書上で納豆につ いては、「併用注意」に「本剤の作用を減弱することがある」、「患者への注意」に「納豆がワル ファリンカリウムの抗凝血作用を減弱するので避けることが望ましい」と記載されていま す3)。また、その作用機序は、ビタミンKの作用に拮抗し、肝臓におけるビタミンK依存性血 液凝固因子の生合成を抑制することにより、抗凝血効果及び抗血栓効果を発揮します。
添付文書上では、併用注意となっていますが、文献では「本剤服用中は原則的に納豆の摂 取は禁止すべきである」と報告があります。その理由は、納豆はたとえ少量の摂取であって も納豆菌が大腸内で多量のビタミンKを産生しワルファリンの効果を減弱する可能性があ るので、許容できる摂取量の想定が困難であるためです4),5)。
②納豆菌含有剤とワルファリンの相互作用
納豆菌を含有する医療用医薬品には、納豆菌配合消化酵素剤のコンクチームN(共和薬 品工業)と新ドライアーゼ(メルク製薬)があります。いずれも添付文書上では納豆と同 様の理由でワルファリンとは併用注意となっています6)。これらの各社によると「併用は避 けてほしい」とのことです。
③ナットウキナーゼと薬の相互作用
ナットウキナーゼを含む医療用医薬品はありませんが、健康食品はあります。ナットウキ ナーゼには血液の凝固を抑える作用があると考えられていますが、ヒトでの臨床効果につ いては信頼できるデータがないといわれています1)。理論上、抗血小板作用あるいは抗凝固 作用を持つ薬を投与中にナットウキナーゼを摂取すると、あざや出血を生じる可能性が考 えられ、こうした薬にはアスピリン、クロピドグレル、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナ プロキセン、ダルテパリン、エノキサパリン、ヘパリン、ワルファリンなどがあるという記述 がみられる資料もあります7)。
(参考文献)
1) 福岡県薬剤師会 薬事情報センター編:飲食物・嗜好品とくすりの相互作用 p.127,2005 2) 青崎正彦ほか:Warfarin の適正使用情報 第 2 版 p.235 エーザイ(株),1996
3) ワーファリン添付文書(2005 年 4 月改訂)エーザイ(株) 4) 長谷川昭:日本医事新報 (4159):122,2004
5) エーザイ(株)私信
6) コンクチームN添付文書(2005 年 6 月改訂)共和薬品工業(株), 新ドライアーゼ添付文 書(2006 年 7 月改訂)メルク製薬(株)
7) Natural Medicines Comprehensive Database 10th,p.1061,Therapeutic Research
Faculty,2008
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*詳細につきましては、参考文献等で確認をお願い致します。
スズケン医療情報室( SDIC東京・名古屋・札幌)作成