第2章
産業を取り巻く環境の変化
1
産業構造の変化
(1)サービス経済化の進展
日本の産業構造は,第3次産業のGDPに占 める割合は 70%を超える一方,第2次産業は 減少傾向にある。高度経済成長期の「重化学工 業化」から,経済活動や雇用に占めるサービス 業の比率が高まる「サービス経済化」が進展し ており,産業構造が大きく変化してきている。
本市の産業3部門における就業者の推移を見ると,第2次産業は平成2年まで増加して いたが,その後減少に転じている。第3次産業は,平成7年まで5年間の増加率が 10%を 超える勢いで増加しており,平成12年には全体就業者数の2/3以上の割合を占めるよ うになってきている。
「サービス経済化」の進展による産業構造の変化に対応した取り組みが必要である。
図表2-1-1 日本の産業3部門別GDP比の推移
出典:製造基盤白書(2003年度版)
図表2-1-2 宇都宮市の産業3部門別就業者数の推移
出典:総務省「国勢調査」
第1次産業 第2次産業 第3次産業
工業化の進展
サービス経済化の進展
第3次産業
第2次産業
(2)既存工業団地への非製造業の立地増加
本市の宇都宮,瑞穂野,清原の3工業団地においては,「サービス経済化」の進展に伴 い,運輸・通信業やサービス業などの非製造業の立地が増加している状況にある。
工業団地の企業立地のあり方については,各工業団地の実情に応じた対応を検討してい く必要がある。
図表2-1-3 宇都宮市内の工業団地における事業所数の推移
平成3年 平成 13 年 比 較
実 数
団地内
構成比
(%)
実 数
団地内
構成比
(%)
実数
増減
実数の
伸び率
構成比
増減
宇都宮工業団地 205 100.0 230 100.0 25 12.2 -
建設業 12 5.9 15 6.5 3 25.0 0.7
製造業 84 41.0 85 37.0 1 1.2 ▲4.0
運輸・通信業 13 6.3 23 10.0 10 76.9 3.7
卸・小売・飲食店 60 29.3 61 26.5 1 1.6 ▲2.7
金融・保険業 1 0.5 1 0.4 0 0.0 ▲0.1
不動産業 3 1.5 3 1.3 0 0.0 ▲0.2
サービス業 32 15.6 42 18.3 10 31.3 2.7
瑞穂野工業団地 92 100.0 87 100.0 ▲5 ▲5.4 -
建設業 5 5.4 4 4.6 ▲1 ▲20.0 ▲0.8
製造業 71 77.2 61 70.1 ▲10 ▲14.1 ▲7.1
運輸・通信業 - - 2 2.3 2 皆増 2.3
卸・小売・飲食店 7 7.6 9 10.3 2 28.6 2.7
サービス業 9 9.8 11 12.6 2 22.2 2.8
清原工業団地 56 100.0 67 100.0 11 19.6 -
製造業 35 62.5 41 61.2 6 17.1 ▲1.3
運輸・通信業 12 21.4 10 14.9 ▲2 ▲16.7 ▲6.5
卸・小売・飲食店 2 3.6 4 6.0 2 100.0 2.4
金融・保険業 1 1.8 1 1.5 0 0.0 ▲0.3
不動産業 1 1.8 0 0.0 ▲1 皆減 ▲1.8
サービス業 5 8.9 11 16.4 6 120.0 7.5
(3)生産拠点の国内と海外のすみわけが進展
日本の製造業における海外生産比率は,輸送機械,電気機械などの加工組立型製造業を 中心として年々高まってきており,この傾向は経済のグローバル化とともに,日本国内の 生産拠点の海外移転が着実に進展していることを表している。
日本の製造業における海外生産比率の推移
6 .4
6.0 6 .2 7.4
8 .6 9.0
11 .6 1 2.4
13 .1 1 2.9
14 .6 1 6.7
1 1.4
11 .0 1 0.8 12 .6
1 5.0 16 .8
1 9.7 21 .6
2 0.8 21 .4
2 2.8 27 .6
12 .6 1 3.7
17 .5 1 7.3
20 .3 2 0.6 24 .9
2 8.2
30 .8 3 0.6 38 .4
4 4.1
