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変量係数モデル 教育 OKUI, Ryo

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Academic year: 2018

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平成26年度 ミクロ計量経済学 講義ノート6 変量係数モデル

このノートでは、係数の値が、個人ごとに異なる。変量係数モデルを議論する。始めに、 静学的な線形パネルモデルの変量係数の平均値の推定法を紹介する。次に動学モデルの場合 の、変量係数モデルの難しさを議論する。最後に、係数に異質性があるかどうかの検定法を 紹介する。

6.1 静学モデル

(yit, wit , xit)、i = 1, . . . , N、t = 1, . . . , T を標本とし、被説明変数はyit で説明変数は (wit, xit)とする。witの係数は個人ごとに異なり、xitの係数はすべての個人で共通である とする。モデルは、

yit= wit ai+ xitβ + uit (1) である。uitには固定効果は含まれていない。固定効果がある場合には、witが定数項を含ん でいると解釈するとよい。

推定するパラメーターはµa= E(ai)とβである。ここでは、Tが小さいパネルを考える ので、各aiは推定することができない。しかし、aiの分布や、分布の特徴を示す母数を推 定することはできる。ここでは、平均µaの推定のみを議論する。

6.1.1 共通係数の推定

β の推定の基本的なアイデアは、固定効果変換のように、aiをモデルから消すことにあ る。まず、Yi= (yi1, yi2, . . . , yiT)として、各観測値をiごとにまとめたベクトルと行列を作 る。すると、モデルは、

Yi = Wiai+ Xiβ + Ui (2) と書ける。Mi = I − Wi(WiWi)−1Wiとする。MiWi= 0であるので、各変数の左側からMi

をかけることで、モデルからaiを消すことができる。Y¨i = MiYiとすると、

i = ¨Xiβ + ¨Ui (3)

である。このモデルをOLSで、推定することにより、βの推定値を得ることができる。つ まり、

β =ˆ ( N

i=1

iX¨i )−1 N

i=1

iY¨i (4)

である。

もし、Witが定数項しか含まないなら、固定効果変換と同じである。

• ¨YiYiWiに回帰した残差である。ここで注意すべきは、回帰は個人ごとに行っ ていることである。全体の観測値を使って回帰をする場合には、aiを消すことはでき ない。

(2)

次に示す条件の下で、βˆは一致性をもち、漸近正規になる。 1. (Yi, Wi, Xi)はi.i.d.(横断面について)

2. ( ¨Ui, ¨Xi)は4次までのモーメントを持つ。 3. E(uit|Wi, Xi, ai) = 0。

4. E( ¨XiX¨i)は正則。

この中で、特に重要な条件は、3と4である。

• 3は強外生の仮定である。条件付き期待値の条件の中身は、すべてのtに渡っての説明 変数の値が入っていることに注意すること。またこの仮定は、aiの分布については、 何の仮定もおいていない。

• 4は多重共線性がないと言う仮定である。この背後には、(WiWi)が逆行列がとれると いう仮定が暗にあることに注意。また、この仮定からwitの次元をJ、xitの次元をK とすると、(T − J) > Kが成り立つ必要条件である。

6.1.2 変量係数の期待値

続いて、µa= E(ai)の推定を議論する。推定は、まず、各aiを推定し、それらの推定値 の標本平均をとることで、行う。T が小さい状況を考えているため、各aiの推定量は一致 性を持たないが、その標本平均をとれば、µaの一致推定量になることがポイントである。

それでは、各aiの推定から始める。まず、

Wiai= Yi− Xiβ + Ui (5) であるので、

ai = (WiWi)−1Wi(Yi− Xiβ + Ui) (6) となる。各aiの推定量は、

ˆ

ai = (WiWi)−1Wi(Yi− Xiβ)ˆ (7) として得られる。この推定量はTが有限では、一致性を持ち得ない。

続いて、µaをˆaiの平均から推定する。つまり、

ˆ µa= 1

N

N i=1

ˆ ai = 1

N

N i=1

(WiWi)−1Wi(Yi− Xiβ)ˆ (8)

となる。

この推定量が、一致性を持ち、漸近正規であるために必要な仮定は、βˆの時とほぼ同じで ある。ただし、

• aiは平均と4次までのモーメントを持つ。

(3)

という、推定の状況から自明に要求される仮定は当然必要である。

この推定量の漸近分散は、aiの変動だけでなく、βˆの推定誤差にも影響を受ける。ここで は、漸近分散推定量を参考までに書いておく。Uiを残差とする。

avar(ˆ\µa) = 1 N

N i=1

(ˆai− ˆµa− ˆC ˆA−1X¨iUi)2 (9)

ただし、

C =ˆ 1 N

N i=1

(WiWi)−1WiXi, A =ˆ 1 N

N i=1

iX¨i (10)

