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皮下脂肪組織由来の再生細胞を用いてリンパ管再生誘導に成功マウスでリンパ浮腫改善作用示す

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Academic year: 2018

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平成 24 年 7 月 23 日

皮下脂肪組織由来の再生細胞を用いてリンパ管再生誘導に成功。

マウスでリンパ浮腫改善作用示す

名古屋大学大学院医学系研究科 循環器内科学の室原豊明教授および清水優樹大学院 生らの研究チームは、脂肪組織から分離した再生細胞(Adipose derived regenerative cells: ADRC)を移植すると、リンパ管の再生を誘導しリンパ浮腫を改善させることを証 明しました。機序として、リンパ浮腫組織に移植された再生細胞が産生する成長因子に より、リンパ管の再生が促進されていることを明らかにしました。

研究チームが今回用いた再生細胞(ADRC)は脂肪組織中に存在するもので、いろいろ な器官の細胞に分化することがこれまでの基礎研究から報告されています。また人の皮 下脂肪中にも大量に存在し、他の細胞源と比して採取が容易であるなどのメリットから 今後の再生医療における新たな細胞源として期待されています。

研究チームは、マウスを用いて既存のリンパ管を一部切除することにより血行障害の 影響を受けない尾部リンパ浮腫モデルを作製し、リンパ管損傷部位近傍に、マウス皮下 脂肪より分離した ADRC を移植しました。細胞移植群では、対照群に比べ、新しいリン パ管が高効率に作られ、リンパ浮腫改善作用を示すことを明らかにしました。

本研究の結果は、現在日本にも数万人以上いるとされるリンパ浮腫で悩んでおられる 患者さんにとって福音をもたらす可能性を示しています。

なお、本研究成果は 2012 年 7 月 14 日付けの米国心臓協会誌『Journal of the American Heart Association』電子版に掲載されました。

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皮下脂肪組織由来の再生細胞を用いてリンパ管再生誘導に成功。

マウスでリンパ浮腫改善作用示す

主たる研究者

名古屋大学大学院医学系研究科 循環器内科学 大学院生 清水 優樹 名古屋大学大学院医学系研究科 循環器内科学 教授 室原 豊明

要旨

名古屋大学大学院医学系研究科(研究科長・髙橋雅英)循環器内科学の室原豊明(むろはら と よあき)教授および清水優樹(しみず ゆうき)大学院生らの研究チームは、脂肪組織から分離 した再生細胞(Adipose derived regenerative cells: ADRC)を移植すると、リンパ管の再生を 誘導しリンパ浮腫を改善させることを証明した。機序として、リンパ浮腫組織に移植された再生 細胞が産生する成長因子により、リンパ管の再生が促進されていることを明らかにした。本研究 成果は2012 714日付けの米国心臓協会誌『Journal of the American Heart Association 電子版に掲載された。

研究チームが今回用いた再生細胞(ADRC)は脂肪組織中に存在するもので、いろいろな器官の 細胞に分化することがこれまでの基礎研究から報告されている。また人の皮下脂肪中にも大量に 存在し、他の細胞源と比して採取が容易であるなどのメリットから今後の再生医療における新た な細胞源として期待されている。

研究チームは、マウスを用いて既存のリンパ管を一部切除することにより血行障害の影響を受 けない尾部リンパ浮腫モデルを作製し、リンパ管損傷部位近傍に、マウス皮下脂肪より分離した ADRCを移植した。細胞移植群では、対照群に比べ、新しいリンパ管が高効率に作られ、リンパ浮 腫改善作用を示すことを明らかにした。

本研究の結果は、現在日本にも数万人以上いるとされるリンパ浮腫で悩んでおられる患者さん にとって福音をもたらす可能性を示している。

1. 背景

我が国の死亡原因1位である癌に対する積極的治療は医学の進歩と共に拡大してきている。そ れらにより生命予後の改善はされたが、反面、外科的治療(リンパ節郭清)や放射線治療後にし ばしば合併する2次性の「リンパ浮腫」は疼痛や感染などを繰り返し、また、その容姿などから も患者さんの生活の質(QOL)を大きく低下させる難治性疾患であり、その対策は重要な課題であ

ポイント

○脂肪組織由来再生細胞(Adipose derived regenerative cells: ADRC)をリンパ浮腫モデル マウスの皮下に移植すると、新しいリンパ管が高効率に作られ、リンパ浮腫改善作用を示す。

○主要な機序として、リンパ浮腫組織に移植された再生細胞から放出された成長因子が、 リンパ管の再生を促進している。

○現在根本治療のないリンパ浮腫に対して、リンパ管の細胞移植による再生医療が新規の治療 となりうる事を示唆している。

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る。現在ガイドラインで推奨されている治療法としては、弾性ストッキング着用やリンパマッサ ージなどの理学療法が中心であるため効果も限定的であり、未だに十分な治療法がない。新たな 根本治療として、リンパ管の再生を促し、損傷されたリンパ管ネットワークを再構築するという 試みの治療法の開発が現在期待されている。

2. 研究成果

研究チームは、マウス尾部の既存リンパ管を一部切除分断することにより血行障害の影響を受 けない尾部リンパ浮腫モデルを作製した。この疾患モデルを用いてADRC移植によるリンパ管再生 促進効果およびリンパ浮腫軽減効果を検討した。マウス皮下脂肪組織を採取後コラゲナーゼ処理 により分離したADRCを培養などの操作を経ずにそのまま使用し、リンパ管損傷部位近傍に約2百 万個の細胞を注入法で移植した。細胞移植群では、対照群に比べ、新生毛細リンパ管密度が有意 に増加し、それに伴いリンパ浮腫が改善した。また細胞移植群では、リンパ浮腫の合併症である 象皮病様の所見である皮膚の増生や繊維化等の所見も軽減した。

ADRCは、Vascular Endothelial Growth Factor(VEGF)-C等のリンパ管新生促進因子を産生して、 リンパ管内皮細胞の増殖や遊走を増強させることにより、近傍の既存リンパ管からの発芽的再生 を促進した。またVEGF-Cは骨髄に存在するリンパ管内皮前駆細胞を局所へ動員し、リンパ管の再 生を促進させている可能性も示唆された。

研究チームは、リンパ浮腫に対してADRCを移植すると、リンパ管新生が促進され、浮腫軽減に つながることを示した。

3. 今後の展開

ADRC細胞のヒトへの臨床応用には、ADRC移植の効率性、さらなる安全性の検討を要する。その ため、研究チームは中型動物(ウサギ等)を用いた前臨床試験を予定している。

参照

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