0 .0 5 .0 10 .0 15 .0 20 .0 25 .0 30 .0 35 .0 40 .0 45 .0 50 .0
9 0 91 9 2 93 9 4 95 9 6 97 9 8 99 0 0 01
年度 %
製造業全体 食料品 化学 一般機械 電気機械 輸送機械 精密機械
一方,2004年版「ものづくり白書」では,生産拠点の「国内回帰」が目立ってきている と分析している。
現代の三種の神器であるDVD,デジタルカメラ,薄型テレビなどのデジタル家電をは じめとして,最近の一般消費者向け製品のライフサイクルは短くなっており,また,消費 者のニーズも多様化し,多品種少量生産体制が必要となっている。加えて,多機能・高機 能化が進み,ものによっては軽量化が著しくなっている。それだけに,「短納期への対応」 「少量生産への対応」「超微細加工などのハイテク技術の集積」が求められている。
以上のことから,国内立地の再評価に伴い,海外展開した生産施設の国内回帰を視野に 入れる企業が増えてきており,特に国内回帰の理由としては以下の2つがあげられている。
① 人件費比率の低下 …製造コストに占める部品の比率が高まった結果,相対的に人件 費の比率が下がって海外生産のメリットが薄れたこと。
② 技術流出の阻止 …知的財産の侵害や,技術ノウハウの流出等に関する課題があり, 生産技術をブラックボックス化する動きがある。
今後の方向性としては,国内は高度な技術を必要とする製品,国内需要に即応する必 要がある製品の研究開発・製造,海外は,労働集約型・加工組立型製品の製造という国 内と海外の生産拠点のすみわけが進展する可能性が大きくなる。
出典:経 済産業 省「海 外事業 活動基 本調査 」
「工場立地動向調査」(経済産業省)では,全国の工場立地件数は平成元年の4,157件 をピークに減少を続け,平成 14年には調査を始めた昭和42年以降で最低となったが, 平成15年には,増加に転じている。栃木県においても,平成5年以降は40件を下回る 立地件数で低迷しているが,平成15年には,依然低水準には変わりないが,前年から増 加に転じている。また,「新規工場立地計画に関する意向調査」(日本立地センター)で も,新規立地計画を有する企業が2年連続で増加するなど,企業立地の動向は着実に変 化してきている。
生産拠点の国内と海外のすみわけや企業立地の動向を的確に把握した産業戦略が必要 となってくる。
図表2-1-5 工場立地の動向
93 117 102 102 68 72 45
37 38 37 39 35 40 23 31 25 35 2,557 3,536 4,157 3,782 3,495 2,467 1,633 1,456 1,307 1,519 1,164 1,052 844 974 1,123 1,134 1,548 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500
S62 S63 H1 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15
全
国
の
立
地
件
数
0 50 100 150 200 250 300
栃
木
県
の
立
地
件
数
出典:経 済産業 省「工 場立地 動向調 査」
図表2-1-6 工場立地の意向
8.7 9.2 6.8 7.8 9.1 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 9.0 9.5
H11 H12 H13 H14 H15
%
21
2
企業立地環境の変化
(1)拠点開発プロジェクトの進展
ア 東谷・中島地区(インターパーク宇都宮南)
本市の南東部では,北関東自動車道の宇都宮上三川インターチェンジに隣接した東谷・ 中島地区において,宇都宮テクノポリス計画の一環として工業・流通業務団地の整備を進 めている。企業立地の現状では,福田屋百貨店の立地を契機に,地区内を南北に縦断する 砂田磯岡線沿いに商業系店舗の立地が進んでおり,新たな拠点市街地として発展しつつあ るが,こうした商業施設の集積により,交通渋滞が懸念されている。