である。

• なお、ここで紹介した推定量は、効率的なものではない。効率的な推定量は、Cham- berlain (1992)に記載がある。

6.1.3 変量係数を無視した場合

この節では、真のモデルが、変量係数モデルであるにも関わらず、誤って係数が個人間で 共通であると仮定した場合の帰結を議論する。ここでは特に、そういうた変更係数を無視し たモデルを推定しても、変量係数の平均を推定したことになるための条件を解説する。

次の個人効果を含む変量効果モデルを、単純に固定効果推定した場合を議論する。モデ ルは、

yit= αi+ xitbi+ uit (11) である。これを、固定効果変換すると、y¨it= yitTt=1yit/T として、

¨

yit= ¨xitbi+ ¨uit (12) となる。

さて、固定効果推定量は、変換後のモデルのOLS推定量なので、上の変換後のモデルを さらに、共通係数のモデルとして解釈したときに、OLSの仮定を満たすかどうかを調べる とよい。β = E(bi)として、di = bi− βと書くと、

¨

yit = ¨xitβ + ¨xitdi+ ¨uit (13) となる。つまり、新しい誤差項である、x¨itdi+ ¨uitとx¨itの相関がなければ、固定効果推定 によって、βを一致性をもって推定できることになる。

したがって、求める条件は、通常の固定効果推定の条件に加えて、

E(¨xititdi) = 0 (14) となる。この条件の十分条件は、

E(bi|Xi) = E(bi) = β (15) である。つまり、 と の間に関係がないことが条件になる。

(4)

6.2 動学モデル

動学パネルデータモデルの場合には、変量係数の取り扱いには一気に難しくなる。特に、 そもそも固定効果推定のタイプの手法がTが有限では一致性を持たないため、T → ∞の状 況について、これまでの文献では研究されてきた。

ここでは、簡単化のため、動学パネルデータモデルの一例であるパネルAR(1)モデルの 係数が、変量係数になっているモデルを考える。つまり、モデルは、

yit= ρiyi,t−1+ ϵit (16)

である。このモデルは、Pesaran and Smith (1995)の研究を嚆矢とする。なお、ここで考え ているモデルにで、個人効果は入っていない。個人効果が入るモデルはさらに分析が難しく なる。

動学モデルの場合は、係数が個人ごとに異なると、OLSでは、係数の平均を推定すること は、できなくなる。なお、もし係数が一定であれば、個人効果が入っていない場合は、OLS により係数の一致推定ができる。しかし、係数が個人ごとに異なると、OLS推定量の解釈 が難しくなる。これは、変量係数とyitの間には、相関が出てしまうからである。さらに、 この問題は、T → ∞の場合にも発生する。

変量係数とyitの相関を見るには、yitを展開するとよい。通常のARモデルの場合と同じ ように、yitを展開すると、

yit= (ρi)tyi0+

t−1 j=0

ρjiϵi,t−j (17)

となる。そのため、yitとρiには相関があり、OLS推定では、ρiの平均を一致推定すること はできない。

Pesaran and Smith (1995)による推定量は、各個人ごとのOLS推定量の平均をとる者で ある。つまり、ρˆi

ˆ ρi=

( T

t=2

yi,t−12 )−1 T

t=2

yi,t−1yit (18)

として、E(ρi)の推定量を

ˆ ρ = 1

N

N i=1

ˆ

ρi (19)

とする者である。

Pesaran-Smith推定量の欠点は、T → ∞でないと、一致性を持たないことである。シミュ レーションを通して得られる結果からも、この推定量はTが小さい場合にはバイアスが大 きいことがわかる。これは、ARモデルの推定量は、T−1のオーダーのバイアスがあるため である。Hsiao, Pesaran and Tahmiscioglu (1999)はこの問題を解決するため、Bayes型の 推定量を提唱した。この推定量により、Tの大きさに関する条件を緩めることはできている が、それでも、T → ∞という条件は必要となっている。

(5)

6.3 係数の異質性の検定

この節では、係数が個人ごとに異なるか、すべての個人が同じ係数をもっているかを検定 する方法を紹介する。その中でも比較的有名だと思われる、Swamy (1970)とPesaran and Yamagata (2008)の検定を中心に議論する。

固定効果モデルを考える。つまりモデルは、

yit= αi+ xitβi+ ϵit (20) であり、帰無仮説は、あるβについて

H0 : βi = β, ∀i, (21)

である。βiの次元をkとする。

ここで紹介する検定は、個人ごとに誤差項の分散が異ってもよいとする。

E(ϵ2it) = σi2 (22)

と表記する。なお、誤差項に相関構造がある場合や、より一般的な条件付き分散不均一の場 合は、このノートでは、議論しない。ただ、ここで紹介する検定を、そのような場合にも使 えるように拡張する研究については、この節の最後で少し触れる。

係数の異質性の検定の基本的な考え方は、個人ごとに推定した係数と、標本全体で計算し た係数を比較することである。まず、M0として、

M0= IT − ιTιT/T (23) ただしιT は1を並べたT 次元のベクトル、を定義する。またXi = (xi1, . . . , xiT)、Yi = (yi1, . . . , yiT)とする。各個人のβiのOLS推定量は、