また,大規模工業流通施設地区・中小規模産業施設地区に立地を期待している製造業や 物流業は,分譲価格が高いことやこれまでの全国的な企業立地の低迷などから,立地が進 んでいない状況にある。
複合的な機能を有する工業・流通業務団地としてふさわしい企業の立地を促進していく 必要がある。
福田屋百貨店
藤本
カワチ薬 品 ダイワロ イヤル
駐車場
(福田屋 )
越戸製作 所
トヨタ自 動車 ギガスケ ーズデ ンキ
ジョイフ ル本田 2.3ha
3.6ha
2.0ha 20.0ha
5.3ha
4.0ha
調整池
凡 例
一般住宅 地区
沿道住宅 地区
沿道型サ ービス 施設地 区
大規模工 業流通 施設地 区
中小規模 産業施 設地区
沿道型産 業施設 地区
商業複合 型施設 地区
図表2-2-2 東谷・中島地区における土地利用計画と企業立地状況
土地利用計画
(用途地域)
面積
(ha)
地区計画
立地済(予定)
(ha)
立地(予定)企業
商業・業務等施設用地
(準工業地域) 9.6
商業複合型施設地区 9.6
㈱福田屋百貨店 インターパーク店 沿道施設用地
(第二種住居地域) 6.2
沿道型サービス施設地区 1.7 ギガスケーズデンキ 5.4 ダイワロイヤル㈱ 6.6 駐車場(福田屋) 0.7 トヨタ自動車㈱ 0.3 ㈱越戸製作所 大規模工業流通施設地区
10.3 ㈱ジョイフル本田
中小規模産業施設地区 0.0
1.3 ㈱藤本
工業・流通等施設用地 (工業地域)
65.6
沿道型産業施設地区
1.4 ㈱カワチ薬品
81.4 分譲率 45.8% 37.3
イ 宇都宮テクノポリスセンター地区
本市の東部では,宇都宮テクノポリス計画における中核的な拠点となる宇都宮テクノポ リスセンター地区の整備が進められている。地区内では,産学官交流の拠点として研究開 発・技術交流・人的ネットワークの形成を図る「とちぎ産業交流センター」と,地域企業 の新製品開発や技術高度化を支援する技術開発拠点として,中小企業等の研究開発力の向 上を支援する「栃木県産業技術センター」の一体的な整備による,企業活動を総合的に支 援する「とちぎ産業創造プラザ」が平成15年3月に開設され,研究開発型企業の集積促 進や地域企業の技術高度化など産業支援の拠点づくりを進めている。また,平成17年か らは誘致施設用地の分譲開始を予定している。
集積する産業支援施設と連携した企業等の立地,誘導を図る必要がある。
図表2-2-3 テクノポリスセンター地区における土地利用計画と企業立地状況
土地利用計画
(用途地域)
面積
(ha)
地区計画
立地済(予定)
(ha)
立地(予定)企業
1.5 ㈱かましん 商業等施設用地
(準工業地域) 6.2
商業業務地区
2.8 スポーツクラブジャロッズ 大規模施設地区 0.0
中小規施設地区 0.0 沿道型施設地区 0.0 誘致施設用地
(準工業地域) 37.2
核施設地区 7.4 とちぎ産業創造プラザ
合 計 43.4 分譲率 27.0% 11.7
出典:都 市再生 機構の 資料を もとに 作成( 平成16年8月 現在)
図表2-2-4 宇都宮テクノポリスセンター地区の概況
ウ JR宇都宮駅東口地区
JR宇都宮駅東口地区においては,広域交通の要衝という立地特性を踏まえ,ターミナ ル機能や高度な情報・産業機能,広域交流機能等を備えた新たな都市拠点の整備を目指し ている。平成16年2月には,提案競技により最優先交渉者が決定し,事業の実現化に向 けた取り組みが進展している。
産業振興につながる高次な都市機能・業務機能の導入を図る必要がある。
○地区の概況
面積:約7.3ha ○整備の内容等
① 基盤施設整備
・土地区画整理事業:道路,東口駅前広場,交流広場,人工地盤等 ② 立地施設整備
・民間による整備を基本とし,民間施設との相互連携などにより,地区全体のまち づくりにおいて相乗的な効果が期待できる公共公益施設を整備する。
○全体整備スケジュール
平成15年度 提案競技の実施,最優先交渉者の決定
16年度 基本計画の策定,土地区画整理事業の都市計画決定,事業認可の取得 17年度 土地区画整理事業の着手
18年度 立地施設の建設着手
19年度 土地区画整理事業の完了,換地処分
図表2-2-5 JR宇都宮駅東口地区の事業概要
一般住宅 地区 沿道住宅 地区Ⅰ
沿道住宅 地区Ⅱ 沿道住宅 地区Ⅲ
核施設地 区
商業業務 地区
一般住宅 地区
沿道住宅 地区Ⅰ
大規模施 設地区
沿道型施 設地区 中小規模 施設地 区
とちぎ産業 創造プラザ
かましん
(2)効率的な国際物流機能実現への対応
製造業における生産拠点の国内と海外のすみわけにより,輸出入貨物の流れが変わり つつある。輸出については,国内への高付加価値製品の生産拠点が集約しており,多品 種少量短納期生産により航空便の輸出の増加が見込まれている。輸入については,労働 集約型一般汎用品の生産拠点の海外移転により,港におけるコンテナ輸入が増加傾向に ある。この傾向は,宇都宮国際貨物ターミナルの輸出入貨物の推移からもわかる。
また,製造業ではジャスト・イン・タイム生産1や受注生産により,リードタイム2短縮 に向けて積極的に取り組んでおり,物流効率化の動きが進んでいる。
なお,成田空港周辺では,フォワーダー3などの保税蔵置場4の立地が増加し,今後,輸 出入貨物が成田空港周辺に集約することも予想される。
1 必要なモノが,必要なときに,必要なだけ生産工程に届く生産管理システム。
2 商品やサービス,資材などを発注してから納品されるまでに要する時間。
3 荷主とトラック等実際の運送事業者との間に立って,貨物の運送取扱,利用運送及びこれらに付帯する
業務を行うことを業とする者。
4 税関長から許可を受けた場所で,外国の貨物の積卸し,運搬または置くことができる場所。
出典:宇 都宮国 際貨物 ターミ ナル 航空
航空 海上
海上
輸出―件数ベース―
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000
平 成
4 年 平 成
5 年 平 成
6 年 平 成
7 年 平 成
8 年 平 成
9 年 平
成 1
0 年 平
成 1
1 年 平
成 1
2 年 平
成 1
3 年 平
成 1
4 年
件数
輸出―重量ベース―
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000
平 成
4 年
平 成
5 年
平 成
6 年
平 成
7 年
平 成
8 年
平 成
9 年 平
成 1
0 年 平
成 1
1 年 平
成 1
2 年 平
成 1
3 年 平
成 1
4 年
重量(t)
輸入―件数ベース―
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000
平 成
4 年 平 成
5 年 平 成
6 年 平 成
7 年 平 成
8 年 平 成
9 年 平
成 1
0 年 平
成 1
1 年 平
成 1
2 年 平
成 1
3 年 平
成 1
4 年
件数
輸入―重量ベース―
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000
平 成
4 年 平 成
5 年 平 成
6 年 平 成
7 年 平 成
8 年 平 成
9 年 平
成 1
0 年 平
成 1
1 年 平
成 1
2 年 平
成 1
3 年 平
成 1
4 年
重量(t)
航空
航空
海上 海上
輸出入貨物の通関手続きは,ナックス5という通関情報処理システムが導入され,全国 の輸出入申告件数の約9割がナックスで処理されており,迅速化・効率化が進んでいる。 一方,米国の同時多発テロを契機とした国際物流におけるセキュリティ強化や,麻薬・ 拳銃等の密輸などへの対応強化が国際的な流れになっており,税関官署では全国的にX 線検査の強化に取り組んでいる。横浜税関宇都宮出張所においては,平成17年以降に 宇都宮出張所管内にX線検査装置の設置を予定している。
図表2-2-8 通関・輸出入貨物の流れ
○通関の流れ
・ 貨物を輸出入する場合,税関に申告して許可を得る必要がある。この一連の税関 手続きを「通関」という。