βˆi=(XiM0Xi

)−1

XiM0Yi (24)

である。標本全体を使用してβを推定する場合には、GLS(厳密には固定効果推定量の重み 付け版である)を使用する。つまり、

βˆGLS = ( N

i=1

XiM0Xi ˆ σi2

)−1 N

i=1

XiM0Yi ˆ

σ2i , (25)

とする。分散推定量のˆσi2

ˆ

σ2i = (Yi− Xiβˆi)M0(Yi− Xiβˆi)

T − k − 1 (26)

として、各個人でのOLSから計算する。 Swamy (1970)の検定統計量は、

S =

N i=1

(βˆi− ˆβGLS)(XiM0Xi ˆ σi2

) (βˆi− ˆβGLS) (27) である。帰無仮説の下で、Nが固定で、T → ∞のとき、

S → χ2 (28)

(6)

となる。

Pesaran and Yamagata (2008)はN → ∞の場合のSwamyの検定の振る舞いを考察し、 またN がT よりもかなり大きくとも検定が機能するように改良を加えた。Pesaran and Yamagata (2008)の検定統計量は、Swamy検定統計量と基本的に同じ形をしているが、分 散の推定法が異なる。Pesaran and Yamagata (2008)の検定で使用する分散推定量は、

˜

σi2 = (Yi− XiβˆF E)M0(Yi− XiβˆF E)

T − 1 (29)

であり、固定効果推定の残差を使用して計算している。またGLS推定量も

β˜GLS = ( N

i=1

XiM0Xi

˜ σi2

)−1 N

i=1

XiM0Yi

˜

σ2i , (30)

検定統計量の式は、

P Y =N

(N−1S − k˜

√2k )

(31)

ただし、

S =˜

N i=1

(βˆi− ˜βGLS)(XiM0Xi

˜ σi2

) (βˆi− ˜βGLS) (32)

である。N, T → ∞かつN/T4→ 0のとき、帰無仮説のもとで、

P Y →dN (0, 1) (33)

となる。

これまでは、基本的に静学パネルモデルを考えてきたが、Pesaran and Yamagata (2008) の検定は、動学モデルでも使用可能である。ただし、動学パネルの場合は、N/T → κ、 0 ≤ κ < ∞という条件が必要であり、時系列の長さの条件が厳しい。

他にも、Pesaran and Yamagata (2008)の検定では扱えない状況に対処するために、様々 な検定法が近年に提唱されている。Juhl and Lugovskyy (2014)では、T が固定されている 状況や、もう少し柔軟に分散不均一を許しても、機能する検定が提唱されている。Lin (2011) でも同じような状況で使用可能な検定が提唱されている。またLin (2011)は動学モデルの 場合も考慮している。

6.4 近年の研究

変量係数モデルに関しては、近年も重要な研究がいくつか発表されている。Arellano and Bonhomme (2012)はT が固定されている場合の、変量係数の分布の識別と推定を議論して いる。Fern´andez-Val and Lee (2013)はモーメント条件で定義されるモデルの変量係数の平 均や分散などの推定方法をT → ∞の場合に議論している。Galvao and Kato (2014)には、 変量係数モデルの場合の固定効果推定量の漸近的性質に関する、かなり一般的な状況での議 論がある。

(7)

参考文献

[1] M. Arellano and S. Bonhomme. Identifying distributional characteristics in random coefficients panel data models. Review of Economic Studies, 79:987–1020, 2012.

[2] G. Chamberlain. Efficiency bounds for semiparametric regression. Econometrica, 60(3):567– 596, 1992.

[3] I. Fern´andez-Val and J. Lee. Panel data models with nonadditive unobserved heterogeneity: Estimation and inference. Quantitative Economics, 4:453–481, 2013.

[4] A. F. Galvao and K. Kato. Estimation and inference for linear panel data models under misspecification when both n and T are large. Journal of Busness & Economic Statistics, 32(2):285–309, 2014.

[5] C. Hsiao, M. H. Pesaran, and A. K. Tahmiscioglu. Bayes estimation of short-run coefficients in dynamic panel data models”, in analysis of panels and limited dependent variables models. In K. L. C. Hsiao, L.F. Lee and M. Pesaran, editors, Analysis of Panels and Limited Dependent Variables Models, pages 268–296. Cambridge University press, 1999.

[6] T. Juhl and O. Lugovskyy. A test for slope heterogeneity in fixed effects models. Econometric Reviews, 33(8):906–935, 2014.

[7] C.-C. Lin. Testing for slope homogeneity in a linear panel model with fixed effects and conditional heteroskedasticity. mimeo, 2011.

[8] M. H. Pesaran and R. Smith. Estimating long-run relationships from dynamic heterogeneous panels. Journal of Econometrics, 68(1):79–113, 1995.

[9] M. H. Pesaran and T. Yamagata. Testing slope homogeneity in large panels. Journal of Econometrics, 142:50–93, 2008.

[10] P. Swamy. Efficient inference in a random coefficient regression model. Econometrica, 38:311– 323, 1970.

参照

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