・ 書類の流れから見ると, 申告 → 審査 → 許可の順で行われる。
○輸出入貨物の流れ
5 ナックス(NACCS:Nippon Automated Cargo Clearance System)には,航空貨物を処理する航空シ
ステム(Air-NACCS)と海上貨物を処理する海上システム(Sea-NACCS)の2つがある。これらはホス トコンピュータと税関及び民間利用者(航空会社・通関業者など)の事務所に置かれた端末機を通信回線 で結び,輸出入貨物に係る税関各種手続きなどをオンラインで処理している。
荷主(工場等)
成田空港 保税蔵置場
京浜港 通関
輸出
輸入
横浜税関宇都宮出張所(東簗瀬1丁目)
通関手続き
許可
ナックス
(通関情報処理システム) 例
・宇都宮国際 貨物 ターミナル (下桑島町)
茨城県・栃木県・群馬県の北関東三県では,常陸那珂港を中心とする港湾地域と北関東 自動車道沿線地域等において,共同で物流拠点の形成とネットワーク化を促進することに より,首都圏における新たな国際物流拠点の形成を図ることを目標に,平成15年11月 に「広域連携物流特区」が認定された。
この特区においては,①港湾の国際競争力の強化,②ひたちなか地区や内陸部(茨城県・ 栃木県・群馬県)における産業集積の促進,③物流拠点を結ぶ利便性の高いアクセスの実 現を目指し,北関東三県が連携し,保税蔵置場設置基準の弾力化,自動車の回送運行時に おける仮ナンバー表示の柔軟化の規制緩和措置や,常陸那珂港の整備促進,北関東自動車 道の早期整備の促進など,他の関連事業を活用して総合的に施策の推進を図っている。
現状 見通し
北関東三県の工場立地件数・面積 88件,102ha(H14) 105件,122ha(H19) 常陸那珂港の貨物取扱量 約1.4万TEU(H14) 概ね10万TEU(H20)
環境への付加低減 CO2 約4,200トン/年削減
NOx 約116トン/年削減
出典:「広域連携物流特区」から作成
注)TEUは長さ20フィートのコンテナに換算したコンテナ取扱個数の単位
図表2-2-9 特区推進による具体的な効果
国内貨物輸送については,国内のトラック輸送は,近年,トラックの排出ガスによる 環境問題や,長距離ドライバーの労働時間の問題,道路混雑問題の解消などの制約要因 が顕著になる中,環境に優しく大量輸送が可能な鉄道や海上輸送に転換する「モーダル シフト」への期待が高まっている。
また,多様なITの中で物流管理に大きな影響を与えるものとして,ICタグ6が注目 されている。ICタグはまだ実証実験段階にあり,その実用化も始まったばかりである が,ICタグのような新しいIT技術の動向と影響が注目されている。
国際物流を取り巻く様々な環境の変化が生じており,常に新しい動きを把握し,対応 していくことが不可欠である。
6シールやラベル状のタグに超小型のICチップとアンテナを埋め込み,専用の読取端末と情報のやり取り
3
国・県の産業政策の変化
(1)政府の取り組み経済産業省の「産業クラスター計画」(平成 13 年)は,地域経済を支え,世界に通用す る新事業が次々と展開される産業集積を形成する目的で開始された。クラスターとは「ぶ どうの房」の意味で,地域の研究開発能力,産業集積の特徴を踏まえ ,特定分野の関連企 業,大学等の関連機関等が地域で競争しつつ,協力して相乗効果を生み出す状態を表して いる。現在,北海道から沖縄まで19のプロジェクトが展開されている。
「新市場・雇用創出に向けた重点プラン(平沼プラン)」(平成13年5月)では,国内経 済の潜在的な活力を引き出し,新規市場・新規雇用創出と事業環境の中長期的な競争力を 向上させるため,具体的な政策課題として15の提案が含まれている。中でも,大学発の 特許取得数を10年間で10倍,大学発ベンチャー企業を3年間で1,000社にすることや, 新規開業を5年間で倍増(18万社/年→36万社/年)させることを目標としており,人材 確保・育成,資金調達,経営資源の有効活用などの環境整備が着々と進められている。
北海道経済産業局 北海道スーパー・ク ラスター振興 戦略
東北経済産業局
①高齢化社会対応産 業振興プロジ ェクト ②循環型社会対応産 業振興プロジ ェクト
関東経済産業局 ①地域産業活性化プ ロジェクト (首都圏西部(TA MA)地域, 中央 自動車道沿線地域, 東葛・川口地 域, 三遠南信地域,首都 圏北部地域) ②バイオベンチャー 育成
③首都圏情報ベンチ ャーフォーラ ム 中部経済産業局
①東海ものづくり創 生プロジェク ト ②北陸ものづくり創 生プロジェク ト ③デジタルビット産 業創生プロジ ェクト 近畿経済産業局
①近畿バイオ関連産 業プロジェク ト ②ものづくり元気企 業支援プロジ ェクト ③情報系ベンチャー 振興プロジェ クト
④近畿エネルギー・ 環境高度化推 進プロジェク ト 中国経済産業局
①中国地域機械産業 新生プロジェ クト ②循環型産業形成プ ロジェクト 九州経済産業局
①九州地域環境・リ サイクル産業 交流プラザ(K-R IP) ②九州シリコン・ク ラスター計画
四国経済産業局 四国テクノブリッジ 計画 沖縄総合事務局経済 産業部
OKINAWA型産業振興プロ ジェクト
産業クラスター計画
文部科学省では,平成14年度から,大学を核として,研究開発型企業等が集積する研究 開発能力の拠点の創成を目指す「知的クラスター創成事業」を推進している。文部科学省 が選定した18地域については,自治体が指定する財団等に1地域あたり5億円を5年間補 助されており,自治体や産業クラスター計画が進める産学官連携との相乗効果が期待され ている。
また,「規制の特例措置」を導入することで,地域経済の活性化や,全国的な規制緩和へ の波及による国全体の経済活性化の実現を目指した「構造改革特区」(平成 14 年)は,地 方自治体や民間事業者等の自発的な立案によって地域を限定し,地域の特性に応じて規制 を撤廃・緩和し,特色のあるまちづくりや民間事業者のビジネスチャンス拡大を進める制 度である。1,000を越える様々な提案があり,産学官連携など地域産業振興に結び付けた構 想も数多くある。
さらに,平成15年10月には,「国から地方へ」「官から民へ」の構造改革の流れを強 化すべく,地域自らの知恵と工夫により,「地域経済の活性化」と「地域雇用の創造」を実 現することを目的に地域再生本部を設置し,地域の特性を踏まえた「地域再生構想」の提 案,募集を開始している。
九州広域クラスター
関西広域クラスター
知的クラスター創生事業
札幌ITカ ロッツェリア クラスター[IT]
仙台サイバーフォレ スト クラスター[IT] 長野・上田スマート デバイス
クラスター[ナノ] ロボティック先端医 療
クラスター[ライフ] 名古屋ナノテクもの づくり
クラスター[ナノ] 浜松オプトロニクス クラスター[IT・ライフ] けいはんなヒューマ ン・ エルキューブクラス ター
[IT・ライフ] とやま医薬バイオ
クラスター[ライフ] 石川ハイテク・セン シング・
クラスター[ライフ] 京都ナノテク クラスター[ナノ] 徳島健康・医療
クラスター[ライフ] 高松希少糖バイオ クラスター[ライフ] 広島中央
バイオテクノロジー クラスター[ライフ]
やまぐち・うべ メディカルイノベー ション
クラスター[ライフ]
大阪北部(彩都) バイオメディカル クラスター[ライフ]
神戸トランスレー ショナルリサーチ クラスター[ライフ] 北九州
ヒューマンテクノ クラスター[IT] 福岡システムLSI
設計開発 クラスター[IT]
平成16年5月には,21世紀の日本経済を牽引する新たな産業の育成を目指し,経済 産業省が「新産業創造戦略」を策定した。成長分野としては有望7分野を設定し,「情報家 電」,「燃料電池」,「ロボット」,「コンテンツ」の4分野を世界市場をリードする先端産業 に据えたほか,社会のニーズに対応した新産業として「健康・福祉」,「環境・エネルギー」, 「ビジネス支援」の3分野を選定し,各分野ごとの詳細な成長戦略を描いている。
(2)栃木県の取り組み
栃木県は平成12年7月,新事業創出促進法に基づき,「とちぎ新事業創出促進基本構想」 を策定した。基本構想では,テクノポリス,頭脳立地計画により,県内に集積した高度技 術産業や県内に蓄積された技術,人材などの地域資源を活用し,創造性に富む新事業を加 速するとともに,新たな雇用機会の創出を目指すことにより,これを通じ地域経済の自立 的発展を促進するとしている。構想の具体化に向けた主な施策としては,総合的な支援体 制「とちぎベンチャーサポートプラネット21」を整備し(平成 12年9月),創業から企 業の研究開発,事業化に至るそれぞれの取り組みを支援している。また,宇都宮テクノポ リスセンター地区及び清原工業団地は,「高度研究機能集積地区」として設定され,栃木県 における研究開発機能の高度化を推進する拠点として活用を図ることとしている。
平成12年8月には「栃木県高度技術産業集積活性化計画」を策定し,宇都宮市を中心に 隣接する地域(4市5町)内に蓄積された高度技術産業の集積機能を十分活かしながら, 創業の促進,高度技術産業の一層の集積促進,産学官・企業間の連携の促進等を図ること により,地域内からの新事業起こしを推進し,その成果を県内全域に拡大・発展させてい くことを目標としている。
栃木県高度技術産業集積活性化計画(平成12年8月策定)の概要
対象地域 4市5町(宇都宮市,真岡市,鹿沼市,今市市,芳賀町,高根沢町,壬生町, 石橋町,上三川町)
目標年次 平成17年度 基 本 的
方 向
「創造」…起業家育成・創業促進・地域企業の新しい事業展開の促進 「誘導」…高度技術産業の一層の集積促進
「連携」…産学官・企業間連携・交流促進
推進方策 ・産業交流拠点施設の活用(産業技術センター,とちぎ産業交流センターによる支援) ・「ベンチャーサポートプラネット21」の活用
・大学等との連携促進
・地域内への研究開発型企業や高付加価値型産業の誘致 等 重点分野 情報通信,環境,航空宇宙,医療福祉,バイオテクノロジー,住宅
目標水準 製造品出荷額等,全産業従業者数,開業率
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社会環境の変化
(1)少子高齢化・人口減少社会の到来
将来の産業構造を展望する上で大きな社会的変化は,少子高齢化と人口減少である。 少子高齢化が急速に進行するなか,国の人口は2006年をピークに,減少していくことが 見込まれている。年齢構成も少子高齢化によって大きく変化し,生産年齢人口(15 歳から 64歳の人口)は,2002年から2015年までに約840万人減少し,これに伴って労働力人口
も約90万人減少する見通しとなっている。
少子高齢化の進行による生産年齢人口の減少に対応した労働力の確保が必要である。
出典:「厚生労働白書」(厚生労働省) 図表2-4-1 日本の生産年齢人口の推移
2,463
1,884 1,748
5,297
5,011
4,731 810
835
754
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000
2002年 2015年 2025年
万人
15歳~29歳 30歳~59歳 60~64歳
1,488
1,150 1,080
4,273
4,170
3,980 929
1,270
1,240
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000
2002年 2015年 2025年
万人
15歳~29歳 30歳~59歳 60歳以上
図表2-4-2 日本の労働力人口の推移
出典:「厚生労働白書」(厚生労働省) 8,570 万人
7,730 万人 840 万人減
6,689 万人 6,600 万人
(2)環境調和型のエネルギー社会の実現
21 世紀は「環境の世紀」ともいわれており,エネルギー資源の枯渇,地球温暖化等の解
決すべき課題が山積している。今世紀を持続可能なエネルギー社会及び環境調和型社会に するためには,資源や環境面からの制約に対応した抜本的な改革が求められており,環境 関連の法整備が進められている。また,これまでのエネルギー資源に代わるものとして, 民間を中心に新エネルギーの開発が取り組まれている。
環境関連の法律及び新エネルギー開発の動向に対応した取り組みが必要である。
<主な環境関連の法律(京都議定書以降)> 京都議定書
(平成9年)
2012 年までに温室効果ガスを6%削減する具体的な数値目標が掲げら
れたことにより,環境問題が具体的に動き出す契機となる。 循環型社会形成推進基本法
(平成12年)
廃棄物の廃棄処理の優先順位を,リデュース(発生抑制),リユース(再 使用),マテリアルリサイクル(再生利用),サーマルリサイクル(熱回 収)そして適正処分と定めた。
家電リサイクル法 (平成13年)
一般家庭から排出される家電製品は埋め立て処分されていたが,製造業 者責任を制度化して資源の再利用を促進する目的で誕生した。
建設資材リサイクル法 (平成14年)
産業廃棄物(年間4億トン)の20%を占める建築廃棄物を,コンクリ ート・コンクリート+鉄の建設廃材・アスファルト・木材に分別する。 80㎡以上の解体工事は「分別解体の届け出」が必要となる。
自動車リサイクル法 (平成14年)
年間 500 万台排出される使用済自動車のシュレダーダストは埋め立て 処分されていたが,製造業者責任を制度化して資源の再利用の促進する 目的で誕生した。
<主な新エネルギーの概要>
太陽光発電 シ リコン 半導 体など に光が あたる と電 気が発 生する 現象を利 用した 太 陽電池を使って「太陽エネルギー」を,直接「電気」に変える発電方法。 バイオマス発電・熱利用 光 合成に よっ て太陽 エネル ギーを 蓄え た植物 をエネ ルギーと して利 用
するもの。森林資源から得られる薪や木炭などの固体燃料のほか,アル コール発酵・合成などから得られる液体燃料,家畜の排泄物などのメタ ン発酵から得られる気体燃料をいう。
燃料電池 水に電気を加えると水素と酸素に分解されるが,この逆の反応で電気を 取り出す装置。水素と酸素をくっつける部分に使う物質により種類が分 かれる。
数年前までは将来の技術であったが,新型の電解質を利用したシステム の実用化が目前に迫るなど,今最も進歩の著しい新エネルギー機器のひ とつ。
(3)コミュニティビジネスの増加
女性の社会進出や高齢化,ノーマライゼーションに対応する多様な就業形態の受け皿と して,地域貢献型企業,いわゆるコミュニティビジネス7が注目されている。従来の行政と 民間企業の枠組みでは解決できない,地域問題へのきめ細かな対応を地域住民が主体とな って行う事業である。コミュニティビジネスは,地域密着性という特徴を活用し,新たな 産業や雇用,生きがいを創出する点で多様な中小企業のある一面を進化させた企業形態と も言え,地域活性化の重要な役割として期待されている。
地域活性化の重要な役割としてコミュニティビジネスの起業促進を図る必要がある。
(4)企業の社会的責任の増大
相次ぐ企業不祥事の影響を受けて,企業の社会的責任(CSR)8への関心が高まってい る。CSRは21世紀の企業の戦略上の重要項目のひとつであり,企業が,経済・環境・社 会等の幅広い分野における責任を果たすことにより,企業自身の持続的な発展と,よりよ い社会の創造につなげようというものである。
特に,地域社会と共生したCSRの取り組みとしては,社会貢献活動が挙げられる。社 員のボランティア活動への参加や,NPO・NGOの支援について積極的に関与する企業 が目立ちはじめている。また,将来の優れた人材資源を育てる観点から,教育現場に積極 的に関与する企業が出てきており,企業が「人づくり」の役割として貢献している。
企業の社会貢献活動と連携した産業振興への取り組みを検討していく必要がある。
7 2000年度国民生活白書では,コミュニティビジネスを「生活者の立場に立ち様々な形で地域の利益増大
を目的とする事業であり,NPOと中小企業にまたがる存在」として紹介している。
8 CSRとは「Corporate Social Responsibility」の頭文字をとった表現で,日本語では「企業の社会的責